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読書備忘録

私が読んだ本等の日々の
忘れない為の備忘録です

堂場瞬一著「解」

2013-06-15 | 堂場瞬一
平成元年に大学を卒業して社会へ船出した二人。大江は、大蔵官僚から、IT会社社長を経て政治家に転身。
新聞記者から紆余曲折を経て、人気作家になった鷹西。学生時代に語り合った夢を叶え、政治家と小説家になったのだが、二人の間には忌まわしい1994年の殺人事件の記憶が埋もれていた。
封印された殺人の記憶。バブル崩壊、阪神・淡路大震災、IT革命、そして3.11へと2011年、宿命の対決が幕を開ける。
平成の世を駆け抜けた二人の視点で描かれた。平成元年から2011年までの空気を的確に捉えられていて面白いのだが、
犯行現場犯人動機も始めに語れミステリーの楽しみはない。
著者自ら「私も、2012年までは、読売新聞東京本社という組織の一員だった。2001年から作家と二足のわらじを続けてきたのだが・・・」と語るように鷹西の生き様とダブルのだが、二人の対決場面にあれを持ってくるとは
・・・消化不良っぽい結末で残念。著者の「衆」とは対になる小説らしいのだが?
「絆を大事に・・・絆の意味そのものが変りつつある時代なのだ。・・・過去の絆が解け、人と人のつながりが変りつつある時代なのだ。」(P394)
2012年8月集英社刊
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堂場瞬一著「衆」

2013-04-20 | 堂場瞬一
大学教授鹿野は学生運動時代のある「事件」を忘れられない。1968年、地方都市の私立大学で学生と機動隊との衝突の最中、1人の高校生が命を落としたのだ。
デモ隊の中にいた当時の主力メンバーの鹿野はそれを機に活動をやめ、40年の時を経てその大学の大学院の教授として戻ってくる。
40年前の事件の真相を明らかにしたいと思う鹿野と同じく事件を忘れられない彼の教え子で今は市会議員になっている・石川には別の思いがあった。鹿野は40年前の高校生の死亡の原因について調査するが、当時を知る人たちの口はみな重い・・・。
著者と同年代で分身ともいえる世代的には「新人類」に属する石川には鹿野たちの「団塊の世代」に対する緩い不信感がうかがえる。
学生運動に情熱を捧げていた鹿野や実川や当時の生き残り達のその後の人生の明暗や、世代の違う石川との価値観や考え方の違いなどが書かれているが若い世代にはどうでもよく理解しがたいのではと思えた。
40年以上前の忘れ去れようとしていた事件が、ある出来事をきっかけに様々な形で吹き出し、当時かかわった人、現在も関係する人が翻弄されるミステリーだが堂場氏にしては歯切れの悪い結末だったし団塊の世代の読者としては楽しめないのではと思った。
『人を恨む人生は、長い・・・・恨む相手が分かっていてもいなくても同じだ』(P344)

2012年5月文藝春秋刊
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堂場舜一著「歪」

2012-11-29 | 堂場瞬一
『逸脱』で活躍した県警捜査一課・澤村慶司、コンビを組む初美とプロファイリング担当の橋詰が殺人犯を追うシリーズ第2弾。
東京近郊の長浦市で発生した二つの殺人事件。無関係かと思われた事件に意外な接点が見つかった。
容疑者の男女が同郷出身の同級生で、二人は故郷の駅で偶然出会っていた。容疑者は振り込め詐欺グループのリーダー日向毅雄と、シングルマザーの井沢真菜。
やがて海外逃亡を企てる二人を追い雪深き東北へ向かう。
前作も読了していたのにイマイチ各キャラも思い出せず、振り込み詐欺の元締めたる犯人側の視点から始まる展開だが、真面目に働く人よりも犯罪に手を染める奴等の方が稼ぎが良いとか真菜の心の空っぽさとしたたかさなど後味が悪い全体に漂う寂莫感のようなものもが息苦しく感じ読み進めるのが重かった。
同じ犯罪者を扱った吉田修一の「悪人」を読んだときは感情移入できたけれど何故かそれも出来ないないままでした。
悪人であっても魅力があるとか、納得性がある、感情を揺さぶられるような犯人でないとオモシロくないようです。
2012年1月 角川書店刊
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堂場瞬一著「蒼い猟犬 ー1300万人の人質」

2012-05-20 | 堂場瞬一
“特別捜査第三係”―そこには実務研修で若い刑事を育てるために設立され、実験的に経験が足りない者が集められていた。そんな総勢12名の部署に葛飾南署刑事課にいた若い江上亨も、夢見た警視庁捜査一課のこの新部署に異動となった。他部署のベテラン刑事からは、蔑むように“ひよこ”と呼ばれていらしい江上たちの初任務は、複数の小学校で同時発生した急性食中毒事件。毒物を混入された給食を食べた200人近い児童が腹痛と嘔吐を訴えたのだ。懸命の捜査を開始した警察を嘲笑うかのように、繰り返される犯行、そして犯人はTVの生放送番組の電話相談を利用して都民の生命を人質に都庁に5億円を要求してきた。姿なき脅迫犯を、特捜三係の若き刑事たちは追い詰めることができるのか・・・。
警察小説を堂場さんが書くと有り得ない話でもリアルに起こりうる話しとしてすんなり話しの展開に入っていけて感情移入もしやすい。今回も学校給食にニコチン混入し小学生を狙ったテロと現金強奪事件、犯人を追い詰める後半の終息はあっけなかったが二転する結末は流石。ただ何が言いたかったかは読みとれなかったのは残念。
2011年4月 幻冬舎刊
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堂場瞬一著「共鳴」

2012-03-25 | 堂場瞬一
刑事は退職しても刑事、家族を顧みることなく生きてきた元刑事の祖父・麻生和馬とプチ引きこもりの孫・新城将が、同じ事件に取り組む中で、それぞれの抱える問題にも立ち向かっていくというストーリー。
元刑事/頑固一徹今は小田原の田舎に住み県警防犯アドバイザーのボランティアでご近所トラブルの解決に精を出す74歳の和馬。
一方は、幼い頃両親が離婚父方に引き取られ、大学には進学したけれど祖母の死後引きこもり生活、ネット命の21歳の将。東京の自宅から拉致気味に連れてこられて二人のぎこちない同居生活が始った。
ある日、近所の高校生から「両親が祖母を安楽死させたのではないか」と悩みを打ち明けられ、将は心の奥底に封じ込めていたある疑惑を蘇らせた。共に暮らす中で祖父の生き方を知り、孫は真相を探ろうと決心する。
老人介護、安楽死、尊属殺人、引きこもり、外国人による覚醒剤売買、親子断絶等々の問題を絡めて展開され面白い作品に仕上がっている。
おじいちゃんの抱える問題も孫が抱える問題も、誰もが一度は悩んだことのある悩みでしょう、読後感はいい物語でした。
「人が持っている勇気というのは、決まったサイズしかないのかもしれない。育てることは出来ず、使い果たしたらそれで終りかもしれない。」(P282)


2011年7月中央公論新社刊
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堂場瞬一著「異境」

2012-03-06 | 堂場瞬一
上司との対立から本社社会部を追われ左遷された新聞記者甲斐明人。
飛ばされた横浜支局に着任早々、失踪した後輩二階の行方を追う気の乗らない仕事を命じられる。
でっかいスクープを掴んでいたらしい彼の足跡を辿るうちに神奈川県警の腐敗した内情と謎の外国人犯罪集団の存在に行きつく。二階の捜索願を出したのに県警はのらりくらりと捜索してる様子が見られず、県警は何故か二階の捜索をするなという指示が出てると情報をくれた美貌の女性刑事翔子ははたして信用できる人物なのかスパイなのかと頭の中で問答しつつ互いに協力しながら事件の真相を突き止めていく甲斐の孤独な闘いが始まった・・・。
主人公が個性的な新聞記者という設定、後輩の失踪者はどうなったのかという興味、
最近話題の要塞建物『ヤード』が絡んで畳みかける早い展開に一気に読めました。

 2011年6月小学館刊
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堂場瞬一著「ヒート」

2012-02-28 | 堂場瞬一
箱根駅伝を描いた著者の『チーム』のその後を描いた、陸上小説。
日本男子マラソンの長期低迷傾向に歯止めをかけるため新設された
「東海道マラソン」。
神奈川県知事の指令のもと、日本人選手による「世界最高記録」を狙えるコースの為にペースメーカー始めフラットで走りやすいあらゆるお膳立てがなされたレース。
知事より直々にコース設定から出場者の選定まで任された県庁職員の音無太志と日本記録保持者で最も記録更新の可能性のある山城悟。
多額の報酬を餌にペースメーカーを依頼された元ハーフマラソンの記録保持者甲本剛の視点で展開される。
数々の困難を経て開催されたレースの終盤、思いがけない展開を見せる。
困難と矛盾をはらんだ「世界最高記録」をめぐる男たちの人間ドラマと裏話、疾走感100%のレース展開描写に手に汗を握る感じで読み終えました。
中盤までの運営側と山城・甲本との緩慢なやり取りと微妙なラストが不満点です。
ひよっとして続編が有りえるのかな?
(チーム未読の方は面白さ半減なるかも)
2011年11月 実業之日本社刊
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堂場瞬一著「雪虫」

2011-11-01 | 堂場瞬一
著者デビュー作スポーツ小説『8年』の次に第2作目として発表したのが、祖父と父も刑事で、自身も幼い頃に祖父から捕り物話を聴かされて育ち、なるべくして刑事になった・鳴沢了シリーズ第1作目作品。
冬も押し迫った晩秋の頃、越後湯沢で78歳の老女の刺殺体が発見された。通り魔による犯行か怨恨かと捜査が行き詰る中、刑事の鳴沢了は、その老女が50年前新興宗教『天啓会』の教祖だったことと、同じ頃信者の一人が殺人事件を起こしていたことを突き止める。
二つの事件は関連しているのではと考える了だが、当時の資料は一切残っておらず、当時現役刑事だったはずの祖父は事件を「覚えていない」と言い、捜査本部長の父も関連性を認めようとせず、了を事件から遠ざけようとする。
50年という遠い昔の長い歳月に阻まれながら、生存している当時の幹部信者達の一人一人に会い真相を追う。
長い人気シリーズ第一作で人間臭いカッコイイ刑事鳴沢了誕生物語。

2001年12月中央公論社刊
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堂場瞬一著「八月からの手紙」

2011-10-08 | 堂場瞬一
著者作家生活構想10年あたためていた小説だそうです。1946年東京、戦後復興の庶民の娯楽となる球界秘話。
戦後にある時期一年だけ日本に存在した職業野球の日本リーグの誕生を扱った感動のスポーツ小説。
第二リーグを創設するため監督にと招聘された日系二世矢尾健太郎の回想を通じて、戦前戦後の日本野球や、米国の黒人だけのニグロリーグ、ピッツバーグ・サンズのジョン・ギブソンとの友情を語る。
主人公の矢尾は、 故郷のカルフォルニアから、母国の教育を受けさせたいという父の願いを受けて広島に留学し、
大学を出たあとは野球の道に進んでいた。投手としてプロに進んだ彼は人気を集めるが、肩を壊してアメリカに戻る、そして父の経営する自動車修理工場で働く日々を過ごしていたのだが。・・・
この大戦でアメリカ人でありながら日系人は収容所へ収容される辛い時期を過す。
話しが3つに分かれているようでまとまらない印象を受けたが個々のエピソードはそれなりに感動させられた。
野球が好きで戦前戦中戦後を野球に生きた熱い奴等の感動物語。
2011年6月講談社刊

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堂場 瞬一著「逸 脱」 

2011-03-05 | 堂場瞬一
10年前の連続殺人事件を模倣した、新たな殺人事件が起きた。
そして県警に挑戦するように嘲笑うかのように次々に起こるナイフを使った連続殺人。
鋭い推理と地道な捜査を続ける県警捜査一課の澤村慶司は、上司の捜査一課の西浦管理官と激しく対立し同僚とも浮き気味で孤立を深める中、単身犯人像に迫っていくのだが・・・。
県警に強い恨みを持つ犯人とそれを追う刑事の澤村の2人称で書かれて展開していく。
澤村はどうやら過去の事件から心の苦しみトラウマを抱えているらしい。
悩みながらも自分の信念を貫こうという強い心で犯人を追い詰めていく。
犯人の特徴を行動科学的に分析し、推論することを仕事にするプロファイリングの専門家橋詰とのやり取りは面白い。
追いつ追われつ犯人にやっと澤村が追いついた時、今度の犯人のターゲットは澤村だった。リアル感ある丁寧な描き方でぐんぐん読まされました。

2010年8月 角川書店刊
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堂場 瞬一著「沈黙の檻(おり)」

2011-02-15 | 堂場瞬一
2年前に時効を迎え迷宮入りした17年前の運送会社社長殺人事件。
週刊誌に暴露記事が掲載された「犯人が激白」「主犯は末松自分はその手伝いをした。」と・・・名指しされた運送会社社長・末松。
なぜか犯行を否定せず、マスコミに「ノーコメント」と繰り返すのみ。
その末松が交通事故に見せかけ命が狙われた。
迷宮入りの事件との関連がありそうで気が進まない捜査だったが命ざれるまま末松の事情聴取に赴いた所轄署の刑事・氷室は、彼と話すうちに彼の人間的魅力に惹かれ始める。
一方、かつての事件で実父を殺された青年杉沢武則は、今では親父と慕う末松社長の無実を信じていたのだが犯行をはっきり否定しない末松に動揺し激興した揚句会社を飛び出してしまう。
そして新たな殺人が起きる。
署から孤立し応援が無いままモクモクと捜査をする氷室。
当時の事件の関係者が全て口を閉ざして沈黙を守る中、展開は遅く遅遅と進まないが一歩一歩真相に迫る氷室。
やがて、雪が降る深夜、息詰まる攻防のすえ事件の全貌が明らかになる瞬間が・・・。
派手な展開はないが哀切漂う警察小説でした。
『自分の権利ばかりをまくしたてる被害者、何が悪いのか分かっていない犯人・・・』(31P)

2010年10月 中央公論新社刊
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堂場舜一著「長き雨の烙印」

2010-09-24 | 堂場瞬一
20年前殺人事件の犯人として連行される親友の庄司を、学生の伊達はただ見送るしかなかった。
県警捜査一課で中堅の刑事となった今、服役を終えた庄司が冤罪を申し立てた。
しかし、その直後に再び似通った手口の女児暴行事件が起きる。
主人公は県警捜査一課の伊達明人は20年前のある記憶を胸に、かつて庄司を逮捕し調書を取ったベテラン刑事・脇坂と対立しながらも、捜査にあたる。
20年前の被害者の親、外車ディラーの社長桑原直弥と庄司の冤罪裁判の支援弁護士有田の3人称で展開される。
潮灘は東京から高速で3時間かかる太平洋に面した人口30万人の県庁所在地。
伊達はそこの汐灘署に勤務している。
そこで起きた事件、海岸に靴だけが突き出た形で,小学校低学年の女児が埋められていたのだ、その事件の被疑者として、
20年前にも同じような事件を起こし服役をおえてひっそりと暮らしていた庄司が別件で逮捕されたがたいした証拠もないため拘留されが結局釈放される。
登場人物が皆性格的に暗くて其々問題を抱え話しの展開も遅くイライラするのはしかたがないのか?
20年前の事件の真実の可能性もわからないでもないが、今回の事件はナツトクしかねる。
脇坂という先輩刑事の描き方にもかなり無理があるし、節の終わりにある犯人の独白は最後に犯人が解って読み返しても意味不明の唐突感は否めない。
主人公・伊達刑事のキャラクターがもっと明るく前向きな描き方がされていればもっと違った印象なったろうに有田弁護士といい残念な暗い登場人物ばかりで・・・
読後感はタイトルのそのままの印象でした。

2007年11月 中央公論社刊
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堂場 瞬一著「虚 報」

2010-07-11 | 堂場瞬一
虚報とは、 間違った情報。 偽りの知らせのこと。
東日新聞長野支局から東京本社社会部へ異動してきた長妻厚樹は、何人か集まり、睡眠薬を飲んだ上にビニール袋をかぶって窒息するという手口の自殺が全国で頻発していた
「ビニール袋集団自殺」を取材していた。
この自殺に有名大学教授のNETサイトが影響していると週刊誌が先にスクープ。
さらに、この大学教授が記者会見を開いたことで報道活戦は過熱する。
社会部キャップの市川博史の指示で取材に駆け回る長妻だったが、東日新聞は他紙がスクープ記事を出す中、常に遅れをとっていた。
追い込まれる市川と長妻。連続自殺事件を追う新聞記者を主人公に、組織内の軋轢や警察の思惑などが絡み、
事件の真相に迫る記者が陥った思わぬ「落とし穴」と、「新聞ジャーナリズム」の世界で生きる男たちの苦悩を描いたサスペンス小説です。
負け続け疲労が頂点に達していたそんな時かかって来た一本の電話をもとに抜かれ続けてきた長妻が起死回生のスクープを放つが、それが彼を窮地に追い込んでいく・・・。
守りのミスと攻めのミス、若き記者に降りかかる迷いの一瞬や、苦悩の心理描写は凄い。
近い将来ネット社会の中で駅売り、宅配新聞の果たす役割が疑問視される中でその最前線で活動する新聞記者が苦労して書く記事の裏事情を知った。

2010年1月文藝春秋刊
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堂場瞬一 著「夜の終焉」

2009-11-29 | 堂場瞬一
父母を殺され、いわれなき中傷を受けた真野亮介は、故郷・汐灘を捨て、独り厚木でひっそりと深夜営業の喫茶店を営む。
ある早朝、閉店間際の店を訪れた少女が店を出たところで事故に遭い、意識不明の重態に。
身元がわからない彼女の持つ手掛りの地図を頼りに、二十年ぶりに、汐灘に向かう。
一方父が殺人を犯し、家族がバラバラになり検事になる夢を諦めた川上譲は、東京で弁護士として、仕事に邁進していた。
そこに舞いこんだ故郷・汐灘からの依頼。死刑を望む殺人犯の弁護。
彼もまた二十年ぶりに、汐灘に向かう。
繭のように自分の殻の暗闇に閉じこもり、「殺人者の息子」への偏見に耐えてきた真野と封じ込めたはずの事件への恨みにさいなまれる川上、
犯罪被害者と加害者双方の家族が抱えるどこまでも深い闇をリアルさと心理状態を筆致で描いたミステリー人間ドラマ。
『きちんと生きてますか』『毎日100%と生きてきましたか?』(下巻186P)
東京から車で2時間、県庁所在地だが、都会の発展からは取り残されて街は寂れ、閉塞感が漂う架空の街「汐灘(しおなだ)」を舞台に犯罪被害者と加害者双方の家族の2人の男の鬱屈した感情がよく書かれている。
「街そのものが主人公」という著者だが昏睡状態の少女の身元捜しというミステリーの展開の中に心の闇からの開放と夜明けを向かえる
人間ドラマがしっかり描かれ途中少女の身元の想像がついてしまったが最後まで面白く読めた。
2009年10月中央公論新社刊
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堂場瞬一著「ラストダンス」

2009-11-15 | 堂場瞬一
プロ野球「スターズ」の同期、投手の真田誠と捕手の樋口孝明。
17年前にただ一度だけバッテリーを組んで大敗をした経験がある二人、その野球人生は常に対照的だった。
ドラフト二位で即戦力と期待された樋口はついにレギュラーを奪えず、真田はドラフト五位から球界を代表するスター投手へとのし上がる。
そして今季、球界最年長・40歳の二人に引き際が訪れた。
二軍監督要請という形で引退勧告を受けた樋口に対し、真田はシーズン半ばで突然引退会見を行う。
ところが引退宣言以降の登板で真田は連勝、低迷していたチームも優勝争いにからむ快進撃を始めたのだ。
シーズン終盤、正捕手の負傷で一軍に昇格した樋口と真田に17年ぶりのバッテリーを組む日が到来する。
展開は読めているのに試合の臨場感や心理描写は流石、スポーツ物得意の著者だけあって厭きさせない。
特に避けあっていた二人がお互いを認め合うようになっていく終盤の優勝と引退試合の係った試合の中で
選手同士が繰り広げる駆け引きハラハラドキドキの臨場感がたまらない。
架空の世界だがスターズが実在のどこの球団で誰がモデルかなど想像しながら最後まで楽しめた。
2009年9月 実業之日本社刊
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