4月5日・・・
彼と彼女は京都の東寺を訪れていた
もうすぐ閉園
夕方だった
桜の花びらが風に揺られて東寺の五重塔を見事に映していた
手を繋ぎながら二人は花びらの中を歩いた
それは何ともいえない静けさと落ち着きだった
二人は不思議な空間に包まれていた
まるで時が止まってしまったかのように・・・
二人は過去生・・・同じ場所を同じ日に訪れていた
夕暮れだった
オレンジ色の光が桜を照らしていた
過去生の二人は遊郭にいた彼女・・・彼は武士
彼の肩には花の文様の刺青があった
時は江戸時代・・・
彼には妻子があり地位もある
彼は遊郭から連れ出しあちこちに彼女を連れていった
彼女と神仏めぐりをするのが好きだった
彼女は手を繋いだその手を必死に掴み、つかの間の幸せの中で微笑む
その笑顔を見るのが彼は好きだったのだ
遊郭から帰る時・・・彼女はいつも泣くのだ
だからこうして彼女が笑っている姿を見るのは外だけだった
場所はどこでもよかった
二人が結ばれない運命である事をより強く認識せざるおえないお寺参り
でもそこに行って祈るのが運命に抵抗する唯一の方法だった
二人に明日はなかった
彼女のお腹には赤ちゃんがいた
産む事は許されないのだ
その日彼女は川に身を沈めて命を絶とうとした
彼女は死ねなかった
助けが入ったからだ
その後助けられた男に嫁入りをする
彼と彼女の最後のデート・・・それが東寺だった
彼は約束をする
「もう一度生まれ変わったら
又同じようにここを歩こう
そして今度こそ一緒に生きよう」
彼は彼女を遊郭から出す事ができなかった
彼と彼女は今回の人生再び出会い・・・その場所を訪れた
それには深い意味があったのだ
彼女はいつも夢にうなされる
又どこかへ行ってしまうのではないか・・・
添い遂げられなかったという彼女の思いは頂点に達していた
彼女のここ2.3ヶ月間は蕁麻疹が消えず
彼女の精神も疲れ果てていた
幸せなのに・・・不安が襲い掛かる
理屈では言い表せない怒りと哀しみで心身は衰弱しきっていた
彼女は夢を見ていた
彼と一緒に昔ながらの江戸時代のような街並みを二人はあるいていく
露店が立ち並び・・・賑やかなのだ
彼が彼女を送っていく場面だ
道を歩いていくと、彼の奥さんと5歳の娘が途中で待っている
彼の奥さんの所に彼は歩いていく
彼は娘の目線に合わす為しゃがみこむ
なにやら話しをしている
奥さんはひと言も喋らず、悲しい目を彼に向けている
彼女はそれを見て諦めてとぼとぼと一人で帰っていく
目が覚めた瞬間彼女は号泣してしまう
そんな夢を何度も見る
「もう楽になりたい
彼と別れてしまえば、こんな哀しみを感じる事もない
あとは自分の心にずっと彼への思いをしまいこんでしまえばいい
生きながらにして死んだ状態
そうすれば楽になる」
そうして浅い眠りに又再び入っていくのだ
精神病院に行った方がいいかもしれない
彼女は真剣に考えていた
彼と彼女は再び同じ場所を訪れ同じ会話をしていた
今回の二人はお互いにフリーだった
彼は彼女の手の握った
二人は桜の下でその暖かい温もりを感じていた
いいようのない哀しみがとけて流れていくようだった
彼女の手をとりなさい
彼の中に強い声が聞こえた
彼は言った
「今回は一緒に生きるぞ。一緒に行こう」
彼女はその手をとった
二人は食事をしながら、笑った
彼女は言った
「私は鱧が嫌いなの。蛇類だもの」
前世の彼女はよく食事をするたびにこう言った
「私はうなぎが嫌いなの。だって蛇みたいだから」
彼は彼女のうなぎをとって食べた
今・・・この瞬間にいなさい
彼の温もりを・・・手の感覚を感じていなさい
側にいる息を感じていなさい
今回の二人の出会った意味・・・
その二人の契約は「一緒になる」という事だった
彼女は長い間夢をみていた
永遠の約束
長い長い転生を超えての約束だった・・・
東寺を回った二人は時間がなくて帰った
東寺に来ただけ
たった2時間だけ二人は京都に来た
その意味はあの約束を果たすためだった
哀しみを終わらせる事だった
二人の魂はその事を覚えていたのだ
彼女は笑っていた
その笑顔を見ながら彼も笑った
その後の彼女は夢は見なくなった
まだ時々哀しみが湧くように襲うが
以前のようではなく
哀しみの中にも二人は大丈夫なんだという
ゆるぎない感覚を感じるようになった
彼は彼女の手を握った
そして言った
「今度は一緒に行くぞー」
彼女は手をとった
二人は桜の花の中でゆっくり時空間を旅しているかのようだった
彼と彼女は京都の東寺を訪れていた
もうすぐ閉園
夕方だった
桜の花びらが風に揺られて東寺の五重塔を見事に映していた
手を繋ぎながら二人は花びらの中を歩いた
それは何ともいえない静けさと落ち着きだった
二人は不思議な空間に包まれていた
まるで時が止まってしまったかのように・・・
二人は過去生・・・同じ場所を同じ日に訪れていた
夕暮れだった
オレンジ色の光が桜を照らしていた
過去生の二人は遊郭にいた彼女・・・彼は武士
彼の肩には花の文様の刺青があった
時は江戸時代・・・
彼には妻子があり地位もある
彼は遊郭から連れ出しあちこちに彼女を連れていった
彼女と神仏めぐりをするのが好きだった
彼女は手を繋いだその手を必死に掴み、つかの間の幸せの中で微笑む
その笑顔を見るのが彼は好きだったのだ
遊郭から帰る時・・・彼女はいつも泣くのだ
だからこうして彼女が笑っている姿を見るのは外だけだった
場所はどこでもよかった
二人が結ばれない運命である事をより強く認識せざるおえないお寺参り
でもそこに行って祈るのが運命に抵抗する唯一の方法だった
二人に明日はなかった
彼女のお腹には赤ちゃんがいた
産む事は許されないのだ
その日彼女は川に身を沈めて命を絶とうとした
彼女は死ねなかった
助けが入ったからだ
その後助けられた男に嫁入りをする
彼と彼女の最後のデート・・・それが東寺だった
彼は約束をする
「もう一度生まれ変わったら
又同じようにここを歩こう
そして今度こそ一緒に生きよう」
彼は彼女を遊郭から出す事ができなかった
彼と彼女は今回の人生再び出会い・・・その場所を訪れた
それには深い意味があったのだ
彼女はいつも夢にうなされる
又どこかへ行ってしまうのではないか・・・
添い遂げられなかったという彼女の思いは頂点に達していた
彼女のここ2.3ヶ月間は蕁麻疹が消えず
彼女の精神も疲れ果てていた
幸せなのに・・・不安が襲い掛かる
理屈では言い表せない怒りと哀しみで心身は衰弱しきっていた
彼女は夢を見ていた
彼と一緒に昔ながらの江戸時代のような街並みを二人はあるいていく
露店が立ち並び・・・賑やかなのだ
彼が彼女を送っていく場面だ
道を歩いていくと、彼の奥さんと5歳の娘が途中で待っている
彼の奥さんの所に彼は歩いていく
彼は娘の目線に合わす為しゃがみこむ
なにやら話しをしている
奥さんはひと言も喋らず、悲しい目を彼に向けている
彼女はそれを見て諦めてとぼとぼと一人で帰っていく
目が覚めた瞬間彼女は号泣してしまう
そんな夢を何度も見る
「もう楽になりたい
彼と別れてしまえば、こんな哀しみを感じる事もない
あとは自分の心にずっと彼への思いをしまいこんでしまえばいい
生きながらにして死んだ状態
そうすれば楽になる」
そうして浅い眠りに又再び入っていくのだ
精神病院に行った方がいいかもしれない
彼女は真剣に考えていた
彼と彼女は再び同じ場所を訪れ同じ会話をしていた
今回の二人はお互いにフリーだった
彼は彼女の手の握った
二人は桜の下でその暖かい温もりを感じていた
いいようのない哀しみがとけて流れていくようだった
彼女の手をとりなさい
彼の中に強い声が聞こえた
彼は言った
「今回は一緒に生きるぞ。一緒に行こう」
彼女はその手をとった
二人は食事をしながら、笑った
彼女は言った
「私は鱧が嫌いなの。蛇類だもの」
前世の彼女はよく食事をするたびにこう言った
「私はうなぎが嫌いなの。だって蛇みたいだから」
彼は彼女のうなぎをとって食べた
今・・・この瞬間にいなさい
彼の温もりを・・・手の感覚を感じていなさい
側にいる息を感じていなさい
今回の二人の出会った意味・・・
その二人の契約は「一緒になる」という事だった
彼女は長い間夢をみていた
永遠の約束
長い長い転生を超えての約束だった・・・
東寺を回った二人は時間がなくて帰った
東寺に来ただけ
たった2時間だけ二人は京都に来た
その意味はあの約束を果たすためだった
哀しみを終わらせる事だった
二人の魂はその事を覚えていたのだ
彼女は笑っていた
その笑顔を見ながら彼も笑った
その後の彼女は夢は見なくなった
まだ時々哀しみが湧くように襲うが
以前のようではなく
哀しみの中にも二人は大丈夫なんだという
ゆるぎない感覚を感じるようになった
彼は彼女の手を握った
そして言った
「今度は一緒に行くぞー」
彼女は手をとった
二人は桜の花の中でゆっくり時空間を旅しているかのようだった