メランコリア

メランコリアの国にようこそ。
ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

『うたかたの日々』(早川書房)

2005-12-02 23:55:55 | 
『うたかたの日々』(早川書房)
原題L'Ecume des jours by Boris Vian
ボリス・ヴィアン/著 伊東守男/訳
初版2002年 600円

※2002.10~のノートよりメモを抜粋しました。
「作家別」カテゴリーに追加しました。


自由な想像力を自由に言葉にした、かなり変わった純愛小説。
きっと何度も読むたびに味わい深く、魅力が分かってくるであろう作品。

序文

「人生では大切なことは何事に関わらず、全てのことに対して先験的な判断を下すこと。
 すると、実際、大衆が間違っていて、個人が常に正しいことが分かってくる。
 何もわざわざ言葉にしなくても、黙ってそれに従っていればいい2つのことがあるだけだ。

 それは、キレイな女の子との恋愛だ。
 それとニューオリンズかデューク・エリントンの音楽だ。
 その他のものはみんな消えちまえ。なぜならその他はすべて醜いから」


あらすじ(ネタバレ注意

遺産かなにかで金持ちの色男コラン青年
最近、専属シェフとなった女好きのニコラ
ゲロについての論文やらを発表して、異常なカリスマ人気作家パルトルの完璧なおっかけ&コレクター、万年貧乏の友人シック
ニコラの姪で、シックの恋人、美人のアリーズ
ニコラと付き合っているイジス

彼女の犬の誕生パーティで、誰かを愛したがっていたコランは、
エリントンのアレンジ曲と同名のクロエと出会い、2人は電撃的なひと目惚れをする
2人は初々しいデートをして、間もなく結婚


コランはシックにアリーズとの結婚資金として遺産の一部をあげるが
あっという間にコレクションに費やしてしまい、アリーズとの仲は後に最悪となる

コランは、これ以上ないくらい金のかけた式を挙げる


翌日、ニコラが運転して郊外に新婚旅行に行くが寒すぎてクロエは体調を壊す
金庫の中の金は急速に減り、部屋は次第に縮みはじめる


スケート場にいたコランは、クロエが突然倒れたと聞き、地獄の思いで引き返す

「怒ってない? こんなバカみたいな女を奥さんにして」

医者との対話は、グルーチョ並みに変
ウサギ丸薬をもらいに行った薬局のオヤジも
「お代は高くつきます あなたは私を殺して払わないで行っちゃうんでしょう?」


検査結果を聞きに行ったコランとクロエ
肺に生えて巣食った睡蓮の花を見て絶望的になる
唯一の治療法は、寒い部屋で花に囲まれ、1日2匙以上の水を飲まないこと!

ニコラも不幸が影響して、すっかり老け込み、金も底をついて雇っていられず、
コランに別の職を紹介される


コランは職探しをはじめ、軽蔑する労働をするが合わずに、次々と転職する
(銃を体のエネルギーで裁判するとか)

自分が発明したカクテルを作るピアノは質屋に売り、金はすべて花代に終わる


クロエは手術で片方の肺を摘出して、いったんは回復の兆しを見せるが
すぐにもう1つの肺に転移する


シックは最後のコレクションを揃えたのに、税金を払わない罪で警官がなだれ込み、
パルトルの本を乱雑に扱ったので怒ったら射殺された

アリーズは、シックとの同棲が終わり、パルトルの次々と出される新作で
シックが強盗もやりかねないことを知っていて、愛ゆえにパルトルを心臓抜きで殺し、
シック行きつけの本屋の主人も殺し、火をつけてゆく


コランは死ぬ人の家族や知人に前日、死を報せる仕事をしていると、
クロエの死まで知ってしまう

葬式は金がないためにひどくぞんざいなものになり、
僧には悪態をついて蹴飛ばされるし、棺は窓から落とされるし、
イエスからも無視され、クロエの死体は“みんなころた混ぜ”に穴に捨てられる

今まで良き親友だったハツカネズミまでもが不幸の波に押し流され
コランの苦しむ様子を見ていられないと猫に自殺依頼する



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