メランコリア

メランコリアの国にようこそ。
ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

少女名作シリーズ17 あらしの中の兄妹 エッシェンバッハ 偕成社

2024-03-17 12:04:18 | 
1980年初版 1980年重版 二反長半/編著 山下一徳/カバー図案 斎藤寿夫/カバー絵・口絵・挿絵

「ジュヴェナイルまとめ」カテゴリー内に追加します


なにかのきっかけでこのシリーズを知って
運よく他館に揃っているということで
借りられるだけ借りて読んでみたい








とても上品な表紙画が魅力的
恋人のように愛し合う兄と妹の物語


【内容抜粋メモ】

登場人物
父 マルチン
母 バルバラ
兄 バーベル
妹 ミラーダ

牧場の番人ビルギル
妻 怪しいクスリを作って売っている
娘 ビンスカ

ハーブレヒト先生
村長の子 ベーテル



●村をおわれて
クノービク村を追われた4人家族、マルチン一家
この村に来て、まだ半年しか経っていないのに
父マルチンが暴れん坊なために出て行かなくてはならなくなった







父はれんがづくりの職人だが、仕事は妻と息子バーベルにさせて
酒を飲んでは家族に暴力をふるっていた

みんな仕事を休んで教会に行く日も、父に言われてレンガを焼いていると
牧師が同情して父をたしなめたため、頭を殴りつけた
村人は怒って、村から出て行くよう言う



●あらしの晩
教会の召使いが牧師館に行くと、部屋は荒らされ、金目のモノが盗まれ
牧師は血まみれで死んでいるのを見つける

昨日ケンカしたマルチンが殺したと疑いがかけられ、裁判になると
マルチンは妻バルバラが殺したとウソの供述をする
バルバラも夫の暴力が怖くてやってもいないのに自首する

マルチンは死刑、バルバラは10年の刑となる



●のこされた兄と妹
バーベルは2人で力を合わせて生きていこうと決心するが
村人は「人殺しの子!」といじめる

牧場の番人ビルギルの家に預けられたが、ゴハンもろくに食べられない

村長は男爵夫人を訪ねて、2人を世話してほしいと頼むが
男爵夫人:乞食みたいな汚い子を世話するなんてごめんです

結局、ミラーダだけは預かり、女中として雇う
ミラーダは生まれて初めて新しい服を着る












●バーベルの決心
バーベルはまたビルギルに預けられる
ビルギルも酒飲みで、妻は意地悪く、怪しいクスリを作って売りつけている

バーベルが男爵夫人の家に行くと、ミラーダが逃げないよう門は全部閉められている
中に忍びこむと番犬が吠えて、すぐに捕まる



●新しい長靴
父同様どろぼうに入ったと言われて縛られたバーベルは
警察からハーブレヒト先生に預けられる

みんな平等に扱うハーブレヒト先生だけはバーベルを信じて
立派な人間に育てようと決心し、バーベルは学校に通うようになる

1週間通った褒美に新しい長靴をプレゼントすると
同じく貧しいビルギルは、どこからか盗んできたと疑い
翌日、長靴は消え、後日、ビルギルが履いている








●走りさる馬車
また男爵夫人の家に行くと、馬車の中に着飾ったミラーダが乗っている
町の修道院に預けら、一度入ると、自由に出ることは叶わない










母が刑務所から手紙を書いてきて、先生に読んでもらう
修道院にいるミラーダに手紙を書いても、院長さんが渡してくれないから
様子を見て、どうしているか教えてほしい、とのこと








●クジャクの羽
ビンスカにせがまれて断れないバーベルは、男爵夫人の家に忍び込んで
クジャクから羽をもぎとり、捕まる

ミラーダがつねにバーベルのことを心配していると聞き
会いたいと切願すると、同情した男爵夫人は
一度だけ会えるようとりはからってくれる








●修道院へ
3時間ほど歩いて、ようやく着くと、窓に格子がつけられた部屋で待たされる
ミラーダはマリヤと名前をつけられて、見違えるほど美しくなって再会する















バーベルはひもじくて、時々畑の野菜や果物を盗っていると話す

ミラーダ:
お父さんが悪い人だったからこそ、私は修道院で一番立派な子になろうと努めている
そうすれば、神さまはきっとお父さんの罪をお許しになって、魂を救ってくださる
お母さんが帰ってきた時のことを考えて、土地を買って家を建ててあげるのよ

ミラーダは毎月、男爵夫人からもらう小遣いをそのままバーベルに渡す

バーベルは院長に自分も修道院で働きたいと願い出るが
院長ひとりの意見で人を増やすわけにもいかず帰される



●夜の学校で
バーベルがお金を持っているのが分かると、どこから盗んだと責める子どもたち
バーベルは信用する先生に預けて、学校に泊めて欲しいと切願する
村長にあとから許しを得ることにして、学校で寝泊まりするようになる








●うたがい
病身の村長のところにクスリを持っていってほしいと頼むビルギルの妻






バーベルがクスリを届けた翌日、村長がその瓶を持ったまま死んでいたため
毒殺の疑いをかけられて、裁判となる







後日、検死の結果、村長は病死と分かり、バーベルの罪は晴れる

バーベルは毎日、工場と学校に通い、1年が経つ
3回ほど修道院のミラーダを訪ねたが、院長が禁止したため会えない



●神さまの子
とうとう土地を買い、母とミラーダに手紙を書く
ミラーダも兄に会いたいと思いつつ、会えば、前のように心が乱れるから
悲しみに耐えなければならないと思う

院長はその心を知り、再会を許すが、ミラーダはもう1年待って欲しいと返事を出す








●ほったて小屋
バーベルはレンガを焼いて壁を作るが、村の子どもたちがいたずらして邪魔をする

ビルギル:
俺が番をする
うちのおかみさんは死にかけているんだ
死ぬ前に、お前に許してほしいと言っている

ビルギルの妻に会いに行き、許すと、安心して亡くなる








やっと家が完成し、通りかかった男爵夫人が驚いて
材料を借りにくればよかったのにと親切に言ってくれる

ミラーダに会えるように院長に言って欲しいと頼むと

男爵夫人:
ミラーダはもう私たちの子ではなく、神さまの子になっているから
私にもどうすることできないのだよ

唯一味方してくれていた先生が遠くに転任になり、一緒に行くと言うと

ハーブレヒト先生:
もうどんなにいじめられても、お前はガマンできるはずだ
だから正しく真面目に暮らしていきなさい








●おかあさんの手紙
村長の子ベーテルが荷車の下敷きになったところを救ったバーベル
料理屋の主人が壊れた塀の弁償を迫ると、バーベルのせいにするベーテル

様子を見ていた村人はバーベルの味方をしてくれたのが嬉しくて、弁償金を払ってやる
いじめられて傷ついた犬を助けて、ラムール(愛)と名付けて、一緒に住む

母はあと1年で家に帰れると手紙をくれる








1年ぶりにバーベルはミラーダを訪ねて修道院を訪ねる
門番の尼さんは、立派になったバーベルを別人のようだと驚く
(1年だよね? でも、母が10年刑期だから9年後か 年数があやふやな感じを受ける









ミラーダも立派になったバーベルを見て驚く
毎日、母と兄のために祈りを捧げていると話す

院長:
あなたの兄さんは慎み深い人です
自分で自分の立派なのに気づかない
気づいていても、自分ではそういわない

2人がいつでも会っても大丈夫だと約束してくれるが
また1年後に会おうと約束する/驚








●めぐり逢い
別れてしばらくして、ミラーダに元気がなかったと思うバーベル
病気なのではないかと心配になり、もう一度、院長に会いたいと言うが
二度は会わないと門番に断られる







途中の休憩所で、バーベルを訪ねに来た先生と再会する
熱心な教え方を嫌う学生が親に言いつけて悪者にされ、村を追い出されたのをいい機会に
教師を辞めて、新しい土地でやり直そうとしていると話す







ハーブレヒト先生:
お前なら立派な村長になれる
たとえ、誰かがお前の敵になっても、お前は人の敵になってはいけないよ

別れの際に大事な時計をバーベルにあげる



●畑のおくりもの
男爵夫人の家に呼ばれて行き、ミラーダが病気ではないかと心配だから
院長に頼んで休ませてくれるようお願いする

男爵夫人は、立派になったバーベルのために、近くの畑をあげる
その後、ミラーダに会ったが元気にしていたと話す








●美しい心
1年が経ち、畑も見事に実る
友だちの結婚式に呼ばれて、幸せな時間を過ごすバーベル

男爵夫人の使いが来て、馬車に乗り、修道院に行くと
ミラーダが昨日の晩に亡くなったという

ミラーダの部屋に行くと安らかな顔で横たわっている
「ミラーダはまだ生きているよ」という囁きが聞こえてくる









死ぬ間際まで“兄さんによろしく言ってください”と頼んでいた
男爵夫人も自分の子が死んだように悲しむ

家に帰ると、母が戻り、家にも入らずにバーベルを待っている
ミラーダの死を告げ、2人で泣く

バーベル:
悲しむのはもうやめましょう
ミラーダの体は死んでも、美しい心はこの家に生きています









解説

マリア・フォン・エープネル・エッシェンバッハ
1830年 オーストラリアの伯爵家の令嬢として生まれた
幼くして両親を亡くし、18歳で結婚して、文学の道に入る
45歳頃から小説を書き、86歳でなくなるまでに数々の作品を遺した

本書は57歳の時の作品で、本書により小説家の地位を確固とした
貴族の出ながら、下層階級によく通じ、深い理解と同情が表れている

どんな苦しみの中でも人間の持つ善良な心は失われないという信念を描いて
“教育小説”と呼ばれる

原作の味わいを傷つけないよう注意しつつ
読みやすく書き改めた


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