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読書備忘録

私が読んだ本等の日々の
忘れない為の備忘録です

水原秀策著「キング・メイカー」

2012-05-13 | ま行
底辺から頂点を目指す、型破りの格闘小説。
黒木為朝、顔もボクシングも地味な冴えないボクサーに、ある日、「PRマンとして雇ってほしい」という男・ロビイストの沖島啓一が現れる。契約料はなんと百円。
うさんくささを感じたものの、任せてくれたらライバル高倉との世界タイトル戦を組むという言葉に思わず契約を結ぶ。
しかし、その作戦は“悪役ボクサー”になること。沖島に操られて上手くマスコミを利用して、TV中継される試合までこぎつけるのだが・・・。スピード感ある展開で一気に読まされました。
沖島の会社の唯一の社員東原弥生のキャラがいい。
沖島に関する私生活の記述がなく触れられていないのがちぃーと不満。
『他人の感情を操り、自分の思う方向に誘導する。ある意味仕掛けの根本にあるのは全てそれだととも言える。』(P205)
2012年3月 双葉社刊
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松下 麻理緒著「流転の女」

2012-04-11 | ま行
老女が一生をかけて隠し通そうとしたある秘密が、消えた公園の柳の木がきっかけで暴かれていく。
遺産目当てで近づいてくる甥夫婦。娘のかつての恋人とその妻と娘。各々嘘と自己弁護の応酬の末、
暴露される真実とは?
その女の33回忌を前に、女によって人生が大きく揺さぶられてしまった人々。
一人は女を見殺しにしてしまったことを後悔しつつ、今は社会的な成功を手に入れた元恋人。
それからその男に一人娘が殺されたと信じ、男を憎み続けた母親理津子、78歳。
当時唯一の親友だったと信じた女など。
著者の松下麻理緒は、東京都生まれと福岡県生まれの東京女子大学心理学科同期卒の二人による共同執筆名。
(2007年、『誤算』で第27回横溝正史ミステリ大賞・テレビ東京賞受賞とある。)
「人間はいつまでも過去に縛られてはいけない」というメッセージが読める読後感は冒頭からの展開が読めないイライラ感と違い意外とよかった。題名の流転の女が誰を指すのか、その女なのか?最後まで理解できなかったミステリー小説でした。


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道尾秀介著「月の恋人 Moon Lovers」 

2012-03-08 | ま行
平成22年放送されたキムタク主演のドラマ『月の恋人』の原作らしい。
急成長のインテリアメーカー「レゴリス」の社長である葉月蓮介、中国の家具工場の工員だったリュウ・シュウメイ、
そして平凡な25歳の派遣OL椋森(むくもり)弥生。全く異なる世界に住んでいるはずだった3人の男女が、様々な形で関わりあっていく姿をそれぞれの視点から描いていく恋愛小説。
派遣社員の弥生は、付き合っている恋人に嘘をつかれ、仕事先の先輩にやってもいないミスを
自分のせいにされ、すべてに疲れた弥生は、自暴自棄になり仕事を辞め、今まで貯めたお金を豪遊に使ってしまおうと初めての海外旅行で上海に飛ぶ。
そんな上海で、ある日本人と出会う。その男性は、日本で話題になっている冷徹な手腕でビジネスを成功させているインテリアメーカー「レゴリス」の青年社長・葉月蓮介だったのだが、その出会いの印象は最悪だった。
普通なら出会うはずのないこの二人の物語は、後にモデルとなった、リュウ・シュウメイや部下の社員らを巻き込んで・・・。
恋愛ものなのでサクサク軽く読めていいですし、会社経営の苦悩等の、サイドストーリーとしても楽しめますが、
でもなんとなく、心に残らないミステリー作家道尾秀介らしくない小説でした。
未鑑賞だったTV放映された「月の恋人」の、キャスト・登場人物を探して読んでみたが原作とはかなり違う設定で折角の原作のいい部分が抜け落ちていてガッカリした。


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宮本輝著「三十光年の星たち」上・下

2012-02-23 | ま行
京都に住む三十歳の坪木仁志は、大学は出たけれど仕事を転々として長続きしない、揚句の果てに職を失い、親に勘当され、恋人に去られ、家賃の支払いを含め明日の生活もままならない状態に。
金貸しの佐伯平蔵から借りた80万円の借金を返せるあてもないまま、弁明に出掛けたが、そんな坪木に75歳の佐伯は、借金返済の代わりに坪木を車の運転手として雇い、返済の滞る人びとのもとへ「取り立て」に出かけるという提案をする。
始めは不満たらたら嫌々だった坪木だったが・・・・。
宮本さんの本には相変わらず善人ばかりで大悪人は出てこない、ご都合的出会いや偶然が多いが、個性的面々のコミカルなやり取りや会話、真摯に前向きな生き方、話しの展開に引き込まれ安心して読めた。
また心和らぐ会話に重みのある言葉が随所にあった。
「――現代人には2つのタイプがある。見えるものしか見えないタイプと、見えないものを見ようと努力するタイプだ。きみは後者だ。現場が発しているわずかな情報から見えない全体を読み取りなさい。」(P96)
「自分を磨く方法・・・働いて働いて働き抜くんだ。これ以上働けないってとこまでだ。もうひとつは、自分にものを教えてくれる人に、叱られつづけるんだ。叱られて、叱られて、これ以上叱られたら、自分はどうにかなってしまうってくらい叱られつづけるんだ。・・・このふたつのうちどちかかを徹してやり抜いたら、人間は変られるんだ。(P255)
「自分で考えてつかんだもの。自分で体験して学んだもの。それ以外は現場では役にたたない。」(下P14)
「自らの才能を超えた大仕事を、年齢とともに成し遂げていく人間を天才というのだ。(下P122)
「何が起こるかわからない。じつに様々な誘惑と労苦を与えつづける30年後の自分を楽しみに、手探りでもがきながら、懸命に自分の人生を作りながら生きて生きたい」

2011年3月毎日新聞社刊
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宮部みゆき著『あんじゅう 三島屋変調百物語事続』

2011-10-27 | ま行
前作「おそろし」の続編。徳川時代江戸の風俗・人情を織り交ぜて展開される時代小説。
三島屋の行儀見習い、おちかのもとにやって来て胸の内にしまってる「不思議」語るほっこり温かく、ちょっと奇妙で、ぞおっと怖い話し4編。
第3話「暗獣」は、紫陽花屋敷と呼ばれる曰く憑きの屋敷を借りた老夫婦と不思議な奴のくろすけとの悲しくもあるほのぼのとした交流を描いた人情話。
「逃げ水」周囲の水がなくなってしまうという小僧の話、誰からも必要とされなくなってしまった悲哀と人間模様が面白い。
「吼える仏」は、外部と隔離された里で起こった出来事、人の心は、仏にも鬼にもなる。人の心の醜さが里の運命を変えていく様子はある意味怖い話。
南伸坊の挿絵が随所に入っており、ほのぼの、楽しくなる本です。
まだ九十話以上続くだろう、トラウマを抱えたおちかの今後が楽しみな宮部ワールドです。

2010年7月中央公論新社刊
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盛田隆二著「見も心も」

2011-09-29 | ま行
6人の作家が同じテーマで競作するシリーズの一冊。テーマは重いが避けて通れない「死様(しにざま)」。老人の性と生への執着を描いた物語。 
妻を6年前に脳梗塞で亡くし、息子夫婦と同居している主人公・礼二郎は、家に閉じこもりがちの75歳。家族の者から背中を押されるようにして参加した絵画サークルで、11歳年下の岩崎幸子と出会う。なんとなく惹かれあう2人だったが、幸子にはとても1人では抱え切れないほどのつらい過去があった。
やがて親密さを増したころ幸子の過去の長い打ち明け話を聞いた後の帰り道礼二郎が脳梗塞に倒れる・・・。
高齢になるという事は、妻や夫や友を失い、自分の体の自由も失い、それに付随して心の自由も失っていくことで、誰でも通る老境への道なのだ。
老いを如何生きるべきか?心から信じ合える人が一人いたならば、人は幸せだという圧等的リアリティのあるそしてインパクトのある小説でした。

2011年6月光文社刊
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水木 楊著「 謀略海峡」

2011-09-08 | ま行
著者は1937年中国・上海生まれ。日本経済新聞社入社。ロンドン特派員、ワシントン支局長、外報部長、論説主幹などを経て作家活動に入る。
主人公は台湾潜入中の日本人工作員・東。民間企業運営の研究所BNFに所属する彼は、台湾政府高官が死ぬ間際に贈ってきた一冊の本。
そこには、覇権国家・中国が企む、台湾武力介入計画を示す暗号が隠されていた。
彼は、あることで中国と台湾の秘密会議の盗聴したUSBメモリーを入手する。
内容は「国共合作」。しかし、この内容は中国側が仕掛けた、台湾本土化計画の始まりだった。
やがて暗号が中国の台湾侵攻の決行日という事を読み解き、アメリカ人の工作員キャンベルとともに中国の工作員との死の攻防に巻き込まれていく。
これは尖閣諸島問題にみられる中国海洋覇権を題材とした近未来小説だ。
中・台戦争がもし起こり台湾に潜入する工作員によるテロ・破壊活動と同時にデモ隊の総統府攻撃など迫真の戦争シュミレーション物語。
後半東の元航空自衛隊員の経歴が活かされる展開と台北市内の懐かしい描写が面白かった。
暫くご無沙汰の11回目の訪台に斯き立てられた。

2011年3月文藝春秋刊
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門前典之著「灰王家の怪人」

2011-08-26 | ま行
本格的ミステリー小説。
「己が出生の秘密を知りたくば、山口県鳴女村の灰王家を訪ねよ」という手紙をもらい山口県の鳴女村を訪ねた鈴木慶四郎は、すでに廃業した温泉旅館灰王館でもてなされる。
そこで綾香から聞いた十三年前灰王家の座敷廊で起きたばらばら殺人事件。
最近、館の周囲をうろつく怪しい人影。
それらの謎を調べていた友人雪入は同じ座敷廊で殺され、焼失した蔵からは死体が消えていた。
13年間の時を越え二つの事件が複雑に絡み合う。
怪奇な密室殺人も結末を読むとナルホドと納得させられるところが凄い。複雑な謎解きの楽しめた361ページでした。
『見に見えるものなど何の意味もありはし ないのですよ。そこに事実など存在しない。ただ解釈有るのみです。』(P218)


2011年6月南雲堂刊
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道尾秀介著「月と蟹」

2011-08-09 | ま行
144回直木賞受賞作品。「ヤドカミ様に、お願いしてみようか」「叶えてくれると思うで。何でも」
やり場のない心を抱えた子供たちが始めた、ヤドカリを神様に見立てるささやかな儀式。
やがてねじれた祈りは大人たちに、そして少年たち自身に、不穏なハサミを振り上げることに。
ホーラーサスペンス作家の書いた純文学。やさしくも哀しい祈りが胸を衝く。
小学校5年生の同じクラスの三人。
父親を病気でなくし母と祖父とで2年前引っ越してきて暮らようになった慎一、同じく転校生で父親から虐待を受けているらしい春也、母親が慎一の祖父昭三と乗った船で事故にあい亡くなり父子家庭の鳴海。
父を亡くした悲しみが癒えていないのに、母は恋人をつくり、親友は虐待され、気になりかけた鳴海は親友にいつも笑いかけるように思える。追い詰めれれた慎一のやがて孤独な小さな心は悲鳴を上げて暴走しエスカレートする。
子どもの世界は、大人が考えているほどきれいで純真ではないのだ。
結末を想像すると怖い描写が続き初めてホラーサスペンス作家らしい展開に。
世の中が微妙にわかり始めて、でもまだ子供らしい残酷さを残す年頃の心のひだを、緻密に繊細に描き出していく展開は流石。二人の少年と一人の少女の揺れる心の切実な心理描写が切なく胸に迫ります。
しかし結末の結果にほっとできました。
2010年9月 文藝春秋刊
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麻耶雄崇(まや・ゆたか)著「隻眼の少女」

2011-07-19 | ま行
「探偵の誕生」を描く二部構成の物語である。巫女姿の古式ゆかしき装束を身にまとい、隻眼の美少女探偵・御陵(みささぎ)みかげが因習にとらわれた寒村を舞台に、ここで発生した連続殺人事件を推理する。
母と同じ隻眼を持つ。この村での殺人事件が彼女の「デビュー戦」になった。
名探偵だった母の跡を継いだものの、2代目みかげはまだ実績がなかったのだが父とともに捜査に乗り出した。
1985年冬、自殺する場所を求め寒村の温泉宿を訪れた大学生の種田静馬の視点で物語が展開される。
犯人の罠により殺人犯と疑われた静馬を見事な推理で救った、探偵・御陵みかげの助手見習いとして採用されたのだ。
古き信仰が残る旧家での連続首斬り殺人。犯人は誰で、その動機は?
やがてみかげは父を失いながらも難事件を解決するがその18年後2003年冬にまた同じような事件が発生し今度は3代目御陵みかげが、犯人を追い詰める。
18年前の模倣犯なのか?それとも同じ連続殺人なのか?その真相は?
表紙に惑わされ、破天荒な筋たてだが、たわいもない「日常」に謎解きの為の謎の設定、罠的技巧工作、突っ込み何処満載の事件と人物設定、警察との関係、グロイ殺害方法。
展開は遅くリアル感はなく我慢して読んだが最後の意外性には脱帽した。
良し悪しは其々が読後に決めて下さい。

 2010年9月 文藝春秋刊
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森沢明夫著「夏美のホタル」

2011-05-29 | ま行
幼稚園の先生の夏美、大学生で写真家を目指す慎吾。
夏美のバイクで二人でツーリング中、山奥にぽつんとある古びた一軒家でトイレを借りた。忘れられたような、小さくて古びた一軒の雑貨屋「たけ屋」と、そこで支え合うように暮らしている母子、ヤスばあちゃんと地蔵じいさんとの出会い。
写真の題材を探していた慎吾は、ヤスばあちゃんと地蔵さんの人柄、周りの景色、空気の素晴らしさに触れ、ひと夏泊まり込みでここの写真を撮りつつ過ごすこと。二人は、夏休みの間ずっと「たけ屋」の離れで暮らしてみるというなんとも心躍る展開になったのだけれど…。
3つの恩恵・・・この世に生まれてきた喜び。親に愛される喜び。「生まれてきてくれてありがとう」という
伴侶と一緒に子供の幸せな姿を見る喜び。
自然の中に暮らす人々の穏やかな描写や、田舎らしいゆったりとした時間の流れが心地良い物語です。
展開もあらすじも予想できる単純な話しですが仏師雲月の存在がアクセントになっている。誰かを想うこと誰かの幸せを願うこと。
切なくて、ほっこりあたたかい、心の故郷の物語でした。
『人間ってのは、何かと何かを比べたときに、いつも錯覚を起すんだって。だから自分と他人をあまり比べない方がいいって・・・他人と比べちゃうとさ、自分に足りないものばかりに目がいっちゃって、満ち足りていることをわすれちゃうんだってさ。』(P140)
『時間とか、人の心とか、思い出とか・・・目に見えないものは、自分のなかにある目に見えないものでしか触れられないし、コントロールすることもできないのだ。・・・自分の内側の「想い」という見えない力を頼りにして、この世の目に見えない大切なものたちと寄り添いながらいきていくしかないのだろう』(P282)

2010年12月 角川書店刊
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三崎 亜記著「海に沈んだ町」

2011-05-11 | ま行
作者の目で見た現実の世界はこの本の中のようにチョットずれた寓話のような三崎ワールドなのだ。
読んでいるとそれがあながちありえないとは思えない間違っていないように思えてくるから不思議だ。
また読んでいると時々性別が解らない箇所があり元に戻って読み直したりということがあるのも作者の意図なのか不安定さが漂う世界。
津波でなのか地震だったのか地盤沈下で今はもう海底にしずんでしまった故郷の町を舟で訪れる・・・表題作他、よく遊園地の夢を見る女・・・「遊園地の幽霊」数千人の人々を乗せて海を漂う・・・「団地船」永遠に朝が訪れない町・・・「四時八分」、鉄条網で囲われ“生態保存”された最後のニュータウンの崩壊…「ニュータウン」自分の影が他人の影と入れ替わる・・・「彼の影」、「ペア」、「橋」、「巣箱」など喪失、絶望、再生―もう一人の“私”が紡いでゆく、滑稽で哀しくて、少しだけ切ない九つの物語。『失われた町』『刻まれない明日』に連なる“町”を、写真家「白石ちえこ」の思わせぶりな白黒写真とのコラボで作られた連作短篇9つ。
『人は皆、運命なる名の足枷をはめられて、それぞれの歩幅で歩み続けるしかないのだから。』(P97)
『あなたの日常が、明日も明後日も、滞りなく進んでいくという保証は何もないはずです。それなのになぜあなたは、そんな風に安穏として明日が当然やってくると思い込んでいるのでしょうか?』(P154)
『我々の日常は、ほんのちいさな一つの欠落によって、あっけなく崩れ去る。小さなチャイムの音と共に、その災厄はやってくるのだ』(P157)

2011年1月朝日新聞出版刊
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湊かなえ著「Nのために」

2011-05-10 | ま行
「N」と出会う時、悲劇は起こる。大学一年生の秋、杉下希美は運命的な出会いをする。台風による床上浸水によって、同じアパート「野バラ荘」の住人安藤望・西崎真人と親しくなったのだ。
努力家の安藤望と、小説家志望の西崎真人。
それぞれに屈折とトラウマ、そして将来の夢を抱く三人はやがて2年後ある計画に手を染めることになる。
すべては「N」のために。
東京のタワーマンションで起きた悲劇的なセレブ夫婦殺人事件。
そして、その事件の真実を直後と10年後をそれぞれがモノローグ形式で語る。
希美の同郷の同級生村瀬慎司や被害者など登場する登場人物皆な姓か名前にNのイニシャルが付く。事件の事実の裏にかくれた真相は?
Nとは誰を指すのか?女なのか男なのか?
将棋やダイビングなど作者の着眼点が面白い。
読者を欺こうとする作者と作者の思惑の裏に張り巡らされた罠にはまらずに謎解きをしようとする読者との鬩ぎ合いのような感覚で物語に集中して読めた。
読み終えてある意味作者が意図したようにミステリーでもありラブストーリーであったかもと思えた。

2010年1月東京創元社刊
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木宮 条太郎著「時は静かに戦慄く」

2011-05-08 | ま行
第6回 (2005年)ホラーサスペンス大賞・特別賞受賞作。
古都京都を中心に丁寧な情景描写で描いたサスペンス小説。
児童相談所の山野所長は、増え続ける児童虐待の報告とその対応に頭を抱えていた。
その増え方は、明らかに異常なのだ。コインロッカーで発見された胎児の異常死、児童虐待の急激な増加は、やがて刑事事件へと発展し、古都京都は瞬く間に無差別殺人によるパニックに陥った。
だが、無差別に見えた殺人には、実はある一つの「法則」が隠れていたのだった。
ここに示された人類進化の最終形態は、果して近未来の日本か?尊属殺人・家族崩壊の兆候は恐るべき予言の書なのか。
動物の本来にもつ『自己保存行動』から『他者の為の自己犠牲行動(利他的行動)』は『親が犠牲になっても子を残すという・・・遺伝子中心主義』に『親が子を愛し守る事で、遺伝子は拡大した。遺伝子拡大戦略。」(P240)とは、そして遺伝子に捨てられ、旧種は自ら滅す。DNAの「トランスポゾン遺伝子」とは?
バタバタ殺人事件が起きてストーリーが破綻せず終息するのか心配したがそれなりに科学的可能性を示唆して終りホットしたが読後の後味はよろしからず。

2005年1月 新潮社刊
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木宮条太郎著「アクアリウムにようこそ」

2011-04-29 | ま行
アクアリウムとは水族館のこと。
大学を卒業後、千葉湾岸市の観光事業課に勤めはじめて三年の嶋由香が主人公の青春恋愛物語。
突然『市立水族館アクアパーク』へ一年間の出向を命じられた由香。
いきなり海獣類イルカ課に配属になるが、そこには、飼育には人一倍の情熱を持ちながら、人間とのコミュニケーションは極めて下手でぶっきらぼうな先輩・梶、そして、初対面の由香にいたずらを仕掛けるバンドウイルカたちがいた。
冷凍の魚を解凍しての餌やり、イルカのライブショーのトレーニング、水質管理や掃除など、裏方としての仕事を徐々に覚えていくのだが。
かわいがっていたイルカが突然病気になり・・・。
自然を見せるために不自然な仕掛け・・・「水族館って矛盾の塊」
「かわいい!」だけじゃ、働けない!ズッコケ&感動!水族館ガール青春小説は、
けっこう華やかに見える水族館の裏事情がわかり、イルカ・ラッコ・ペンギンの生態や
由香と梶の甘恋の行方も気になり夢中で読みました。
2011年3月実業之日本社刊
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