大手メーカーのタチ自動車は、自動運転技術の開発に取り組んでいたが、政府の特区に指定されている千葉・幕張での実証実験中、実験車両が衝突事故を起こす。軽微な事故ということもあり、警察は発表しなかったが数日後、この事故に関するニュースが東日新聞に掲載される。同紙社会部遊軍キャップの畠中孝介に内部告発者が垂れ込んだのだ。情報を流したのは、いったい誰なのか?過去のトラブル対応時の手際から社内で「スーパー総務」と揶揄されるタチ自動車本社総務課係長・伊佐美祐志を中心に、「犯人探し」のプロジェクトチームが発足するが ・・・
大手自動車メーカーの「事故隠し」を巡る、三つ巴の、虚々実々の攻防。新聞記者、総務のエース、内部告発者、それぞれの立場から正義を語るのだが。内部告発者は一体誰・その目的は、がミステリーになり進んでいく人間ドラマ。企業倫理と共に、マスコミの報道を越えた社会的制裁の影響について考えさせられた。リークには思惑があるはずなのに・・・・。
「あなたにはあなたの正義があります。でもその正義は、世間の正義とはずれている。私は、自分の正義は世間の正義と合致していると信じています。」(P359)「物事は,今日と明日のことだけで決まるわけではない。五年後、十年後を見なければ」(P403)「物事には必ず表と裏がある。」(P405)2017年3月中央公論新社刊