第四章 日和見 ~馬詰柳太郎~
隊を無断で脱したのが分かり、追っ手が掛けられたら、馬詰父子では成す術が無い。信十郎は流石に年の功で、その辺りも慎重に考えていた。
が、そうするうちにも、お米が八木家に姿を現す回数が増え、柳太郎を冷やかす声は日増しに大きくなる。
こうなっては、幹部に知れるのも時間の問題。いや、既に知られているのかも知れない。
その日は、程なくしてやってきた。文久四(1984)年一月十五日、将軍・家茂の上洛に伴い、下坂していた新選組も帰陣を待っていたかのように、南部家当主の亀二郎が、八木家当主の源之丞を訪ったのである。隊士たちは、すわ縁組かと浮き足立って、二人が向かい合う座敷の障子越しに聞き耳を立てていた。そんな様子を、胸につかえを漢字ながら所在なく、前川家の門前に立ち尽くす柳太郎。
案ずる様に、南部亀二郎は、お米の腹の子の話でやって来たのだが、八木家源之丞がそれを真っ向から否定。以前八木家の奉公人にお米が懸想し、勝手にあれやこれや言い触らしたが為、その奉公人は辞めてしまった経緯があった。
だが、南部の手前、新選組に話は通すと約定していた。
経緯を聞いた土方だが、正直、どうでも良い話である。しかし、源之丞の顔を立てる意味でも、柳太郎を呼び付けた。
「何をしておる。入れ」。
柳太郎は障子の外に正座している。
「はい」。
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隊を無断で脱したのが分かり、追っ手が掛けられたら、馬詰父子では成す術が無い。信十郎は流石に年の功で、その辺りも慎重に考えていた。
が、そうするうちにも、お米が八木家に姿を現す回数が増え、柳太郎を冷やかす声は日増しに大きくなる。
こうなっては、幹部に知れるのも時間の問題。いや、既に知られているのかも知れない。
その日は、程なくしてやってきた。文久四(1984)年一月十五日、将軍・家茂の上洛に伴い、下坂していた新選組も帰陣を待っていたかのように、南部家当主の亀二郎が、八木家当主の源之丞を訪ったのである。隊士たちは、すわ縁組かと浮き足立って、二人が向かい合う座敷の障子越しに聞き耳を立てていた。そんな様子を、胸につかえを漢字ながら所在なく、前川家の門前に立ち尽くす柳太郎。
案ずる様に、南部亀二郎は、お米の腹の子の話でやって来たのだが、八木家源之丞がそれを真っ向から否定。以前八木家の奉公人にお米が懸想し、勝手にあれやこれや言い触らしたが為、その奉公人は辞めてしまった経緯があった。
だが、南部の手前、新選組に話は通すと約定していた。
経緯を聞いた土方だが、正直、どうでも良い話である。しかし、源之丞の顔を立てる意味でも、柳太郎を呼び付けた。
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柳太郎は障子の外に正座している。
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