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読書備忘録

私が読んだ本等の日々の
忘れない為の備忘録です

湊かなえ著「豆の上で眠る」

2015-06-30 | ま行
行方不明になった姉万祐子が2年後見つかった。本物・偽物?疑うことが頭から離れない、逃れられない妹結衣子。
両親や祖母は姉だと言うのだが私だけが、間違っているの? 13年前に起こった姉の失踪事件。小学3年生の姉万佑子が帰宅途中行方不明になった!必死の捜索にもかかわらず、万佑子は見つからなかった。
だが、2年後に万佑子は突然帰って来た。妹の結衣子は、「本当に姉なのか?」と疑問を抱くのだが・大学生になった今でも、妹の心には「違和感」が残り続けていた。
小学校1年生の記憶があんなに鮮明に残って覚えているだろうか、3年生の子供が家族への慕情を捨てきれるだろうか
・・・高校生位ならあり得る話が10歳以下の設定で展開されるところに違和感を持ったがミステリー・真相に興味をもって読まされました。
2014年3月新潮社刊
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宮部みゆき著「ペテロの葬列」

2015-04-18 | ま行
『誰か』『名もなき毒』に続く、“杉村三郎シリーズ第3弾
ある日、取材の帰りに路線バスに乗り込んだ杉村と編集長だったが、そのバスが拳銃を持った老人にジャックされてしまう。
人質となった6人の乗客に対して、迷惑料として老人はなぜか慰謝料を支払うという。そんな奇妙なやり取りがバス内で進む中、警察が突入! その老人は、突入と同時に自殺する。
事件は3時間余りであっけなく解決したかに見えたが、そこからが本当の謎の始まりだった。
暫く経ってあの時約束されたお金が入った小包が各人に届く。
センシティビティ・トレーニング、やマルチ商法などを絡めて謎に迫る展開に引き込まれながら折角楽しんで読んだのにラストがいただけない悲しいラスト。
結局お嬢様育ちの我儘理由でのあの仕打ち、納得いかないのに妙にすんなり態度の杉村にも不満が残る。
「“悪”は伝染する。・・・ペテロは、イエスを裏切った自らを恥じて、残された“悪”を刈り取るために自らの命を捧げた聖人。
しかし、自らを恥じ悔い改めても、また別の形で“悪”が連鎖してしまうことがある。
人はどれだけ自らの悪や罪を贖おうとも、結局はペテロに続く葬列として、歩き続けていくしかないのか。」
2013年12月集英社刊
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森谷明子著「花野に眠る 秋葉図書館の四季」

2015-01-29 | ま行
図書館ミステリーシリーズ第2弾。少年しか知らない絵本とは? 幻の卵料理の作り方? 秘めたる恋の落とし物?
そして白骨死体?!
のどかな図書館の新人司書文子は、今日も謎解きに奮闘する。
んげ野原のまんなかにある秋葉図書館は、いつでものんびりのどか。
新人司書の文子の仕事ぶりも、どうにか板についてきた。
そんななか、図書館のお向かいの日向山から突然、白骨死体が発見された。
誰が、どうして、こんなところに埋められていたのか。
文子は、図書館の利用者が持ち込む、日常のなりげないふとした謎を解決しつつ、頼もしい先輩司書たちの助けを借りて、
事件の真相究明に挑む。
緊迫したサスペンスや鋭いミステリーはないが、のんびり感とほのぼの感が読んでいて心地好い。

2014年11月東京創元社刊
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宮部みゆき著「ソロモンの偽証」

2014-08-19 | ま行

各冊700P以上3冊での長編作。
第一部「事件」・・・クリスマスの朝、雪の校庭に急降下した14歳。事故自殺殺人?不登校だった彼の死を悼む声は小さかった。だけど、噂は強力で、気がつけばあたしたちみんな、それに加担していた。そして、その悪意ある風評は、目撃者を名乗る、匿名の告発状が投函された。さらに新たな殺人計画。マスコミの過剰な報道。狂おしい嫉妬による異常行動。そして犠牲者が一人、また一人。混乱する学校。ことごとく無力な大人たちにはもう、任せておけない。

第二部「決意」・・・騒動の渦中にいるくせに僕たちは何も知ろうといなかった。しかし、彼女は起ちあがった。校舎を覆う悪意を拭い去ろうと。裁判でしか真実は見えてこない!彼女の覚悟は僕たちを揺さぶり、学校側の壁が崩れ始めた・・・気がつけば、彼らは走り出していた。不安と圧力の中、教師を敵に回して。そして他校から名乗りを上げた弁護人。その手捌きに僕たちは戦慄した。彼は史上最強の中学生なのか。開廷の迫る中で浮上した第三の影、そしてまたしても襲われて犠牲者が。僕たちはこの裁判を守れるのか!?

第三部「法廷」・・・この裁判は仕組まれていた!? 最後の証人の登場に呆然となる法廷。 その証人はおずおずと証言台に立った。瞬間、真夏の法廷は沸騰し、やがて深い沈黙が支配していった。事件を覆う封印が次々と解かれてゆく。告発状の主も、クリスマスの雪道を駆け抜けた謎の少年も、死を賭けたゲームの囚われ人だったのだ。驚天動地の完結篇! 驚愕と感動の評決が下される。

登場人物が多いのだが適切な人物描写と相関図によりすんなり読めた。

苛めの被害者やその家族の描写が細かく書かれているが心の琴線に触れるような部分が少なく、とにかく特定の人物の,こと細かい仕草や言葉に頁数が費やされてゆく展開が良さでもあり不満点。
学校での「苛め」や「引きこもり」などの今時の社会問題を扱っているのに著者に独自の鋭いメスが感じられず,主張も読み取れないのは残念だったがそれなりに楽しめた。
エピローグで活躍した一人ひとりのその後が語れると期待したが死体発見者の野田君の20年後しか書かれていなくて残念だった。
2012年10月新潮社刊
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両角長彦著「ラガド・煉獄の教室」

2014-07-22 | ま行
2009年度第13回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作。始業直前の中学校の教室に包丁を持った男が乱入、学級委員の女子生徒を刺殺した。
東京都内の中学校で生徒2人が死傷した、無差別殺傷事件。容疑者は2カ月前に自殺した女生徒の父親だった。学校、生徒、警察など、
様々な思惑や不穏な動きが絡み合い、真相を複雑にしていく。犯行状況時の生徒たちの動きを、93枚の見取り図で追った実験的小説。
怨恨か、無差別殺人か?警察は教室の原寸大セットを組み、犯行の再現実験を行うが、再現を重ねるたびに予想外の事実が判明し、迷走状態に陥る。
一方、事件の真相を生放送で暴くと予告したテレビ局は、公約を実行するというのだが・・・犯人、担任、生徒たちという複数の視点から解釈し、
それらを重層的に重ね合わせるように読者に提示することにより、一見単純だと思われた事件は徐々に複雑さを増していく展開でテンポがいいのだがいじめ、
クラス崩壊など掘り下げが浅く心に響いてこない警察の動きが不明でマスコミ主体で展開されるのには納得性がない。
結末もスッキリしなかった。
2010年2月光文社刊 光文社文庫
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宮部みゆき著「桜ほうさら」

2014-06-24 | ま行
時代小説。主人公は上総国搗根藩で小納戸役を仰せつかる古橋家の次男坊。
大好きだった父が賄賂を受け取った疑いをかけられて自刃。兄が蟄居の身となったため、江戸へやって来て江戸深川の富勘長屋に住む、
22歳の古橋笙之介。
笙之介は、父の汚名をそそぎたい、という思いを胸に秘め、写本の仕事で生計をたてながら事件の真相究明にあたる。
やがて父の自刃には搗根藩の御家騒動がからんでいたことがわかる。
ちょっとしたミステリアスな事件が次々と起きるなか、江戸情緒たっぷりの長屋生活の中で傷ついた笙之介は思いを遂げることができるのかが主題。
厳しい現実を心の奥底にしまい、貸本屋の治兵衛が持ってきたくれた仕事に目を開かれ、「桜の精」和香との淡い恋にやきもきする笙之介の姿が微笑ましく、
人生の切なさ、ほろ苦さ、そして長屋の人々の温かさが心に沁みこむそんな小説の世界にどっぷり浸かるれる時間が楽しかった。
題名の「桜ほうさら」は甲府の方言言葉「ささらほうさら」=いろいろあって大変だの意味に桜精こと「和香」が言った掛け言葉。

「人は目でものを見る。だが、見たものを留めるのは心だ。人が生きるということは、目で見たものを心に留めておくことの積み重ねであり、心もそれによって育っていく。心が見ることに長けてゆく。目はものを見るだけだが、心は見たものを解釈する。」(P430)
「心を捨てることができない限り、人は思いを抱く。個々の思いが違えば、ひとつのものに向き合っても、そこから見て取るものは大きくかけ離れてしまう。求めるものも異なってゆく。」(583)
2013年3月PHP研究所刊
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湊かなえ著「望郷」

2014-06-22 | ま行
2012年第65回日本推理作家協会賞(短編部門)受賞作「海の星」他望郷テーマの5編の短篇集。
有名作家の故郷帰還を扱った・・・「みかんの花」、突然届いた故郷からの便りで海辺の町での記憶を呼び覚ました。
失踪した父と「海の星」と呼ばれる不思議な現象を見せてくれたおっさん。
そして、その娘との別離と再会・・・「海の星」、都会のテーマパークにあこがれた・・・「夢の国」、歌手として成功した自分が里帰りして・・・「雲の糸」
、いじめ問題を扱った・・・「石の十字架」、教師の立場から・・・「光の航路」女性の心理描写や人間関係を描いたら上手い著者ならではの秀作で読後感も良い。
島に生まれ育った人々の、島を愛し島を憎む複雑な心模様が生み出すさまざまな事件、ひとつひとつの小さな「事件」だが
陰険な地元コミュニティの怖さとか閉塞感が描かれており濃密で読み応えのある小説で最近駄作の多い長編物より面白かった。

2013年1月文藝春秋刊
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深山亮著「読めない遺言書」

2014-05-22 | ま行
平凡な中学の教師・竹原俊和は、ある日、警察から父英治の孤独死を知らされる。
音信不通の行方不明になってはいたがいつか我が家に帰ってくると思っていた父。
孤独死していたボロアパートの部屋をかたずけに訪れたおり、見つかった公証人役場で作られた遺言書には
「全遺産を小井戸広美に遺贈する」という、見ず知らずの人物に宛てられた信じがたいものだった。
家族を捨てた事への憤りとやりきれない気持ちを胸に小井戸広美なる人物を追い始めた途端、尾行、盗撮、放火と、
立て続けに事件に巻き込まれてしまう。
竹原は遺言書を握りしめ、父が残した「謎」を追う。主役が中学校の教師なので派手さはない不登校や高校受験や
モンスターペアレントなど絡めて
緻密な構成と後半の劇的な展開で、驚愕のラストに派手さはないがミステリー性を楽しめた。
現役の司法書士が描いた人間模様。

2012年5月双葉社刊
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道尾秀介著「笑うハーレキン」

2014-05-18 | ま行
人生に敗れ、全てを失くしたホームレスの家具職人と、都会の片隅に吹き寄せられた、
家なき仲間たちの再生物語。「ハーレキンとは道化師。笑顔の道化師がハーレキンで、その顔に涙のマークを描くとピエロになる。」(P230)
厄年の元家具会社の社長・東口太一は、一人息子の笙太を事故で亡くし、会社も倒産・妻とも離婚していた。
いまはスクラップ置き場でトラックの荷台で寝起きしホームレスたちと暮らしながら、出張の家具修理の仕事をしている。
太一の運転するトラックの助手席には、いつも疫病神が乗っているが、そんな彼の前に、
弟子にして欲しいという脚の不自由な奈々恵という娘が現れて・・・。
ミステリーの要素もありサスペンス・ハラハラ感もあり、絶望の生活からの脱出にエールを送りながら楽しく読めた。
「自分を守る為、誰かを守る為、みんな懸命に素顔を隠して生きている。・・・ただ、どうせ素顔を覆うなら、笑顔で覆った方がいい」(P372)
「すぐ忘れることは、記憶するに値しないこと」(P57)
「明るいってことは、寂しいってことだ。よく笑うってのは、悲しいってことだ」(P231)
「人間は、自分が他人より劣っているのは能力のためではなく、運のせいだと思いたがるものだ。(プルタルコス)
2013年1月中央公論新社刊
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深山亮著「ゼロワン 陸の孤島の司法書士事件簿」

2014-04-29 | ま行
著者は、現役の司法書士。2010年第三十二回小説推理新人賞受賞作「遠田の蛙」、他4つの連作短編ミステリー

主人公は、日本一の過疎の村に引越してきて鹿料理店の跡地で開業した、司法書士の久我原。
その久我原の事務所に、初日から一筋縄ではいかない依頼が舞い込む。久我原は村の雰囲気に慣れぬうちに、
三人の難解な依頼を受けることに。
戸籍をたぐりながら、美しき人妻の家に隠されていた過去の事件があぶりだされて・・・「遠田の蛙」。
費用を叩く村の役人が依頼してきた開発事業に絡む出来事出来が思わぬ事件を呼ぶ・・・「孤島の港」、
親戚付き合いに難のある一家の大黒柱の相談事、依頼紙切れ一枚の消失が人生を狂わせる・・・「紙一重」
死んだ息子のパソコンに貼られていた「19723」の数字の意味・・・「境界」
美人すぎる司法書士、県の司法書士青年会の広告塔にふりかかった事件・・・「マドンナのうしろ髪」。
大きな事件ではないけれど地味だが、ユーモア溢れる語り口で人間の心情と謎を巧みに描いた佳作で面白かった。
2013年11月双葉社刊
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湊かなえ著「高校入試」

2014-04-26 | ま行
通称、一高。ある地方都市にある県立橘第一高校。
明日からの入試を控えて、過去のトラブルを参考に、完全なマニュアルを作り、校内の貼り紙や忘れ物などをチェックする教師たち。
この年の新任教師・春山杏子は幼い頃から海外で育ち、帰国子女として日本の大学に入学。旅行代理店勤務を経て、この高校の教師になった。教師としての正義感は強いが、高校生活を海外で送った彼女には、まだ理解できないルールも多い。
試験会場となる全教室に貼られていたのは、『入試をぶっつぶせ!』と書かれた紙。
入試を潰そうとする犯人はいったい何をしようとしているのか。そして犯人はいったい誰なのか。

登場人物が23人と多く中々相関関係やキャラが把握できなくて苦労した。個々の主観とセリフが書かれているのであっちこっち 飛ぶので益々理解しにくい。
今どきのネッ上の書き込み記事などが引用されていて、伏線が張り巡らされたミステリーなので誰に感情移入したらいいかも決めかねているうちに読了。
高校入試を主に高校教師側から描かれていて興味深かったがそれ以上の面白さは感じなかった。
同名で長澤まさみ(杏子役)主演でTVドラマ化され昨年放送されたらしい。
 2013年6月角川書店
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村上龍著「55歳からのハローライフ」

2014-01-29 | ま行
人生の折り返し点を過ぎて、何とか「再出発」を果そうとする普通の中高年を主人公にした中篇小説が5編。
体力も弱ってきて、経済的にも万全ではなく、そして折に触れて老いを意識せざるを得ない、この生きどらい時代をどうやってサバイバルしたらいいのかと多くの人々が、将来への不安を抱えている。だが、不安から目をそむけず新たな道を探る人々がいる。再就職、家族の信頼の回復、友情と出会い、ペットへの愛、老いらくの恋…。
さまざまな彩りに充ちた「再出発」の物語
人生でもっとも恐ろしいのは、後悔とともに生きることだ。熟年離婚で独りになったが寂しさと開放感を味わった後婚活に励む女、・・・・「結婚相談所」
生きてさえいれば、またいつか、空を飛ぶ夢を見られるかも知れない。あれは笑うセールスマンのそっくりだとその姿を見て思ったのだが中学時代の友人だった・・・・「空を飛ぶ夢をもう一度」
「お前には、会社時代の力関係が染みついてるんだよ。」早期退職で辞めた会社人間がキャンピングカーで夫婦で旅をしたいと・・・・「キャンピングカー」
「夫婦だからだ。何十年いっしょに暮らしてると思ってるんだ。」6年一緒に暮らした柴犬が病気で死んだ・・・・「ペットロス」
一度結婚したことがあったが離婚後ずうーっと独りで60歳までトラックドライバーを勤め上げた男が恋をした「人を、運ぶ。人を、助けながら、運ぶ。何度も、何度も、そう繰り返した。」・・・・「トラベルヘルパー」
『定年後・老後に訪れる困難さは一様ではない。経済的格差を伴って多様化している。・・・共通することは・・・それまでの人生で誰と、どんな信頼関係を気付いてきたかということ』(P333)
5つの物語に共通するのは飲み物。「精神的に不安定になったとき、まず飲み物をゆっくりと味わうことができれば、どんな人でも気持ちが鎮まるはずだ。それは儀式のようなもので、しかも誰かに頼る必要もない。」(P53)
いつかは誰もが通るターニングポイントの参考になりました。
「人生はやり直しがきかないと思っている人のほうが、瞬間瞬間を大切に生きることができるような気がする」(P69)
2012年12月幻冬舎刊


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湊かなえ著「往復書簡」

2013-12-07 | ま行
なんでも携帯やPCメールですます昨今あえて手紙でやり取りした3篇の中篇ミステリー集。
高校教師の敦史は、小学校時代の恩師の依頼で、彼女のかつての教え子6人に会いに行く。
6人と先生は20年前の不幸な事故で繋がっていた。それぞれの空白を手紙で報告する敦史だったが、6人目となかなか会うことができない。過去の「事件」の真相が、手紙のやりとりで明かされる・・・「二十年後の宿題」。
高校のクラスメイトの結婚式で再会した当時放送部の部員達の行方不明になっている一人に対するやり取り・・・「十年後の卒業文集」国際ボランティアで外国に赴任した彼と幼馴染の彼女との国際郵便・・・「十五年後の補習」
個人的には主演が吉永小百合で映画化が決定された『二十年後の宿題』が意外性とミステリー性があり感動の展開で後味が一番よかった。
どの作品も視点が違うと受け取り方や考え方心の重しが違ってくるんだということを上手く利用した小説でした。

2010年9月幻冬舎刊
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湊かなえ著「母 性」

2013-10-22 | ま行
著者曰く「これが書けたら、作家を辞めてもいい。そう思いながら書いた小説です」と入魂の小説。
母と娘。二種類の女性、持つものと持たないもの。欲するものと欲さないもの。高台にある美しい家。
暗闇の中で求めていた無償の愛、温もり。
ないけれどある、あるけれどない。私は母の分身なのだから。
母の願いだったから。心を込めて。私は「愛能う限り、娘を大切に育ててきました」・・・それをめぐる記録と記憶、そして探索の物語。母と娘の葛藤 
・・・・しつけをする時「娘が将来困らないようにではなくて、そこで自分がほめられたいから・・・」母子関係の難しさ、恐ろしさを感じた。
母・娘・第3者等個々の立場から観念論が繰広げられてその中から客観的な真実を読み取らなければ伏線は到る所に張られ、そういえば母も娘も名前は最終章まで伏せられていて
・・・最後にはそう来たか・・・
見事に思っていたのとは違う展開に完敗。
「時は流れる。流れるからこそ、母への思いも変化する。それでも愛を求めようとするのが娘であり、自分が求めたものを我が子に捧げたいと思う気持ちが、母性なのではないだろうか」(P256)
2012年10月新潮社刊
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森沢明生著「大事なこほど小声でささやく」

2013-09-25 | ま行
生きることへの感謝を取り戻せる場所。その店に集う人々のくすぶっていた人生が、今生まれ変わる。
その階段を下りると、希望の扉が待っている。
生きることへの感謝と愛おしさを取り戻せる場所―そこは奇跡のスナック「ひばり」。
その店を経営するのは、2メートルを超えるマッチョなオカマのママ。規格外のカラダと愛と、痺れる言葉で、心に傷を抱えた人達の止まっていた時間が、静かな夜とともに動き出す。
スポーツクラブSABのフリーウエイトゾーンそこでトレーニングしている面々。ここにはオカマのマッチョ『スナックひばり』のママ権田鉄雄。
ジムのアイドル謎の美女だが、実は売れっ子漫画家ミレイ。ここにしか居場所を見出せない高校生シュン。
常にへらへらしゃべり続けているが、金髪モヒカンのセンセー実は子供を亡くすと同時に妻の心もなくしていた歯科医。
70歳目前のいい年寄りなのに、男の現役を目指し、怪しげな中国薬を飲み続ける広告会社のシャチョー。
最近ジムに通い始めた中年サラリーマンのケラさん、ジムではみんなちゃらちゃらしてるような明るい面々だけど、それぞれに人知れず心に傷を抱えている。心の垢を洗い流す切ないけど、あったかい感涙小説でした。

「大事なこほど小声でささやくものなの。その方が相手の心の奥にまでしっかり届くんだから。」(P39)
「人生に大切なのはね、自分に何が起こったかじゃなくて、起こったことにたいして自分が何をするか、なのよ。起こったことなんて、そのまま受け入れればいいの。どうせ過去は変えようがないんだから」(P110)。
「阿吽」という言葉、過去と未来を思い煩ってもそれは無駄なだけ「一瞬のいまを、大切に生きる」幸せに生きる極意。(P310)
「夢はね、必ず叶えなくちゃ駄目なの。叶えるとね・・・オセロの黒い列が、
端っこから一気にバタバタと白に・・・辛かった過去がキラキラした大切な思い出にかわるのよ」(P317)

2013年5月幻冬社刊
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