昨年(2023年)10月7日にイスラエルによるパレスチナ自治区ガザ地区への軍事攻撃が始まり、1年が経った。この間にガザ地区でイスラエル軍に殺害されたパレスチナ人は、約42,000人にのぼる(*遺体確認数のみ)。
ただし、昨年10/7にイスラム組織ハマスなどがイスラエル領内に侵入して軍事攻撃したことにより、約1,200人が死亡し〔*イスラエル軍の攻撃で死亡したイスラエル人も多くいるという〕、200人以上が人質としてガザ地区に連れ去られたことも、記さなければならない。
さらに、イスラエル側とパレスチナ側の対立は1年前に始まったのではなく、何十年にもわたるイスラエルによるパレスチナの地への国際法違反の占領・入植とパレスチナ人に対する虐殺・人権侵害が続いていることも、付け加えなければならない。
こうした歴史的経緯を無視して「1年前にハマスらがイスラエル人を約1,200人殺害したことに端を発し……」などと表現するのは、「全体像を歪めた見方」と言わざるをえない。
この問題に関し、多くの研究者やジャーナリストらが日本のメディアで語り、また文章を書いている。だが、「本質を見すえた鋭い切り口で語る(書く)」ケースに出くわすことは少ない。
そうした中で、「朝日新聞」2024.10.7朝刊に掲載された米ハーバード大中東研究センターのサラ=ロイ上級研究員へのインタビューに基づく記事「反開発 生産能力奪い、外部依存強いる 封鎖続けるイスラエルの狙い」(エルサレム=高久潤)は、問題の本質を捉えた秀逸なものだと思った。
ロイさんの両親はナチ・ドイツによるホロコーストの生存者で、親族もイスラエルにいるという。またロイさんは、1980年代からガザの占領問題の政治経済学的研究を手がけてきたという。
以下、同記事の重要部分のみを要約した形で紹介する〔*引用部分は〈 〉内〕。
■イスラエルは、1967年の第3次中東戦争でガザ地区を占領。その後、2005年にイスラエル軍と入植者はガザ地区から撤退。それ以降、イスラム組織ハマスが07年からこの地を統治。だが、イスラエル側は安全保障上の理由から同地区の四方を封鎖し、人やモノの行き来を厳しく制限してきた。
■〈ロイ氏は、イスラエルのガザ支配の特徴を「反開発」という言葉で説明する。〉
〈開発をできないよう生産能力を意図的に奪〉い、〈生活を外部に依存する状態を強いる支配だ。〉
■〈封鎖で、ガザの経済の民間部門は壊滅的な打撃を受けた。〉
〈ガザは今回の戦闘が始まる前の時点で、人口の8割が国際機関の支援に頼り、失業率も5割近くに上った。〉
■〈イスラエルは今回の戦闘が始まって以降、自分たちはすでに撤退し、ガザとは関わりないのに、ハマスが攻撃してきたと強調する。ロイ氏は、「イスラエルがその後もガザの占領、通信、海上・陸上交通を支配している。徹底的な境界管理も続けている現実は占領」とし、イスラエルの説明は誤りだと指摘する。〉
■〈ロイ氏は、もう一つのパレスチナ自治区のヨルダン川西岸でさらに入植地を拡大させようとする動きにも警鐘を鳴らす。〉
■ロイ氏は、今後この地域に平和をもたらすには、〈イスラエルの軍事占領を終わらせることが不可欠だ〉と述べた。
*「朝日新聞」記事の紹介、ここまで。
*上記記事にはないが、2005年にイスラエル側がガザ地区から「撤退」して以降も、イスラエル軍は同地区内をたびたび軍事攻撃し、多くのパレスチナ人を殺傷してきた。つまり、イスラエル側は好きな時にいつでも軍事介入してきた、ということだ。
イスラエルの人々はよく、「自分たちはガザ地区から撤退したのに、パレスチナ側はイスラエルに歯向かい続け、攻撃してくる。だから、これは『テロとの闘い』なんだ」と主張し、パレスチナ人に対する軍事攻撃を正当化する。
あまりにも身勝手な主張ではないか。イスラエル側が国際法違反の人権侵害・「占領」を続け、それこそが問題の根源であることを、ロイさんは鋭い切り口で指摘している。
上記のロイさんの指摘から、イスラエルがこの1年でガザ地区の多くの人々を虐殺するとともに、居住施設を含むインフラ(生活関連施設)を破壊し尽くしていることの理由も、よく見えてくる。
ただし、昨年10/7にイスラム組織ハマスなどがイスラエル領内に侵入して軍事攻撃したことにより、約1,200人が死亡し〔*イスラエル軍の攻撃で死亡したイスラエル人も多くいるという〕、200人以上が人質としてガザ地区に連れ去られたことも、記さなければならない。
さらに、イスラエル側とパレスチナ側の対立は1年前に始まったのではなく、何十年にもわたるイスラエルによるパレスチナの地への国際法違反の占領・入植とパレスチナ人に対する虐殺・人権侵害が続いていることも、付け加えなければならない。
こうした歴史的経緯を無視して「1年前にハマスらがイスラエル人を約1,200人殺害したことに端を発し……」などと表現するのは、「全体像を歪めた見方」と言わざるをえない。
この問題に関し、多くの研究者やジャーナリストらが日本のメディアで語り、また文章を書いている。だが、「本質を見すえた鋭い切り口で語る(書く)」ケースに出くわすことは少ない。
そうした中で、「朝日新聞」2024.10.7朝刊に掲載された米ハーバード大中東研究センターのサラ=ロイ上級研究員へのインタビューに基づく記事「反開発 生産能力奪い、外部依存強いる 封鎖続けるイスラエルの狙い」(エルサレム=高久潤)は、問題の本質を捉えた秀逸なものだと思った。
ロイさんの両親はナチ・ドイツによるホロコーストの生存者で、親族もイスラエルにいるという。またロイさんは、1980年代からガザの占領問題の政治経済学的研究を手がけてきたという。
以下、同記事の重要部分のみを要約した形で紹介する〔*引用部分は〈 〉内〕。
■イスラエルは、1967年の第3次中東戦争でガザ地区を占領。その後、2005年にイスラエル軍と入植者はガザ地区から撤退。それ以降、イスラム組織ハマスが07年からこの地を統治。だが、イスラエル側は安全保障上の理由から同地区の四方を封鎖し、人やモノの行き来を厳しく制限してきた。
■〈ロイ氏は、イスラエルのガザ支配の特徴を「反開発」という言葉で説明する。〉
〈開発をできないよう生産能力を意図的に奪〉い、〈生活を外部に依存する状態を強いる支配だ。〉
■〈封鎖で、ガザの経済の民間部門は壊滅的な打撃を受けた。〉
〈ガザは今回の戦闘が始まる前の時点で、人口の8割が国際機関の支援に頼り、失業率も5割近くに上った。〉
■〈イスラエルは今回の戦闘が始まって以降、自分たちはすでに撤退し、ガザとは関わりないのに、ハマスが攻撃してきたと強調する。ロイ氏は、「イスラエルがその後もガザの占領、通信、海上・陸上交通を支配している。徹底的な境界管理も続けている現実は占領」とし、イスラエルの説明は誤りだと指摘する。〉
■〈ロイ氏は、もう一つのパレスチナ自治区のヨルダン川西岸でさらに入植地を拡大させようとする動きにも警鐘を鳴らす。〉
■ロイ氏は、今後この地域に平和をもたらすには、〈イスラエルの軍事占領を終わらせることが不可欠だ〉と述べた。
*「朝日新聞」記事の紹介、ここまで。
*上記記事にはないが、2005年にイスラエル側がガザ地区から「撤退」して以降も、イスラエル軍は同地区内をたびたび軍事攻撃し、多くのパレスチナ人を殺傷してきた。つまり、イスラエル側は好きな時にいつでも軍事介入してきた、ということだ。
イスラエルの人々はよく、「自分たちはガザ地区から撤退したのに、パレスチナ側はイスラエルに歯向かい続け、攻撃してくる。だから、これは『テロとの闘い』なんだ」と主張し、パレスチナ人に対する軍事攻撃を正当化する。
あまりにも身勝手な主張ではないか。イスラエル側が国際法違反の人権侵害・「占領」を続け、それこそが問題の根源であることを、ロイさんは鋭い切り口で指摘している。
上記のロイさんの指摘から、イスラエルがこの1年でガザ地区の多くの人々を虐殺するとともに、居住施設を含むインフラ(生活関連施設)を破壊し尽くしていることの理由も、よく見えてくる。