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読書備忘録

私が読んだ本等の日々の
忘れない為の備忘録です

湊かなえ著「白ゆき姫殺人事件」

2013-09-15 | ま行
「しぐれ谷OL殺害事件」美人会社員が猟奇的に惨殺された不可解な殺人事件を巡り、一人の女に疑惑の目が集まった。
「あの事件の犯人、隣の課の城野さんらしいよ…」。同僚、同級生、家族、故郷の人々。彼女の関係者たちがそれぞれ証言する驚くべき内容の「噂」が恐怖を増幅する。疑惑の女性の周囲をとりまく、「噂話」の嵐。
ネット炎上、週刊誌報道が過熱、口コミで走る衝撃、 果たして彼女は残忍な魔女なのか、それとも真犯人は別に・・・。
これは斬新なネットのtwitterの画面一覧とか週刊誌の記事・新聞記事が平行して読むように設定されているのだが話しの盛り上がりに欠け尻すぼみの結末。
各自の憶測,推理などどうでもいい感じでもっと内面を掘り下げて欲しかった。
著者デビュー作「告白」が良すぎたのでそれ以上を期待しすぎて期待はずれでの結果これで何度目?。

212年7月集英社刊
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湊かなえ著「サファイア」

2013-07-06 | ま行
ミステリ風,人情風,おとぎ話風など7つの宝石をキーワードに使った短篇集7つ。
恋人が宝石の悪徳商法のアルバイトをする話し・・・「サファイア」、その後日談・続編の「ガーネット」。
放火犯の話しを聞くミステリー風の・・・「真珠」と雀の恩返しは伽噺風の・・・「ダイアモンド」
真実の残酷さを扱った「猫目石」元犯罪者専用の介護施設が建つ事になった実家の話・・・「ルビー」
市議会議員の選挙アルバイトを始めたことがきっかけで、議員の妻となった私は、夫は優しく、子宝にも恵まれ、誰もが羨む結婚生活の幸せな日々を送っていたが。人生の落とし穴は突然やってきた。所属する党から県義会議員への立候補を余議なくされた夫は、僅差で落選し、失職。そこから何かが狂いはじめた。あれだけ優しかった夫が豹変し、暴力を振るうようになってしまった。思いあまった私は・・・・・・。絶望の淵にいた私の前に現れた一人の女性―――有名な弁護士だという。彼女は忘れるはずもない、私のかけがえのない同級生だった・・・。思春期独特の気持ちの動きの描写がいい友情がテーマの・・・「ムーンストーン」それぞれ共通のテーマは「恩返し」か。それぞれ余韻の残る読後感でした。
2012年4月角川春樹事務所刊.
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村上春樹著「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」

2013-06-13 | ま行
主人公の多崎つくるは、16年前高校時代に仲の良かったアカ・アオ・シロ・クロ(苗字に色の付く字がある)の五人組は、突然「おまえとは縁を切る」と言われ絶交されたことがきっかけで自信もなくし、人間不信になる。
グループに「乱れなく調和する親密な場所」を見いだしていたが、他の4人は地元の大学に進学したのに、つくるだけは上京し、今は東京の鉄道会社で駅を「つくる」仕事に就いている。
東京の大学2年生だったつくるは、名古屋の5人組から突如追放の宣告を受けて以来、トラウマとなったその記憶を封印したまま36歳のエンジニアは、ガールフレンド沙羅の「友達に再会してみたら」という助言を入れ、理不尽な絶交の理由を知るために、5人組の残りの人たちをめぐる〈巡礼〉に出る。
当時の絶交の理由聞いたらシロがつくるにレイプされたというのだ。
つくるには身に覚えのないことだ。精神を病むシロのために、仲間たちはつくるを切らざるをえなかったのだと。
しかもシロの口から真相を聞くことはできない。この音楽大学を出た美しい女性は、6年前に何者かに絞殺されていたのだ、大きな謎と傷をつくるに残したまま。
シロが弾く、リストの曲『巡礼の年』が、遠くフィンランドへ旅立とうとするつくるの心に、少年の日の恋人とふるさとを失った哀切な旋律を奏でる・・・というあらすじ。
灰田とか緑川とか色の付く人との出会いでの哲学的な話などで村上流な思いが語られるのだがしっくりと心に響かない。
余り感動するストーリーではないし、ミステリーでもなく中途半端で評判倒れ気味でガッカリした。
2013年4月文藝春秋刊
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道尾秀介著「ノエル」

2013-04-25 | ま行
『物語をつくってごらん。きっと、自分の望む世界が開けるから』・・・理不尽な暴力から心を守る為に、絵本作りを始めた中学生の男女。妹の誕生と祖母の病で不安に陥り、絵本に救いをもとめる少女。
最愛の妻を亡くし、生き甲斐を見失った老境の元教師。
孤独ともいえる状況に置かれたそれぞれの切ない人生だったが「物語」が変えていく・・・どうしようもない現実に降り注いだ、
奇跡のようなチェーン・ストーリー。
一つの童話から発せられる不思議な力、関係ないと思っているものが実は自分の人生に大きく影響している。
小さな小さなことが実は大きな力を持っている。3つの別々の話しが繋がり、さらにその物語の中に、挿入される童話があって、それぞれ数多くの伏線が張り巡らされており、最後に、読者が想像していたこと覆されるような奇跡の結末が用意されている。
著者の描くそれぞれの登場人物たちは、いずれも優しく、また強さも持っている。
そして、物語を通して、人と人とがつながっいていき、互いが影響を受け合い、最後は、皆が良い方向へと変わっていく。
すべての人たちの人生を肯定的に明るく優しく、かつ清々しく描いた物語でした。

2012年9月新潮社刊
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水田 静子著「喪失 」

2013-02-06 | ま行
第一回ポプラ社小説新人賞受賞作。34歳の東京の出版社の女性誌編集者・文乃。
小学2年生の時、父親の浮気が原因で両親が離婚。その時の恐ろしい状況によって、幼かった彼女の心には男性への不信感が形成された。そして母の病死。しかし、文乃にも恋人が出来たのだが、20歳の冬彼は突然鉄道自殺してしまう。
それ以来他人には心に「壁」を築いてしまった文乃。
人生の暗闇にいた彼女を変えたのは鎌倉のアトリエでただ一人、ひっそりと芸術と向き合う画家で陶芸家の暁子との出会いだった。互いの孤独を分かち合うようにして二人が運命的に出会った時、暁子の知られざる過去と文乃の未来への可能性が拓けていくようだった。
しかし突然の暁子の訃報が文乃に届き、死の間際に、或るものを残していた。
そして、添えられた文乃あての手紙には、衝撃的な告白が書かれていた・・・。罪深き男女が織りなす人生模様。
文乃の限りない絶望の先にみつけた再生のきざしが読後感を温かいものにしてくれた。

2012年12月ポプラ社刊
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湊かなえ著「境 遇」

2012-11-04 | ま行
二人の主人公の視点で展開されるミステリー。
デビュー作の絵本『あおぞらリボン』が10万部のベストセラーとなった高倉陽子と、新聞記者の晴美は親友同士。
共に幼いころ親に捨てられ児童養護施設いた過去を持つ。ある日、「世間に真実を公表しなければ、息子の命はない」という脅迫状と共に、陽子の5歳になる息子裕太が誘拐された。
真実とは一体何をさし何なのか。晴美と共に「真実」を求め奔走する陽子。すると、陽子の絵本のファンだという一人の女性の存在が浮上する。犯人はその女性なのか・・・。犯人は半分読まないうちに予想できてしまった。誘拐事件なのにそんなに緊張感が感じられない警察が介入しないのも納得できない
不正献金事件は突っ込み不足だし、著者のデビュー作「告白」の延長上のような書き方にちょっと食傷気味に感じた。
2011年10月双葉社刊
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三木笙子著「金木犀二十四区」

2012-10-28 | ま行
樹齢千二百年の金木犀が見守る昔懐かしい街。そこで起こった怪異現象の謎?
かつての大君が愛したという花の都の端にひっそりと存在する一帯、“金木犀二十四区”。
ここで祖母の初と花屋を営む「木下秋」のもとに山伏・佐々木岳史と天文台職員・堀田敦志がやって来る。
街に異変をもたらす隕石を回収しにきたという岳史たちに秋は半信半疑ながら協力しはじめるのだが
。その矢先「森林化」という怪現象が起こり、ある脅威が街を襲い始める。近未来小説?異次元の世界かパラレルワールドの出来事か。穏やかな著者のかもしだすムードが好きな人には満足だろうが会話主体の展開でサクサク読めますが内容がもう一つ不満。
主人公「秋」の出自や天狗の存在がミステリーになっているのだが、環境問題・地上げ問題ととらえても突っ込み不足。
三崎亜紀の作風に似ているともおもったが登場人物らにリアリティーが薄いのが残念。
 2012年8月角川書店刊
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松浦理英子著「奇 貨」

2012-10-17 | ま行
「いかにも嘘臭い私小説・・・明らかに嘘なのだが、嘘がいつの間にか切実なものを映し出しているような私小説」(P32)
女同士の友情に嫉妬する男の心情を綴った私小説表題作と「変態月」2つの短編が収録されている。
男友達もなく女との恋も知らない変わり者の45歳の中年小説家・本田の心を捉えたのは、レズビアンの親友・七島美野の女同士の恋と友情。女たちの世界を観察することに無上の悦びを見出す本田だが、やがて欲望は奇怪にねじれて・・・。
10歳年下の女友達・七島とルームシェア・同居して三年が経つ。七島は思わせぶりな同僚・寒咲(かんざき)に振り回されており、その相談役として本田は充足していた。しかし七島にヒサという女友達ができてから、二人の関係は変わっていく。
互いに性的な興味を持たない2人の生活は、これまで均衡を保ってきたのだが本田は七島とヒサとの友情に嫉妬し、電話での二人の生々しい会話を聞きたくて仕方がない。ついに七島の部屋に盗聴器を仕掛けることを思いつき実行する。
タイトルでもある奇貨とは『「奇貨居くべし」の「珍しい品物や人材」』(P84)という意味。
『後で利益をもたらすようなもの』という意味もある。
男と女、女と女の交歓を繊細に描いた友愛小説は飄々としたユーモアに満ちていました。

2012年8月新潮社刊
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道尾秀介著「カササギたちの四季」

2012-09-25 | ま行
主人公は美大卒のリペア職人である日暮正生。開店して2年。店員は2人。
「リサイクルショップ・カササギ」は、赤字経営を2年継続中の、ちいさな店だ。
店長の華沙々木丈助は、謎めいた事件があると、商売そっちのけで首を突っ込みたがるし、副店長の日暮は、横豊寺の住職から売り物にならないようなガラクタを高く買い取らされてばかり。
でも、しょっちゅう入り浸っている中学生の南見菜美は、居心地がいいのか、なかなか帰ろうとしない。
ある事件が起きると華沙々木が事件の真相を間違って推理をする、主人公の日暮が華沙々木に憬れている菜美を「落胆」させないために裏工作をして辻褄を合わせし真相を明らかにするというパターンの4つの連作短編。
どれも事件の裏に潜む人間の哀しみや苦悩を浮き彫りにし、人知れず他人を思いやっていることを醸し出し全編さわやかです。
『どうして川がまがりくねっているか、知っていますか?・・・水が高いところを避けて通るからです。』(P125)
「人が泣くのは、取り返しのつかないことが起きてしまったときだけでいいんだ。』(P279)
2011年2月 光文社刊
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森崇俊著「地下水脈」 

2012-08-16 | ま行
この物語は小説の形をとったちょっと怖い戦後の日本の闇の歴史だ。
金、権力、新興宗教、殺人…。時代の寵児達が生みだす濁流と深い闇。
広がり続けるマネーゲームと男達の飽くなき野望、人間の本質をえぐる経済サスペンスの形を取りながら。
マンションデベロッパーから身を起こし、新興宗教法人・炎聖舎を作りあげた井川と炎。
表向きはデベロッパーとして活動を続けつつも、国内最大の宗教法人・誠神会の傘下にある四国の羽沢工務店、関西系暴力団と繋がりを持ち拡大を続ける。
だが、その羽沢工務店の取り込みが誠神会の怒りを買い、炎が殺される。そして、一人遺された井川は、見えない勢力構造の中で、大物政治家の後援会「阿裕会」の中で生き抜くことを誓う。
日本を揺らした耐震偽装、ラ○ブドア事件、拉致問題・・・。
登場人物の一覧が目次の後に書かれているが全て別名に置き換えて読むと、バラバラの記憶として残っていた最近の事件、この国に21世紀になって起きた全ての事件・事故の、バラバラだった点と点の間の謎が結び付けられて、尤もらしく思えてくる。
日本の裏面史の迫真の人間ドラマのなかにA国の思惑や在日朝鮮人や日韓関係の新たな見かたが提示される。

「俺達は地中の流れだ。地下水脈だ。・・・地下の水の流れは複雑だ。東から西へ流れるかその逆かも分からない。一見、ぶっかって混じっているように見えても、全然、そうではない。流れが分散し一旦消えてしまい、突然、ちがうところで現れる事もある。・・・複雑で全容を説明できるものじゃない。」(P274)
2012年5月 幻冬舎ルネサンス刊
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両角長彦著「大尾行」

2012-08-11 | ま行
1日尾行、ノルマ20件。探偵業も楽じゃない。追う者と追われる者との、知略をつくした戦い。
大手の探偵社に勤める村川は、アントレイサブル(尾行追跡不可能)な女!?
必ず撒かれるという女性を追跡する。しかし、尾行する能力に長けていた村川が、尾行途中で女性の姿を見失ってしまった。この女は、ある製薬会社の元社長宅に通う女で製薬業界の地図を塗り替えんとする大合併の成否を握るといわれているたった一人の女だった。
彼女を追ううちに、“事件"に巻き込まれていく村川。やがて見えてきた製薬業界の裏で蠢く謀略と、彼女の正体は?最後に勝つのはハイテクか、地を這うアナログか!?いろいろ考えた末、主人公が取った行動とは。
読んでいるうちは面白くスピード感ある展開で一気読み出来たのだが、振り返って思い返してみると、疑問点が一杯で意外な結末も突っ込みどころ多々だった。
年間自殺者4万人に迫る現状に対する政治批判はわかるのだがそれにたいする解決ヒント、著者の考えが見えてこなかったのは残念。
2012年6月光文社刊
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道尾秀介著「光媒の花」 

2012-07-20 | ま行
6つの連作短編、それぞれが緩く繋がっての群像話。それぞれの物語の登場人物は、お互いどこかでつながっていてどんな形で登場するのか楽しみな小説でした。
印章店を細々と営みながら、認知症の母の面倒を見る静かな生活を送る中年男性。ようやく介護にも慣れたある日、幼い子供のように無邪気に絵を描いて遊んでいた母が、「決して知るはずのないもの」を描いていることに気付く。三十年前、父が自殺したあの日、母は何を見たのだろうか?・・・「隠れ鬼」
共働きの両親が帰ってくるまでの間、内緒で河原に出かけ、虫捕りをするのが楽しみの小学生の兄妹は、ある恐怖からホームレス殺害に手を染めてしまう・・・「虫送り」
20年前、淡い思いを通い合わせた同級生の少女は、悲しい嘘をつき続けていた。彼女を覆う非情な現実、救えなかった無力な自分に絶望し、「世界を閉じ込めて」生きるホームレスの男・・・「冬の蝶」。
あるきっかけで、耳が聞こえなくなった少女と、少女の祖父の話・・・「春の蝶」。
病にかかった姉を見舞う、母を恨む弟・・・「風媒花」
自信をなくした女教師と、母の再婚で憂鬱を抱える児童の話・・・「遠い光」
ほろ苦さや切なさが伝わってきて、大切な何かを必死に守るためにつく悲しい嘘や、絶望の果てに見える光を優しく描き出した静かな感動を味わえる作品です。

 2010年3月 集英社刊
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三崎亜記著「決起!コロヨシ!2」

2012-06-17 | ま行
奇想な青春小説「コロヨシ」続編。高校三年になった藤代樹は前回でスポーツ「掃除」の全国大会で第三位の成績を収め、掃除部の主将となった。マイナー競技であった「掃除」への注目度が上がり、入部希望者も殺到。順風満帆な一年が始まるかと思われたのだが、校長の差し金で部費が半減、部室も奪われる始末。
さらに、思いを寄せる高倉偲と指導者・寺西顧問が樹の前から姿を消してしまう・・・。
この国の掃除の歴史が明かされていく展開で、面白いんだけど、このパラレルワールドの樹の周りで起きる出来事が著者のご都合事項にあきれ素直に楽しめない感じでほとんどついていけなかった。
著者独特の世界観の中に、高校生の青春物、異世界の歴史、政治的な動きなど絡めて展開される物語のその世界にどっぷり漬かれるかどうかが楽しめるかどうかの分かれ目。

2012年1月 角川書店刊


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道尾秀介著「水の柩」

2012-05-29 | ま行
主人公は老舗温泉旅館河根屋の長男で、中学校二年生の逸夫。日頃から自分が“普通”で退屈なことを嘆いていた。
小学校のころ転校してきた同級生の敦子は両親が離婚、級友から執拗ないじめを受け、誰より“普通”を欲していた。
そんな二人が文化祭をきっかけに言葉を交わすようになる。
2年前小学校の時埋めた20年後掘り起こすはずのタイムカプセル。
あるとき敦子は「タイムカプセルの手紙、いっしょに取り替えない?」という頼みが、逸夫の棲む世界を急に色付け始める。
だが、少女にはその頼みの裏には秘めた決意があった。
また逸夫の祖母いくにも、誰にも話せない過去を秘めて生きていた。
ダムにより水没する村、両親の離婚、転校、苛め、自殺、心の葛藤、弱みや痛みの心理描写が細やかで
風景描写も美しい。
冒頭の自殺をほのめかす手紙の行く末が気になり一気に読めた。
回想を含めた時系列無視の行き来戻りつの展開がもともと出発がホラーサスペンス作家らしい。
「まず思い込むことが、大事なんだよ、何をするにも。世の中ほとんどのことには、どうせ正解はないんだから。
面白いとか正しいとか、何でも思い込んだもん勝ちだよ。」(P58)
「とにかくぜんぶ忘れて、今日が1日目って気持でやり直すの。」(P269)

2011年10月講談社刊
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水原秀策著「左足の虹」

2012-05-15 | ま行
サッカー界を舞台したミステリー。主人公は、Jリーグ昇格を目指す下部組織のJFLに属するチーム・ミストラル佐崎の強化部長を勤める柏原弘毅。
Jリーグ昇格目前、エースの乾大輔に殺人疑惑!?彼にかけられたあらぬ疑いの真相を突き止めよという社長の命を受け柏原は真相究明に動き出す。
調査の末、殺されたと思われた女性は、単に姿を消しただけというのだが・・・。しかし失踪事件に関し頑なに口を閉ざす女性の家族たち。乾の嫌疑は晴れ、チームは昇格に向け勝ち進むだけだったがはずが、彼のパフォーマンスは明らかに落ち始める。
まだ何か隠されている事がと・・・事態が二転三転するなか意外な事実が浮かび上がる。
人物の掘り下げと心理描写があっさり過ぎて物足りない。サッカーのシーンも何度かあるが描写が力不足か分かり難かった。
素人探偵の調査だから謎解きのモタツキも仕方がないのだが、終り方も微かの希望を暗示しての結末で不満だった。
2011年10月PHP研究所刊
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