■『シャニダールの花』(2012)
監督:石井岳龍
出演:綾野剛、黒木華、刈谷友衣子、山下リオ、古舘寛治、伊藤歩 ほか
「みんな、花に戻る」
私の好きなボリス・ヴィアンの『うたかたの日々』を基にした話かと思ったら違っていた。私好みの1本。
「花が恐竜を滅ぼした」など、フシギなストーリー。
地味ながら、どこにでもスゥっと溶け込む黒木華さんの、自然で穏やかな演技は評判通りだし、
綾野さんも、こうした繊細で、苦悩する、現代の青年役がいちばん似合ってる気がする。
「とっても静かで、とっても幸せ」
そんな天上の世界=ヒトが花(植物)に還るという発想はステキ。戦争もないし
でも、ヒトらしい感情もないのだろうか?
▼story(ネタバレ注意
セラピストの美月響子は、「シャニダール社」に入社し、研究員・大瀧賢治の下につく。
「考え直したほうがいいよ。特殊だからね、今ならまだ間に合う」
シャニダール社では、胸に花が咲くという特殊な現象を研究していて、その母体となる少女らが暮らすゲストハウスも完備している。
提供者は協力するだけで、家族に1億円が支払われ、施設外には出られないが、施設内では好きなことをして暮らせる。
その心理状態が繊細な花の成長に影響を与えるため、1人ずつにセラピストがついて、毎日、経過観察が行われている。
満開になると切除手術が行われ、花は新薬開発のために使われるため、厳重に保存され、本社に納品される。
切除手術が終わり、提供者が退出すると、大瀧とキョウコは新たな提供者に交渉しに行く。
新たな提供者・立花ハルカは、家族のために施設に入る。
ハルカは内向的な性格だったが、家庭が複雑で、プライドが高い菊島キクを見た途端に創作意欲が沸いたといって、ものすごい勢いで絵を描き始める。
ハルカ「母も、世界中の人たちも、自分の子どもみたいに感じるんです。変ですよね?
咲かせ続けるのはムリなんですか? この花、きっとなにか大切な贈り物ですよね? 切ってお金に換えていいの?」
大瀧は、キョウコの境遇が気になり、調べると、昔、交通事故で父母と妹を亡くしていたことが分かる。
社内の機密を盗み見ていたキョウコ。
大瀧「僕たちは、花の謎を解明することが仕事じゃない」
キョウコ「みんな心に大きな穴を持っていて、大切なことを探そうとしてて、揺れてる。花はその心の絵なの。
この花は何? それがいちばん大切じゃないの? 私、この花のこと、もっと知らなきゃ。花がそう言ってくるの」
号泣するキョウコを抱きしめる大瀧。
田村ユリエは、毎日、経過観察に来てくれる大瀧に料理を作り、特別な想いを抱いている。
花が満開になって切除されれば退去しなければならなくなるのを危惧し、切りたくないと言い出す。
「私じゃなくて、この花にしか興味がないのよ!」
「花は受精しないし、切除しないと母体にも花にも危険だ」と大瀧に説得され、手術するも心筋梗塞で亡くなる。
ハルカの花は順調に成長する一方、キクの花はしぼみ、所長「週末に退去させよう。生物的に問題があるのかもしれない」
キクは退去のことを知って、ほかの少女の花を衝動的にむしり取ってしまう。
ハルカは「私のを摘んで!」と自分でもぎ取ってキクに与え、失神する。
キョウコ「シャニダールというのは中東イラクの紛争地帯の地名なの。
そこでネアンデルタール人のお墓が発見されて、埋葬された骨といっしょに花の化石も見つかってるの。
もっとも古いお墓と言われていてね、野蛮だった彼らも死者を悼み、花を捧げていた。
人間の心の始まりの瞬間だったとも言われている」
キョウコは、自分にも蕾ができたと大瀧に告白する。
「私はこのまま咲かせてみる。自分で。この花を摘まないで、生かして、種ができれば・・・
この花はね、何かの始まりのしるしだと思えるの。だから、できれば一緒に育てて欲しい」
大瀧「これは単にヒトに寄生する狂った花、ただそれだけだ」
キョウコ「あなたの真直ぐなところが好きだった。でも、自分が信じられるものしか受け入れることができないのね」
キョウコは退社し、行方不明になった。。。
「私はもともと花だったのかも。
少しずつ私の体も心も借り物ののように軽くなって、周りに溶けて、漂って、消えてゆく。
これが本当の私という喜びに今、満たされています。
気にすることは何もない。私は花に戻ります。
とっても静かで、とっても幸せ」
監督:石井岳龍
出演:綾野剛、黒木華、刈谷友衣子、山下リオ、古舘寛治、伊藤歩 ほか
「みんな、花に戻る」
私の好きなボリス・ヴィアンの『うたかたの日々』を基にした話かと思ったら違っていた。私好みの1本。
「花が恐竜を滅ぼした」など、フシギなストーリー。
地味ながら、どこにでもスゥっと溶け込む黒木華さんの、自然で穏やかな演技は評判通りだし、
綾野さんも、こうした繊細で、苦悩する、現代の青年役がいちばん似合ってる気がする。
「とっても静かで、とっても幸せ」
そんな天上の世界=ヒトが花(植物)に還るという発想はステキ。戦争もないし
でも、ヒトらしい感情もないのだろうか?
▼story(ネタバレ注意
セラピストの美月響子は、「シャニダール社」に入社し、研究員・大瀧賢治の下につく。
「考え直したほうがいいよ。特殊だからね、今ならまだ間に合う」
シャニダール社では、胸に花が咲くという特殊な現象を研究していて、その母体となる少女らが暮らすゲストハウスも完備している。
提供者は協力するだけで、家族に1億円が支払われ、施設外には出られないが、施設内では好きなことをして暮らせる。
その心理状態が繊細な花の成長に影響を与えるため、1人ずつにセラピストがついて、毎日、経過観察が行われている。
満開になると切除手術が行われ、花は新薬開発のために使われるため、厳重に保存され、本社に納品される。
切除手術が終わり、提供者が退出すると、大瀧とキョウコは新たな提供者に交渉しに行く。
新たな提供者・立花ハルカは、家族のために施設に入る。
ハルカは内向的な性格だったが、家庭が複雑で、プライドが高い菊島キクを見た途端に創作意欲が沸いたといって、ものすごい勢いで絵を描き始める。
ハルカ「母も、世界中の人たちも、自分の子どもみたいに感じるんです。変ですよね?
咲かせ続けるのはムリなんですか? この花、きっとなにか大切な贈り物ですよね? 切ってお金に換えていいの?」
大瀧は、キョウコの境遇が気になり、調べると、昔、交通事故で父母と妹を亡くしていたことが分かる。
社内の機密を盗み見ていたキョウコ。
大瀧「僕たちは、花の謎を解明することが仕事じゃない」
キョウコ「みんな心に大きな穴を持っていて、大切なことを探そうとしてて、揺れてる。花はその心の絵なの。
この花は何? それがいちばん大切じゃないの? 私、この花のこと、もっと知らなきゃ。花がそう言ってくるの」
号泣するキョウコを抱きしめる大瀧。
田村ユリエは、毎日、経過観察に来てくれる大瀧に料理を作り、特別な想いを抱いている。
花が満開になって切除されれば退去しなければならなくなるのを危惧し、切りたくないと言い出す。
「私じゃなくて、この花にしか興味がないのよ!」
「花は受精しないし、切除しないと母体にも花にも危険だ」と大瀧に説得され、手術するも心筋梗塞で亡くなる。
ハルカの花は順調に成長する一方、キクの花はしぼみ、所長「週末に退去させよう。生物的に問題があるのかもしれない」
キクは退去のことを知って、ほかの少女の花を衝動的にむしり取ってしまう。
ハルカは「私のを摘んで!」と自分でもぎ取ってキクに与え、失神する。
キョウコ「シャニダールというのは中東イラクの紛争地帯の地名なの。
そこでネアンデルタール人のお墓が発見されて、埋葬された骨といっしょに花の化石も見つかってるの。
もっとも古いお墓と言われていてね、野蛮だった彼らも死者を悼み、花を捧げていた。
人間の心の始まりの瞬間だったとも言われている」
キョウコは、自分にも蕾ができたと大瀧に告白する。
「私はこのまま咲かせてみる。自分で。この花を摘まないで、生かして、種ができれば・・・
この花はね、何かの始まりのしるしだと思えるの。だから、できれば一緒に育てて欲しい」
大瀧「これは単にヒトに寄生する狂った花、ただそれだけだ」
キョウコ「あなたの真直ぐなところが好きだった。でも、自分が信じられるものしか受け入れることができないのね」
キョウコは退社し、行方不明になった。。。
「私はもともと花だったのかも。
少しずつ私の体も心も借り物ののように軽くなって、周りに溶けて、漂って、消えてゆく。
これが本当の私という喜びに今、満たされています。
気にすることは何もない。私は花に戻ります。
とっても静かで、とっても幸せ」