メランコリア

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『世界こわい話ふしぎな話傑作集 5 モルグ街の殺人』 ポー/原作 金の星社

2022-06-19 15:25:28 | 
1984年初版 1996年 第16刷
訳者/岡上鈴江 画家/レオ・澤鬼

シャーロック・ホームズシリーズを読んで知った
密室殺人を描いて、探偵小説のもとになったとか

今回初めて知ったオーギュスト・デュパンの出で立ちは
チェックの帽子と外套にパイプをふかした30代くらいの男性で描かれているが
ほかの本だといろいろに描き分けられているのだろうか?

「世界こわい話ふしぎな話傑作集」は全20巻
「フランケンシュタイン」や「ドラキュラ」など数冊のほかは
知らないけれども、タイトルだけ見たかぎりでは
ほかにあまり惹かれるものはない
でも、きっと読めば面白いんだろうな






モルグ街の殺人だけで1冊かと思ったら、短編がいくつか入っていた
『黒猫』はずっと昔に読んだ気がするけど、すっかり忘れていたから新鮮に読めた
『アッシャー家の崩壊』は映画で観なかったか?

どんな怪談話よりポー自身のほうがミステリアス

ポー:
アメリカの詩人、小説家、評論家
旅役者の子として生まれ、3歳の時、母が亡くなり、父が家出
豪商ジョン・アランの養子となり、6歳でイギリスに渡る

11歳でアメリカに帰り、17歳でバージニア大学に入る
酒とギャンブルに溺れ、陸軍士官学校を退学処分

養母が亡くなり、養父と絶縁状態になり
貧しい中、多くの作品を発表し、ヨーロッパ文学に大きな影響を与えた



【内容抜粋メモ】

黒猫
生き物が大好きな“私”
酒に溺れてから性格が変わり、懐いていた猫も避けるようになり
ひっかかれたことにキレてナイフを投げて右目を潰してしまう

私のベッドのそばのカーテンから火事が出て、家は全焼
全財産を失う

ベッドのそばの壁にネコの形が表れていてぞっとする







居酒屋の酒樽の上に胸が少し白い黒猫がいて家までついて来る
あまりしつこくつきまとうので逃げ回る

胸の模様がギロチンのように変わっていく





地下室まで追い、斧で殺そうとして止めた妻を誤って殺してしまう
昔、中世の僧が犠牲者を壁に塗りこめたことを思い出して
レンガの壁に死体を隠す
猫はそれきり消える

警察が来て調べても見つからないことに気が大きくなり
壁を杖で叩くと大きな叫び声がして
警官が斧で割ると、腐った妻の死体の頭の上に
片目の猫が座っていた

私は猫を死体と一緒に塗りこめたのだった



赤死病の仮面
赤死病って本当にあるのかな?

突然、体中が痛み、毛穴から濃い血がふき出て
かかってからわずか30分で死ぬって壮絶/汗

領民の半数がこれで死に絶え
領主プロスペロ公は自分のお気に入りの陽気な貴族や家臣を千人ほど連れて
人里離れた大きな城に引きこもり、出入口を鉄の扉で閉めてしまう

城内にはたくさんの食糧をたくわえてあり
面白おかしく暮らしているうちに悪病もおさまるだろうと
毎日、贅沢三昧をして半年が経つ

7つの部屋はそれぞれ青、紫などの一色で統一され
7番目の窓ガラスは緋色+部屋は黒で統一されていて
誰もブキミがって入らない

柱時計が鳴るたびに、みな凍りついたように動かなくなる





仮装舞踏会の真夜中12時を打つと
黒い装束の見知らぬ男が紛れているのに気づく
よく見ると衣装は血みどろ、顔は赤死病の斑点でいっぱい







プロスペロ公は短剣を振ると、逆に殺され
みなで取り押さえると影のように消える

「赤死病がこんな姿でやって来たんだ」

1人ずつ倒れ、最後の1人が死ぬと柱時計も止まる



アッシャー家の崩壊
親友のロダリック・アッシャーが精神の異常を訴え
ぜひ来て欲しいと手紙をもらい、行くと
屋敷を見るなり心が沈む思いがする

アッシャーは古い家柄で、感受性豊かな気質ながら
分家が長く続かず、直系で財産が譲渡されてきた

アッシャーは無邪気で愛らしい子どもの頃の面影がすっかり失せて
青ざめた顔、怪しく光る瞳

急に陽気になったり、ぐったり弱ったり
親譲りの病気で治すのは難しいという

アッシャー:
着るものもかたいと辛抱できない
ほんの小さな出来事も思うだけで身震いがするんだ

この屋敷に何者かが潜んでいて、精神に魔力をふるっていると信じている
(お金持ちなんだから引っ越すことは出来ないのか?

ただ1人の話し相手であり、双子の妹マドリーンは痩せ衰えて
時々硬直するという珍しい病気で長くない

ある日、マドリーンが亡くなり、地下室に安置するのを手伝う
“私”の寝室のちょうど下にあたる(部屋かえて欲しいな/汗

それから8日後の夜、寝ている私の上になにか重苦しいものがのしかかる

アッシャー:
キミはまだあれを見かけなかったかね
君もきっと見かけるようになる
あの音が聞こえないのか?
僕たちは妹を生きながら葬ってしまった
妹が棺を開けて出てきたんだ

扉の外に死に装束を着たマドリーンの姿が見える
必死にもがいたあとがある

妹に押し倒されてアッシャーは死ぬ

私は嵐の中、夢中で屋敷から逃れると
屋敷は轟く音とともに崩れ、沼が飲み込むと
何事もなかったかのように静かに淀む





モルグ街の殺人
“私”は図書館で同じ本を探していたフランス人、オーギュスト・デュパンと出会い意気投合
デュパンはとても本好き、立派な家柄の出身だが、不運が重なり貧乏になった

2人で一軒の家を借りて住むようになる
私の考えていることをその場で推理してみせるやり方はホームズみたい
むしろこっちが元ネタか





フシギな殺人事件の記事を読む
レスパネー夫人の悲鳴がして、近所の者が駆けつけると
夫人の長い髪が根こそぎ引き抜かれて暖炉の上に乗り
娘カミーユは頭が逆さまで煙突にねじこまれているという壮絶な死に方/汗

2人の遺体には多数の爪痕がある
夫人はノドを切られていて首が落ちる

お金を貯めこんでいたが、金品は盗られていない
現場の4階以外はどこも閉め切った密室状態

その後、アドルフという男が重要参考人として拘留される
デュパンは彼に世話になったことがあるため借りを返そうと推理する

家の周りをくまなく見るのもホームズと同じ手法

証人はみな、なにか言い争う男の声と何語か分からない言葉を聞いた

デュパンは犯人が裏の窓から出入りした
夫人が獣の毛を握りしめていたことから
犯人はオランウータン(!)と推理







ブローニュの森でオランウータンを捕まえた
返却したいから取りに来られたし と広告を出す

男が部屋にやって来て、直接殺人の罪にはならないからと事情を話すと自白する
ボルネオで捕まえて、誰かに売りつけるまで部屋でひっそり飼っていたが
酒を飲んで帰ると、檻から出て、かみそりを持ってヒゲを剃るマネをしていた!







そのまま逃げて夫人の部屋に入り、興奮して2人を殺したため
怖くなって逃げた

警察はアドルフを釈放
オランウータンは捕まり、パリの動物園に高い値段で買い取られた!驚
そのお金は誰のものになるんだ? 犯人? 警察?




ぬすまれた手紙
高貴な人の手紙を取り戻すっていう話もホームズにあるな

パリの警視総監Gがデュパンに事件捜査を手伝って欲しいと頼む
身分の高い婦人の手紙をD大臣が盗み、政治的権力に利用している
その手紙を密かに取り戻して欲しい






大臣はしょっちゅう家をあけるため
Gは家じゅうをくまなく探したが見つからない
デュパンはもう一度や探しすることだとアドバイスして放っておく/驚

1か月後、また探したがやはりダメだったと根を上げたGが来る
依頼人からもらった高額の報酬から5万フラン出してもいいというと
今すぐ小切手を書いてくれと言ってカギを渡すデュパン






小切手を書いて、引き出しを開けるとその手紙が出てくる

デュパン:
役人たちがいつも失敗するのは、相手と同じ水準に立ってものを見ることがないからさ
Dは詩人でもあり数学者だからこそ見事な推理ができる
しょっちゅう屋敷をあけるのも、警察に捜査させて邸内にないと確信を持たせるため

デュパンも屋敷を訪ねて、暖炉棚の下にぶらさげられた名刺さしに
くしゃくしゃになった手紙を見つけて、それだと確信
手紙は裏表が逆で宛名が変えてあった
(逆にGが見つけられなかったのがフシギなくらいシンプルだね

デュパンの雇った男が外で狂人のフリをしてピストルを暴発させて
Gの気がそれた隙に手紙をすりかえる



ウィリアム・ウィルソン
この訳の分からない恐怖感がポーらしい話

小さい頃から親に甘やかされてワガママに育ったウィリアム・ウィルソン

学校でもガキ大将として君臨していたが
同姓同名、同じ生年月日の男だけが服従せず
なにかにつけて競争して、心の中で密かに恐れる

それは2人だけの間だけで他の人には分からない







男の唯一の弱みはノドが悪いらしく低い囁き声で話すこと

ある夜、意地悪いイタズラをしようと寝ている男に近づくと
起きている時の顔とあまりに違うために恐怖で逃げ出す
一体どんな? 詳しいことは全然書いてない

イートン校に進学し、だらしない生活をしていたら
ある夜、召使が「誰か来ている」と言って行くと
同じ背格好、服も同じ若者が名前を囁いて消える

自分だけの幻視じゃなく他人も見ているのがブキミ/汗

オックスフォード大学ではとり憑かれたように遊びにふけり品位もなくす
いかさま賭博を覚えて薄馬鹿な生徒から巻き上げる

金持ちの貴族グレンディニングもトランプで騙して完全に破産させ
重苦しい空気の中、侵入者が来て
袖口とポケットにトランプを隠していると暴いて去る

イカサマがバレて、主人ブレストンから締め出される
侵入者の外套が自分のとまったくソックリなため
慄きながら、2つの外套を持って部屋を出る

疫病を避けるように旅に出ても、どこにでも彼は現れる
いつも顔を隠したまま

ナポリで仮装舞踏会に出た時、また同じ服装をした男が囁いたため
小さな部屋にひきずり短剣で突き刺す

そこには大きな鏡があり、胸を刺された自分が映っている






ウィルソン:
お前が勝ったが、これから先、お前は死んだも同然だ
私の死でお前は自分も殺してしまったのだ

その囁きは自分が言っているように聞こえた




エドガー・アラン・ポー
『宝島』のスチーブンソン、ホームズシリーズのドイル
ジュール・ヴェルヌらもポーから学んだと言われる
科学小説、推理小説の元祖ともいえる

感激はいつまでも続くものではないという信念から
長い詩を認めなかった

ロンドンの私立学校にいた頃、バージニア大学で賭博の借金がかさんだことは
『ウィリアム・ウィルソン』にある

14歳にも満たないバージニアと結婚
妻は不治の病になり貧困の中で死去

お酒を飲みすぎて人事不省になっているのを発見され
病院に担ぎ込まれるも、40歳で死去




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