読書の記録

評論・小説・ビジネス書・教養・コミックなどなんでも。書評、感想、分析、ただの思い出話など。ネタバレありもネタバレなしも。

うさぎドロップ

2008年05月19日 | コミック
うさぎドロップ---宇仁田ゆみ---コミック

 30歳独身男性と6歳少女の共同生活、と描くとまるでアブナイ萌えマンガを連想しそうだが、全然違う。「父親の育児」を扱っているのである。著者は育児や家庭マンガで定評ある宇仁田ゆみであるからして、問題意識や描写はわりとリアル。
 特に第1巻から第2巻前半くらいまでは慣れぬ父親(本当の父親ではないが)の子育てにまつわる悪戦苦闘が多く扱われており、ここは同感共感一直線。保育園送迎にともなって通勤カバンの仕様を変えざるを得なくなるとか、保育園帰りにほかの親御さんと一緒になってしまって、子供同士は仲良いが、親同士がぎこちないとか。

 というのは、僕自身「魔のイヤイヤ期」である2歳児を相手に育児格闘しているからだ。
 当然、仕事に制限・制約が生まれるし、職場の周囲の理解もこういうご時世なのでしぶしぶ黙認しているのは、これはもう肌でわかる。自らのこういう境遇、私事も仕事も、子供の生まれる前に比べ、極端に制約されてしまっている。

 最新刊である第4巻では、子供のインフルエンザによる長期休みをいかに対処するか、という話が出てくる。我が家でも先日、子供が水ぼうそうを体験し、1週間の保育園休みを余儀なくされた。急なことでヘルパーも空きがなくて頼めず、自分と妻で仕事を半日単位で区切って割り当て、さらに地方に住む親に1日だけ応援に来てもらってなんとか対処したのだが、もちろん仕事はめちゃくちゃで、ずいぶんあちこちに迷惑かけてしまった。水ぼうそうだからよかったものの、これがインフルエンザだったら、こちらに伝染ることも考えられるし(事実、子供がノロウィルスにかかったときは、見事にこちらに伝染した)、いやほんとみんなどうしてんだろ。

 で、ここが肝要なのだが、本書のテーマでもある(と思う)のだが、かといって自分が犠牲者とかいうネガティブな気持ちはまったくない。部分的、局所的にはいろいろあるし辛いこともたくさんあるが、全体的にはこの上ない幸せにある。自分で大事だと積極的に思えるものに、一番関わることができているからである。第2巻にあるセリフ「自分の中で大事なものの占める割合が大きく変わっただけ」。そうなのだよなあ。

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