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人が人を思うとは、どんなことなのかを。余韻の残るいい映画だ。

2014年04月26日 03時34分12秒 | 映画っていいですね!!
映画「小さいおうち」は戦時下の禁断の恋、許されざる恋を一味違った視点で描いて秀逸
この映画は『小さな』ということが不可欠だったと思う。大きなお屋敷では誰かと誰かの恋愛事件など隠されてしまう。けれど、本当にあの小さな、日本家屋の狭小さの中で繰り広げられる色恋沙汰にものすごくこの国の風土を感じた。板倉さんの下宿だって階下には大家さんがいて、ドアだって鍵もかからない襖一枚。その秘密の行き場のないもろさみたいな、逆にちょっと気持ち悪いくらい濃密な、モダンな生活を望んでもやはりここはまだまだ日本なんだという欧米化しきっていないが故の事情とその中で繰り広げられる恋愛事件に日本のちょっと生々しいエロを感じる。松たか子は『ヴィヨンの妻』も見ているけれど、映らない情事の後できちんと清らかさが失われているのに毎回ハッとするほど生々しい感じがしてこういう時代の女性を演じるのがうまいなぁと思う。女中さんという家の中の他者が目撃するという構図ももちろんそのエロさの一部分であると思う。家も、町も、街も小さい。誰かに目撃されて、噂が立って、戦争に向かっていく時代の風潮もどんどん人を小さく狭めて押し込めていく。

 山田洋次監督作品には外れがない。つくづくそう思う。「小さいおうち」はもう上映していないかと諦めかけていたが、イオンシネマ港北ニュータウンでやっていた。カミさんと朝から、映画を見に行った。

 黒木華という若い女優がベルリン映画祭で主演女優賞を獲ったことで、注目を集めることになったこの作品。結論を急ぐと、黒木華はたいしたことはなく、作品そのものに対して賞が贈られたということがよく分かる。

 「東京家族」にも出ていた吉行和子、橋爪功、妻夫木聡、中島朋子、夏木結衣らが出ていて、山田組の映画ということを嫌でも認識させられる。妻夫木はかなり中心的な役で、今回も好演だった。

 主演女優は何といっても、松たか子だ。群を抜いて、あまりにも美しい。そして、凛とした雰囲気を醸し出している。彼女が、吉岡秀隆演ずる若い男と不倫する。現代においては不倫は日常の風景にもなった感があるが、なにしろ、第二次世界大戦中の出来事だ。

 その不倫を「女中」(現在を倍賞千恵子、若い時を黒木華が演じる)の視点から描いていく。いけないことだという気持ちと、どこか新鮮な「恋」を成就させたいと願う気持ちが交錯する。いわゆるアンビバレンツが生じるのである。

 出征する吉岡を松は見送る(というか最後の愛の交わりを求めて)ために出かけようとするが、女中は制する。その代わり手紙を書いてください。私が届けますと。しかし、この手紙は届けられることなく、女中の手元に置かれ、終戦を迎える。

 戦後、彼女は晩年このことを思い出し、とめどなく泣く。それを見守る妻夫木。このシーンではもらい泣きしてしまった。華々しい展開のあるドラマではないが、心のひだに寄り添うような姿勢が好ましい。

 やや長くて、ちょっと冗長なのが欠点と言えば、欠点か。でも、終わって人々の生きざまの多様さに、どしんと重いものが乗っかってくる。人間の生き方の問題。静かに静かに提起する。女中の葛藤の深さを。人が人を思うとは、どんなことなのかを。余韻の残るいい映画だ。
 

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