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読書備忘録

私が読んだ本等の日々の
忘れない為の備忘録です

堂場瞬一著「犬の報酬」

2018-02-04 | 堂場瞬一

大手メーカーのタチ自動車は、自動運転技術の開発に取り組んでいたが、政府の特区に指定されている千葉・幕張での実証実験中、実験車両が衝突事故を起こす。軽微な事故ということもあり、警察は発表しなかったが数日後、この事故に関するニュースが東日新聞に掲載される。同紙社会部遊軍キャップの畠中孝介に内部告発者が垂れ込んだのだ。情報を流したのは、いったい誰なのか?過去のトラブル対応時の手際から社内で「スーパー総務」と揶揄されるタチ自動車本社総務課係長・伊佐美祐志を中心に、「犯人探し」のプロジェクトチームが発足するが ・・・

大手自動車メーカーの「事故隠し」を巡る、三つ巴の、虚々実々の攻防。新聞記者、総務のエース、内部告発者、それぞれの立場から正義を語るのだが。内部告発者は一体誰・その目的は、がミステリーになり進んでいく人間ドラマ。企業倫理と共に、マスコミの報道を越えた社会的制裁の影響について考えさせられた。リークには思惑があるはずなのに・・・・。

「あなたにはあなたの正義があります。でもその正義は、世間の正義とはずれている。私は、自分の正義は世間の正義と合致していると信じています。」(P359)「物事は,今日と明日のことだけで決まるわけではない。五年後、十年後を見なければ」(P403)「物事には必ず表と裏がある。」(P405)2017年3月中央公論新社刊

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堂場瞬一著「執着 捜査一課・澤村慶司」

2017-06-01 | 堂場瞬一

「逸脱」「歪」に続く澤村シリーズ第3弾。捜査一課から長浦南署に異動を言い渡された澤村が1週間の特別休暇を出された休暇中に異動の長浦南署にストーカー被害を訴えていた女性が焼殺されるという不祥事が起きる。澤村は居ても立っても居られず休暇中にもかかわらず被害現場の新潟へ飛ぶ。サイコで異常な執着を見せるストーカー犯人。第2の犠牲者が爆殺されるに及んで途中捜査一課長から事件の捜査に加わることの許可を得て犯人を追詰めることに・・・。

前作も前前作も読んでいたのだが記憶にない中読み進める。サイコな犯人と澤村や情報統計官の特異キャラの橋詰真之警部との掛け合いが面白く読めた。事件を未然に防げなかった警察の失態と、それを嘲笑うかのような大胆な凶行へと展開もいい。澤村の人間関係と心理描写・葛藤が面白い。

2015年2月角川書店刊

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堂場瞬一著「over the edge」

2017-04-21 | 堂場瞬一

NY市警のエリート警官ブラウンと警視庁刑事崩れの探偵・濱崎が、東京を舞台に世界的IT企業重役失踪事件を追って、反発し合いながらも互いの正義を信じて闘うハードボイルド小説。

視察のため来日したニューヨーク市警のブラウンには裏の目的があった。東京で失踪した旧友ホワイトを個人的に捜すのだ。ホワイトは世界的IT企業の幹部で日本支社設立に動いていた。だが調査開始直後、ブラウンは何者かに襲われる。彼を助けたのは元刑事の探偵・濱崎だった。面白いから手伝うという濱崎にブラウンは反発を覚えつつも、いつのまにか手を組むことになり、二人が人種や立場の境(エッジ)を越えて真実を暴いていく。

展開が遅く性格の違う二人の関係がまどろこいかしいが、刑事を辞めた訳も明らかになり面白く読めた。

2012年11月早川書房刊

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堂場瞬一著「夏の雷音」

2016-07-28 | 堂場瞬一
ミステリー。神保町のギターショップから消えたアメリカのオークションで1億2000万円で落札されたギブソン58という幻の名器、
所謂ビンテージのエレキギター。盗難にあった店のオーナー安田から、神保町にある明央大学法学部准教授の吾妻幹が行方捜査を頼まれる。
吾妻は生まれも育ちも神保町、愛する街で起こった事件に教え子の女子大生逢沢杏子を助手にして調べていく。
やがて店のオーナーの安田が殺されて・・・。
億単位の値がつくヴィンテージギター業界の内情、オークションの世界のからくりを知る。
そんな吾妻の前に地元神田署の敦賀刑事が立ちはだかるが・・・。
神保町界隈の地理や店の薀蓄やヴィンテージギターの評価・流通の特殊性などが語られるが興味ない地方の者には展開が
遅く感じるだけで面白味がなかった。2015年4月小学館刊
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堂場瞬一著「Killers」上・下

2016-05-15 | 堂場瞬一
著者2000年デビューから100冊目の作品。
1961年から2015年までの一人の殺人犯と、彼に関わる家族、そして三世代に渡り犯人を追い続ける刑事。
オリンピックの度に形を変える渋谷の街の姿を背景にしたハードボイルド小説。群像劇ではあるが主人公は稀代の犯罪者・長野保。
2020年東京五輪に向けて再開発が進む渋谷区の古アパートで老人の他殺体が発見され、所持品からかって殺人事件の重要参考人と
された長野保の免許書が共に発見される。一体この男は何者なのか。
東京オリンピック開催前の1961年から続く連続殺人事件の容疑者・長野保は「殺人」に恐るべきこだわりを持ち、
迷いなく殺しを遂行していく天才的な頭脳を持ちながら「社会の浄化」の為に殺人を重ねる男。
それはまるでストイックな一流アスリートにも似た一面を持ち人の命を奪うことに何の躊躇も憐憫も持たない徹底した悪人特異な殺人鬼だ。
同時に「殺人者」長野は、高度成長期、バブル期と刻々変わりゆく地元の街・渋谷をこよなく愛する人物。
その変化を愛するからこそ、「老廃物」を排除し、浄化するという使命感で青年時代から老人などをターゲットに殺人を繰り返すのだ。
長野は有名政治家の次男として生まれ、「東大開闢以来の天才」と言われた時期もあった。
独りよがりの殺人を正当化しつつ、衝動的に犯行に及ぶことが多く不可解。
首都の中枢に普段はひっそりと隠れ棲むが、街が再開発で変容する転換期に「神の裁き」を示すかのように人を殺す。
だが被害者は的にしやすい老人ばかり。彼は、自分が生存する痕跡をどこにも残さない。
それは未解決事件の連鎖からネットでは彼の行動が拡散されて都市伝説が生まれてきていた。
もし殺人者の生まれる原因があるとすれば
「活気あふれ、変化を好む大都市の裏側に、人々の発散できない不満や欲望を吸い込み、
殺人衝動さえ生まれる暗部がある街そのものが原因かもしれない。」と語られるが理解に苦しむ。
殺人者側と、刑事や新聞記者の追跡者側の関係は、血縁など複雑に入り組み、3世代にまたがる攻防を繰り広げて展開される。
追跡者は何度も挫折を繰り返すが、徐々に殺人者を追い詰めていく過程はスリリングだった。
2015年10月講談社刊
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堂場瞬一著「グレイ」

2015-10-06 | 堂場瞬一
ピカレスクロマン
小説。舞台はバブル期の1983年、二十歳になったばかりの夏、下宿生の貧乏暮らしに汲々としていた大学2年生の波田憲司は、
日給1万円の街頭調査のバイトで仕事ぶりを見込まれ、著名な経済評論家・北川啓が主宰する「北川社会情報研究所」に破格の待遇で契約社員になる。
自らの運命を大きく狂わせる一歩だとは知らずに・・・。希望に満ちた青年を待ち受ける恐ろしい罠。潰すか、潰されるか孤独な闘いが始まった。
この時代昭和58年自分は何をしていただろう。PC時代の幕開けPC9801が発売されたころの当時を懐かしく思い出しながら読んだ。
人物の掘り下げは弱い感じもするがさも有りそうな展開で波田のその後が予想できそうな結末で面白かった。
「これからの世の中を渡っていくのに一番大事なのは情報だ。金ではない。金は情報から生み出される副産物のようなもので、
そこに執着すると失敗する。情報さえ集めておけば、そこから金は出てくるのだ。」(P358)
2014年4月集英社刊
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堂場瞬一著「埋れた牙」

2015-09-03 | 堂場瞬一
ベテラン刑事の瀧靖春は、元市議の父親の病後のリハビリを手伝うため自ら願い出て、警視庁捜査一課から生まれ
育った吉祥寺を管轄する武蔵野中央署に移った。ある日、署の交通課の前でうろうろする大学時代の旧友、長崎を見かける。
事情を聞くと、群馬から出てきている姪で女子大生の恵の行方がわからなくなっているという。
新人女性刑事の野田あかねの「教育」もかねて、まず二人だけの「捜査」を始めると、恵の失踪は、
過去にも10年ごとに行方不明の未解決事件へとつながっていった。
途中何度も犯人の視点の小さな状況が挿入されて犯人の予想がついてしまった。
ほぼ予測した結果どおり進展し結末も予想通リでややスリリングさミステリー性に欠けて、捜査手法のみの
興味で読み終えた。解決のキッカケも唐突過ぎて残念。
2014年10月講談社刊
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堂場瞬一著「警察(サツ)回りの夏」

2015-03-01 | 堂場瞬一
甲府市内で幼い5歳と3歳の姉妹の殺害事件が発生した。盗みの形跡はなく、育児放棄気味の
母親湯川和佳奈は消息不明。
マスコミは「虐待の末の殺人では」と報道を過熱させていく。
日本新報甲府支局のサツ回り担当の若手記者南康祐は、この事件を本社栄転の
チャンスにしようと取材を続けていた。
だが、殺害された姉妹の祖父が度重なるマスコミの取材攻勢によって追いつめられて自殺未遂。
世間のムードは母親叩きからマスコミ叩きへと一変。
粘り強く取材を続けていた南は、警察内部からのリークで犯人につながる重要な情報を掴み他社に先駆けて特ダネ記事を書くがそこには、大きな罠が待ち受けていたのだった。
・・・やがて日本新報本社では、甲府2女児殺害事件の誤報報道に関する調査委員会が立ち上げられる。
元新聞記者でメディア論研究者の高石が調査委員会委員長に抜擢。事件報道の背景を徹底調査しはじめる。
地方新聞記者が主人公の警察物は横山秀夫のミステリーが思い出され前半の部分では似ているなという印象で
展開が遅く犯人の予想もつくのだが中盤あたりからリークが陰謀臭くなるにつれ
果たして黒幕はどこ真相は何に興味が?ミステリーよりも 報道の使命とは何かとか権力とマスコミ、ネット社会とマスコミなど現代社会の問題点が浮き彫りにされる。しかしここに出てくる育児放棄の自己中母親はひどいなぁ~。

2014年9月集英社刊
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堂場瞬一著「誤断」

2015-02-25 | 堂場瞬一
主人公の槙田高弘が勤める長原製薬の製品が、死亡事故に関わっている? 副社長直々に調査を命じられた広報部の槇田は、各地の警察に赴き、密かに自社製品の使用履歴を調べることに。
経営不振で外資企業と合併交渉中の長原製薬にとって、この時期の不祥事は致命的。
槇田は被害者家族の口を金で封じるという業務を任されるが、そこに40年前の公害事件が再燃しくる。・・・
企業の不祥事の隠蔽と企業に人生を捧げた者の裏の顔。揺れ動くサラリーマン心理がよく書かれている。
その時々の一瞬一瞬に下す判断と選択。主人公が独身者のため人生の重さが伝わってこないのは残念。
家族持ちでの展開とか恋愛なども絡んで来ればもっと面白かったのにと思う。
2014年11月中央公論出版刊

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堂場瞬一著「内通者」

2014-08-26 | 堂場瞬一
千葉県警捜査二課の結城孝道は、 千葉県土木局と房総建設会社の護岸補強工事に絡む贈収賄事件を追っていた。
捜査の発端になったのは、房総建設社員・椎名からの内部告発であり、 彼の情報により、捜査二課は、金銭授受と思われる現場の撮影に成功する。
そんな中、最愛の妻美貴を病気で失ってしまう。
彼は、ひとときでも悲しみを忘れようと捜査に没頭するが、ある日、椎名が結城から暴行を受けたと訴え、そのまま行方をくらました。
当面、結城は捜査から外されることになったが、その間、東京で暮らす一人娘の若葉から連絡があり、ストーカー被害について相談される。それから間をおかず、彼女は何者かに拉致されてしまう。
結城は刑事として、そして父親として、犯人と対峙していくが・・・。
犯人の動機がもう一つしっくりこなかった。意外性にも欠けて可もなく読了。
2014年2月朝日出版刊
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堂場瞬一著「穢れた手」

2014-08-02 | 堂場瞬一
収賄容疑で逮捕された同期の刑事高坂が処分保留で釈放された。
無実だ、親友の桐谷は確信していた。そして贈賄側の男も釈放。逮捕時点で解雇の決まった親友の名誉を回復すべく、
桐谷はひとり動き始めたのだが、しかし関係者が殺され、事態は思いもかけない方向に・・・

展開がだらだらヒロイン不在で魅力的人物が見当たらない中「煮え切らない気だるさ」が漂うまま結末が、
意外性も感じられず真相もイマイチ、ハッピーエンドでもなくガッカリな小説かな?
2013年1月東京創元社刊
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堂場瞬一著「ラスト・コード」

2014-05-11 | 堂場瞬一
父親が何者かに惨殺され留学先のアメリカから帰国した14歳の中学生一柳美咲。
母親はすでに亡くなっており親族もいない為、渋谷中央署の筒井刑事は彼女を羽田に迎えに行くが、その帰路、何者かに襲撃される。
犯人の標的は筒井なのか?それとも美咲?・・・しかし、それは序章に過ぎなかった。
上司や同僚などのよそよそしい態度と違和感ある対応に過去の事件で知り合った私立探偵「冴」の事務所に逃げ込む。
そして
熱血刑事と天才少女息詰まる孤独な逃避行が始まる・・・。
事件の背景の設定に無理が感じられる、途中から鳴沢了シリーズの面々が登場するのだがあくまでも2人が中心。
巨大な政治的陰謀に巻き込れたまま右往左往、また扱い難い思春期の生意気な少女と困惑した筒井の掛け合いが面白かったが、
納得性に欠ける展開で面白さ半減だった。
2012年7月中央公論新社刊
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堂場瞬一著「傷」

2014-01-21 | 堂場瞬一
2年連続の首位打者だったが膝の負傷で戦線離脱中に手術を受け失敗したプロ野球界の看板選手石地孝哉は、再起を目指すなか、「わざとミスをされた」と担当した医師を医療過誤事件として刑事告発する。
告発されたスポーツ医学界の権威だった担当医高峰は失踪していた。告発を受け警察、新聞はそれぞれの立場から様子を探るが、真相は見えてこない。
抜擢され刑事に昇格したばかりの若手青井刑事は成果を上げるべく奔走するがコンビを組む先輩刑事からは何かと軽視されがちで・・・一方今回の事件の記事を担当させられた社会部記者でアラサー女性記者西潟理恵とは意外な場所で出会い記者と刑事の奇妙なコンビが成立して・・・。
女性記者に導かれるようにして、初事件にして難事件に取り組む新人・刑事青井の成長を描きつつ球界・医療・警察を絡ませた刑事ミステリーが展開される。
マスコミと刑事が組むとは考えられない事態だがテンポよく組織・各界の事情がそれらしく展開され面白く読めた。
プロ野球界と大リーグ移籍問題など語られリアル感があった。

2013年9月講談社刊
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堂場瞬一著「Sの継承」

2013-11-15 | 堂場瞬一
1963年、五輪前夜に人知れず計画され闇に葬られたクーデターと2013年、警察を翻弄する連続毒ガス事件。
時空を超えたふたつの事件を繋ぐミッシングリンクは白骨死体と「S」だった。
前半第一部は、東京オリンピック開催の前年に計画された、あるクーデター事件をめぐり展開していく。
日本中が騒然とした60年安保闘争を経てまもない頃、群馬県の前橋で、財界の大物とつながった青年が、ひそかに毒ガス開発を行っていたのだ。
そして第二部、2013年の東京で大事件が発生する。Sと名乗る毒ガス犯が国会議事堂裏で車に立てこもり、議員総辞職を要求する前代未聞のテロ犯罪。序章および第二部では毒ガス犯を追う警視庁捜査一課特殊班警部補・峰脇の視点で展開される。
仮想空間と現実世界との境界が認識できなくなった若者たちが、一度も会った事がなくともインターネットだけで交わされる犯罪請負契約。スマホを用いた脅迫と起爆装置の遠隔操作。不特定多数に向けた掲示板上での情報の垂れ流しと煽動。
今、日本で大規模なクーデター事件が発生するとはおよそ考えづらい、だが戦後、三無事件、三島事件などの未遂事件が起きている。
もしくは連続企業爆破事件や地下鉄サリン事件などの大きなテロ事件があった。
選挙で政権が交代しても、格差はなくならず取り残され、生活が苦しいままの国民はいる。民意がどこにも反映されていないと感じ、政治への不信をつのらせて明らかなクーデターではなくとも、想定外の大事件が起こる可能性はないとはいえない時代で政治不信という火種は常にくすぶっている。
国のあり方に批判的なグループが、なんらかの犯行を企てる可能性はある。政治的無関心が蔓延した現代にあっては、第一部のわずか半世紀前に設定された事件の背景すらすでにはるか遠い昔の日本の話としか思えなく読んでいても面白みがない。
しかしその違和感が逆に、ありそうもないテロ計画にある種のリアリティーを感じさせる構成は仕方がないのかもしれない。
しかも、描かれている展開は、どこか行き当たりばったりで詰めの甘い犯行とその捜査の一部始終であるので読後感はスッキリしなかった。
犯人Sが言う「俺が死んでも後に続く人間はいる」という言葉に今の日本社会の病巣を感じた。

2013年8月中央公論新社刊
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堂場瞬一著「暗転」

2013-07-02 | 堂場瞬一
朝の通勤ラッシュ時、満員の乗客を乗せ、急カーブにさしかかった電車が突如、脱線・転覆した。
偶然、その電車の1両目に乗っていた週刊誌記者の辰巳は、搬送された病院で、続々と入ってくる事故の情報に慄然とする。凄惨な現場を思い出すたびに身体が震えてあまりのショックに記事を書くことができない辰巳だが、死んでしまった自分の下敷きになっていて後に助け出された女性涼子の婚約者の男性から、事件の原因を調べて書いてくれといわれて調査を始める。
関係者の事情聴取を進める警察、被害者の遺族、そして、異例の会見を開く鉄道会社側。それぞれの思惑が交錯する中、事故の真相は少しづつ明らかになっていくのだが・・・。
読んでいてJR福知山線脱線事故を思い浮かべた。涼子の婚約者の男、現場の救出に立ち合い捜査本部にも入った老警察官の高石、東広鉄道広報担当者の御手洗などの視点で、企業の隠蔽が明らかにされていく過程が面白い。
予想通りの展開だったが視点を変えないで一人の視点でストーリーを繋いで欲しかった。

2012年6月朝日新聞出版刊
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