スズキ ゲンさんのブログ

立命館の再生を願って

No88 立命館の常任理事並びに関係各位へ、卒業式・入試とatamaplasについて

2021-02-10 14:06:40 | 立命館の再生を願って
No88 立命館の常任理事ならびに関係各位へ     
2021年2月10日 元総長理事長室室長・ジャーナリスト 鈴木元
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はじめに
 私は本シリーズのNo86において、既存学部である映像学部や情報理工学部の大阪茨木キャンパス(OIC)移転のために110億円もの巨費を費やすべきではないと論じた。そして前回No87において、コロナの世界的大流行の下、学校法人立命館として、生活が大幅に困難になっている学生への生活支援、APUや生協の経営支援が緊急の課題になっていること。そうした時に時代遅れの「評価制度」の導入によって学園に不団結をもたらすべきではないだろうと書いた。要するに森島朋三氏が理事長に就任して以来、学問研究教育機関である大学の在り方と異質な運営が持ち込まれてきた事を是正すべきであると書いてきた。
 そんな中、大学の在り方を根底的に否定するような事件が引き起こされた。つまりコロナ禍、突然 仲谷善雄学長の名によって全学生ならびに保護者参加の対面卒業式・入学式が提起され学園は混乱に陥っている。また必ずしも学園構成員の共通認識になつていないがatamplasというAIとオンラインを使った教材開発会社と高大接続や入試について共同開発研究を進めるというのである。
(1)コロナ感染対策は何処へいったのか、仲谷善雄学長による突然の「全面対面卒業式・入学式」実施判断の科学的根拠は、そして根本問題として学園の民主的運営を無視する変更。
 3月20-22日に予定されている卒業式、昨年の11月以来、教学機関の討議を経て、コロナの感染防止を念頭に学部単位に代表者による授与式を行い、それをオンライン配信し、ゼミ単位などで担当教員から卒業生に卒業証書を授与するという方針が取られ、各学部においてその準備具体化が図られてきた。ところが2月に入って突然、仲谷学長名で「本年の卒業式は対面方式で学部単位で卒業生全員参加、希望する保護者の参加によって行うように」との連絡が入り現場に混乱が生じている。「なぜ変わったのか」との質問にたいして、「多くの他大学において対面卒業式が実施される」「保護者から保護者も参加できる対面式卒業式にしてほしい」との要望が寄せられているからとの回答がなされているそうである。
 学内において既に経済学部の稲葉和夫特任教授が全学に配信されているように、代表者による授与式をオンラインで配信するよりも、全員参加による保護者も参加した卒業式の方が人生の思い出深いであろうことは明瞭である。しかし現在のコロナの感染状況の下、多い学部では1000名を超える参加となり、現在の教室条件から密集する会場内はもとより、久しぶりの会う学生同士の会話、そして学外においても大量の人々が乗り込むバスや電車などでの感染拡大の危険から、上記のような方針で臨むことが合意され準備が進められてきたのである。それを「他大学では」とか「保護者から希望がよせられているから」など、およそ科学的根拠に基づく判断とは考えられないことを根拠に、学長名による一辺の連絡で変更するというのはあまりも乱暴である。
 そして何よりもこのような全学生・保護者・教職員にかかわる問題が常任理事会はおろか教学対策会議などいかなる機関でも検討されることなく、仲谷学長だけの「判断・決定」でなされた事である。まるで戒厳令下の軍事司令官の命令による遂行のようなやり方である。研究・教育を目的とする大学においては全構成員にかかわる問題は、しかるべき機関において衆議を尽くしての合意に基づいて運営すべきである。しかも余りにも唐突で乱暴なこの変更、「全学生参加の対面方式による卒業式」という言葉だけで、どのように感染対策をとるのか等、何も具体的なことが提起されていない。これでどうして進めるというのか。12日には仲谷総長も参加した拡大学部長会議が開催されるそうである。何処でも討議したことのない今回の変更、説明者は仲谷学長、ただ一人とならざるを得ないし、その方針に基づく対策提案者も学長が行うことになる。仲谷学長は、変更の科学的根拠ならびに手続き経過、そして感染対策方針について全学構成員が納得出来るような丁寧な説明を行わなければならないだろう。
 今回の重大で唐突な変更、現在の立命館の総長と理事長の関係から言って、到底、仲谷学長の単独判断に基づくものとは考えられない、少なくとも森島理事長の同意、いや森島理事長の「判断」による仲谷総長への提起と考えるのが妥当だろう。変更の経緯について詳しく説明されるべきである。またクラスターなど学内感染が起こった場合、誰がどう責任を負うのか。まさか当該の学部長や事務長ではないだろう。この点も明確にする必要があるだろう。
(2)森島朋三理事長、ゼネコンに続いて教材会社に立命館を売り渡すのか?
 立命館のAI広報・立命館CLUBの1月15日付け発行(197号)によると、立命館(森島朋三理事長)はAI教材開発会社・atamaplasと2020年12月22日、高大接続ならびに入試について共同研究開発を行うとの協定を締結したと写真入りで報じている。
 私は大学をはじめとする教育分野においてAIやオンライン活用が、立命館を含めて日本の教育機関は遅れており改善すべきと考えている。しかし今回の協定締結が持っている問題点を見逃してはならないと提起する。
 1)なぜ総長ではなく理事長が協定締結者なのか。
 高大接続や入試は学園の教学の在り方を決める重要課題である。これはまさに教学の最高責任者である総長の所轄事項である。それをなぜ総長ではなく経営の責任者である理事長が調印者としているのか。森島理事長は予てからなんでも自分の指揮下に置きたいとの傾向が強い。そしていよいよ教学分野も自分の手元におく手始めに高大接続と入試について「これは私が担当する」と動き出した。この間、森島理事長が登場してきた一連のマスコミ報道を観た人が共通して感じてきたように「能弁であるが底が浅い人物」との評価が定着しつつある。にも拘らず「長であれば下の人間よりも総ての分野で優れているとの思いあがり」が教学を含めてあらゆることを自分の下に置こうとするのである。これは組織を不幸にする典型的な例である。
2)なぜ積み上げてきた立命館の教学を、新興のAI教材会社に任そうとするのか
 高大接続も入試も立命館は多くの積み上げを築いてきた。もちろん時代に即した改革は必要であり、現在の到達が十分だと満足することなく、さらなる改革が必要である。しかしAIやオンラインの活用などのテクニカルな事項は付随的なものであって、本質的にはそれぞれの教学への深い理解が前提である。atamaplasは個々の教材をAI化する点について、それなりの技量を持っているのだろう。だからこそ多くの学習塾への売り込みに成功しているのかもしれないが、そのことと立命館がatamapiasと共同研究をすることとは別のことである。塾は多くの場合、既存知をどのように的確に教えるかが仕事である。それに対して大学は既存知をどのように乗り越えるかの研究を行う場であり、研究を基礎に教育する場である。本来付属校を含めた一貫教育の一般校と異なる特色もそこにある。また入試も基礎学力とともに問題発見と解決の能力の見極めが大切なのである。それこそ大学教育の前提であり立命館の使命なのである
①atamapiasがおこなっている程度の教材開発・発信は、情報理工学部や一貫教育部、付属校の人材でチームを作り少しの時間と努力して研究・開発すれば出来ることである。森島理事長は立命館にはその程度の力量を持った人材もいないと判断しているのだろうか。総長は情報を専門とする研究者であり情報理工学部の学部長も務めて来た人である。該当する分野の人々と相談して学内の人材発掘を行い組織して臨むのが当然である。atamaplas程度の会社のテクニカルに振り回されるのではなく、少し遠回りのように見えても自力開発をすべきであろう。その方が長い目で見た場合、立命館の教学改革の力になることは明瞭である。
②atamaplasが立命館と協定を結んだ理由は明確である。なによりも「立命館とも協定を結んでいます」が全国的売り込みの好材料になるからである。提供される立命館の豊富な高大連携・入試の膨大なデーター・例証はatamaplaの教材開発にとって極めて有用であるからである。
③そして手っ取り早く研究開発費などが立命館から提供されると考えているのであろう。
 森島理事長の下、大阪茨木キャンパス設立等をめぐって立命館は竹中工務店や鹿島建設などゼネコンの食い物にされてきた。そしてここにきて教学分野まで教材開発の民間会社に売り渡される危険が生れようとしている。立命館の教職員は事態を直視し、自らの誇りにかけてこのような異常な契約は取りやめる方向で状況を打開しなければならないだろう。

 鈴木元 経歴、立命館総長理事長室室長、初芝学園副理事長、中国(上海)同済大学アジア太平洋研究センター顧問教授、国際協力銀行中国内陸部人材育成事業アドバイザリー、私立大学連盟アドミニストレーター研修アドバイザー等を歴任。
 現在、国際環境整備機構理事長、京都高齢者大学校幹事会副代表、ベトナム枯葉剤被害者支援日本委員会事務局長、日本ペンクラブ会員、日本ジャーナリスト会議会員、かもがわ出版顧問など。
 主な著書、『立命館の再生を願って』『続・立命館の再生を願って』(いずれも風涛社)、『像とともに未来を守れ 天皇・立命館・学生運動』(かもがわ出版)、『もう一つの大学紛争』(かもがわ出版)、『異文化理解・協力の旅』(文理閣)、『京都市における同和行政批判』(問題研究所)『コロナ後の世界』(かもがわ出版)など多数。

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