秋黴雨唯識論を読みすすむ 秋到来清掃・といふ言葉(労基法より) 安部薫の暗い金曜日にまた逢おう 二十九年生きて死んだ天空の旱星(安部薫へ) 猫に餌遣るだけの深秋の底無し沼 振り払っても消えない九月といふ暗号 セプテンバーレインは来なかった人生の並木道 地球は晴れるとひた走るマクベスの首 温泉饅頭蒸し上がるたび鬼は外 バート・バカラックっていたね 秋の雨は震えていた(『雨に濡れても』)
あと十年生きる お前がいなければね オークニーの遺跡は語る夏没日(スコットランド) 永遠の夏空を石鎌で切り裂く 預金通帳を探している 私の人生を探している 片方の肺が潰れたが死は待っていてもやって来ない お花がいっぱい 神様がいてくれてよかった(みゅーみゅーさんへ) いるところにはいる盆踊りの達人(こころの保健室杉本さん) 老いと死を切り離して今夜パジャマを脱ぐ 自動開閉の位牌 仏はいいことしてくれる トンチンカンなこと話してワッハッハと笑える シ・ア・ワ・セ ※NHKスペシャル【こころの保健室】を観て
闇でも光でもないニッポン全土に夏続く 鉄橋を渡る前に鉄橋を破壊し尽くす秋の風塵 アムステルダムで合法麻薬に溺れた晩夏光 過去を絶つ前に未来を絶てば未踏の原野 過去を絶つために私の中で戦争が始まる 火を焚いても胸焦がしても夏空は消えない ここから始まるしかない八月半ばの一ト日 苦行のような秋晴れはもうたくさん ハレルヤ マラッカ海峡に身を投げて九月の長雨を喚ぶ 干からびた母をギュッと抱きしめても秋はもう来ない
俳句下手はアルコールで治すべし蛇笏の忌 いつかどこかでガリレオ・ガリレイ九月尽 どしゃぶりの秋の雨の中私はひとり(和田アキ子「どしゃぶりの雨」) 孤独のグルメで孤独でなくなる月明かり(テレ東系でサラリーマンに爆発的人気) かかしのように/フラメンコのように/私が/突っ立っている 桐生選手は初恋の人体育の日(十代の百米日本記録保持者。独特の風貌)
にんげんの儚さ秋の蚊の飛び交へり 日本一長いトンネル秋来る 青大将秋麗といふこと静もれり(改作) 秋気満つアルベール・カミュの「最初の人間」 敬老の日のメンソレターム蓋開かず 《続く》