氷葬を解けば秋燕の無数の死 鵙の贄放たれてなほ脈動す 鶏頭の頭を殺がれしが蘇生せり 神田駿河台下白紙一枚鳥渡る かまつかを見たければ地獄まで降りて来い 浅草寺裏猫カフェにゐて鉦叩 まさに錦秋エグザイルのヒロと上戸彩 黙契のごと朝顔の不死を得る 水引草エレジーとして無限なり 寒蝉のさむさの所以問わずなり
明くる夜は明けざる夜とも寒露なり ざくろ裂く痛みと知らず空遠し 運動会駈けて転んで父は無し 十月や約束の地を破却せり(イスラム国へ空爆) 人生は語らず黄落期迫り来る
ツンドラの白熱秋燕帰還せず 冷まじや私戦予備及び陰謀罪(イスラム国参加目的の北大生逮捕) イスラム国の黒旗京大俳句にも(新興俳句事件) くろぼうの甘さやもう晩秋なのか 天国でも地獄でもない秋暑如何せん 台風は去りぬ肉片が闊歩せり だんじり祭螺旋の空をひねり出す 合鍵を下さい冬瓜の腐りだす 貝割菜無私の人生といふ不思議 葉生姜の葉を摘んだことありますか
モンゴルの怪物逸ノ城九月尽 棒稲架たちまち暴徒に変身す 落花生の弾け飛ぶ音宇宙まで サウンド・オブ・サイレンス秋風鈴は無謬なり コスモスを来世と信じ踏み出せり
台風到来原爆投下の前触れか 台風の目に収まりきれず巨大猫 台風やどうにもならず疾走す 台風一過心の傷を乱打せり 台風が過ぎても盲愛の時止まず 《続く》