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読書備忘録

私が読んだ本等の日々の
忘れない為の備忘録です

湊かなえ著「未来」

2020-02-29 | ま行

佐伯章子は成績が良く自立した考えを持つ小学4年生。やさしくて思いやりのあるパパと美人だけど時々心をなくして人形になってしまうママとの3人暮らし。ところが、4年生の最後の春、大好きなパパが死ぬ。そんな時、『こんにちは。章子。わたしは20年後のあなたです』ある日、突然届いた一通の手紙。送り主は未来の自分だという。その手紙に励まされた十歳の章子は「大人の章子へ」に向けての返事という形で日々の日記を書き始める。意地悪なクラスメート、無気力だったママの変化、担任の先生の言葉・・・辛い出来事があっても、「未来からの手紙」に記されていた『あなたの未来は、希望に満ちた、温かいもの』という言葉を支えに頑張ってきた章子。 しかし、中学に入った彼女を待っていたのは、到底この先に幸せがあるとは思えない苛めだった。相次ぐ災厄が、章子の心を冒していく。私は幸せになるんじゃなかったのか、という悲鳴が聞こえる。DV、父娘相姦、親殺し、自殺、AV出演強要などのネガティブな身勝手な大人の犠牲を強いられながら生きなければならない子供たち。子供たちが生きていくために選択するしかなかった出来事はあまりにも残酷で悲しすぎます。人と人の関係で、悪意や歪みはその関係の中で生まれ、関係を蝕んでいくその中で人はなぜ壊れ、何を求めるのか、終盤は、明と暗、善と悪とが反転し、一気に湊かなえワールドが展開されて面白かった。二人称小説。

20185月双葉社刊

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宮城啓著「歪んだレンズ」

2019-12-28 | ま行

M&Aや投資に関わってきた現役・税理士が描いた企業小説。医療機器・カメラ大手プロビデンス社の経営トップが隠していたのは、1千億円の巨額損失だった。松尾亘の経営するマツオ製作所は赤字続き。あるファンドとの契約で危機を脱したかに見えたが、突然の社長解任。さらにはカメラ大手プロビデンス社が亘の会社の株を2百億円で買ったとの情報がもたらされる。カネに群がる金融プロ、出世を求めた社員、翻弄される町工場社長、闇を追うジャーナリストたち。損失処理スキームの全貌と、事件に関わった人々を描いた人間ドラマです。

登場人物が多いので人物紹介一覧表が欲しかった。リーマンショック、損失補填、ベンチャー投資、利益計画書、粉飾決算、飛ばし、マネーロンダリング等、多くの思惑が入り組みながら展開されるのだが過去の問題等などが挿入されていて展開が遅いのが難点。

2018年4月KADOKAWA刊 

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宮部みゆき著「昨日がなければ明日もない」

2019-12-15 | ま行

杉村三郎シリーズ事件簿第5弾。杉村三郎vs.“ちょっと困った”女たち。杉村探偵事務所の10人目の依頼人は、50代半ばの品のいいご婦人だった。一昨年結婚した27歳の娘・優美が、自殺未遂をして入院してしまい、1ヵ月以上も面会が出来ないままで、メールも繋がらないのだという。杉村は、陰惨な事件が起きていたことを突き止めるのだが・・・自殺未遂のうえ消息を絶った主婦、「絶対零度」。杉村は近所に住む小崎さんから、姪の結婚式に出席してほしいと頼まれる。小崎さんは妹(姪の母親)と絶縁していて欠席するため、中学2年生の娘・加奈に付き添ってほしいというわけだ。会場で杉村は、思わぬ事態に遭遇する・・・訳ありの家庭の訳ありの新婦、「華燭」。事務所兼自宅の大家である竹中家の関係で、29歳の朽田美姫からの相談を受けることになった。「子供の命がかかっている」問題だという。美姫は16歳で最初の女の子を産み、別の男性との間に6歳の男の子がいて、しかも今は、別の〝彼〟と一緒に暮らしているという奔放な自己中なシングルマザーであった・・・「昨日がなければ明日もない」。

杉村探偵事務所の依頼料はとても5000円と低価格なので、依頼される発端はとても些細なことなのだが、愚直でまじめな私立探偵・杉村氏はいつも丁寧で誠実な調査を通じて、より深い事件の存在を掘り当ててしまう。杉村さんを取り巻く環境は、ユーモラスな人たちがいて、主人公の人柄と共に全体的にほんわかな雰囲気が漂うのだが起きる事件は悲劇的だ。どれも読後感はいいとは言えない。しかしどの人物の描き方も秀逸で深みのある作品になっていると思う。

「どれほどつらい過去だろうと、それはあなたの歴史です。昨日のあなたがあってこそ今のあなたがあり、あなたの明日があるのです。受け入れて前向きに進まなければ、幸福な未来への道は開けません。」(P395

201811月文藝春秋社刊

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松本薫著「日南Ⅹ」

2019-12-09 | ま行

鳥取県米子市生まれの作者が同県内にある日南町を舞台にそのすばらしさを描いた地方創生小説ミステリー。TATARA(日野町)、「天の蛍」(江府町)と、日野郡を舞台にした小説日野郡三部作最後のシリーズ。東陽新聞米子支局の記者・牟田口(むたぐち)直哉と高校生の娘・春日(はるひ)が主人公。ある日、春日と友人たちは、オオクニヌシゆかりの赤猪岩神社で男性の遺体らしきものを目撃する。しかし直後に遺体は消えさり、翌日、日南町の大石見神社で男性の遺体が発見される。牟田口は報道記者として追いかけるうち、事件に秘められた過去に近づき始める。

遺体のそばに落ちていた紙片に書かれていたオオクニヌシとはいったい誰なのか?親子の周囲で巻き起こる、過去と現在をつなぐ謎。新聞記者と高校生の父娘の複数視点から描かれた謎と伏線が、驚く意外な展開と結末となって収束されます。山陰地方の大国主命伝説と松本清張の出自を絡ませた展開。この地方の訛も心地好く青春ミステリーとしても読め500頁の長編でしたがストーリーに惹き込まれました。「✕」とは誰か何かその意味は・・・。日南町の自然と人のすばらしさを知ることができる小説ですが心に残る言葉、示唆は感じなかった。

20199月 日南観光協会刊

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湊かなえ著「ブロードキャスト」

2019-09-20 | ま行

青春学園小説。「broadcastとは、同じメッセージを複数の受信者に同時に転送すること」。町田圭祐は中学時代、陸上部に所属し、駅伝で全国大会を目指していたが、3年生の最後の大会、わずかの差で出場を逃してしまう。その後、陸上の名門校、青海学院高校に入学した圭祐だったが、当て逃げの交通事故で足にケガを負い陸上部に入ることを諦め、同じ中学出身の宮本正也から誘われてなんとなく放送部に入部することになる。陸上への未練を感じつつも、正也や同級生の久米咲楽、先輩女子たちの熱意に触れながら、その面白さに目覚めていく。目標はラジオドラマ部門で全国高校放送コンテストに出場することだったが、制作の方向性を巡ってはやくも部内で対立が勃発してしまう。・・・

果たして圭祐は、新たな「夢」を見つけられるかがテーマ。ラジオドラマ作品でいじめ問題をテーマに問題提起作品「ケンガイ」でNHK杯全国高校放送コンテストを目指す。夢と友情、嫉妬と後悔。大人への反発など高校放送部を舞台に描いた青春小説として一部謎解きを含んだ感動の物語に仕上がっています。主人公はまだ1年生続編を期待しています。

20188KADOKAWA

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道尾秀介著「風神の手』

2019-06-17 | ま行

遺影専門の写真館「鏡影館」がある街を舞台にした数十年にわたる歳月のミステリー小説。読み進めるごとに出来事の意味が反転しながらつながっていき、数十年の歳月が流れていく展開。

死を目前にした母親が母娘で訪れた鏡影館で、青春時代の初恋物語を娘に語り聞かせる。ささいな嘘が、女子高校生と若き漁師の運命を変えた・・・「心中花(しちゅうか)」

鏡影館を訪れた青年が、遺影と共に飾られた1枚の写真を見た事をキッカケに、小学生時代の親友との思い出・冒険譚を回想する。小学5年生、まめ&でっかち、の2人が遭遇した事件・・・「口笛鳥」

西取川の護岸工事、建設会社間の受注合戦、流された有害化学物質、死を前にして、老女は自らの“罪"を打ち明ける・・・「無常風(つねなきかぜ)」

各章の登場人物たちが、意外なかたちで集う・・・「待宵月」

4つの章のバラバラの繋がりがないような、あるようなだが読み進めていくと最後に繋がっていく。諺の「風が吹けば桶屋が儲かる」というようなほんの些細な事が発展し次に繋がり予想しない影響を様々な関係ない人に与えている。彼ら彼女らの人生は重なり、つながる。風はどこから吹くのか。隠された“因果律”の鍵を握るのは、一体誰なのか。はじまりは一瞬の風神の手だった。読了して題名の意味が・・・。風が吹き、悲劇が起こり、たくさんの嘘が生まれ、さまざまな人たちの人生が変わっていく。「もし、その小さな砂粒が・・・何か重要な出来事で、何が些細な出来事かなんて、いったい誰が言えるのだろう。」(コナン・ドイル『ジョン・ハックスフォードの空白』)

20181月朝日新聞出版刊

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森沢明夫著「水曜日の手紙」

2019-05-14 | ま行

「水曜日郵便局」は、水曜日の出来事を記した手紙を送ると、かわりに見知らぬ誰かの日常が綴られた手紙が届くという、一週間に一度・水曜日だけ開くちょっと不思議なプロジェクト。

家族が寝静まった夜更け、日課として心の毒をこっそり手帳に吐き出していた主婦の井 村直美は、そんな自分を変えたいと、夢を叶えた理想の自分になりきって空想の水曜日をしたため、「水曜日郵便局」に手紙を出す。一方、絵本作家になる夢を諦めた30代の今井洋輝も婚約者のすすめで水曜日の手紙を書いて投函する。

世界のどこかで誰かの水曜日の物語を読む人がいる。そして世界のどこかで生まれた知らない誰かの水曜日の物語が届き、巡り合うはずのない誰かの水曜日が、誰かの水曜日と出会う。会うことのない二人の手紙は、やがてそれぞれの運命を変えていく・・・。

海に流すボトルメッセージの偶然性みたいな感じのシステムで手紙が持つ力を活かし、見知らぬ他人と手紙で繋がりで登場人物たちが再生されていくほっこり泣ける癒やし系小説。手紙を橋渡しする郵便局員の話「光井健次郎の蛇足」が良かった。

 201812月角川書店刊

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道尾秀介著「スケルトン・キー」

2018-12-29 | ま行

週刊誌記者間戸村のスクープ獲得の手伝いをしている僕、坂木錠也。この仕事を選んだのは、スリルのある環境に身を置いて心拍数を上げることで、“もう一人の僕”にならずにすむからだ。昔、児童養護施設「青光園」でともに育ったひかりさんが教えてくれた。僕のような人間を、サイコパスと言うらしい。最近は、抗うつ剤「トリプタノール」を飲むことによりまともな状態を保てている。でもある日、児童養護施設でともに育った仲間「うどん」こと順平から電話がかかってきて、日常が変わりはじめた。これまで必死に守ってきた平穏が、壊れてしまう。

・・・・恐怖という感情を持たないサイコパス、坂木錠也の一人称で物語は進むのだが、第二章までは話は淡々と進むが、第三章でそれまでの内容がガラリと変わる。後半、貴島鍵也が登場してどっちがどっち?だと混乱してしまった。多重人格の殺人者が・・・と思ったら作者のトリックだ。人格を作るのは遺伝か環境か?瀕死の床で母が残した箱「蓋をひらくまで待たなくてはなりません。そして、蓋が開いたら。小箱にどんな素晴らしいものが入っているか、わかることでしょう」(P272)

スケルトンキーは非常に単純なデザインの鍵で、軸は円筒状で、先端に小さく平坦な矩形上の歯(合い形)がついている。スケルトンキーはウォード錠の施錠機構を出し抜くよう設計されている。ウォード錠とその鍵はセキュリティ能力が低く、その鍵と同じ寸法かもっと小さいスケルトンキーでも開錠でき、スケルトンキーは多数のウォード錠を開錠できることが多い。スケルトンキーでなくても、ウォード錠の鍵穴にフィットする物体なら開錠できる可能性があった。ウォード錠は、セキュリティ能力が低いため、より複雑な錠前が製造可能になると廃れていった。今では "skeleton key" は本来の鍵の種類を指すのではなく、「合い鍵」の意味で使われることが多い。ウォード錠は今でも古い家や古い家具などに見られる。』(Wikipediaより)

20187月角川書店刊

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宮部みゆき著「希望荘」

2018-08-24 | ま行

探偵・杉村三郎シリーズの第4弾。前作『ペテロの葬列』で、妻の不倫が原因で離婚をし、義父が経営する今多コンツェルンの仕事をも失った杉村三郎の「その後」を描かれています。失意の杉村は私立探偵としていく決意をし、探偵事務所を開業。ある日、亡き父・武藤寛二が生前に残した「昔、人を殺した」という告白の真偽を調査してほしいという依頼が舞い込む。依頼人の相沢幸司によれば、父は母の不倫による離婚後、息子と再会するまで30年の空白があった。果たして、武藤は人殺しだったのか。35年前の殺人事件の関係者を調べていくと、昨年に起きた女性殺人事件と関連していることが・・・表題作「希望荘」他、死んだはずの老女が車椅子に乗っているのを見たという人がいるという事で真相を探る話・・・「聖域」杉村が家族も仕事も失い、故郷の山梨に帰り、そこからまた東京に戻って探偵事務所を開くまでの経緯が語られる・・・「砂男」東日本大震災の出来事を絡めて展開する行方不明の男を探す・・・「二重身(ドッペルゲンガー)」の4編が収録されている。

探偵として事件の解決に臨む主人公。決して大きな事件ではないがそれぞれストーリーは短編ではあるが結構凝っていて楽しめました。人の恐怖や弱い部分や心理の綾を堪能どれもハッピーエンドではないが読後はほっこり感が味わえました。

2016年6月小学館刊  

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宮本輝著「草花たちの静かな誓い」

2018-08-08 | ま行

アメリカ西海岸ロサンゼルス近郊の高級住宅街が舞台。ロス在住の叔母の、旅行中訪問先での突然の訃報。叔母・菊枝オルコットの死を知り遺骨を抱いて、甥の小畑弦矢が渡米すると、巨額な遺産の相続人として彼が指名されていた。また、27年前に死んだはずの叔母の一人娘レイラが幼くして病死したはずが、実は死んだのではなく、ずっと行方不明なのだと知らされる。なぜ叔母はそのことを黙っていたのか。娘はどこにいるのか。弦矢は私立探偵のニコライ・ベロセルスキーを雇いこの謎を追い始める。そして生き別れた母子の運命と真相を豊かに描き出す。行ったこともない土地とアメリカの金持ち上流階級の話ですがいっきに読めました。海に面した豪華な屋敷の庭に育てられた綺麗な花たちとサンフランシスコの太陽と温暖な気候、キクエによって植えられた色とりどりの草花たちに託されたメッセージが聞こえてくるようです。ミステリー小説としては書かれてないがそんなつもりで読みました。

「心配しても仕方のないことは心配するな・・・。気に病んでもどうにもならないことをつねに気に病む人がいる。不幸というのはいつもそこから生まれてくる」(P282

01612月集英社刊

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道尾秀介著「満月の泥枕」

2018-06-24 | ま行

娘を失った凸貝二美男と母親に捨てられた小4の汐子は、貧乏アパートでその日暮らしの生活を送っている。このアパートの住人は、モノマネ歌手のRYUや年寄り夫婦、大家の息子壺やん、売れない画家の熊垣などの訳アリ人間ばかりだ。凸貝が酔っぱらって公園で見た物騒なものから物語は始まる。二美男は町内の嶺岡剣道場の嶺岡タケルから、秘密裏に公園の池に沈む死体を探してほしいと頼まれる。大金に目がくらみアパートの住民も巻き込んで無謀な企てを実行し、池からとんでもないものが見つかった。その結果、二美男たちは、不可解な事件に巻き込まれていくことに・・・。

涙や笑い、人情噺にアクション、謎解きも何故かドタバタ喜劇のよう。在りそうもない長編話でつまらなそうだがスラスラ読めてしまい、ラストは意外な展開もありなのだが読後感がもう一つ。元夜逃げやの桧川菜々子と二美男をもっと絡ませていたらもっと面白かったのに。生の悲哀、人の優しさが心に染み渡る、人情ミステリーです。

20176月毎日新聞出版刊

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村崎友著「風の歌、星の口笛」

2018-05-01 | ま行

2004年第24回横溝正史ミステリ賞受賞作。SFファンタジーミステリー。

221725万光年の彼方「琴座のベガ」を越えた辺りに地球環境とそっくりな人工惑星で・・・。

3つの物語が描かれそれぞれ謎が示されます。3人の主人公、暇な探偵トッド。25光年を旅してきた科学者ジョー。もう1人は、事故で記憶の混乱に悩む男センマ。バラバラに思えた話が後半パズルのピ―スが見事に嵌るがごとく終焉する抒情性豊かなSFミステリーです。

SF的には突っ込み何処満載だけど細かなことは無視して謎解きを楽しめた。

The earth sings The wind blow

20045月角川書店刊

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森沢明夫著「失恋バスは謎だらけ」

2018-03-15 | ま行

「失恋バスツアー」というツアーの趣旨は、失恋した参加者に、鄙びた旅館、わびしい粗食、うら寂しい観光地を提供してどん底まで落ち込んでもらい、あとは上がるだけ、グイグイ元気になってもらいましょうというもの。経営危機に瀕している旅行会社の名物企画。しかし、添乗員として乗り込んだ37歳の独身天草龍太郎は、カウンセラーとして同じく添乗している小泉小雪先生に自らがフラれたばかりだった。ツアー中も小雪はツレない態度。しかも今回の参加者はとことん濃いメンバーで、やたら元気な金髪ハーフ美女、自称パンクロッカー、修験者のような巨漢、謎の中国人、文学少女ふうお嬢様など、彩りが豊かすぎる9名。ハプニング続きで翻弄される龍太郎。やがてバスが進むうちに意外な事実が次々と明かされていく。笑いあり、涙ありの感動バスツアー。後半明らかになる各人の事情や著者の他の作品に登場の人物「入道さん」などがいて楽しめた。「恋する失恋バスツアー」恋愛物語。

「逆視」(仏教用語)・・・「この世の出来事はすべてプラストマイナスのことが一緒になってやってくる。だからどんなつらい出来事でも、見方ひとつでいい出来事に変えられる」(P263)「たとえそれが物であろうと感情であろうと、それらを得たり失ったりできるということは、すべて『幸せ』というステージ上の出来事だということに。喜びも悲しみも幸せのうち。」(P438)

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森沢明夫著「癒し屋キリコの約束」

2017-12-24 | ま行

昭和歌謡を流す純喫茶「昭和堂」のちょっとミステリアスなオーナー有村霧子と独特な個性を持つ常連客達と訳あり雇われ店長カッキー。その喫茶店の裏稼業が、街の住民の悩みを聞き、それを解決に結び付けようとする「癒し屋」という顔を持ち、様々な人たちの悩みを、奇想天外な方法を使いながら解決していく。噂が噂を呼び、癒しの依頼はひっきりなしだが、依頼者が持ちかける無理難題に、カッキーと常連客たち「アシスタント」はいつも大わらわ。しかも、霧子の奇想天外なアイディアで、結果は必ず予想外の展開へ。そんなある日、店に霧子への殺人予告が届く。

・・・・登場人物たちのミステリーな秘密が徐々に明らかになり殺人予告の結末までの人間ドラマ。以前遼河はるひ主演だったか民放のTVドラマで見た記憶があったがその原作本だった。

「幸せってね、なるものじゃなくて、気づくものなのよ。もし自分のことを不幸だと思ったら、その時は自分の身体の値段を思い出して、ついでに身のまわりのモノを片っ端から値段に置き換えてみるといいわ。・・・家族の値段も含めてね、そしたら、いかに自分は恵ぐまれていて、幸せかってことを思い出せるから」(P160)

「才能ってのはね、成功するまで絶対に努力を止めないって、自分自身を説得し続ける能力のことを言うのよ」(P202)

2014年8月幻冬舎刊

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森沢明夫著「きらきら眼鏡」

2017-12-14 | ま行

愛猫を亡くし、喪失感にうちひしがれていた25歳の営業マン立花明海は、西船橋の古本屋で普段は読まないだろう自己啓発系の本を買う。すると、中に元の持ち主の名刺が栞代わりに挟んであり、明海が最も心を動かされたフレーズにはすでに傍線が引かれていた。気になった明海は悩んだ末名刺の「大滝あかね」にmailする。思いがけず返事があり会うことに。あかねは明るい5歳年上の女性で、日常の物事を幸福感たっぷりに捉えている“幸せの天才”だった。明海には、今まさに恋愛関係に発展しそうな会社の同僚・松原弥生がいたが、あかねの存在が徐々に大きくなっていく。だが・・・あかねには恋人がいた。彼は病に伏し、余命宣告を受けているという。新たな出会いとともに違う人生が現れ、明海は悩み、勇気を奮い、道を決めていく恋愛小説です。「わたしの視界に入ったものすべてを、きらきら輝いたものにしてくれる眼鏡・・・いろんな物事をキラキラしたところにフォーカスする眼鏡を、常にかけたつもりで生活していること」(P162)「人はみんな、生き方と死に方を学んでる学生なんだって」(P337)「「命って、時間の事だからさ。もたもたしてると時間切れになっちゃうぞ」(P359)

2015年11月双葉社刊

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