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メランコリア

メランコリアの国にようこそ。
ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

ジュニア・ベスト・ノベルズ 5 グライダーの少女 ヘレナ・シュマヘロバー/[著] 岩崎書店

2024-03-07 14:59:58 | 
1972年初版 平賀悦子/訳 市川禎男/挿絵

「ジュヴェナイルまとめ」カテゴリー内に追加します



これまで読んできた少女小説と比べると
文体がドライに感じるのは、チェコスロバキアというお国柄なのか
それとも、作者もマーシャのような男性的な性格なのか

グライダーというスポーツは日本では馴染みがなく
飛行機やウインチで空高くまで上がって
エンジンもなく操縦するって危険じゃないか?汗

飛行機が好きって、サン=テグジュペリを思い出す
孤独が好きな人という印象がある

少女から大人に成長する、いちばん難しい時期の心情の描き方が素晴らしい

このシリーズのまえがきは、ほぼネタバレだから、読後に読んだ

第二次世界大戦中のチェコスロバキアの情勢を描いているため
聞きなれない言葉もたくさん出てきた

「スパツァルム」
第二次世界大戦中、ナチスに抵抗した人たちが、大戦後につくった国家的組織で
子どもたちにも、スポーツを通して平和の精神を教えている

「ブリゲード」
いろいろな労働をして、その尊さを学ぶ活動


【内容抜粋メモ】

登場人物
マーシャ 本名のマチルダという名を嫌っている 両親は亡く、叔母の家に住む
エリシュカ・スシル 親友 母スシロバー夫人 弟2人
シュシュカ クラスメイト
パベル クラスメイト
オタカーレク クラスメイト

ヤン エリシュカのBF ソログライダー
トジェビッチ マーシャのもう1人の叔母


まえがき
チェコスロバキアでは、グライダーというスポーツがとても盛んだそう
日本でも、最近、たくさんの大学にグライダークラブができて
女性パイロットも大勢いる(驚

飛行機に引っ張ってもらったり、ウインチを使って引っ張ってもらったりして
空へ上がると、あとは上昇気流などを利用して飛ぶ
グライダーの操縦には、危険をともない、冷静な自己鍛錬が必要とされる

1つのことに真剣に取り組む時、人間は大きく成長していくものだと感じられることでしょう


●エリシュカと私
マーシャの苦手な数学のテストで、親友のエリシュカは答えの書いた紙を回してくれる







校内放送で“スパツァルム”に参加して、クラブに入会するよう呼びかけられる
マーシャとエリシュカは、グライダークラブを選び、入会書に記入した
どこにでもついてくるシュシュカも参加する

鉄鋼工場の訓練所で集会があり、共産党員が活動内容を説明
先生は風船に空気を入れて飛ぼうとした人類最初の実験(!)や、飛行船について話す

グライダーの模型を作り、飛ぶ原理を学ぶ






マーシャはエリシュカの母スシロバー夫人と父のいるスシル家を訪ねるのが好き
両親が亡くなったマーシャにとって、家庭の雰囲気が味わえるため







マーシャは叔母の家に住み、たまにトジェビッチからもう1人の叔母が来る
2人は若い世界を認めず、たえずマーシャの心配をしている
来るたびに同じ話を何十回も繰り返すのを聞かなきゃならない苦痛も共感するなあ・・・

学校は失楽園のように思えた
エリシュカとシュシュカはランチに学生食堂に行くが
マーシャは家に帰り、叔母のおきまりのシチューを食べなきゃならないのがイヤ



●グライダー・クラブ
物体の重力、自由落下、気体力学の講義を受ける

エリシュカはマーシャが苦手なダンスレッスンに行き
ステキな男子ヤンと踊ってから
双子のように仲が良かった2人の関係は薄れていく

前期の試験が終わり、3がついた成績表を見て、叔母は説教する
叔母:今日から友だちも集会も、くだらないこととは一切縁を切ってもらうよ!



●エリシュカの不幸
クラス委員の新委員長にイバンが当選した日も、エリシュカは学校を休んでいた

ヤン:君たちの友だちはどこにいるんだい? 金髪のかわいい子さ
シュシュカはヤンがエリシュカを好きだと噂する

エリシュカの父は心臓病で入院していたが、亡くなったと分かる

マーシャの父は、有名なドイツの捕虜収容所があったブーフボルドの共同墓地に眠っている
マーシャはスシル家に寄ることも少なくなる

子ども時代が終わって、大人の時代が始まるのは
正確にはいつなのか知りたいと思う



●すてきなヤン
グライダーの最後の授業のあと、滑空の理論の試験があるため
みんなでシュシュカの家に集まる
ヤンから分からないことを教えてもらうことになる







パベルはなんでも知っているように話すが、半分くらいしか知らない

先生:
ある人は良い印象を与え、悪く思われてしまう人もいる
君はきっと、とてもよい感じに見えるんだね

試験に受かると、グライダーの証明書がもらえる
叔母に親の同意書のサインをもらうのに成功する
女子はスラックスを履いてくるようにと注意がある



●グライダー練習生
飛行場に行き、飛行日誌に飛行時間などを書き込む
グライダーがロープに引かれて持ち上がるのを見学する

離陸地点にいるスターター(グライダーの出発の際に合図をする人)が
ウインチを動かす人に合図を送ると、グライダーは走り出し、次々と離陸する

計器盤の速度計、高度計、旋回傾斜計、磁気コンパス、方向舵ペダル、操縦かんなどを教わる
毎回、練習後には集会があり、飛行練習について話し合う



●後見人
1年に2度、後見人の事務所に出かける
後見人の弁護士は、マーシャの成績表を見て、なにか望みか不満があるか聞くが
仕事をしたり、電話をかけながらで、まったく興味がない







マーシャ:もう大人だったらなあ! 年寄りたちから逃れられるのに!

地上練習を終えて、最初の指導飛行がある

メーデーの行進が近づくと、マーシャらはスローガンを叫び、挨拶を贈る



●グライダーで飛べる!
ヤンは単座グライダーで熱上昇風に乗り、相当な高さまで飛んで見せる







マーシャは後ろにポップ先生が乗り、軽飛行機にロープで引っ張られる
600mの高さでロープは離れ、空中に浮く

先輩は、グライダーで637kmの世界記録を出したグライダー・パイロットのイェフィミネク
女子は、女性の世界記録を出した少女アンナ・サモサドバーを目標にするよう話す

マーシャはこの日、世界最高の少女グライダー・パイロットになろうと決心する



●パラシューター
トジェビッチの叔母がめまいで倒れたため、叔母が看病しに行くことになる
汽車に乗るまで、洪水になるとか、火事になるとかと
心配事を並べて、長々忠告を繰り返すのにウンザリする

直線飛行と水平飛行の練習をしていると
8時間飛び続けてきたグライダーが到着する

金C賞をとったパイロットで、さらに高みを目指しているが
マーシャはうぬぼれが強いと思う

パラシューターたちは地上に降りるほかは何もしないが
グライダー・パイロットは飛行距離や高度を自分で決められる








●ヤンのけが
叔母が帰ってくる

初級の練習生が、初めてウインチで離陸する
高度3000mを飛び、自分の激しい性格をおさえて操縦することを覚える

ヤンは仕事中に機械でケガをして入院していると聞く
足を切断したという噂が流れて心配し、みんなで見舞いに行くが
外科病棟は退院して、家で療養している



●グライダーの新婚旅行
先生の助手がグライダー・パイロットと結婚した
マーシャは、結婚は死のようなものに思える

新婚夫婦がグライダーで飛び立つと、急に強い嵐となる
飛行機がコムトル機の捜索に飛び、しばらくしてようやく戻る
主人は寒冷前線により押し戻されたと話す







集会の後にダンスがあるが、ダンスが苦手なマーシャは足をくじいたフリをして休む
その心情をくみとって気づかうポップ

ポップ:
別にどうってことないじゃないか
君は女性グライダー・パイロットで一番になるんだから!








●恋と友情
エリシュカが流感で寝込み、見舞いに行くと「ヤンにお礼を言って」と頼む
エリシュカは初めてマーシャとヤンを取り合っていることをハッキリ認めた
長い間ずっと仲良しだったのに、わずかの間に友情が終わってしまった

初めてウインチを使って離陸し、旋回の練習をする

ヤンはびっこを引きながら飛行場に現れる
エリシュカに教科書を渡して、マーシャも読んでごらんと言われる

みんなは飛行機展示会の準備で忙しくなる
エリシュカから「何を怒っているのか教えて」という手紙をもらう
みんなで山に行ったことで、エリシュカとの仲が戻る



●ブリゲード
エリシュカは農業のブリゲードで一緒に働こうと誘う
トラクター・ステーションでカンタンな計算の仕事を朝6時~昼2時までやり
賃金として600コルナ(日本円で約1万5000円)もらえると聞いて驚く

叔母はまた反対するが、マーシャは初めて反抗する
夏休みに叔母は毎年、トジェビッチの叔母を訪ねるが
今年は飛行場の訓練とブリゲードがあるため、家に残ると主張







叔母は汽車に乗るまで忠告を続ける
叔母:飛行機に乗るのはおよしよ 死んでしまうよ!

農園に行くと、トラクターの運転手からカードを渡され
労働時間を計算して、賃金を記入する仕事を教えてもらう

ランチを食べた後、バスに乗り、飛行場で練習に励む



●暑い夏
木陰でも30度以上ある暑い夏
誰かが「泳ぎに行こう」と言い出し、泳ぎも得意なマーシャは
男子といっしょにウォーターポロを楽しむ

マーシャはまたエリシュカとケンカして
オタカーレクと親友になろうとするが

オタカーレク:
僕は女の子は嫌いだ
君は男の子と変わりないからずっと友だちなんだ



●ソロ・パイロットになれた!
一番年少の練習生たちが試験を受け、合格すれば、初めてソロ飛行が許される
飛行機に引かれて離陸、ロープを離して急上昇、急降下、滑空、急旋回などして着陸

結果、マーシャは合格
パベルは落ちて、ポップはマーシャをひいきしていると話す







ポップ:
パベルは不注意なのが一番いけない
不注意はグライダー・パイロットの安全にかかわる
マーシャは一番、機敏で生まれついての才能ある練習生だ



●決定的瞬間
マーシャは操縦技術に頼らずとも、自然と体が動くようになる
一度、ある気流に入り、息も止まる体験をするが
それを切り抜けたら、もう二度とコワイ思いをしないだろうと思う



●パベルの事故
ヤンとポップが空の大旅行に出発

パベルは試験に合格し、ソロで飛べるようになる
パベルの両親は離婚し、母とその姉妹と住んでいるため、甘やかされていると分かり
似た境遇に友情を感じるマーシャ

パベルは大きく傾き、地面にひっくり返って病院に運ばれる
その後、すっかり元気になって練習に加わる







マーシャはポップにパベルは他の人に負かされないか
絶えず怖れていることを話す

ポップ:理論はできても、実技になるとダメな生徒たちもいる

ポップはパベルと話し、その日からパベルは時間を守り
基本練習にも参加するようになる



●ブジェゾバーの収穫祭
マーシャはみんなに収穫祭に行こうと提案
食べ物や飲み物を集めるのに苦労する

ケーキが競売に出され、お金は地方の託児所に寄付される
シュシュカが31クラウンで買ったが、8クラウンしか持っていないことが分かり
みんなで出し合い、ケーキを分け合って食べる

その後、火事騒ぎもあり、消火を手伝ったマーシャは足をケガする
最終バスが行ってしまい、ヤンたちと歩いて帰る



●不時着
マーシャはソロ飛行で東風が吹き、コースから外れる
高度が下がり、大きく旋回しそこねて、木々の上に不時着し
宙づりになっていたのをヤンとポップが助ける










集会で一部始終を話し、みんなで何が原因かを話し合う
ポップは自分で罰を決めるように言う

ポップ:
どうしてマーシャの気持ちが乱れていたか聞くつもりはないが
二度とこのような失敗はしないと約束してほしい



●A級の最終試験
オタカーレクとマーシャだけが最終試験を受けることになる
マーシャ:人生は明日の連続だわ ほんとに人生ってすばらしい!

理論の試験と、口頭試験に合格し、練習を続ければ
グライダー・パイロットの免許が取れると信じて
来年こそは、きっと、と言い聞かせる




あとがき

ヘレナ・シュマヘロバー
1910年生まれ
幼くして両親を失い、親戚を転々としながら育った

18歳で保険会社の事務員として働く
小説を書き始めたのは1930年代の終わり

もっと教育を受ける必要性を感じて、高校、大学を卒業
大学で専門に学んだのは、心理学、精神分析

シュマヘロバーの作品は、思春期から大人へと成長する
少女のデリケートな心の動きを掘り下げている

『七日目には休もう』
『わたしは、もう大人だわ』
『少女マグダ』ほか