数日前までは、日中は、夏のように暑かったのがウソのように、今朝は、グッと冷え込んで、木枯らしが、吹き始めた。
公園のベンチに、寒そうに座っている渚を見つけて、星が手を振った。
「こんなに早く呼び出して、ごめんなさい・」渚が、深々と、頭を下げた。
「こっちこそ、ごめん。いつも忙しがってばかりで・・・。」
ブルーのセーターの上に、グレーのブルゾンを羽織った星は、ポケットから缶入りのココアを取り出して、渚に渡した。
渚も、ボアのトートバッグの中から、缶コーヒーを出して、星に勧めた。
少し、冷めてしまったと、申し訳なさそうに渡された缶コーヒーを、星は両手で包み込むように、受け取った。
落ち葉の散り始めた公園で、ひたすら自分を待っていてくれたのかと思うと、いじらしくて、思わず抱きしめてしまった。
渚は、少し驚いたようだったけど、親鳥の腕の中で、眠るひな鳥のように、静かに身をまかせた。