仏生山とは名は仏くさけれど、ちきり神社にやってきました。
ちきりとは、
と書く。榺は機織り道具である。祭神は、稚日女命(わかひるめのみこと)である。この人は、『日本書紀』で悲劇の人である。天下のうどの大木=暴れん坊スサノオは、ある日、わかひるめちゃんが衣を織っていたのを可愛いと思い、馬の顔を剥いだものを部屋に投げ入れた。わかひるめちゃんはびっくり仰天、陰部に機織り道具が突き刺さって死んでしまったのである。このスサノオとは、この前に、すでに神殿に脱糞(ゲロという説もあり)、田んぼを荒らすなど、いろいろやらかしておったのであるが、アマテラスは優しいのか馬鹿なのか、これを許していた。
まあまだ征服していなかったのであろう。しかし、このわかひるめちゃんの事件には激怒。つい、勢い余って岩屋戸にお隠れになってしまった。しかし、ストリッパー作戦によって……(以下略)
わたくしの下品な感性によって、この挿話を解釈するに、スサノオとアマテラスははじめ違う国の首領であったが、戦争しているうちに、話し合いで決着しようということになり、つい神殿のなかで男女の仲となってしまったのではなかろうか。アマテラスはそれを隠蔽するために、スサノオの脱糞だの田んぼ荒らしなどのエピソードを振りまきながら、ついに秘密の出産のために岩屋戸にお隠れになったのである。おぎゃあおぎゃあとどうみても聞こえてくるのを部下のやおろず達はびっくり仰天。おいそこのお前、とりあえず、脱いでどんちゃん騒ぎだよ、あれまずいだろ誰の子だよ何スサノオ?まずいだろうがよ、そりゃ、それどんちゃんどんちゃん。そんな神々の黄昏をみていた語り部が、陰部に機織りが突き刺さって死んだ女神(つまりスサノオとアレしてしまったあれ)のエピソードをつくる。これだけは忘れてはならぬ、と言われたその語り部の子孫が日本書紀の編纂者。このときとばかりに、つじつまの合わないエピソードを入れ込み……。『古事記』は名前は明かさずにただ陰部に機織り道具が刺さった織女というエピソードにとどめておいたが、人間、隠していた神(真)実を言いたくなるものである。
西の鳥居から登ってゆくと、狛犬さんが居た

いろいろ並んでいるが、さりげなく狛犬さんも混じっている。
神社に入る前にそこは展望台である。
仏生山の雌山にある。はじめは、近くの池の中州にあったのであるが、池の工事で水没するんで、雄山に移した。しかし、そこを松平家が法然寺(墓所)とするとか言いだし、追い出されたのである。わかひるめさんは、池や松より弱かったのであった。ともかく、山の頂上にあるのでいろいろな登り口がある。

でっかい随神門

拝殿

燈籠がたくさんあります。一つ一つをチェックする余裕がありませぬ……

高松市内を睥睨するための文明の利器まであります。覗いてみましょう……

本殿
そういえば、この神社には恐ろしすぎる由縁があります(ともったいぶってますが有名なアレです)
案内板に曰く、
「悲しく美しい人柱」
「およそ八百年の昔、治水二年村人達は深い憂いに沈んでいた。というのは平池の堤は幾度築いても雨が降るたびに崩れ田畑は水に流されて普請奉行の阿波の民部田口成良も難工事にホトホトもてあましていた。 」
「ホトホト」……かわいくしてますが、村人は生きるか死ぬかなんですわぃ。
「今日も京都の都からは平清盛の厳命が届いたばかり。その晩疲れはてて眠りもやらぬ成良の枕辺に白衣垂髪の女神があらわれ、不思議なお告げを残して姿を消した。」
清盛は命令ばっかりしやがって、なにが「治水して★まいります」、「一億総★溜め池計画であります」、「わたくしがはげているというのはイメージ操作なんでありまして」、「わたくしが、わたくしがですね、旱魃に関わっているということになれば、すぐにでも辞めるということは、ここではっきりと申し上げておきたい」、「こんな旱魃たちには負ける訳にはいかないっ」だよ。こっちはもう何人も死んでるつうのに、なにこの讃岐とかいう處、全く雨降らねえわ、と思えば降りゃ洪水だわ、あー人柱も残ってねえわ」と眠っていたところ、やはり出ました願望の女神。
「あすの牛の刻白衣垂髪の乙女が械のチキリを持って通るであろう、その乙女を人柱として堤に埋めれば工事はきっと成就する」というのであった。
もはや成良もスサノオのように暴れたい気分だったのでしょう。フロイト先生に見てもらえば、ものすごくイヤらしい診断をしたにちがいありません。最近の殺人事件などメじゃないほどの。
――つづく