読書の記録

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1440分の使い方 成功者たちの時間管理15の秘訣

2018年11月09日 | ビジネス本

1440分の使い方 成功者たちの時間管理15の秘訣

ケビン・クルーズ 訳:木村千里
パンローリング


 人生は100年時代なのに、1440分(24時間)を合理的に生産的に使わなくてはならないとはなんとも難儀な時代になったものである。情報テクノロジーの生産性はムーアの法則として累積的に加速していくが、人間自身もまた、ムーアの法則のように生産性を加速度的に高めていかなければならないのである。つまり10年前は1週間かけてやってよいこどが、いまや数時間で完成させないと人材として認められなくなってしまった。とほほ。

 したがって、「仕事ができる人」=「時間使いの名人」ということである。熟慮に熟慮を重ね、みっちり時間をとってこつこつしあげる職人肌の人は「仕事ができない人」なのである。これがここ数年にあったパラダイムシフトだ。24時間かけて100の完成度を誇るより、12時間で60の完成度を仕上げてしまい、それを1日間で2つ作れてしまう人のほうが「仕事ができる」のである。

 本書にはテクニカルなことがいくつもかかれている。スケジュールは15分単位でいれろとか、ToDoリストではなくスケジュール表にしろとか、朝起きたらたくさん水を飲めとか、運動しろとか、何も予定がない時間をあえて確保してスケジュール帳でブロックしておけとか、手書きでメモれとか、常にメモ帳を携帯しろとか、後回ししたいものこそ先に片付けろとか。

 まあそういうことなのかもしれないが本書で目玉のは「80対20の法則」の敷衍だろう。実際に僕の周囲などをみても「時間使いの名人」すなわち「仕事ができる人」は、この法則を自覚的経験的にかかわらずわかっているように思う。
 「80対20の法則」とは、その仕事の価値の8割を占める重要ポイントは、実は全体の2割に満たない、という逆説的な法則のことである。つまり残りの8割は価値としては2割ほどでしかない。
 これが何を意味するかというと、その仕事のコアバリューを決める大事なところは、仕事全体にかける時間の2割で済むということだ。残りの時間8割はそのコアバリューをフォローするための資料集めなどに費やす時間に過ぎない。
 たとえば企画書をまとめるとしたとき。100ページの企画書があるとして、大事なところは20ページ程度である。残りの80ページは演出や規定演技であるに過ぎない。

 そうすると「時間使いのうまい人」は、その大事なコアバリューの「8割」のところだけをさっと見抜き、先に「2割」の時間でやってしまうのである。残りの8割時間のほうは誰かに任せたり、隙間時間でちまちまとうめたり、あるいは未完成のまま押し通してしまう。一番大事なところが抑えられているからなんとかなるのだ。
 反対に「時間使いの下手な人」は、時間がかかる8割ーー実際にその価値は「2割」しかないのにーーから着手してそこに延々に時間をかけてしまい、いつまでたっても一番大事なところに行き着かないので「あいつは仕事が遅い」「何が大事かわかってない」となって、「仕事ができない人」になってしまう。

 この「80対20」の法則はいろいろ応用がある。たとえば会議。だらだら続くもいっぱいあるが、本当に大事な意思決定や討論は会議全体時間の中の2割程度だったりする。「時間使いの名人」すなわち「仕事ができる人」は、その2割のところだけ積極的に参加して、あとは退出したり手元のノートパソコンで他の仕事をしている(隙間時間でちまちまうめたい「8割」のほうの仕事をしていたりする)。

 人間関係や人脈もそうで、フェイスブックに登録されている友達などソーシャルネットワークのなかで本当に大事なのはその中の2割である。あとの8割はたいして作用していない。(クレジットカードなんかでも、アクティブなのは2割でのこり8割は幽霊会員というのはよく聞く話である)


 つまりこういうことが言える。1440分のうち、本当に大事なのは2割にあたる288分つまり4時間48分だ。ざっくりいうと5時間である。
 5時間を上手にねん出して、ベストのコンディションをつくり、自己裁量を確保して価値あることに使えると「時間使いのうまい人」すなわち「仕事ができる人」になる。
 5時間のうち、1時間を読書などのインプットに費やし、1時間をジョギングなどの健康増進に費やし、1時間を「大事な人(ソーシャルネットワークの2割!)」と話すのに費やし、そして2時間を仕事の本当の大事なところのアウトプットに費やす、でもよい。それを毎日続ければあなたは1440分の使い方の名人、「超・仕事ができる人」になる。
 秘訣はこうだ。朝起きてから通勤時間中などの時間もふくめて午前中いっぱい、ランチタイムが終わるまでをその「大事な5時間」にしてしまうのである。まずは早起きから始めてみることだ。




 ・・・・うーん。みごとに自己啓発書的なストーリーの完成である。そうはうまくいかないのが世の常だ。
 8割のムダの中に実は破壊的イノベーションのアイデアがあるという説もある。本当に本当に大事なのは、8割のムダの中に「よくわからないけれどこれはなにか後々使えるかもしれない」という直観的なアンテナを働かす能力なのではないかとも思う。これが鍛えられないと、しょせんは本物のAIのムーアの法則の前には叶わないのではないかと思うのである。


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