読書の記録

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ボクたちクラシックつながり

2008年02月29日 | クラシック音楽
ボクたちクラシックつながり  ピアニストが読む音楽マンガ---青柳いずみこ---新書

早い話が、ピアニストが書いた「のだめカンタービレ」のアンチョコであるからして、僕を含む「のだめ」が好きな人には楽しい。楽曲の特徴や選曲の意味、千秋やのだめがしゃべった言葉の真意みたいなことをプロの目線で解説してくれる。

たとえばのだめがマラドーナコンクールの本選で弾いた、ストラヴィンスキーの「ペトルーシュカの3楽章」(途中で「今日のお料理」になってしまったやつ)は、アイススケートでいうところのレベル4なみの難曲である、とか。千秋が弾き振りでバッハのピアノ協奏曲を弾いたが、弾き振りというのは物凄く神経が疲れるのだ、とか。

が、「のだめ」を知らなければちとつらいのではないか? 本書では、さそうあきら「神童」と、一色まこと「ピアノの森」も登場するが、こちらはどちらかというと注釈レベルだ。僕は、「神童」は読んでいたが「ピアノの森」は読んでいない。

とはいえ本書で著者の筆が特にノッているなと思ったのは、唯一「のだめ」の解説から逸脱した最終章「ピアニストは本当に不良債権か?」の項。いやほんと。音大ほど、これまでつぎ込んできたお金と時間に対し、割の合わない卒業後のキャリアはないだろうと思う。著者は、日本人ピアニストの中では一線で活躍しているほうだと思っていたけれど、それでも自由業ながら確定申告が必要になったのは最近なのだそうな。

ところで、クラシックピアノを題材にしたマンガが華やかな現代だが、僕が中学生くらいの頃、少年ジャンプで「音吉君のピアノ物語」という連載マンガがあった。作者はピアノ教師だったはず。残念ながら漫画家としては素人に毛が生えたレベル(デビュー作だったか)で、悪名高きジャンプ・システムにはまらず、精彩を欠いたまま終わってしまったに記憶するが、今思うに、これこそ野心的なピアノ・マンガであった。ショパンやリストが楽譜付で登場し、のだめが「嫌味なくらい楽々と弾く」ショパンの難曲練習曲作品10-2を、主人公の音吉君は、ひたすら小指と薬指を鍛えてついには弾きあげ、今をときめくフジ子・ヘミングのトレードマーク、「ラ・カンパネラ」を、音吉君は、目をつぶりながら、鼻血を滴らせながら弾きのけ、ついでにラヴェルの「左手のためのピアノ協奏曲」のソロパートは、左手をつき指したために、特訓して右手で弾いてしまうというなかなか壮絶なものだった。思うに、登場が20年早かったのだな。




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