まほろば俳句日記

毎日見たこと聞いたこと感じたことを俳句にします。JーPOP論にチャレンジ。その他評論・エッセー、学習ノート。競馬も。

小便の泡立ってゐる野焼き後/北大路翼を読む(6)

2017-09-04 04:20:26 | エッセー・評論

*末尾に梶浦由紀BEST付

吉野家は敗北の味夏の雨   北大路翼  その3

この句について、当ブログで2回観賞して来たが、結論めいたことはまだ書いていない。もう一度読み込んでみたい。吉野家をはじめ牛丼チェーンが出来たのは、1970年代の終り頃なので、もう40年の歴史がある。牛丼(牛めしとも)は並盛りで280~380円で推移して来た。安くて早いのが人気の理由だが、もう一つ貧しさもある。とりあえず、空腹を満たしておき、仕事やギャンブルに励む人々のイメージがある。消費年齢は学生から中年サラリーマンまで幅広くカバーしている。当初、女性やファミリーの行く場所ではなかったが、最近ではOLや女性フリーターにも抵抗が無くなり、休日などはテーブル席に家族連れも目立つようになった。そんな中で、時代が変わってもこの句に詠み込まれた【敗北感】はある固定層に確実に受け継がれている。
彼はことし39歳になった。と言うことは、1978年生まれであり、20歳になったのは1998年ということになる。20歳代をほぼ2000年代(0年代と呼ぶ)の10年間に過ごしたことになる。親は【団塊の世代】であり、所謂【団塊ジュニア】ということになる。親は70年安保が敗北し、1970年代に世の中が、何事も重さ・真剣さから軽さ・不真面目さに価値基準を移した時代を生き抜いた。1970年代とは、現代にある若者文化のほぼ全てが出揃った時代に当たり、彼の親たちはその変化を横目で見ながら、部下や目下には高所から傍観して世紀変わりを見届けた世代であった。子には説教の一つもしただろうし、北大路のような所謂オチコボレには冷視線を浴びせつつも、未知の【不確定】として傍観していたに違いない。わが子が青春期にあって、早々と【敗北の味】を知ってしまったことに対しても、自身の同時代を重ねたに違いない。北大路の作品には、そんなはずはないのだが、親たちの時代の【敗北感】をまるで踏襲するかのようなリアルさがある。・・次回は、他の作品を交えながら、作者の来歴や現在の作句環境なども含めて、この【敗北感】の由来をもう一歩突っ込んで追及してみたい。・・・《続く》
 
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梶浦由紀 BEST