星に会えるのを、期待してなかったと言えば、噓になるだろう。
ただ、店に星の姿が無かったことに、少しほっとしたのも事実だ。
隣に高層マンションが出来てからは、陽の当たる時間が、極端に少なくなって、
大分前から引っ越しを考えていた。
契約更新前に、何とかしようと思って、星の不動産屋にやって来た。
若い男の店員が、伊達さんの姿を認めると、愛想の良い笑いを浮かべ、近づいて来た。
勤務先に近い、日当たりの良い部屋を探していると話すと、少し待たされた後に、何件か物件を、プリントして持ってきた。
都合が良ければ、今日でも内見出来る所が、何軒かあると言われ、見せて貰うことにした。
条件の良い所は、部屋代が高いし、値段を下げると、今住んでいる部屋と大差ないようで、決めかねて、店に戻って来た。
いつ戻ったのか、ツィードのジャケットを着た星が、店の奥から伊達さんに声を掛けた。
自分に幾つか、心当たりがあるから、次回の来店までに探して置くと言ってくれた。
お昼は、食べたかと聞かれたので伊達さんが、まだだと答えると、良かったらマスターの店に行かないかと誘われた。
伊達さんは、舞い上がりそうな気持を抑えて、静かに同意した。