NO78 2018年度総長選挙実施等について
2018年7月17日 元・立命館総長理事長室室長・ジャーナリスト 鈴木元
はじめに
所要が立て込んでいたため、この立命館シリーズ、しばらく執筆・発表出来ていなかった。
しかし2月27日にNO77号を発表して以降約80日経つが、毎週約1000件前後のアクセスが続いている。NO77号を読んだ人が、新しいものが出るまで過去の物を読んで理解を深めようとしていると推察される。それだけこのシリーズは立命館の現在を知るうえで不可欠なものになっているのだと思われる。前回77号以降の三点について論評する。
(1) 総長選挙規程改定問題
2010年の総長選挙前後から、私も含めて多くの人々が、その改定を提起してきたが、森島朋三理事長(当時は専務理事)は、それを無視続けてきた上に、今回①候補者推薦委員会の委員長を「教員に限定しない」と言う改悪を提起した。これはAPUの学長選挙において実行され、今村正治常務理事が推薦委員会委員長に就任していた。しかし総長選挙にあたっては全学から多くの反対・疑問の声が上がる中で森島理事長は断念せざるを得なかった。
しかし元々改定が求められていた二つの点、すなわち②選挙人選出にあたって、あまりにも選出基盤人数に差がありすぎる点の改善。③候補者が決まる前に選挙人を選ぶとういうおよそ間接選挙制度になじまないやり方の改善、この二点については、またもや問答無用で無視した。ある意味では②③だけでは学内世論に押されるので①を出し、それを争点とし、断念しても元々で、②③の争点化をごまかしたという巧妙なやり方でもあったが、今後も引き続き改善を求め続ける必要があるだろう。
(2)財政・学費問題。
前回77号以降の新しい動きとして、4月25日に学費値上げの提起が行われた。その前提としてR2020(2010年から2020年の学園計画)の総括の上に立って、R2030(2020年から2030年の学園計画)樹立のための財政政策を確立しなければならない。そのために学園収入の70%以上を占める学費の在り方を定めなければならない。したがってR2020の到達点の確認と財政分析が必要不可欠となる。しかし提起されている文書を観る限り、教学(教育・研究)について、どのように切り開かれ、どのような到達に至っているのかは必ずしも判然としない。それは6月27日の常任理事会での学費決定に至るまでの2カ月間に学費改定方式・額が3回も変更されたことに表れていた。要するに根拠薄弱な値上げ提案だったのである。
財政問題を考えるにあたって、この期間の最大の問題であり、今後にも続く問題である大阪茨木キャンパス(OIC)、長岡京キャンパス、グローバル教養学部を巡る問題についてまったく触れられていない。これでは総括・到達・今後について、説得力ある提起にはならない。いずれも拙著『立命館の再生を願って』『続・立命館の再生を願って』(風涛社)、そして本シリーズで詳細に展開してきたことなので、ここでは問題の所在に留める。
1)大阪茨木キャンパス(OIC)
2010年に発足した「R2020」では、OICの計画はまったく無かった。にもかかわらず2010年6月突然、長田豊臣理事長、森島朋三専務、志方弘樹財務部付管財部長から大阪茨木のサッポロビール工場跡地を購入し、新キャンパスを開設するとの方針が提起された。当時、衣笠キャンパス狭隘克服が課題となっていて、山之内の上水道跡地を購入すべく京都市と交渉していた。ところが森島専務は「山之内の開設は2016年度になるので難しい」と言い、茨木を推進した。しかし京都学園大は2015年に山之内で新キャンパスを開設した。先に大阪茨木キャンパスありきのウソであった。
いずれの学部からも茨木への移転の希望が無かったが、政策科学部と、それまで何の問題も提起されていなかったのに突然「BKCも手狭になった」として経営学部のOICへの移転が進められた。なお当時「BKC移転後、理工系の拡充は図られてきたが、経営学部は放置されてきた」「この際、OICへの移転で改善を図る」などと「馬の目の前に人参をぶら下げる」のような話がなされていた。また「BKCも手狭になったので」を口実としたものの、その舌の根も乾かぬうちに、「BKCに農業ビジネス学部(現・食マネジメント学部)を設置する」とした。まさにウソで塗り固められたキャンパス展開であった。
衣笠周辺に政策科学部の敷地の確保と新校舎建設だけであれば50億円もあればできた。またBKCの経営学部と経済学部の施設充実も最大50億円もあればできた。つまり両方あわせても100億円もあればできたのである。しかしOICの開設には410億円をこえる費用が基金を取り崩してつぎ込まれた。さらに毎年30億円をこえる赤字が生まれるキャンパスとなった。
2)長岡京キャンパス
今回の財政文書では、改めて各学校単位での財政自立が強調されているが、これは立命館の以前からの財政原則であった。ところが森島専務ならびに志方財務部付け管財部長は立命館中高等学校移転先として長岡京を提起したが、その際①校舎建設費110億円は法人(立命館大学)が持つと原則をゆがめ、立命館大学に負担を負わせた。②敷地購入費は立命館中高等学校の積立金25穏円+深草の敷地を龍谷大学に35億円で購入してもらい、それで賄うと提案した。しかし龍谷大学ではそのような話は無かった。またもやその場限りのウソをついて通したのであった。結局京都市立工業高校の合併に伴って京都市に25億円で売却した。つまり予算比10億円の収入不足となった。③しかも購入した敷地から「ヒ素などの有害物質」が見つかった。契約では購入後1年以内に有害物質が見つかった場合は売り手側の責任で調査を行い除染するとしていた。にもかかわらず立命館は自分の手で敷地内を調査し12億円かけて除染した。そして開校後3年も経ってから立命館は相手にたいして除染費12億円の支払いを求める裁判を起こし、現在も係争中である。例え勝訴したとしても12億円の全額が戻ることは難しいと予測される。
したがつて長岡京キャンパスの開設で、従来そして現在の財政政策にたいして110億円プラス10億円プラスαの余分な支出をおこなったのである。鹿島建設との110億円に及ぶ校舎建設費契約支出は森島専務の手によって理事会に諮らず長田理事長決済で処理された。OICの250億円におよぶ竹中工務店との建設契約についても、理事長決済で行なおうとしていたのを私が発見し、文部科学省に伝え、その指導に基づいて理事会に諮らざるを得なくなったが、5学部長/12学部長の反対に直面した。なお長岡京キャンパスの除染費12億円も鹿島建設と契約している。
3)グローバル教養学部
川口清史前総長は2013年、安倍首相がオーストラリアに潜水艦を売り込に行くのに政府専用機に同乗してオーストラリアを訪ねた。そして両国首相立会いの下、オーストラリア国立大学と学術協定を締結した。その上、帰国後、常任理事会にも諮らず立命館東京オフィスにおいて「オーストラリア国立大学と共同学位学部を創設する」と記者発表した。日本で最初の国際関係学部がある立命館大学、日本で最初の本格的国際大学であるAPUがある立命館において、どのような国際共同学位学部を作るのか揉め続けた。しかし「前総長が約束した国際約束を覆すわけにはいかない」と4年に渡って議論し、OICにグローバル教養学部として2019年に開設されることになった。しかし大学・学部・学科等の教学組織は何十年に渡って継続できなければならないが、今のままでは学生が集まったとしても財政自立の継続は難しい学部となる危険がある。
これらの三つの問題は長田豊臣前理事長、川口清史前総長、森島朋三理事長(当時専務理事)、志方財務担当常務理事(当時財務部付管財部長)の4人が責任を負わなければならない問題である。またこの時期、長田理事長が那須において別荘を購入したり、森島専務がゼネコン関係者と度々ゴルフをしているとか、志方財務部付管財部長が毎晩のように祇園で飲み歩いているという情報が関係者の間で飛び交っていた。これらについて本人達の口から事実認否の釈明が求められている。
少なくとも上記三つの課題についての分析と責任をあいまいにしたままR2030財政方針を確定できない。ましてや学費値上げ提起などありえない。今回6月27日付の常任理事会において森島理事長・志方財務担当常務理事から提案のあった2019年度からの新たな学費値上げは行わず、物価スライドにもとづく現行学費学費方式を維持することにとどまった。。この2018年度末の論議では、三つの課題についてケジメを付けた総括と責任追及がなされなければならないだろう。
こうしたことを引き起こした長田豊臣前理事長や川口清史前総長を退任後顧問とし月額20万円を支払っていることなどは直ちにやめ契約職員、嘱託講師等の賃金改善に充てなければならないだろう。ましてやすぐばれるウソを繰り返して、これらの施策を進め立命館に大きな財政負担と不団結をもたらした森島理事長ならびに志方財務担当常務理事の解任は、理事会・評議員会の議題として提起されて当然でしょう。
なお今回の財政・学費文書で繰り返して述べられているように、政府文部科学省は定員管理の厳格化、留年率や中退率が高い場合には補助金カットなどのペナルティーの強化を打ち出した。定員管理の厳格化に対応して、事の良し悪しは別にして立命館は既に実員の定員化を行った。留年や中途退学の改善は、それ自体が教育の質の確保として思い切った改善策を立てなければならないだろう。
なお今回は問題の所在だけに留めるが、改めて学費提起とかかわって「教学改革と財政問題」等の原理原則を踏まえて、別途詳しく展開することにする。。
(3)総長選挙を巡って
今年(2018年)の秋に総長選挙が実施される。現行規程の問題点で指摘したように、まだ候補者も決がまっていないにもかかわらず、既に選挙人選挙が行われている。理事長選挙後、学外理事から「学園運営の円満な一致」を求められた森島理事長は1月の理事会において「学園の一致した運営に努力する」と吉田総長と握手した。その手のぬくもりが消えぬうちに、大多数の教職員が学費・財政問題について議論・検討している最中、次期総長を自分たちの陣営の下に掌握するために次期総長候補擁立に動くとともに、選挙人の獲得に力を入れている。学園の正常化を願う人々は彼らの策謀に負けないように対策を急ぐ必要があるだろう。
森島理事長は次期総長候補として、予てから白羽の矢を当てていた人物と共に、新しい人物の擁立も模索している。ジャーナリズムの分野では知られているが、最近立命館に赴任したばかりで大学行政はまったく未経験な人物である。そのような人を総長に担ぎ出しても、困難な局面にある学園運営を改革はできない。結局、宣伝塔として担いでおいて教学を含めた学園運営を実質的に自分が全面掌握したいとと言う森島理事長の野望の実現を図るものに過ぎない。そういう事をすればどうなるかは、最近の日大アメフト部事件を見れば明らかである。日大で不祥事件の記者会見の矢面に立たされたのは学長である。ところが理事長は表に顔を出さないにもかかわらず、学長はまったく理事長の言うがままでしかないことがテレビ画面で白日の下にさらされた。
事の是非は別にして最近関西の私立大学で富士ゼロックス会長の宮原明氏が関西学院大学理事長に、日本電産会長の永森重信が京都学園大学理事長に等、民間企業の経営で実績のある人物を学園の理事理事長として担ぎ出す動きがある。立命館もこの間混乱を作り出してきた森島理事長の代わりに、実績ある経営者で立命館の歴史と伝統に理解があり、総長を支えて経営に参画してもらえる人物がいれば、理事長に就任してもらうというのも一つの選択肢にはなるだろう。しかし学園の教学の責任者である総長は教育や研究に造詣があるとともに立命館の学校運営に習熟した人物でなければ務まらない。
森島理事長は(2)で見てきたように、すぐにばれるウソをつき通して学園に混乱をもたらしながら、責任を取らない人物であり、学園を去る以外に道はない人物である。このような人物が総長にたいしてイニシアチブを握れるようなことを許してはならないだろう。
彼は教育や研究について見識ある論文や著作があるわけがないどころか、立命館において大学の中心的任務である、教学部、研究部、国際部、学生部等の事務部門にも就いたこともない。
それを覆い隠し、新しく赴任してきた教員や職員にたいして、さも自分が知識人であるかの虚像をふりまくために、2月24日付の『朝日新聞』に学園のお金使い全面広告に登場した。この広告は「功成った」財界人達が、地位や金だけではなく教養もあることを売り出すために高いお金を出して一面を買って広告することで知られている代物である。教養人や読書人はお金をはらってそのようことはしない。この広告は、図らずも森島理事長がそのような見識もない人物であることを如実に示すことになった。
しかし一度の登場では「知識人扱いされない」と思ったのか、今度は職務権限を使って学内広報誌である「UNITAS:Ve15」に登場し、元文部科学省大臣補佐官(現・慶応大学客員教授)の鈴木寛氏との対談を試みた。読んだ人は「これはなんだ?」との感想を抱いただろう。今日の大学の在り方、だけではなく、立命館の現状や将来についても、森島理事長は自分の見解を述べることなく、鈴木寛氏への「お伺い」に終始した。
最近立命館に赴任した人で、過去の森島氏の言動について知らなくとも、これを読めばおよそ立命館の教学の在り方について見識を持った人物ではないことは明瞭であろう。このような人物の甘言に乗せられて、総長候補に担がれるようなことはすべきでないだろう。そのようにふるまえば、その人自身の評価が問われることになる。
ところで7月12日付の『読売新聞』に来年度の入学生確保のために、関西の大学が一面を買い取った大学宣伝の広告記事が掲載された。いずれの大学も新学部設置など、その大学の売りとなる点にポイント置いた記事を掲載している。ところが他大学の記事では、それを紹介しているのは、いずれも学長(総長)である。立命館だけは吉田総長は出てこず、「トップインタビュー」として、グローバル教養学部の学部長予定者である金山勉氏を登場させている。これほど露骨に現職総長をないがしろにしようとする理事長は無い。と言うことは彼に担がれて総長になれば彼の言いなりになる以外に道はないことを如実に示しているのである。総長候補推薦委員・選挙人に選ばれた皆さんは、あるべき学園と総長像について深い議論をされることを期待します。
鈴木元。立命館総長理事長室室長、大阪初芝学園副理事長、中国(上海)同済大学アジア太平洋研究センター顧問教授、JICA中国人材アドバイザリー、私立大学連盟アドミニストレ―タ研修アドバイザリーなどを歴任。
現在、日本ペンクラブ会員、日本ジャーナリスト会議会員、かもがわ出版取締役、国際環境整備機構理事長、京都高齢者大学校幹事会副代表。
『像とともに 未来を守れ』(かもがわ出版)『立命館の再生を願って 正・続』(風涛社)『もう一つの大学紛争』(かもがわ出版)『大学の国際協力』(文理閣)など著書多数。
2018年7月17日 元・立命館総長理事長室室長・ジャーナリスト 鈴木元
はじめに
所要が立て込んでいたため、この立命館シリーズ、しばらく執筆・発表出来ていなかった。
しかし2月27日にNO77号を発表して以降約80日経つが、毎週約1000件前後のアクセスが続いている。NO77号を読んだ人が、新しいものが出るまで過去の物を読んで理解を深めようとしていると推察される。それだけこのシリーズは立命館の現在を知るうえで不可欠なものになっているのだと思われる。前回77号以降の三点について論評する。
(1) 総長選挙規程改定問題
2010年の総長選挙前後から、私も含めて多くの人々が、その改定を提起してきたが、森島朋三理事長(当時は専務理事)は、それを無視続けてきた上に、今回①候補者推薦委員会の委員長を「教員に限定しない」と言う改悪を提起した。これはAPUの学長選挙において実行され、今村正治常務理事が推薦委員会委員長に就任していた。しかし総長選挙にあたっては全学から多くの反対・疑問の声が上がる中で森島理事長は断念せざるを得なかった。
しかし元々改定が求められていた二つの点、すなわち②選挙人選出にあたって、あまりにも選出基盤人数に差がありすぎる点の改善。③候補者が決まる前に選挙人を選ぶとういうおよそ間接選挙制度になじまないやり方の改善、この二点については、またもや問答無用で無視した。ある意味では②③だけでは学内世論に押されるので①を出し、それを争点とし、断念しても元々で、②③の争点化をごまかしたという巧妙なやり方でもあったが、今後も引き続き改善を求め続ける必要があるだろう。
(2)財政・学費問題。
前回77号以降の新しい動きとして、4月25日に学費値上げの提起が行われた。その前提としてR2020(2010年から2020年の学園計画)の総括の上に立って、R2030(2020年から2030年の学園計画)樹立のための財政政策を確立しなければならない。そのために学園収入の70%以上を占める学費の在り方を定めなければならない。したがってR2020の到達点の確認と財政分析が必要不可欠となる。しかし提起されている文書を観る限り、教学(教育・研究)について、どのように切り開かれ、どのような到達に至っているのかは必ずしも判然としない。それは6月27日の常任理事会での学費決定に至るまでの2カ月間に学費改定方式・額が3回も変更されたことに表れていた。要するに根拠薄弱な値上げ提案だったのである。
財政問題を考えるにあたって、この期間の最大の問題であり、今後にも続く問題である大阪茨木キャンパス(OIC)、長岡京キャンパス、グローバル教養学部を巡る問題についてまったく触れられていない。これでは総括・到達・今後について、説得力ある提起にはならない。いずれも拙著『立命館の再生を願って』『続・立命館の再生を願って』(風涛社)、そして本シリーズで詳細に展開してきたことなので、ここでは問題の所在に留める。
1)大阪茨木キャンパス(OIC)
2010年に発足した「R2020」では、OICの計画はまったく無かった。にもかかわらず2010年6月突然、長田豊臣理事長、森島朋三専務、志方弘樹財務部付管財部長から大阪茨木のサッポロビール工場跡地を購入し、新キャンパスを開設するとの方針が提起された。当時、衣笠キャンパス狭隘克服が課題となっていて、山之内の上水道跡地を購入すべく京都市と交渉していた。ところが森島専務は「山之内の開設は2016年度になるので難しい」と言い、茨木を推進した。しかし京都学園大は2015年に山之内で新キャンパスを開設した。先に大阪茨木キャンパスありきのウソであった。
いずれの学部からも茨木への移転の希望が無かったが、政策科学部と、それまで何の問題も提起されていなかったのに突然「BKCも手狭になった」として経営学部のOICへの移転が進められた。なお当時「BKC移転後、理工系の拡充は図られてきたが、経営学部は放置されてきた」「この際、OICへの移転で改善を図る」などと「馬の目の前に人参をぶら下げる」のような話がなされていた。また「BKCも手狭になったので」を口実としたものの、その舌の根も乾かぬうちに、「BKCに農業ビジネス学部(現・食マネジメント学部)を設置する」とした。まさにウソで塗り固められたキャンパス展開であった。
衣笠周辺に政策科学部の敷地の確保と新校舎建設だけであれば50億円もあればできた。またBKCの経営学部と経済学部の施設充実も最大50億円もあればできた。つまり両方あわせても100億円もあればできたのである。しかしOICの開設には410億円をこえる費用が基金を取り崩してつぎ込まれた。さらに毎年30億円をこえる赤字が生まれるキャンパスとなった。
2)長岡京キャンパス
今回の財政文書では、改めて各学校単位での財政自立が強調されているが、これは立命館の以前からの財政原則であった。ところが森島専務ならびに志方財務部付け管財部長は立命館中高等学校移転先として長岡京を提起したが、その際①校舎建設費110億円は法人(立命館大学)が持つと原則をゆがめ、立命館大学に負担を負わせた。②敷地購入費は立命館中高等学校の積立金25穏円+深草の敷地を龍谷大学に35億円で購入してもらい、それで賄うと提案した。しかし龍谷大学ではそのような話は無かった。またもやその場限りのウソをついて通したのであった。結局京都市立工業高校の合併に伴って京都市に25億円で売却した。つまり予算比10億円の収入不足となった。③しかも購入した敷地から「ヒ素などの有害物質」が見つかった。契約では購入後1年以内に有害物質が見つかった場合は売り手側の責任で調査を行い除染するとしていた。にもかかわらず立命館は自分の手で敷地内を調査し12億円かけて除染した。そして開校後3年も経ってから立命館は相手にたいして除染費12億円の支払いを求める裁判を起こし、現在も係争中である。例え勝訴したとしても12億円の全額が戻ることは難しいと予測される。
したがつて長岡京キャンパスの開設で、従来そして現在の財政政策にたいして110億円プラス10億円プラスαの余分な支出をおこなったのである。鹿島建設との110億円に及ぶ校舎建設費契約支出は森島専務の手によって理事会に諮らず長田理事長決済で処理された。OICの250億円におよぶ竹中工務店との建設契約についても、理事長決済で行なおうとしていたのを私が発見し、文部科学省に伝え、その指導に基づいて理事会に諮らざるを得なくなったが、5学部長/12学部長の反対に直面した。なお長岡京キャンパスの除染費12億円も鹿島建設と契約している。
3)グローバル教養学部
川口清史前総長は2013年、安倍首相がオーストラリアに潜水艦を売り込に行くのに政府専用機に同乗してオーストラリアを訪ねた。そして両国首相立会いの下、オーストラリア国立大学と学術協定を締結した。その上、帰国後、常任理事会にも諮らず立命館東京オフィスにおいて「オーストラリア国立大学と共同学位学部を創設する」と記者発表した。日本で最初の国際関係学部がある立命館大学、日本で最初の本格的国際大学であるAPUがある立命館において、どのような国際共同学位学部を作るのか揉め続けた。しかし「前総長が約束した国際約束を覆すわけにはいかない」と4年に渡って議論し、OICにグローバル教養学部として2019年に開設されることになった。しかし大学・学部・学科等の教学組織は何十年に渡って継続できなければならないが、今のままでは学生が集まったとしても財政自立の継続は難しい学部となる危険がある。
これらの三つの問題は長田豊臣前理事長、川口清史前総長、森島朋三理事長(当時専務理事)、志方財務担当常務理事(当時財務部付管財部長)の4人が責任を負わなければならない問題である。またこの時期、長田理事長が那須において別荘を購入したり、森島専務がゼネコン関係者と度々ゴルフをしているとか、志方財務部付管財部長が毎晩のように祇園で飲み歩いているという情報が関係者の間で飛び交っていた。これらについて本人達の口から事実認否の釈明が求められている。
少なくとも上記三つの課題についての分析と責任をあいまいにしたままR2030財政方針を確定できない。ましてや学費値上げ提起などありえない。今回6月27日付の常任理事会において森島理事長・志方財務担当常務理事から提案のあった2019年度からの新たな学費値上げは行わず、物価スライドにもとづく現行学費学費方式を維持することにとどまった。。この2018年度末の論議では、三つの課題についてケジメを付けた総括と責任追及がなされなければならないだろう。
こうしたことを引き起こした長田豊臣前理事長や川口清史前総長を退任後顧問とし月額20万円を支払っていることなどは直ちにやめ契約職員、嘱託講師等の賃金改善に充てなければならないだろう。ましてやすぐばれるウソを繰り返して、これらの施策を進め立命館に大きな財政負担と不団結をもたらした森島理事長ならびに志方財務担当常務理事の解任は、理事会・評議員会の議題として提起されて当然でしょう。
なお今回の財政・学費文書で繰り返して述べられているように、政府文部科学省は定員管理の厳格化、留年率や中退率が高い場合には補助金カットなどのペナルティーの強化を打ち出した。定員管理の厳格化に対応して、事の良し悪しは別にして立命館は既に実員の定員化を行った。留年や中途退学の改善は、それ自体が教育の質の確保として思い切った改善策を立てなければならないだろう。
なお今回は問題の所在だけに留めるが、改めて学費提起とかかわって「教学改革と財政問題」等の原理原則を踏まえて、別途詳しく展開することにする。。
(3)総長選挙を巡って
今年(2018年)の秋に総長選挙が実施される。現行規程の問題点で指摘したように、まだ候補者も決がまっていないにもかかわらず、既に選挙人選挙が行われている。理事長選挙後、学外理事から「学園運営の円満な一致」を求められた森島理事長は1月の理事会において「学園の一致した運営に努力する」と吉田総長と握手した。その手のぬくもりが消えぬうちに、大多数の教職員が学費・財政問題について議論・検討している最中、次期総長を自分たちの陣営の下に掌握するために次期総長候補擁立に動くとともに、選挙人の獲得に力を入れている。学園の正常化を願う人々は彼らの策謀に負けないように対策を急ぐ必要があるだろう。
森島理事長は次期総長候補として、予てから白羽の矢を当てていた人物と共に、新しい人物の擁立も模索している。ジャーナリズムの分野では知られているが、最近立命館に赴任したばかりで大学行政はまったく未経験な人物である。そのような人を総長に担ぎ出しても、困難な局面にある学園運営を改革はできない。結局、宣伝塔として担いでおいて教学を含めた学園運営を実質的に自分が全面掌握したいとと言う森島理事長の野望の実現を図るものに過ぎない。そういう事をすればどうなるかは、最近の日大アメフト部事件を見れば明らかである。日大で不祥事件の記者会見の矢面に立たされたのは学長である。ところが理事長は表に顔を出さないにもかかわらず、学長はまったく理事長の言うがままでしかないことがテレビ画面で白日の下にさらされた。
事の是非は別にして最近関西の私立大学で富士ゼロックス会長の宮原明氏が関西学院大学理事長に、日本電産会長の永森重信が京都学園大学理事長に等、民間企業の経営で実績のある人物を学園の理事理事長として担ぎ出す動きがある。立命館もこの間混乱を作り出してきた森島理事長の代わりに、実績ある経営者で立命館の歴史と伝統に理解があり、総長を支えて経営に参画してもらえる人物がいれば、理事長に就任してもらうというのも一つの選択肢にはなるだろう。しかし学園の教学の責任者である総長は教育や研究に造詣があるとともに立命館の学校運営に習熟した人物でなければ務まらない。
森島理事長は(2)で見てきたように、すぐにばれるウソをつき通して学園に混乱をもたらしながら、責任を取らない人物であり、学園を去る以外に道はない人物である。このような人物が総長にたいしてイニシアチブを握れるようなことを許してはならないだろう。
彼は教育や研究について見識ある論文や著作があるわけがないどころか、立命館において大学の中心的任務である、教学部、研究部、国際部、学生部等の事務部門にも就いたこともない。
それを覆い隠し、新しく赴任してきた教員や職員にたいして、さも自分が知識人であるかの虚像をふりまくために、2月24日付の『朝日新聞』に学園のお金使い全面広告に登場した。この広告は「功成った」財界人達が、地位や金だけではなく教養もあることを売り出すために高いお金を出して一面を買って広告することで知られている代物である。教養人や読書人はお金をはらってそのようことはしない。この広告は、図らずも森島理事長がそのような見識もない人物であることを如実に示すことになった。
しかし一度の登場では「知識人扱いされない」と思ったのか、今度は職務権限を使って学内広報誌である「UNITAS:Ve15」に登場し、元文部科学省大臣補佐官(現・慶応大学客員教授)の鈴木寛氏との対談を試みた。読んだ人は「これはなんだ?」との感想を抱いただろう。今日の大学の在り方、だけではなく、立命館の現状や将来についても、森島理事長は自分の見解を述べることなく、鈴木寛氏への「お伺い」に終始した。
最近立命館に赴任した人で、過去の森島氏の言動について知らなくとも、これを読めばおよそ立命館の教学の在り方について見識を持った人物ではないことは明瞭であろう。このような人物の甘言に乗せられて、総長候補に担がれるようなことはすべきでないだろう。そのようにふるまえば、その人自身の評価が問われることになる。
ところで7月12日付の『読売新聞』に来年度の入学生確保のために、関西の大学が一面を買い取った大学宣伝の広告記事が掲載された。いずれの大学も新学部設置など、その大学の売りとなる点にポイント置いた記事を掲載している。ところが他大学の記事では、それを紹介しているのは、いずれも学長(総長)である。立命館だけは吉田総長は出てこず、「トップインタビュー」として、グローバル教養学部の学部長予定者である金山勉氏を登場させている。これほど露骨に現職総長をないがしろにしようとする理事長は無い。と言うことは彼に担がれて総長になれば彼の言いなりになる以外に道はないことを如実に示しているのである。総長候補推薦委員・選挙人に選ばれた皆さんは、あるべき学園と総長像について深い議論をされることを期待します。
鈴木元。立命館総長理事長室室長、大阪初芝学園副理事長、中国(上海)同済大学アジア太平洋研究センター顧問教授、JICA中国人材アドバイザリー、私立大学連盟アドミニストレ―タ研修アドバイザリーなどを歴任。
現在、日本ペンクラブ会員、日本ジャーナリスト会議会員、かもがわ出版取締役、国際環境整備機構理事長、京都高齢者大学校幹事会副代表。
『像とともに 未来を守れ』(かもがわ出版)『立命館の再生を願って 正・続』(風涛社)『もう一つの大学紛争』(かもがわ出版)『大学の国際協力』(文理閣)など著書多数。