伊達さんの部屋探し  132

2022-02-10 06:01:36 | 小説

星に会えるのを、期待してなかったと言えば、噓になるだろう。

ただ、店に星の姿が無かったことに、少しほっとしたのも事実だ。

隣に高層マンションが出来てからは、陽の当たる時間が、極端に少なくなって、

大分前から引っ越しを考えていた。

契約更新前に、何とかしようと思って、星の不動産屋にやって来た。

若い男の店員が、伊達さんの姿を認めると、愛想の良い笑いを浮かべ、近づいて来た。

勤務先に近い、日当たりの良い部屋を探していると話すと、少し待たされた後に、何件か物件を、プリントして持ってきた。

都合が良ければ、今日でも内見出来る所が、何軒かあると言われ、見せて貰うことにした。

条件の良い所は、部屋代が高いし、値段を下げると、今住んでいる部屋と大差ないようで、決めかねて、店に戻って来た。

いつ戻ったのか、ツィードのジャケットを着た星が、店の奥から伊達さんに声を掛けた。

自分に幾つか、心当たりがあるから、次回の来店までに探して置くと言ってくれた。

お昼は、食べたかと聞かれたので伊達さんが、まだだと答えると、良かったらマスターの店に行かないかと誘われた。 

伊達さんは、舞い上がりそうな気持を抑えて、静かに同意した。

 

 

 

 

 

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