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読書備忘録

私が読んだ本等の日々の
忘れない為の備忘録です

三咲光郎著「月と陽炎」

2011-03-26 | ま行
何故か自衛隊が解散された近未来の日本の政令指定都市に13歳で少女を切り刻み殺害し想像上の魔王に捧げた猟奇殺人犯の少年康平は、数十年たって最新の心理療法を受け迷える者を救うというある神父の養子になり名前を変えて社会へと戻って来てコンビニで慎ましく働きながらひっそりと暮らしていた。
だが町で発生した誘拐事件に巻き込まれて無軌道な犯罪に巻き込まれていく過程で、抑えられていた少年の「悪い種子」が再び頭をもたげ善と悪、二つの狭間で揺さぶられる魂の慟哭が描かれる1部の月編。

テロリストの爆破事件、銃撃、そこへ民間の多国籍の傭兵部隊・国際的警備組織軍人「ピース・メーカー・サービス」(国連や国からの受託で国際紛争の沈静化、停戦監視を請け負う民間組織)がやってきて容赦なく市民を殺していく。
さらにまた 猟奇殺人 遺体のコレクターなるものが登場し期待される更正プログラムからどんどん逸脱していく自分に苦悩する主人公の康平が描かれる破天荒な筋書きの・・・2部の陽炎編。
後半の破天荒なバーチャルゲームのような怒濤の展開は物語の破綻をとるのか、著者の計算された思惑のあるあらすじからのエピローグなのか?
軍隊のパートタイム化、グローバリーゼーションと非対称戦争など軍事の市場化、兵力が労働力として認められる中での正義とは何かを問うのならば納得もいくのだが中途半端な出来で不満が残った。

2011年2月 早川書房刊
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宮部 みゆき著「小暮写眞館」

2011-02-28 | ま行
宝島社 2011年版 「このミステリーがすごい!」国内編第8位作品。
高校一年生の通称「花ちゃん」こと花菱英一の両親は、結婚20周年を機に念願のマイホームを購入したのだがその家は、築33年の怖ろしく古い家で寂れた商店街の一画の写眞館だった。
看板の「小暮写眞館」はそのままにしていたため、ある日一枚の心霊写真が持ち込まれる。
古い写真館に引っ越してきたことによる次から次に持ち込まれる心霊写真。
やがて英一による地道な聞き込み調査により、その写真に隠されたさまざまな人たちの思いが明らかになっていく。
人それぞれにいろんな人生がありそんな人生が写真の中に凝縮されているのだ。
『あの写真は絵空事じゃない。過去のある一瞬を切り取った、確かに実在した現実の記録なのだ。』(198P)
それとともに小暮写眞館に出るという噂の幽霊騒動の中で明らかになる花菱一家のインフルエンザ脳症で4才であっという間になくなった妹風子にまつわる暗い思い出と英一の弟、光こと「ピカ」の苦しみ。
ピカの何気ない行動や言葉の中に、ある苦悩が秘められていたのだ・・・。

英一が初は苦手としていた年上の意外な女性に恋をする第4章の後半部分は
前半ののらりくらりが嘘のようにすばらしいスピード感ある感動の展開に。
前の2章はそこに至る過程と我慢して読むと読後感は爽やか。
二人のその後の続編が読みたくなりました。
ミステリー風青春小説かと思ったが700ページじっくり読ませる筆使いと
練られたストーリーは流石宮部ワールド、主人公英一の初恋物語でした。
残念なのは文章で1枚ごとの心霊写真ついて詳しく説明されているのだが
個人的には頭の中にイメージできなくて読みにくかったのが欠点。
『人生でもっとも大切で、もっとも難しいのは、”待つ”ということだ。』(248P)

2010年5月講談社刊

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湊孝志著「グレース」Take me to the final destination

2011-01-31 | ま行
副題の「Take me to the final destination」= 最終的な目的地に私を連れて行ってください。
著者は、立命館大学卒。脚本家、演出家。CM、TV制作を経て「東京タワー」で映画監督に。
映画化もされた「大停電の夜に」の原作者。
希久夫の妻・美奈子が旅行先のフランスで突然の交通事故でこの世を去った。
遺された美奈子の赤いオープンカー「グレース」と名付けられた愛車のカーナビには、死の直前に巡った、不可解な走行履歴が残されていた。
夫の希久夫は自分の知らない妻の行動に興味を覚えて夏休みにそのカーナビの履歴をなぞる旅で出掛ける。
やがて妻との思い出とともに妻が訪問した先々で次々と判明する妻の思い入れと最期のメッセージを知る事となる。
妻の残した最期のメッセージとは?愛車の「グレース」の由来は・・・。
ミステリー風に書かれた夫婦の愛の物語。
妻、夫、元彼、元彼女などの視点で過去と今を行き来しながら
二人の性格、夫婦関係、家族関係と美奈子の思いを浮かび上がらせる手法で書かれていて上手い構成で何度も感動させられた。
影の主人公ホンダ社製のスポーツ車S800に対する著者の思い入れ深い作品であったがそういう意味で車好きの人にはもっと楽しめるだろう。
『飛行機は飛び立つ時より着地が難しい人生も同じだよ』(S・H P22)
『「チャレンジ」して失敗を恐れるよりも、「何もしない」ことを恐れろ、どだい失敗を恐れて何もしない人間は最低なのである。』(P118)
『人間は、生まれたときから一歩ずつ死に向って歩いてる。
物を喰うのも、死ぬために食っているといえなくもない。だから、一食たりとも投げやりに食べてはいけない。念を入れて喰うべきだ』(池波正太郎P297)
『人生というものは、決して振り向いてはいけないものなんだと思います。』(G・K P470)


2010年11月文芸社刊
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宮本輝著『三千枚の金貨』

2010-12-27 | ま行
見事な花を咲かせる桜の根元に、3000枚の金貨を埋めた。場所は和歌山県のどこか。「みつけたら、あんたにあげるよ」荒唐無稽とも思える話を入院中の病院で芹沢由郎という末期の肝臓がん患者から告げられた。
5年前に聞いたこの話しを思い出した斉木光生は、会社の同僚二人と芹沢の娘の叔母に当たる室井沙都で「宝探し」を始める。
金貨を埋めたと語った芹沢由郎は、闇の世界を自らの力ではい上がり、支配してきたファイナンス会社の経営者の一人。
やがて約20年前に作成された芹沢由郎についての調査会社の報告書を読んだ斉木らは、虐げられ疎外され続けた芹沢の不遇の人生の顛末を知り、そこに書かれたことを手がかりに和歌山を訪れる。
ミステリー話しかと思うと途中主人公の斉木が語るシルクロードの旅の思い出や故郷の母が経営するこだわりの蕎麦屋の話、喫茶店のマスターの恋の話、ゴルフについての薀蓄などがあったりと中々宝探し展開には進まずイライラする。
著者は宝探しをメインに実は、人生とは生きるとは何かを語り、金貨という具体的な宝を求めた男女の行動を通じて普段気付くことがなかった見えないものの恵みを認識する様子を語る。
謎解きの方は、昔の身辺調査書のヒントを辿るだけでその日にあっけなく見つかるし、陰謀をはらんだ闇金ファイナンスの顛末もうやむやだ。
いつもながら宮本さんの物語の登場人物の多くは善人ばかりで、描く女性は美人が多い。
比較的裕福な中流以上の主人公によるグルメ話しやゴルフ話しに縁のない私にはウンザリだった。
「人生って、大きな流れなんだな。平平凡凡とした日常の連続に見えるけど、じつはそうじゃない。その流れのなかで何かが刻々と変化している」(本文より)

2010年7月光文社刊
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三崎亜記著『コロヨシ!!』

2010-09-03 | ま行
パラレルワールド的異次元のスポーツSF小説。登場する「この国(日本)」・「居留地」・「西域」といった世界は著者独特の設定である世界観で一貫して描写されている。
「掃除」が日本固有のスポーツとなった20xx年を舞台としている作品。
『コロヨシ(頃良し)』の掛け声で始める日本固有のスポーツ・掃除は、戦後の統治政策の一環で国の統制下に置かれていた。
日本で「掃除」を表立ってできるのは、高校生活の3年間、部活動としてだけだった。
主人公は幼い頃から密かに掃除を続けてきた、西州第一自治区の高校生・藤代樹は、才能を持ち、新人戦で優勝という結果を残しながらも「ただの部活」だと冷めた態度でいた。
だが翌年の夏の大会でエリート校の「掃除」を目の当たりにし、壮絶な敗北感を味わう。
また樹にとっての淡い憬れの彼女でもある新入生の高倉 偲( しのぶ)は、5歳まで居留地で育ち、掃除の英才教育を受けてきた。異邦郭の武闘掃除の暫定王者なのだが・・・。
フリー百科事典『Wikipedia』による説明では、「掃除」は西域から交易の流れに従って、海を隔てた居留地を経て日本に伝播した。
約800年前に西域からの渡来人によって始められたが、文化的背景や時期から、西域・居留地・日本ではそれぞれ別の形で発展した。
発祥の地である西域では当初は武術として発達したが、長い歴史を経て現在は複数の演者の群舞による式典舞踊としての色合いが濃く、シンクロナイズドスイミングのような舞い手同士の一糸乱れぬ動きと塵芥連係が妙とされる。 居留地では武術としての側面が色濃く残っており、対戦型の「武闘掃除」として発達し、地下賭博の対象になっている。但し、居留地政府はその存在を否定している。日本では、近世に300年近く続いた閉鎖政策により、裁定士という審判が動きの美しさや技術を審査するという、西域とも居留地とも異なる「競技」の掃除へと発展を遂げた。 ・・・とある。
「掃除」を題材とした青春スポーツ小説なのだが、その世界に入り込めないと読むのが辛い。
実在しない競技なのに事細かなルールや、取り巻く世界観などを仔細に生き生きと描写してるのは凄いのだが私は、棒術と大極拳、雅楽など融合したような感じのものに置き換えて読み進めたが素直にこの世界を受け入れないと読めそうもなかった。
ストーリーそのものはありきたりのコミック物語だったが、序章を読んだイメージで続編があるのだろう。
2010年2月角川書店刊
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南まい著「独女世界放浪記ー世界一周だいたい50カ国、510日」

2010-08-30 | ま行
著者が写したスナップ写真と倉田真由美の漫画イラストが副えられた女優でタレントの南まいの超貧乏バックパーカー旅行。
2008年1月所属事務所の社長の突然の死亡とそれに伴う事務所解散をきっかけに一年間有効の世界一周航空券を持って出発。
世界中の人とすぐ仲良くなれる必殺ワザ「バルーンアート」と世界遺産検定にも合格して武装?、
必殺お財布ブラ!とお守り型コンドーム「今度夢守」を忍ばせて東回りの南米ブラジルからスタート。
世界を「見ないで死ぬなんてもったいなくない?」「地球で遊ぶ」なんて世界一贅沢な遊び。
変態男やセクハラにあったりしたが旅の経験は宝物となりました。
女優の日本再認識の旅物語。
読んでいたらバック背負って旅に出たくなりました。
2010年7月ポプラ社刊
南まいさんのHP  http://ameblo.jp/mai-minami/entry-10633009530.html
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湊かなえ 著「夜行観覧車」

2010-08-02 | ま行
「告白」本屋大賞受賞→映画化(大ヒット)と
一躍有名になった普通の主婦作家湊かなえ氏の推理小説。
高級住宅地に住むエリート一家高橋家で起きたセンセーショナルな事件。
被害者は医者の父親で撲殺された。逮捕されたのは母親、しかも高校生の息子が行方不明。
隣に住むおばさんは隣の家の遠藤家でも毎晩母親と娘彩花の大喧嘩が聞こえていたのでてっきり事件は遠藤家かと思ったが・・・。
事件が起きた夜友人宅に外泊していた高橋家の長女比奈子と、向かいに住む家族らの視点から、事件の動機と真相が徐々に明らかになる。
被害者も加害者も同じ家族。外からは綺麗に見えても中は当事者でなければわからないもの。
家族の絆も事件や何かなければ確認することが出来ないものなのか?考えさせられた。
被害者宅に投げ込まれた石や塀に張られた中傷のビラ。
遺された子どもたちは、どのように. 生きていくのか。ぐいぐい引き込まれる展開は何時もながら流石。
後半、ずっと現実逃避していた遠藤家の父親がそれじゃいけないと決心し、その日たまたまリフォームをした家が高橋比奈子の友だちの家だった事から、
その子供たちと高橋家のビラを剥がしに行くシーンが唯一前向きで希望の光が見えます。
『家族に起きた事件は、他人が裁く必要はない。家族が事実を確認すればよい。』

2010年4月双葉社刊
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村田喜代子著「百年佳約」(ひゃくねんかやく)

2010-07-16 | ま行
九州は肥前、渡来陶工の里をゆるがす結婚騒動に、文化と人間の命脈を描く
「伊万里」と呼ばれた、この真っ白い磁器は豊臣秀吉の朝鮮出兵(1592-98)の際、朝鮮半島から連行されてきた陶工が有田・泉山で陶石を見つけ、日本で初めて焼き始めたと言われる。
話の主人公は朝鮮人陶工集団を率いた老女、百婆。死後、子孫繁栄を祈る一族の守り神になったところから物語が始まる。
もう1人の主役は新頭領になった息子十蔵。テーマは人間の生の象徴の1つ「結婚」である。
慶長の役により朝鮮から連行された陶工たちが、九州の皿山に窯をひらいて半世紀。
龍窯の母・百婆は死んで神となり、山上の墓から一族を見守る。折しも下界では息子・十蔵がその子供たちの嫁取り婿取りをめぐり、日々思案を重ねていた。これまで通り仲間内で絆を固めるか、日本人と結婚して渡来の未来をひろげるか。
可愛い子孫の「百年佳約」=結婚成就のため、百婆の活躍が始まった!
死んで神になった冒頭のシーン。百婆は朝鮮式の土饅頭形の墓に「小さい体を乗せてちょこんと腰掛け」朝鮮人陶工同士の良縁を願い「キセルをスパリと吸う。
それは「クニ」の伝統と血を守りつつ子孫繁栄を成就させるためだ。
一方、母親の死を機に十蔵は母に逆らい、日本に同化するため息子、娘らを日本人と縁づかせようとする。「外へ嫁にやれば、やがて皿山中に渡来の根が広がっていく」と。
事もあろうに婿探しの席に選んだのは百婆の49日の法要の席だった。ところが、その後も十蔵がもくろむ縁結びがうまくいかない。
神になった百婆も折々に現世へちょっかいを出す。渡来人一世の百婆と二世の十蔵。
そして日本しか知らない三世の娘らの思惑も入り混じり、結婚相手探しは紆余曲折しながら続く。
『生きた男には生きた娘を!死んだ男には死んだ娘を!人の世はよくよくつがいを求めるものだ。』
400年もの昔、日韓両国の文化の違い。世代間の違い。それらがぶつかりながら、国際化を進めた現代に通ずる物語でした。
【一部西日本新聞社伊万里支局・末広浩氏の文引用。】 
2004年7月講談社刊
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村上 春樹著「1Q84 BOOK 3 」

2010-06-13 | ま行
昨年刊行されたbook1・2の続編。月が2つある世界、川名天吾の「猫の町」とか青豆雅美の「1Q84」とか言う異世界からの二人の脱出劇。
今までの男と女の視点からプラス青豆を探す探偵牛河の視点が加わり今までの顛末をなぞり検めて読者に思い出されるように展開される。
今までのエホバの証人を連想される「証人会」やヤマギシ会やオウムを連想させる「さきがけ」の社会的関連やらの謎解きは封印され雅美と天吾の恋愛物語となりセックスシーンや拷問、殺害シーンなどを散りばめて強烈な個性の牛河の調査追跡のサスペンス劇ともなっている。
1つ不明だったのが牛河を理解する為に歳の離れた妻との結婚と離婚のいきさつなども触れて書かれるべきだったと思うのだが、BOOK3の重要人物の呆気ない死は面白いキャラだったのに残念。
不気味なリトルピープルや「空気さなぎ」、リーダー暗殺依頼者の老婦人などはパラレルワールドに置いてけ堀の脱出で終るが続編があるのだろうか?
村上春樹の今までの作品を読んだファンならもっと違う読み方も出来るのだろうが有名な作品3~4冊しか読んでいない私には巷にそんなに解説本が出て話題になるような作品には思えないのだが。
2010年4月講談社刊


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三浦明博著「感染広告」

2010-03-16 | ま行
『感染爆発した殺人CMを誰が仕掛けたのか。』
広告代理店・首都広告社のクリエイティブ・ディレクター堂門修介は、プレミアムビール「バドバーグ」の
リニューアルキャンペーンの現場責任者として、ウェブ中心の口込み広告を仕掛ける。
口コミによる「感染爆発」を裏コンセプトにプレゼンを勝ち取り、イベント、
ショートムービー、コマーシャルソングを連動させた企画が大成功に終わる。
しかし、ビール名「バドバーグ」と叫びながら駅で飛び込み自殺した事故が起き、状況は一転する。
その後も、マンションからの飛び降り自殺を図る若者が続き、CMは中止に追い込まれる。責任を押し付けられた修介は、原因究明に走りまわる。
最初は、潜在意識に働きかけるサブリミナルを疑うが因果関係が不足、歌へのバックワード・マスキングや、その相乗効果とも?
果てはサイコ・アコースティク理論までお陰で未知の分野の知識が増えました。
登場人物の掘り下げや心理描写が不足していて広告宣伝に秘められた数々の思いが事件を起こす結末はサスペンス性に弱い感じがした。

2010年2月講談社刊 
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宮部みゆき著『おそろし 三島屋変調百物語事始』

2010-03-04 | ま行
舞台は江戸時代の神田三島町。
袋物を商う三島屋伊兵衛と妻のお民は、姪のおちかを預かる。
17歳のおちかは、川崎宿で旅籠を営む実家で起こったある事件をきっかけに、他人とかかわることを怖れ引篭り状態になっていた。
あるとき主人夫婦が留守の時伊兵衛いつも碁敵を迎える「黒白の間」で、おちかが伊兵衛の代わりに仕方なく
応対することになった客は庭に咲く曼珠沙華を見て倒れてしまう。
曼珠沙華が怖いというのだ・・・。
客が語る不思議な話し、幽霊・怪談話とおちかの身に起こった事件の顛末を絡めて時代物ホラー兼人情話といったところ。
人間の業、人の想いの強さや悲しさの話しを賢く強いおちかが対自して自らも立ち直っていく契機とする。
なんだかまだ4話だから続きがありそうな展開で終るから続編が期待できそう。
読者のつかみ・展開に引き込む力量ともさすが宮部さん、時代物だから特異な現象も違和感なく読めました。
2008年7月角川書店刊
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宮本 輝著「ここに地終わり海始まる 」

2009-12-30 | ま行
6歳から結核という病気のため18年間療養所に暮した天野志穂子はリスボンから届いた自分宛の
絵葉書のヨーロッパの最西端ポルトガルのロタ岬にある碑
「ここに地終わり海始まる」に励まされ奇跡的に病気を克服する。
「サモアール」というロックグループの梶井克哉からの恋の感情の絵葉書は志穂子の生命力の
電源スイッチ「奇跡の電源」を入れることになり「無自覚な部分での歓喜」が身体に好作用した結果である。
示唆に富む言葉が多く為になる『運が良くて愛嬌がある人間を人材と呼ぶ。

ロタ岬には「ここに地終わり海始まる」『Where the land ends.and the sea begins』(英語)ポルトガル語・仏語の碑があるらしい。
終わりと始まりとがいつも一つとなるつねに途上にある。
読んだ後、ほのぼのとした気分でいられる小説です。
ポルトガルのロタ岬に行ってみたくなりました。
1991年 講談社刊

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道尾 秀介著 「球体の蛇」

2009-12-06 | ま行
乙太郎の葬儀に向う智彦の回想から始まる物語。
1992年秋。17歳だった主人公の友彦は両親の離婚により、隣の橋塚家に居候していた。
主人の橋塚乙太郎さんと次女のナオ。奥さんと長女サヨは7年前、キャンプ場の火事が原因で亡くなっていた。
友彦は小学生のころどこか冷たくて強い年上のサヨに小さい頃から憧れていた。
そして、彼女が死んだ本当の理由は自分自身にありそのことを、誰にも言えずに胸に仕舞い込んだままでいた。
乙太郎さんの手伝いとして白蟻駆除に行った屋敷で、友彦は死んだサヨによく似た女性智子に出会う。
彼女に強く惹かれた友彦は、夜ごとその屋敷の床下に潜り込み、屋敷の老主人と智子の情事を盗み聞きするようになるのだが,そんな時にその屋敷が火事に・・・。
心に秘めて呑み込んだ嘘は、一生吐き出すことは出来ない苦しさ後ろめたさ。
しかし乙太郎やナオ、智子も人には明かせない秘密を抱え込んでいた。
徐々に明らかになっていく登場人物たちの過去。
その過去に囚われて今を生きている人々。
過去の罪が今を縛る。
そして徐々に明らかになっていく真実がサスペンスになり物語に引き込まれます。
幼い偽善、狡い嘘、決して取り返すことのできない過去のあやまち。
矛盾と葛藤を抱えて生きるしかない人間の悔恨と痛みを描きながら、青春のきらめきと痛み、そして人生の光と陰をも浮き彫りにした人間ドラマ。
2009年11月角川書店刊
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道尾 秀介著「花と流れ星」

2009-11-30 | ま行
真備シリーズ。道尾と名乗る売れないホラー作家とその友人で亡くなった奥さんに会いたいため、霊現象探求所を開設している真備庄介。
助手を勤める真彌の義理の妹北見凛が謎解きに挑戦する5つの連作短編集。
夜に出会った少年に出された謎、友人の両親を殺した犯人を見つけたい少年。・・・「流れ星の作り方」
バーで会ったマジシャンに、彼が過去に彼自身の右手首を消してしまったトリックを言い当ててみろ、と迫られた・・・「モルグ街の奇術」
2月の雪の日拾った仔猫を殺してしまった少女・・・「オディ&デコ」
新興宗教の信者の美しい女性が、真備に面会を求めてやって来た ・・・「箱の中の隼」
自分のせいで孫を亡くしたとくやむ老人・・・「花と氷」
チョピリ怖くて切ないお話し。
2009年8月幻冬社刊
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松本賢吾著「謝り屋始末記 不動明王編」

2009-10-29 | ま行
「窮鼠」の続編 恐縮屋(謝り屋)の北山慎治の後日談である。
前編を読んでない人にも随処に曰く、因縁の説明がさり気無くあり、読み進められる。
池袋で「代わって謝ります。千円」の看板を掲げ路上で謝り屋修行を続けていた慎治に以前の仲間の一人が焼死体で見つかったと情報が入る。
真治の師匠、恐縮屋の大将小塚泰造グループの反撃が始まり、真治も駆けつける。楽しく読める娯楽作品です。
2002年 双葉社 刊    
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