
日本屈指の進学校に通う高校生たちの大学受験。周囲の期待というプレッシャーを背負いながら挑み続ける彼らの青春が生き生きと描かれている。中学から野球部で一緒だった三人。千原道人は高校では受験に専念するつもりが、中小企業を営む父の病気が再発した・・・。高校でも野球を続けている穂高英信は、総合病院の四代目として期待されているが、医学部受験には及ばない成績に迷う・・・。唯一夏の大会を最後に引退した中森揮一は、周回遅れの受験勉強にまったく身が入らず、大学受験を辞めようかとさえ思う・・・。もう一人、中一から学年トップを維持する香坂淳平。彼にも思い悩みが・・・。それぞれに容易ならざる事情を抱えながらも、彼らはどのようにして心を決めたのかその軌跡と到達点を描く。家庭が裕福で優秀な進学校に進んだ一人一人に生き方に苦労があり大変だと思う。なんのために学ぶのか?という問いかけへの多様な答えがここにはある。特に母親たちのほどよい寄り添い方や、先生のそっと背中を押すような言動が素晴らしい。相手を尊重し、ひとりの人格として認めることが何より大切。主体性を育てるには、それを受け入れる素地が欠かせない。そして何より、彼らたちが学校の仲間とお互いを高め合うさまに感動。努力の先にある結末もさらに熱い。自分の未来のためにする我慢の尊さや美しさ、そして、がんばったからこそ得られる喜びが、心に刺さりました。
2025年5月株式会社COMPASS刊
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