読書備忘録

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大沢在昌著「漂砂の塔」

2020-02-03 | 大沢在昌

近未来2022年、雪と氷に閉ざされた北方領土の歯舞群島・春勇留島(納沙布岬の東北東40キロ)という離島で発見された日本人の変死体。ロシアが実効支配するため捜査権もない、武器も持てない圧倒的に不利な状況で孤軍奮闘する警視庁組織犯罪対策課・国際犯罪捜査官石上が真相を追う。閉鎖空間での複雑な利権構造と人間関係の中に送り込まれてしまった主人公の孤軍奮闘が見物。日中露合弁のレアアース生産会社「オロテック」で働く日本人技術者が、死体となって発見された。凍てつく海岸に横たわる死体。何者かに抉りとられていた両目。送り込まれたのは、ロシア系クォーターで中国語とロシア語が堪能な石上(イシガミ)。元KGBの施設長、美貌の女医、国境警備隊の若き将校、ナイトクラブのボスたち。誰が敵で味方が分からない中、日中露三ヵ国の思惑が交錯し、人間たちの欲望が渦を巻く閉じられた空間でのアクションミステリー。90年前その島では島民38人が殺される大量殺人事件があり、そのときの死体も両眼が抉られていたという言い伝えが、ハバロフスクには残っていたという。ロシアの情報機関、中国の情報機関やマフィアも絡んで、展開も早く656ページを一気読み出来ました。今では簡単には行けない北方領土でさもありなんと思わせるのは流石。「パンドラ・アイランド」や「売春島」「軍艦島」など特殊空間・孤島シリーズは作者のお得意分野か。

2018年9月集英社刊  


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