三酔人の独り言

ルポライター・星徹のブログです。歴史認識と国内政治に関わる問題を中心に。他のテーマについても。

日中の対立 欧米は「どっちもどっち」?

2014-02-02 18:24:04 | 外交・安全保障
 「朝日新聞」2014.2.2(朝刊)「日中の対立 欧米注視 安保会議 紛争発生を懸念」を参照し、重要部分の概略を以下に紹介する。

 ドイツ・ミュンヘンで開催中の安全保障会議で、日本の岸田文雄文相が2014.2.1に演説した。中国との対立を踏まえ、「積極的平和主義」など安倍政権の立場を説明した。

 岸田外相は、事前に会場で配布された「会議特集」紙に寄稿し、「日本は欧州のパートナーとさらに密接に協力して働く準備がある」などとして、安倍政権の「積極的平和主義」をアピールした。

 これら日本側の言動に対し、中国の代表者は、歴史認識問題などで日本を厳しく非難した。

 中国は最近、日本などとの対立によって高まる国防意識を追い風に、軍備拡張のテンポを速めている。領有権や海洋権益をめぐる周辺国との摩擦の激化が、党や軍内の強硬派の影響力を増大させた。

 世界各国は、日中のどちらかに肩入れするよりも、両国間で紛争が発生することへの懸念を強めている。日本の外務省は、安倍晋三首相の靖国神社参拝(2013.12.26)後、主要国の政府に対して「参拝」の真意を説明してきた。しかし、政府関係者によれば、大多数の国が「参拝」に否定的な反応を示したという。
    
                 ≪「朝日新聞」記事紹介終わり≫

 欧米諸国の基準からすれば、中国は言論・報道の自由や人権問題などで難点があるだろう。そして、近年の中国の軍拡と東アジアでの強引な海洋進出なども併せ見れば、対中国評価は厳しいものとなるはずだ。しかし、「経済発展の著しい国」なので、経済的利益を考えて「友好関係」は維持していく・・・。

 その一方で、日本は様々な問題を指摘されながらも、欧米諸国からおおむね「高評価」を受け、「平和国家」として認識されてきたのではないか。

 そういった状況下で、尖閣諸島の領有権問題を中心に、日中間で対立が先鋭化しつつある。

 2012年12月、安倍晋三政権が誕生した。安倍首相は就任当初、従軍慰安婦の「強制性」に疑問を呈したり、「侵略戦争の定義は定まっていない」と主張するなど、日本のかつての植民地支配や侵略戦争を美化・正当化するような言動を続けた。

 その後しばらくは、そういった言動は控えていたようだが、昨年末についに靖国神社に参拝した。

 このことは、中国に「格好の日本批判材料」を与えることになった。それだけでなく、中国は韓国も引き入れて、「協調」して日本批判を世界中で展開し始めた。もちろん、日本はそれらの動きに対して、反論攻勢を強めているのだが。
当ブログ2014.1.24「安倍首相の歴史認識 中国が批判網」など参照

 こういった日本と中国の対立を目の当たりにして、欧米諸国の人々はどう思うだろうか? 中国に対する民主主義の問題や軍拡姿勢へのマイナス点はそのままだが、歴史認識に関しては、「中国側が得点、日本側が失点」という流れで「ゲーム」が進行しているのではないか。

 この歴史認識問題で日本が中国・韓国などと全面的にケンカをしても、国際社会に開かれたアリーナ(競技場)では「勝者、日本!」となる可能性は限りなくゼロに近い。特に、現在の安倍首相とその「取り巻き」らの言い分は、国際社会ではまったく受け入れられない。

 せっかくの国際社会での日本の「高評価」を、こういった「間抜け」な歴史認識に拘泥(こうでい)することで、大きく評価を下げているのだ。

 何しろ、日本は敗戦国としてサンフランシスコ講和条約(1952年発効)を受け入れ、戦後国際秩序の枠内で再出発したのだから。この「秩序」をひっくり返すだけの力は現在の日本にはないし、それを試みることも現状では得策でない。

 結局、「中国にも問題は多いが、日本もひどいね」「日本政府が歴史修正主義を取りつつ、『積極的平和主義』を謳って世界中に『軍隊』を出そうとしている。日本も世界の脅威になるのでは」といった考えが、世界で大勢を占めていくのではないか。

 日本は、せっかくの「高評価」を自らの選択で失い、「どっちもどっち」の線まで後退させてしまった。さらに今後は、「どっちもどっち」に留まらずに、「日本の方がよりひどいね」といった流れに傾いていく、という可能性もある。

 安倍政権は、愚かな道を選択し続けている。このことを、日本の人々は一刻も早く気づくべきだ。

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