原孝至の法学徒然草

司法試験予備校講師(弁護士)のブログです。

身内が債務の一部弁済をしたら時効は中断するか?

2015-02-28 | 民法的内容
今日は、4月に開講する「答案力養成答練」のガイダンス。なんと、失踪宣告というおよそ論文では出ないであろうテーマを選定してのガイダンス。もちろん、「あえて」そういうテーマでやっていくわけです。要するに、知っている論点を書き連ねるような答案はもはや通用しないわけで、未知の問題点に対して、基本的な事項を出発点に検討していく力を付けて頂きたく、このようなテーマを選定しております。興味のある方は、ぜひどうぞ。ビデオブース等でも聴けると思います。

さてさて、一緒にやっている弁護士と話をしてまして、タイトルのような話になりました。現実的には、よくあるんでしょうね。債務者の親なり、誰かしら身内の者が一部の弁済してしまう、というケース。で、実はその債務は、既に時効が完成していた…。さて、債務者は、時効の援用ができるのでしょうか、という問題。

結論から言うと、コンメンタールによれば、「承認」(156)は、時効によって利益を受ける者によってなされなければ時効中断の効力を生じないので、この例では、債務者は、なお時効の援用ができるということになりましょう。なぜ「承認」によって時効が中断するかといえば、①承認によって権利の存在が明確になること、②承認を受けた債権者が権利の行使を差し控えた場合に時効の完成を完成を認めることは不当であること、にあると言われています。だとすると、①身内の者は債務者ではなく承認によって権利の存在を明確にしうる立場ではなく、また、②債務者本人が債務を承認したわけではないので債権者の権利行使の差し控えがあったからといって時効の完成を認めることが不当とは言えから、やはりコンメンタールのような結論が導かれるんだと思います。

なお、この身内の弁済というのが、実際的にはどういう法的性質なのか場合によっては難しい。①自己の名で、他人の債務として弁済した場合は、いわゆる第三者弁済(474)。身内は利害関係を有しないので、債務者の意思に反する場合は、弁済無効。②本人の名で、本人の債務として弁済した場合は、これは無権代理。③自己の名で事故の債務として弁済すれば、これは非債弁済(707)。

こういうことを考えるのは、楽しいですよね。

さて、「答案力養成答練」のガイダンスに行きます。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿