メランコリア

メランコリアの国にようこそ。
ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

シャーロック=ホームズ全集 6 シャーロック=ホームズの冒険 下

2021-07-17 12:51:01 | 
コナン=ドイル/著 平賀悦子ほか/訳 偕成社

初版1983.6 1989年9刷
市川英夫&プラスB/装丁 シドニー・パジェット/挿絵

「ジュヴェナイル」カテゴリー内に追加します



シャーロック=ホームズの冒険 上






以前あとがきにもあったように、たしかに原題を見ると
「The Adventure of~」(~の冒険)というタイトルが多く
ドイルが冒険小説として書いていることが分かる

本書はワトソンが結婚して間もないか、結婚の少し前の話が書かれている
上巻でホームズはアイリーンのことを名前で呼ばず「あの女性」と呼ぶとあるのに
下巻では名前で呼んでいる

通して読むとすぐに気づくこうした伏線の誤りも
当時書いている本人は気付かなかったのだろうか?

その他、本書でもまたホームズのクセ
ワトソンとの関係などが垣間見れて興味深い




【内容抜粋メモ】

青い紅玉
クリスマスの2日後、ワトソンはホームズに挨拶しに寄る
ホームズはフェルト帽を調べていた





ホームズ:
これほど大勢がひしめきあって暮らせば
互いにぶつかり、いろいろな出来事が起こり
あらゆる組み合わせの繋がりが生まれる

ワトソン:
最近の6つの事件を事件簿に加えたが
そのうち3つは法律では罪にならないものだった

ホームズ:
アイリーンの「ボヘミアの醜聞」
「花むこ失踪事件」など
今度の事件も無害だろう

便利屋のピータースンが見つけた帽子だ
クリスマスの朝、よく太ったガチョウと一緒に拾って僕の所に持ってきた
「ヘンリー・ベーカー夫人へ」というカードが鳥の足に結んである

帽子から持ち主を推理するホームズに驚くワトソン

ホームズ:
君は何もかも見ているが、そこから推理するのが苦手なんだ
持ち主は知識があり、はぶりが良かったが落ち目になった

これほど大きな頭なら中身も相当だ
これは最高級の帽子だが
数週間もブラシをかけていない

君の帽子に埃がたまっていたら
可哀想にワトソンも奥さんの愛情を失ったと心配になるよ

ガスを使わないのは、ロウソク(獣脂が含まれている!?)がついているから分かる

ピータースンの妻はガチョウの餌袋(なにかと思ったけど内臓か?)からダイヤモンドを見つけて驚く
モーカール伯爵夫人の紅玉で賞金1000ポンドかけられている





コスモポリタンホテルでなくなり
鉛管工ジョン・ホナーが逮捕されたが宝石は見つからない

ホームズは帽子とガチョウを見つけたと新聞広告に載せる

ホームズ:
こういう石は犯罪の大もとになるんだ
この石には殺人が2件、自殺が1件などの歴史がまつわりついている

ヘンリーは潔白だと思う
ジョンの無実を証明できなければ7年の刑が言い渡される

ヘンリーが広告を見てやって来る
餌袋も持ってかえるか聞くと、笑って断る





ガチョウはアルファの店で買ったと言い、早速行ってみると
主人はブレックンリッジという鳥屋から仕入れたと話す

ブレックンリッジを訪ねると
鳥屋の男は他の男にも同じことを聞かれたと怒る

ホームズは鳥が田舎で育てたと賭けをしたと話すと
鳥屋は町で育てたと賭けに乗り
養鶏業者オークショット夫人から買ったと分かる

鳥屋とケンカした男ジェームズ・ライダと話す
コスモポリタンホテルの事務長で、あるガチョウを探している

ホームズ:
万事休すだ
ひと財産手に入れようなんてお前には無理だった
お前と共犯者は伯爵夫人の部屋にジョンを呼び
彼が帰ってから宝石を盗み盗難だと騒いだ

ジョンは跪いて許しを乞い、二度としない、姿を消すと誓う





ジョンの姉はオークショット
札付きの友人とともにガチョウの腹に宝石を入れて運ぶ計画だったが
逃げたため、群れの中から捕まえて家で開くと宝石がない
姉に聞くと似た模様の鳥がもう1羽いたと知り間違えたと気づいた

ホームズ:出て行け!
ジョン:なんとありがたい!

ホームズ:
僕は警察に雇われて、頭の悪い連中を助けているわけじゃない
でも、ライダが姿を消せば、二度とジョンに不利な証言はしないから
訴訟は取り下げになるだろう

クリスマスか 奇妙な事件のチャンスに恵まれたし
食事という捜査を始めよう
また鳥が主役ってとこかな


まだらの紐
この8年間でホームズが解決した70ほどの事件で
平凡と言えるものは1つもない
興味のない事件は引き受けないから

私が一番楽しみにしているのは、ホームズが探偵をしている時
そばでじっと見ること

依頼人の若い女性ヘレン・ストナーは土気色の顔で事務所に来る
ホームズは仕事をするのが礼金みたいなものだと報酬を辞退する









ヘレン:
私は義父と暮らしています
ロイロット家はイギリスでも有数の伝統あるサクソン系の一族ですが
完全に没落しました

義父は医者になり、インドのカルカッタで腕をふるい開業した
なにかを盗まれたと現地人の執事を殺して刑務所に入っていた

イギリスに戻り、結婚した
母は遺言で財産を博士に譲ることにした

その条件は私と双子の姉のジューリアが博士と暮らすこと
結婚したら2人で分ける

母が亡くなり、屋敷にひっこみ、義父は別人のように変わった
異常な癇癪持ちで警察の世話になったこともある
放浪のジプシーを野営させ、庭にはチータとヒヒを放し飼いにしている

ジューリアは2年前、30歳の若さで亡くなった
姉は叔母の家を訪ねて海兵隊の少佐と会い婚約した
式の2週間前に部屋で真夜中に口笛を聞いたと言い





その深夜、叫び声が聞こえて部屋に入ると
酔っ払いのようにフラフラして痙攣しながら
「まだらの紐!」と言って亡くなった

死因はハッキリしなかった
部屋はカギがかかっていた

紐(バンド)は数人の集まりの意味もあるため
ジプシーたちの仕業かとも疑った

その後、私はパーシーからプロポーズされた
2日前から修理工事が始まり、私は姉の部屋に移された

昨晩、あの口笛が聞こえて、恐ろしくて屋敷を抜け出し
そのままこちらへ伺った

ホームズはヘレンの腕に義父の暴力によるアザを5つ見つける

ホームズ:
あなたの判断は正しかった
ぐずぐずしていられません

義父がロンドンに行っている間、屋敷を調べると約束して別れる

その後、大男の義父ロイロット博士が事務所に来る

ロイロット:
お前のことは知っている 悪党め!
ロンドン警視庁の小役人が威張りくさって

鉄の火かき棒を曲げるのを見せつけて去る
ホームズも同じように曲げてみせる

その後、登記所で亡妻の遺言を確認
2人の娘が結婚すると義父に入るお金はわずかだと分かる

ワトソンと2人で屋敷に行き、ヘレンと落ち合い
早速屋敷をくまなく調べる
修理する必要もなく、部屋をかえさせる口実と知っているヘレン

飾りものの呼び鈴の綱、役に立たない換気孔
博士の部屋には書類の入った金庫と
犬の訓練用の鞭が輪の形にして置いてある


ホームズ:
事態は深刻だ あなたの命がかかっています
博士が戻ったら、頭痛のフリをして寝室にこもり
窓にランプを置いて合図し、右端の部屋に移って
あとは僕たちに任せてください

近くに泊り、ワトソンに謎を話す

ホームズ:
姉のベッドが床に固定してあった
医者が悪だくみを考えると第一級の犯罪者になる

合図が見えて、窓から部屋に入り、何かが起きるのを待つ
換気孔から光が漏れ、音を聞いた瞬間
ホームズはステッキで綱を打ちまくる





口笛が聞こえて、身の毛もよだつ叫び声がした
博士の部屋に行くと、ものすごい形相で死んでいる

ホームズ:
まだらの紐だ!
インドで一番恐ろしい沼ヘビ
博士はあれに噛まれて10秒以内に死んだだろう
他人に危害をくわえれば、自分がその報いを受ける

輪にしたムチでヘビを捕まえ、金庫にしまう

警察は博士は危険なペットと遊び不慮の死を遂げたと判断

ホームズ:
綱は換気孔からベッドまで垂らしてあった
博士はインドで医者をしていたから
化学的検査で発見されない毒殺はヘビだと思いつくだろう

ヘビは僕にステッキでぶたれて、習性が戻り
最初にでくわした人間に飛びかかった
博士が死んだのは間接的に僕の責任ともいえるが
良心の呵責に悩んでいるとは言えない


技師の親指
ワトソンがもちこみホームズが解決した事件は2つ

結婚して間もなく、ワトソンはパディントン駅の近くに開業医をしていて
鉄道職員は治った礼にたくさんの患者を連れて来る

ある日、水力技師ビクター・ハザリーを連れてきた
彼の親指は根本から手斧のようなもので切られていた(うう・・・





ハザリー:傷がなければ警察に話しても信じてもらえない
ワトソン:友人のホームズに行かれるようお勧めします

ホームズの事務所で話しはじめる

ハザリー:
水力技師として独立したが2年間に相談は2、3件

そこにスターク大佐という紳士が来て
絶対秘密厳守でお願いしたいと
1晩で50ギニーの多額な相談料で依頼





以前、土地を買い、漂布土がとれると分かった
両隣がその価値に気づく前に買おうとしたが資金がない

先に自分の土地から取り出して
それで資金を作ればいいと友人に言われて
今やっているが水圧機の具合が悪いから直して欲しい





小さな村まで今晩の最終列車で来て欲しいと言われて行くと
大佐に馬車に押し込まれ12マイルほど走った

窓は曇りガラスで外が見えない
馬車から降りるとすぐ玄関でどんな家かも分からない

玄関に大佐の妻が出て来て、ドイツ語でなにか話すと仰天していた

部屋で待たされていると、婦人が来て
「手遅れにならないうちに出て行ってください!」と切願するが
何も仕事をせず、相談料をふいにするのが惜しかった





婦人は偏執狂だろうと思い
大佐とマネージャーのファーガスンについて
家の中にある巨大な圧縮機を見る

ゴムがすり減り、わずかに水が漏れているとすぐに分かる
漂布土の話もウソだと見抜いて聞くと
大佐によってその部屋に閉じ込められ水圧機が作動する

天井が下りてきて、2枚の板の間を抜けて難を逃れる
婦人:あの人たち、すぐ来ます あの窓しか逃げられる道はない

大佐は手斧を持って来て、窓にかけた指を切り落とした
地面に落ちて、夢中で走り、耳鳴りがして気を失った





気づくと最初の駅の前に倒れていた
赤帽に大佐のことを聞くと、聞いたことがないという

ロンドンに着いて、すぐにワトソンの医院に連れて来られた

ホームズの備忘録から似たような失踪事件がある

ホームズ:一秒もムダにできない

ブラッドストリート警部らとともに駅に向かう

ホームズ:
その場所を指してもいい
12マイルも走ったら馬は疲れているはずだが元気だった
6マイル行き、6マイル戻った

警部:大規模な贋金作りの一味で、半クラウン銀貨を数千枚作っていた

イギリス人のベッカー博士の家から火事と聞き行くと
ハザリー:この家だ!
ホームズ:火事の原因はあなたのランプが水圧機に潰されたから

大佐もマネージャーも婦人も消えた
大きな荷を積んだ馬車が逃げるのが目撃され
硬貨は見つからずじまい

マネージャーが婦人と一緒にハザリーを駅まで運んだと推理
大損したと嘆くハザリーに、貴重な事件を体験したと笑うホームズ


独身の貴族
ワトソンが結婚する数週間前
足に入ったままのジェゼール弾がうずいてイスにかけている

ホームズ:地位の低い人たちからの手紙ほど興味がある

イギリスでの一流の貴族セント・サイモン卿から依頼の手紙が届く
結婚についてレストレード刑事が調査中だが協力していただきたいとある

ワトソンはここ数日読んでいた記事から情報を抜粋して聞かせる

サイモン卿はわずかな領地以外、財産はない
カリフォルニア州の富豪の娘ハッティ・ドーランと婚約

式ではサイモン卿に関係のある女性フローラ・ミラーが騒ぎを起こした







ハッティは気分が悪いと言い、廊下を出たのを目撃されたまま
披露宴の時に行方不明になった

サイモン卿が来て詳しく説明

ハッティの父は鉱山で当てて大金持ちになった
ハッティは野生的でしきたりなどを無視する性格

式の日まで上機嫌だったが、教会で花束を落として
最前列の紳士が拾い、その後、イライラしていた様子

親しい女中アリスと話しこみ
「ジャピング・ア・クレーム(採掘権を盗む)」という言葉が聞こえた

ミラーとは親しく、結婚話を聞くと脅迫の手紙をよこしたため
恥をかかないよう式は内内で済ませようとした
妻はプレッシャーから逃げたのではないか

ホームズ:
事件はもう解決しました
僕は依頼人が来る前に真相をつかんでいた
状況証拠だけでも分かることがある

レストレード警部が来て、これほど分からない事件はないとぼやく(w
池にウエディングドレスなどが落ちていたため
底をさらうとドレスのポケットからメモが出てきた

「用意が全部済んだら会いましょう」

ホームズ:
たしかにこれは重要だ
裏はホテルの請求書だ
1つだけヒントをあげよう
サイモン卿夫人は架空の人物なんだ

ホームズが調査に出た後、豪華な食事が届く

サイモン卿を再び呼び真相を明かす





ホームズ:
ほかにどうしようもなかった
母親がいないため、相談する人がいなかったのです
紹介しますモールトン夫妻です

来たのは最前列にいた紳士モールトンとハッティ

ハッティ:
父の鉱区があったキャンプで2人は知り合いフランクと婚約したが
父に負けない金持ちになるまで帰らないと言いその場で結婚した

その後、鉱山キャンプがアパッチに襲撃され
死亡記事にフランクの名前もあり、死んだものと信じた

サイモン卿のいい妻になろうと決めていたところに
フランクがいるのが目に入り気を失いかけた

フランクはメモを書いていたので
花束を拾うフリして読んだ
サイモン卿には逃げてから後で打ち明けようと思った

フランクはアパッチの捕虜になり、逃げて戻った
彼がウエディングドレスなどを捨ててきた

明日パリに向けて出発するところをホームズさんがみえて
サイモン卿とだけ話し合う機会を作ってくれた

ホームズはサイモン卿を夜食に誘うが断って去る

ホームズ:
昔はおろかな国王や大臣がいた
でも我々の子孫なら、英国国旗と星条旗を1つにした旗のもと
世界に誇れる大国の市民になるだろう


この事件が面白いのは、不可解といわれる事件でも
実に簡単に説明がつくと教えてくれたことだ

クレーム・ジャンピングとは鉱山師(やまし)用語で
他人が先取権を持っているのに横取りする意味

メモを見て、一流ホテルにいると分かった
食事の値段が高かったから

僕は父親のように忠告した
プロポーズや式など面倒臭いことをした挙句
妻も財産も消えたサイモン卿に同情したほうがいい


緑柱石の宝冠
事務所に堂々とした体格の金持ちの男が来る
悲痛と絶望で頭を壁に打ち付けたりして慌てて止める

アレキサンダー・ホールダー:
私はロンドン金融街で2番目に大きい銀行の頭取です
銀行経営は有利な投資先をつかむのも大事

中には貴族も大勢いる
イギリスで最も身分が高い高貴な方が来て
この場で5万ポンドどうしても必要で
月曜に返すまでに保証として緑柱石の宝冠を用意した
39個の緑柱石がはめこまれている

傷1つ付いても国中が大騒ぎになると思い
私物用金庫にしまったが、金庫破りに遭うとも分からないから
自宅のタンスにしまった(それが一番危ないじゃん

家には、妻は亡く、わがままで気まぐれなアーサーという一人息子がいる
金遣いの荒いジョージ・バーンウェル卿をいつも連れて来る
ハンサムで女グセが悪く信用出来ない

姪のメアリーは兄が亡くなり養女にした我が家の太陽
アーサーはメアリーが好き

昨夜、アーサーとメアリーに宝冠のことを話した
メアリーは小間使いのルーシーが恋人と通用門で逢引きしていると言った

夜2時頃、物音で目を覚まして行くと
アーサーが宝冠を持って立っていた





緑柱石が3個欠けていて、盗んだと思いどこへやったと言うと
「こんなに侮辱されたらひと言も言わない」と言う
息子は警察に捕まり、捜査したが宝石は見つからない

ホームズはホールダーの家を調べる

メアリー:アーサーは無実です





宝冠の宝石を取ろうとしても1人の力では無理と分かる

その後、浮浪者の変装をして出かけて帰る
手がかりを夢中で追う時のホームズは何日も帰らないことが多い

再びホールダー氏に来てもらうと
今朝、メアリーの置手紙があり姿を消したと言う

手紙:
おじさまに迷惑をかけました
私を探さないでくださいませ

ホームズ:
これが多分一番いい解決策でしょう
報酬が少し要ります 4000ポンドと小切手に書いてください

ホームズは3個の宝石を出す

ホームズ:
息子さんに心から詫びなければなりませんよ
僕に息子がいて、あのように振る舞ったら誇りに思うでしょう

バーンウェル卿とメアリーさんは今一緒に逃げています
彼はイギリスで最も危険な男です
メアリーはそんなことは全く知らないでいいなりになってしまった

メアリーが宝冠をバーンウェル卿に渡すのを見たアーサーは
裸足のまま追いついて格闘して取り戻したが宝石が欠けていた





それを直しているところに父が来て侮辱した
息子さんは騎士道を選び、彼女の秘密を守ったのです

僕は2人に会い、宝石を買い戻してやろうともちかけた
1個1000ポンドで故買人から買い戻した
やがてあの2人は罰を受けるでしょう


ブナ屋敷
新聞でお目当ての事件がなく、ワトソンの記録にケチをつけはじめるホームズ
彼が陶製でなく桜のパイプを使う時は議論したい気分の時

ホームズ:
芸術のために芸術を愛する者はつまらない表現で嬉しがるものさ
犯罪者は冒険精神と独創性を失っている

バイオレット・ハンターの手紙:
家庭教師の仕事を受けていいものか相談に乗って欲しい





ハンター:
とてもおかしな目に遭っている
家庭教師の紹介所に行くと、太った男性が
「この人に間違いない!」と言って
月4ポンドの破格の給料を出して自分の息子の教師に雇うという

家は田舎のハンプシャーで、子どもは1人 6歳のいたずら小僧
条件は妻のいいつけに従って欲しい
私どもの用意した服を着て、指定したイスに座り
その髪をうんと短く切って欲しい

美しい栗色の髪を切るわけにはいかないと一度は断ったが
家にある請求書の山を見たらぐらついた

そこにあの紳士から手紙が来て、年額120ポンドに上げる
娘のアリスはフィラデルフィアにいて、その服がぴったりだと言われ
行く決心をしたが、あなたの考えを伺いたい

ハンター:後で助けが欲しい時に心強い気持ちになれる
ホームズ:電報をくれればすぐに助けに行きます

ホームズ:
自分の妹ならすすめない
僕だって粘土がなきゃ、レンガは作れない

2週間後「ぜひおいで請う」と電報が来て
ワトソンと一緒に汽車に乗る

ワトソンが田園風景が美しいと言うと

ホームズ:
僕みたいな気質だと悲しいことに何を見ても自分の仕事に結びつけてしまう
あれだけ家が離れていると完全犯罪だってできそうだと
いつもある種の恐怖を感じるね


都会では世論の力が法律の手が届かない所でも働いている
どんなに汚い裏通りでも、子どもがいじめられていれば
近所の人たちが同情したり怒ったりする
治安がしっかりしているから、訴えれば犯罪者は被告席に座る

だが、この寂しい家の中にいるのは
法律などまるで知らぬ連中がほとんどだ
むごい犯罪が起きても誰も気づかないだろう(なるほど





ハンター:
ルーカッスル夫妻から酷い扱いは受けていない
再婚で、前妻の一人娘は義理の母を嫌って家を出たそう

夫人はまったく平凡な女性だが
とても悲しい顔で考えこむことが多い

夫人の気がかりは息子
あれほどひねくれた子どもは見たことない
自分より弱い生き物をいじめるのが面白いらしい

召使の風采や振る舞いが不愉快
トラーはいつも酒のにおいをさせている

着いて3日目に青い服を着て窓際のイスに座り
窓の外に男性がいてジロジロ見ているから追い払うよう言われた

小さな納屋に鎖がかけられ
子牛くらいの巨大なマスチフを飼っていて
夜中に庭に出たら命に関わると忠告を受けた

(『バスカビル家の犬』もそうだったけど
 大きな犬は腹を空かせておけばみんなに噛みつくという誤解を与える言い方
 映画『ジョーズ』の影響でサメはみんな人食いだと思われたのと同じ

切った髪をトランクの底にしまっていたが
鍵のかかった引き出しからまったく同じ色の髪束が見つかって驚いた

別棟には鉄のかんぬきがかかり
そこからルーカッスル氏が腹立たし気に出て来た

昨日、人気のない時に入ってみたら
人が歩いている気配がして恐怖に襲われた
ルーカッスル氏に「今度ここに入ったらマスチフの餌食にするぞ」と脅された





ホームズは、家の中を調べるために
トラー氏の酔っている間、夫人を地下室に閉じ込めてくれと頼む

ホームズ:
屋敷に連れて来られたのは、アリスの身代わりになるためで
彼女はその部屋に閉じ込められている
街道にいた男はたぶん婚約者でしょう

一番重大なのは子どもの性質です
子どもを観察することで、両親の隠された性格を見抜いたことが何度もある


彼は残酷さを楽しんでいる
それはいつもニコニコしている父から受け継いでいるらしい

かんぬきの部屋に行くと、誰もいない
天窓から連れ出されたらしい

ルーカッスル:この泥棒め! もう逃がさんぞ!

トラー:
あの犬には2日も餌をやっていない
早くしないと殺されるぞ!

ワトソンは犬の頭を撃ち抜く(可哀想に・・・
その牙はルーカッスル氏のノドに食い込んでいた

トラー夫人:
ルーカッスルさんはアリスさまの遺産を自由にできる書類にサインさせようとした
アリスさまは断り、高熱で倒れてやせ細り、髪も切られて部屋に閉じ込めた
ファウラーさんは心変わりしなかった

ファウラーがアリスを助けた

ホームズ:
僕らはハンターさんとウィンチェスターに引き上げたほうがよさそうだ
法的立場がかなり怪しくなってきているからね

ルーカッスル氏は命をとりとめたが廃人になった

その後、ハンターは私立学校の校長になった



シャーロック=ホームズを推理する 各務三郎

●ミステリー文学散歩
私はスペード探偵と同じように街を歩いた
ある小説家が好きになると、その舞台を確かめてみたくなる

探偵小説には、国民性、地方色、風俗、習慣などが書き込まれている
分からない箇所があると、中内正利さんの『アメリカの風物』をめくる

イギリスでは「犬は最良の友だち」と言われる
















●ベーカー街探索
(出だしは上巻と同じ文章では?

ドイルはベーカー街の住人に迷惑がかかるのを恐れて
架空の番地をつくりあげた
長い間に番地変更もされて、どの辺りがホームズの下宿のモデルかよく分からない





ワトソンはセント・バーソロミュー病院の化学実験室で初めてホームズと出会う
その入口にも銘板がある

「1881年1月1日 この場所で、次の不滅の言葉が生まれた
 『アフガニスタンからお帰りになりましたね』

これはアメリカのホームズ愛好会の「アマチュア乞食クラブ」が寄贈したもの









ワトソンをホームズに紹介したスタンフォード医師と会ったのはクライテリオン酒場
この銘板を寄贈したのは、東京にあった東洋支部「バリツ」

バリツはモリアーティ教授と死闘した際、日本のレスリングのお蔭で勝った
武術か柔術の間違いだと言われる

この支部は東京の外国人記者が設立したもの
発会式には江戸川乱歩らも招待されて出席した

その後、銘板は誰かに盗まれてしまった






●日本にも多い記念碑
熱海の「お宮の松」と石碑も有名
(私も見たかも 物語を知らないのに頭の中に台詞が流れてきたのがフシギ

城ケ島には北原白秋の詩碑「城ケ島の雨」などがある
日本のミステリーの名場面を記念する銘板もどこかにあるかもしれない



作品解説

●青い紅玉
もともとクリスマスストーリーとは、キリスト生誕を祝う宗教的なもの
クリスマスシーズンは12.24~1.6まで
人々は「天には星、地には平和、心には善意」という言葉をささやき合う


●まだらの紐
探偵小説の代表的な謎づくりに「密室犯罪」がある
ディクスン・カーは「密室の巨匠」と呼ばれる
密室犯罪ばかり集めた『密室殺人傑作選』もある
鎧戸をこじ開けようとしたのは、明らかにポーの『モルグ街の殺人』を意識していた


●技師の親指
ホームズの着眼点の見事さに驚くはず


●独身の貴族
探偵小説では失踪事件がよく扱われる
現代のアメリカでは、毎年、大人が10万人も失踪している(!


●緑柱石の宝冠
緑柱石とはエメラルドのこと


●ブナ屋敷

エリック・アンブラー(イギリスの有名なスパイ小説家):
私は今回初めて本書を読む読者が羨ましい

ホームズ物語は出だしが素晴らしい
なぜ女家庭教師に3倍もの給料を払うのか
愛想の良い雇い主は何を企んでいるのか

世界の有名人の名言を編集した引用句事典には、この短編から

「のどかで美しい田園では、ロンドンのどんなに薄汚れた裏通りより
 ずっと恐ろしい犯罪が起きているのさ」
も収録されている




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