メランコリア

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少年少女新しい世界の文学 9 オルリー空港22時30分 ポール・ベルナ/著 学研

2023-08-24 13:14:39 | 
1968年初版 1982年 第13刷 上野瞭/訳 長尾みのる/挿絵

「ジュヴェナイルまとめ」カテゴリー内に追加します


オルリー空港って、フランスに行った時通ったろうか?

三谷幸喜監督の映画『大空港2013』みたいなドタバタから
フェデリコ・フェリーニ的なケアスに展開するフシギな話

爆弾魔のニュースが1本の縦糸として緊張感を持たせて
誰もが怪しく見えてくるような文章に引き込まれる

空港で働く少年ラファエルの観察眼とユーモアで
事件解決の糸口が徐々に見えてくる様も面白い

ラファエルはどんな時も飄々と仕事をこなしているのが
『夏の夜の夢』のパックか
ギリシア神話のヘルメスのような存在
自分の仕事を楽しめるっていちばん幸せなことだな

キーとなる少女ジョジィとのやりとりもカワイイ
なんでもかんでも子どもの空想と決めつけなかったことが良かった

これだけの大冒険がたった3時間の出来事っていうのもビックリ!


【内容抜粋メモ】

登場人物
ラファエル 空港案内所の助手
アドリーヌ 空港案内所のアナウンサー

フィッシャーマン
ジョジィ フィッシャーマンの娘
グロックおじいさん

オルランディニィ
シネ警部 パリ警視庁

白イタチ
ミュロ


●ラファエル
町はずれで爆弾事件があり、犯人と思われるアナキストのミュロがフランスにいると大騒ぎ
新聞の一面には「今夜、22時30分、オルリー空港爆破されるか?」とある
オルリー空港に向かうバスの中もその話でもちきり

だぶだぶのオーバーを着た長いヒゲの小さい男は
勤務員専用の部屋に入り、夜間飛行の準備をしている3人のパイロットを驚かす





大きな目覚まし時計を爆弾だと言ってテーブルに置いて
つけヒゲを外すと空港案内所の助手のラファエルのいたずら


●シネ警部
空港にはパリ警視庁から60人の警官が来て見張っている
その統率を任されたのはシネ警部

今夜、国賓のブロコリランドの王様が、20人の妻、ピエロなどとともに
スーパー・コンステレーションに乗ってやって来る予定
まさに爆破予告の22時30分に到着するからさらに緊迫


●アドリーヌ
空港案内所のアドリーヌは「オルリーの声」と呼ばれ
中央ホールで8台の電話、3つのマイクに向かい
発着の連絡、迷子、忘れ物、困っている人の手助けをしている
ラファエルは彼女の助手で、毎日、空港内を走り回っている






●黒い円筒形の箱
怪しい荷物の受取人オルランディニィを何度も呼び出しているアドリーヌ

太った体に白黒のチェックのオーバー、長い鳥の羽のついた緑色の帽子をかぶった
オルランディニィはまるで道化師そっくりの格好をしたイタリア人
あちこちで騒いではトラブルを起こしている





オルランディニィ:
坊や(バンビーノ) 案内所から荷物をとって持ってくるんだ
2番の電話ボックスで待ってるから
それは22時30分に爆発する だがハエ1匹も殺さないんだ


●シドニーからの旅行者
白イタチはオウムと電話でやりとりして指示を受けながら
“さかなつりのすきな男”を探してウロついている

オウム:
そいつの出発を絶対に妨害する必要がある!
2人の“専門家”を送るから、そいつらに任せるんだ

ラファエルはオルランディニィから頼まれた黒い荷物を
「立ち入り禁止」と書かれた勤務員控室にある目覚まし時計の横に置いた







●ニセ刑事
2人の男がラファエルに「フィッシャーマンを呼び出してくれ」と頼む

自分のことで頭がいっぱいの旅行者たちは
ひっきりなしに流れる放送に注意していない(そうだよね
名前が呼ばれても他人のことだと思う

食堂にいたフィッシャーマンは、自分の名前が呼ばれて落ち着きをなくす
待合室に娘のジョジィを待たせて、5分で戻るから動いちゃいけないと言って行ったまま時が経つ





ラファエルはオルランディニィに渡そうと黒い荷物を取りに来ると、そこにない!
シネ警部は寝室でいびきをかいて寝ている
オルランディニィには「15分で取り返してみせる」と伝える

アドリーヌは、1人で待っている少女が気になり、ラファエルに様子を聞きに行かせる





パパの名前を聞くと「パパはパパ」と答えるジョジィ
ラファエル:きみのパパを見つけてあげるからね

アドリーヌの“この空港の妖精”だと教える

アドリーヌはジョジィの父を呼び出すが、誰も迎えに来ない








●3匹の羊の島
白イタチはジョジィの隣りに座り、ひきつった笑顔で話しかける
人形やキャラメルなどが入った青い布製のカバンの中身を見ようとして

ジョジィが座っている毛布を持ち上げると
爆弾みたいな黒い荷物を見つけて逃げるw

“専門家”がフィッシャーマンを捕えたが
目当てのモノは持っていなかったとオウムに報告して怒鳴られる

ラファエルは黒い荷物を電話ボックスに置く

空港専属の看護婦ベルティ、2人の警官、事務長らがジョジィのもとに来て尋問する






ジョジィ:
パパは3匹の羊の島の王さまよ
とても立派な漁師で、ある日、小さな金のおさかなをつかまえて
すぐにグロックおじいさんに電話したの
グロックおじいさんは砂漠の妖精よ
おそろしい大男のネアルコがスパイを使って
パパが先に金のおさかなを捕まえたことを知って怒ったの

少女の話はまるでおとぎ話のようで、大人たちは頭から信じないが
ラファエルだけは、そこに真実が隠れているのではないかと推理する







●ロッシの赤いカバン
ロッシがアルフレッドからビールをもらって飲んでいる隙に
ラファエルは彼の足元の赤いカバンを盗む(なぜ???







これだけ警官が見張り、人目がある空港内で人さらいは不可能だとみて
空港を4分割して、それぞれの責任者に40歳くらいの男性を探すよう指示する

ラファエルは、もう一度ジョジィから物語を聞いて
彼女のカバンの底に隠された金のさかなを見つけて、ポケットに隠し
赤いカバンを置いたまま待合室を飛び出す


●赤いシガレットケース
ラファエルはアドリーヌにグロックおじいさんを呼び出してほしいと説得

勤務員控室の入り口に白イタチが見張っている
10日ほど前からその男を見かけていたラファエルは怪しいとにらむ

白イタチはテーブルに忘れられたシガレットケースを盗む

4つ目の寝室のドアには「邪魔するな」という紙切れがさがっていて
中には2人の“専門家”がフィッシャーマンを眠らせて
服も靴の中も全部調べたが何も出てこなかった






ジョジィのカバンが怪しいと思い、警官のフリをしてジョジィの青いカバンと
ラファエルが持ってきた赤いカバンをとって戻るが中に金のさかなはない
赤いカバンから、また黒い荷物が出てきて、爆弾だと思って驚くww









2つのカバンをテーブルに置いて“専門家”は帰ろうとするが
なぜか全員眠気が襲い、そのまま眠りこけてしまう

アドリーヌ:グロックさま 至急、空港案内所までおこしくださいませ
4度目の呼び出しが響く

ラファエルはジョジィにカバンを取り返してみせると約束する

オルランディニィは今度はポーターの格好をして現れる

ラファエル:
爆弾は行ったり来たりして、今手元にないですが
しばらくすれば、また回ってきますよ

パイロットへの電報を渡すため、勤務員控室に行くと
「邪魔するな」と書かれた部屋がある
勤務員リストを見ると、ハウザーが予約している

普段なら絶対、睡眠の邪魔をしないが、電報は早く届けるべきなので
ドアをたたくが、中のいびきは止まらないため、ドアからさしこむ

2つのカバンがテーブルに置いてあり驚く

ロッシはオルランディニィから教えてもらった
中国の遊び“キエン・チュ”というどろぼうごっこをしていると話す
大勢が集まる場所で1つのモノを隠したり、出したりする遊びで賭けをしてる?

ラファエル:本当の泥棒がゲームにまぎれこんできたんです

ジョジィにカバンを返すと、ラファエルを魔法使いのように見る





アドリーヌは最後の呼び出しをする

フィッシャーマンの捜査は打ち切られ、ジョジィをパリの警察に送ろうと話す大人たち
そこにとうとうグロック氏が現れる!








●砂漠の妖精
グロックとは「Kエネルギー」を研究している会社の頭文字
誰も知らないはずのあだ名を呼ばれて、そのわけを尋ねる老人に事情を話すと
事務長のところに行き、フィッシャーマンは優れた学者の1人だと明かす

グロックおじいさん:
彼はまだ空港内にいるはずだ
大男のネアルコは、イギリスにある大会社で
同じものを研究しているNEARCOのこと

Kエネルギーとは、放射能の危険性のない工業用の原子エネルギー
研究に何千億フランもかかって、エンジンの模型が完成した それが金のさかな
どちらが先に特許権をとるかの競争がはじまった
フィッシャーマンに別の名前ですぐワシンントンに届けるよう連絡した







パイロットのハウザーがラファエルに電報を渡すよううながす
寝室に入れたと言うが予約などしていない
ということは、誰が部屋で寝ているのか?!

ハウザーの電報は赤ちゃんが生まれたというしらせで大喜びする


●5人の男
寝室に入ると、フィッシャーマンと“専門家”、白イタチがいびきをかいている
ドクターを連れてくると、みんな強力な睡眠薬を盛られた様子

まず、フィッシャーマンに注射して起こすと
自分の名前が呼び出されて、重要な連絡かと思い、ジョジィのカバンに金のさかなを隠して
ニセ警官に騙されて、空港勤務員に連れてこられ
タバコをすすめられて吸ったら記憶がなくなった

ラファエルはロッシのシガレットケースにタバコを詰めたが
そうとは知らず、白イタチが盗んで、自分たちの罠にかかった
不法侵入、麻薬使用などの罪で逮捕される3人

隣りの部屋ではシネ警部が同じタバコで眠っていてボッケ氏に叱られるw








●金のさかなの秘密
フィッシャーマンはジョジィを抱き上げ、グロックおじいさんはジョジィにキスする
ラファエルが金のさかなを渡す

それは金メッキしたケースで、中に研究の設計図や
数式が書かれたマイクロフィルムが入っている







ジョジィがそれを見てガッカリする様子を見て
ラファエルは、今夜のチップ全部を使って買った
さかなのチョコレートをプレゼントする





グロックおじいさんがなぜ空港の呼び出しが聞こえたかを話す
ホテルのラジオが爆弾犯について実況放送していて
その後ろでグロックおじいさんを呼び出す声がして駆けつけた

グロックおじいさん:
人間は親切な気持ちか、悪い考えで動かされる
人間の心はいつでも人に伝わるものだ
運が良いということは、親切な気持ちから生まれるものだよ

フィッシャーマンとジョジィは最後のNY行きの飛行機に向かう
そしてもうすぐククバ十世の乗る大型旅客機「空とぶカンガルー号」が到着する

1台の飛行機が到着すれば、別の1台が出発する
それがオルリーなんだ
その人たちには、それぞれの生活がある
もう一度、その人たちに巡り合うまで、一生懸命働くのが僕の仕事だ

と、ラファエルは寂しさをこらえる


●空とぶカンガルー号
オルリーから無線連絡を受けたパイロットらは
“ミュロは当機にあり 目下のところ心配なし 血統書つきのミュロなり”と返信して大笑いする

ジョジィ:私のおうちに来てくれる?
フィッシャーマン:2週間後にもう一度ここに戻るから、それについて話し合おう

ラファエルは喜ぶ

オルランディニィは黒い荷物を地面に据えて、マッチをすると
バラ色の煙と花火が舞い上がり、ククバ十世らがおりてくる

荷物置き場からは白いカバの“ミュロ”が出てきて、大勢の見物人は大歓声
“ミュロ 革命的漂白剤あらわる! ご家庭の奥様にミュロをどうぞ!”








グロックおじいさん:
明日の朝、ホテルでラファエルとアドリーヌを待っているよ
素晴らしい旅行の相談をしようじゃないか

シネ警部が空港から逃げ出そうとしているのをボッケ氏が見つけて
ミュロのフンを片付ける仕事を言いつけるw

雨が降ってきて、カバの体に塗った白ペンキがはげてくる(!

シネ警部はこれも1つの手柄と考える
ラファエル:すごいよ 探していたミュロを逮捕したんだ!




訳者あとがき
原題は『空とぶカンガルー』
作者が書きたかったのは、どきどきする事件でも、名探偵でもなく
何事も疑う大人は何も解決しないし、物事を混乱させるだけ
それより、信頼しあう人間のほうがいいのだということ









ベルナはいろんな職業について、苦労した作家だが
「人生はバカげたものだが、同じくらい面白いものだ」と考えるようになった
(いいね! モンティパイソンぽい

やりきれないことにも、幸せを見つけようという考え
ほかにも『首なし馬』『大空の大陸』などがある



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