学校法人立命館理事ならびに関係各位へ(NO54)
重大な事態を現わしている「2014年度決算報告」に添付されている「R2020財政計画(前半期)の進捗」ならびに「R2020計画後半期および以降を視野に入れた学園・大学運営の基盤強化に向けて」について
2015年7月29日 元立命館総長理事長室室長・ジャーナリスト 鈴木元
はじめに
私はNO53において、学校法人立命館が5月に発表した「2014年度決算報告」について、記載されている内容の問題点について指摘した。ところで、常任理事会において、この決算報告が提出されていた時、添付文書として「R2020財政計画(前半期)の進捗―財政計画に対する実績(2011-2014年度決算・2015年度予算」ならびに「R2020計画後半期および以降を視野に入れた学園・大学運営の基盤強化に向けて」が提出されていた。出席していた学部長理事から教授会には報告されていないようだ。それどころか今日に至るも「2014年度決算報告」もまともに報告されていない教授会が大半のようである。
2014年単年度決算報告を見ただけだと、私と同様の疑問が出されることを見計らったように「2010-年2014年全体を見れば心配されることはない、計画通り進行している」と説明しようとして提出された文書であると推察される。
そのことは、この文書の冒頭において「財政全体としてほぼ計画通り進行している。単年度資金収支(資金収入と資金支出)の差はマイナス1億円」と何の問題もないかの記述としていることにも表れている。文書全体は27ページに及ぶもので「2014年度決算報告について」がわずか3ページであるのに比較すると、いかにも「問題がない」かのような説明に手間をかけた文書であることがわかる。しかし、その説明の端々に、はしなくも現在の立命館が直面している重大な実態が現われている。以下、誰が見ても明らかな問題を提起する。
(1) この間、立命館大学において学則定員を682名増やしたが、実員で929名減員。
1)私立大学のもっとも基本的な収入は学納金(学費)である。ところが立命館大学において2011年と2014年を比較した場合、学費収入は年間平均17億円の減収となっている。
基本金が当初計画と比して332億円も減額することが2013年度に明らかになった。社会的に言えば、この事に対する経営責任だけで長田理事長、森島専務の解任は十分な根拠がある。この原因には様々な理由があるが、その最大の理由として私は以下の解明を行ってきた。
茨木キャンパス計画に対して2010年当時、5学部長(法学部、産業社会学部、国際関係学部、経済学部、理工学部)が「財政的に危険だ」との危惧に基づき反対意見を表明された。それにたいして長田理事長、森島常務(当時、現専務)は「財政的に問題は無い」との説明を行うために、入学する学生数を水増した予算計画を提出していた。しかしそれは文部科学省の定員管理を逸脱するために、実際に入学させるにあたっては適正範囲にせざるを得なかったからだ、と指摘した。
2)それに対してこの間、予算に見合う定員とするために学則が改訂され定員増がなされてきた。その結果、学部定員で538名もの定員増とした。しかし実員では2010年と比較して2014年度は260名もの減員となった。大学院修士課程に至っては定員を265名も増やしたにもかかわらず、実員は370名も減員となった。これが学費収入の大幅減収の最大の理由である。このまま推移すると、今期計画の最終年度である2020年までの5年間に17億円×5年間=85億円の減収となる。
同時に、これは教学危機の表れでもある。つまりわずか3年間で立命館大学の学部、大学院の在籍者数が929名(博士課程などを含む)も減ったのである。18歳人口減の今日、増やした定員を無理やり埋めようとすれば入学者の学力水準を大幅に下げなければできない。事態はおよそグローバル大学を標榜したり、「研究大学院を目標にしている」などと語るなど、おこがましい実態となっている。
3)なお、この文書ではAPUの入学・在籍学生数については、あまりの深刻さから、記述はないが「財政からみるR2020前半期の傾向と課題」14ページにおいて「学生募集の厳しさから、学納金が減少(76億円から72億円)」と記載されている。4億円の減少である。大雑把に一人当たりの年間学費を100万円としても400名もの減少である。これは、まさにAPUが存立の危機に直面しているといってもよい実態である。立命館大学においてもAPUにおいても、これだけの学生・院生が減少した理由を緊急に真剣に分析して英知を結集して打開しなければならないのだろう。
4)今年は4年に一度の全学協議会(学生、院生、教職員の代表と理事会が大学の在り方を議論する会議)が開催される年である。学生や院生から教学実態に関する率直な意見・要求を聞き出し抜本的改革を行わなければならないだろう。「当初予算として比較して年額1億円程度の誤差である」などののんきなことを言っている事態ではない。
(2) 余裕がなくなる財政実態
1)貸借対照表(p7)を見ると、負債は303億円から444億円へと141億円増額。基本金は3635億円から3427億円へ207億円減額。そして原価償却累計額は1060億円から1019億円へと41億円減少している。
2)帰属収支差額は、2014年度は44億円で、2010年の81億円に比べて、ほぼ半減している。しかし「その意味は66億円(減価償却額)+44億円=112億円は、キャンパス整備と引当金資産Ⅱへの積立金の一部となる」と説明している(P13)。しかしその直ぐ後に「2020年後半期の教学改善費用の創出には至ったつていない」と記述。続いて(注)として「当初財政計画は、重要課題による収支改善、学納金減、消費税増税等の経費増を織り込んでいないため、「計画との対比では『計画通り進捗している』」と記述している。支離滅裂である。およそ経営に責任を負う財政分析とはなっていない。
3)ところで「大丈夫である」との説明をするために、P23からP27にかけて他大学との比較表を示して「立命館は健全である」との印象を与えようとしている。しかしP25の(参考:他大学の収支動向《2010年度―2013年度決算》)における表において、関東6大学、関西4大学の計10大学を、支出増加と収入減少の両方が重なる収支悪化大学として立命館マイナス34億円、法政マイナス34億円、中央マイナス6億円の3大学を上げている。表示したくないこの表をわざわざ表示したのは、春闘における有額回答拒否、職場の合理化推進、学生要求否定のためだと推察される。こうした点で、この文書は首尾一貫していず、財政が健全化に向かっているのか、重大な事態に陥りつつあるのか不明の文書で、何を言いたい文書なのか意図的にわかりにくくしている文書である。
4)注意深く見ると「R2020後期」の記述の中に、長田理事長や森島専務が、思い付き的に主張してきた、農と食に関する学部、ANUと連携した新しい学部と言う言葉が見当たらない。これらを書き込めば「財源はどうするのか」「財政展望はどうなるのか」との質問が出ることは明白であり、答えられないこともあって「まだ決まっていないから、記載していない」としたのであろう。しかし長田理事長や森島専務は、これらの構想を止めれば、あれほど推進し混乱を作って来た責任が問われることは明白であり「取りやめ」との見解も記載していない。時期を見て蒸し返そうとしているのであろう。それはさらなる財政矛盾を深めたり、既存教学充実の財源を減少させることになるだろう。
(3) 見逃すことができないいくつかの項目
1)OICの建設予算が210億円から20億円増えて230億円に(P8)。しかしp9において当「初予算にはなかった市街地エリア整備事業」で30億円入ったことを記載し問題がないかの記述をしている。このことについて私はすでに書いてきたが、森島常務は当初「135億円の補助をいただける」と述べていたが、計画が開始された2011年時点では「60億円の補助金」と言っていた。それが30億円になったのである。当初より30億円の減収であるにもかかわらず10億円の余分のお金ができたと表記している。
2)①長岡京施設建設費110億円が11億円増えて121億円となっている。根拠としては「土壌汚染が見つかり、その除去にかかった費用である」としている。もともこの場所には工場があり予てから時代状況を考えれば「汚染物質があるだろう」ということは、業界関係者では共有化されていたことであった。いずれにしても土地代金60億円の土地の汚染除去費用が11億円と言うのは金額が大きすぎる。②しかし中心的問題は今次計画においても「財政自立」がうたわれながらも、この121億円は法人が負担(事実上、大学が負担)したが、その根拠が示されていない。③しかもこの契約は理事会にも諮られず長田理事長の単独決済で行われている。④土地代金60億円は、当初の森島常務(当時)の報告では「立命館中高の積立金25億円と深草を龍谷大学に35億円で売却して捻出する」と説明していた。しかし私は「龍谷大学ではそのような話は出ていない。いつもの森島常務の作り話である」と指摘した。その後、「龍谷大学へ35億円で売却」の話はうやむやにされていたが「京都市立工業高校の合併に伴い、京都市に売却される」とされた。ところが売却収入35億円が、いつのまにか今回の文書の当初計画での売却収入は30億円とし、2014年度資産売却収入では21億円としマイナス9億円としている。いずれにしても森島常務が提案した当初の売却予算35億円と比して14億円の減収である。したがって大学の持ち出しは110億円+11億円+14億円=135億円となった。森島専務の責任が糾されなくてはならないだろう。
3)そしてNO53で指摘したように、当初計画になかったのが①銀行から2014年度に130億円を借り入れ②基本金2号、72億円を全額取り崩し③建設資金の未払いが58億円残している。これらが2014年度の収支に多少の余裕があるかのように見える理由である。しかし、この3つとも今後の立命館の財政展望をきわめて余裕のないものにするであろう。
4)この「財政から見るR2020前半期の傾向と課題」ならびに「R2020計画後半期および以降を視野に入れた学園・大学運営の基盤強化に向けて」の文書を読んでみて、驚くべきことは2013年度に当時の服部副理事長を責任者とする財務報告で明らかにされた基本金332億円の減額についての記述が一切ないことである。年間あたりの帰属収入(総収入)が1000億円も満たない立命館において、積立金の見込みが当初計画よりも332億円もの減額となることが、この2010年から2014年の財務報告ならびに2020年に向けての財務展望報告の中に、まったく触れられていないことである。これほど無責任な「財務報告と展望」は無い。
当初の予算が意図的な学生数の水増しによるものであったことが明らかになった今、そのような事態を招いた長田理事長ならびに森島専務の責任は免れない。それをあいまいにしたまま「厳しい状況」「節約・合理化」を説き執行しようとすれば職場の士気は崩れていくだけである。
5)私は先のNO53において、「2014年度決算において、基本金(積立金)への組み入れを39億円も少なくしたにもかかわらず、消費支出(年間支出)では42億円の超過支出(赤字)を出している」と記載した。今回、もう一度、2014年度の決算書を見直した。その貸借対照表(P31)において建設仮勘定として30億円が記載されている。これは通常、基本金に組み入れるのが適切だと考えられるが、入れられていない。2014年度の収支をよく見せるために、基本金への組み入れを先送りしているのではないかとの疑念が持たれる。説明が求められるだろう
6)ところで2014年度決算報告書だけでは、未払金58億円が何を指しているのかわからないように立命館の財務実態を正確かつ具体的にわからない。それは学校法人の財務状況を全面的かつ具体的に知らせるものである財務三表が一般に公表されていないためである。平成17年に私学法が改定されたとき、その47条において、国民の税金から支出されている私学助成がどのように適切に使われているかを知らせるために、当該学校関係者だけではなく、納税者である国民にも、財務三表の公開を含めて財政の公開が法的に義務付けられた。立命館は教職員を含めて国民の誰もが見れるように、速やかに財務三表の公開を行わなければならない、
(4)重視すべきいくつかの問題
1)学部長理事の責任は重大。
以上みてきたように「2014年度決算報告」ならび、その付属文書ともいうべき「財政に見るR2020前半期の傾向と課題」ならびに「R2020計画後半期および以降を視野に入れた学園・大学運営の基盤強化に向けて」は今日の立命館の実情を知る上で極めて重要な文書である。これらの文書が提出された常任理事会ならびに理事会において学部長理事からの批判・質問は特定の人以外からは出されなかった。そして選出された学部教授会に報告し、その意見を求め常任理事会などに反映するという取り組みがほとんどされていない。これでは「何のための学部長理事制度(教学と経営の統一を制度的に保証する)なのか」との批判がなされも不思議ではない。学部長理事は、その責任を自覚して理事会(常任)に対しても教授会においても、その責任を果たさなければならない。
2)今年の全学協議会の最大の課題は学園の財政実態と展望を全学の共通認識とし、その上で教学改善を第一義とした改革の論議・合意を実現することである。
以前にも記したことであるが、長田理事長や森島専務そして財務担当者などは「教学優先、教学改革こそ財政政策を原則としてきた立命館においては、全学協議会では、まず教学改革の議論をしていただきたい」と主張している。
しかし現在の立命館においては財政実態を共通認識しない教学論議などは抽象的合意に終始し、予算を伴う具体的な教学改革へ進めることは困難である。財政実態の深刻さが明らかになればなるほど、何故このような事になったのか、誰が責任を取らなければならないかは明白となる、彼らはその責任回避のために、全学協議会において、まず財政実態分析作業から入ることを妨げようとしている。
3)教職員組合との業務協議会において、理事会は「厳しい状況」を理由に有額回答を拒否した。「厳しい状況」とは何を指しているのか具体的に説明しなければならない。「財政難が理由」と言うなら、その実態、責任、今後の展望を明らかにしなければならない。「財政難が理由ではない」と言うなら、その社会的道義が糾されなければならないだろう。いずれにしても理事会はこれから「R2020」後半期に入っていくにあたって教職員に、その労に報いることを含めて、再度検討して有額回答を行わなければならないだろう。そのためにも教職員組合は、理事会に対して財務実情を明らかにさせる必要があるだろう。
鈴木元。元学校法人立命館総長理事長室室長、日本ペンクラブ会員、日本ジャーナリスト会議会員、かもがわ出版取締役、国際環境整備機構理事長。
著書に『立命館の再生を願って』『続・立命館の再生を願って』(いずれも風涛社)『大学の国際協力』(文理閣)『像ととともに未来を守れ』(かもがわ出版)など多数。現在、立命館問題専用のブログ( スズキ ゲンさんのブログ )を立ち上げ、随時、報告提案している。
重大な事態を現わしている「2014年度決算報告」に添付されている「R2020財政計画(前半期)の進捗」ならびに「R2020計画後半期および以降を視野に入れた学園・大学運営の基盤強化に向けて」について
2015年7月29日 元立命館総長理事長室室長・ジャーナリスト 鈴木元
はじめに
私はNO53において、学校法人立命館が5月に発表した「2014年度決算報告」について、記載されている内容の問題点について指摘した。ところで、常任理事会において、この決算報告が提出されていた時、添付文書として「R2020財政計画(前半期)の進捗―財政計画に対する実績(2011-2014年度決算・2015年度予算」ならびに「R2020計画後半期および以降を視野に入れた学園・大学運営の基盤強化に向けて」が提出されていた。出席していた学部長理事から教授会には報告されていないようだ。それどころか今日に至るも「2014年度決算報告」もまともに報告されていない教授会が大半のようである。
2014年単年度決算報告を見ただけだと、私と同様の疑問が出されることを見計らったように「2010-年2014年全体を見れば心配されることはない、計画通り進行している」と説明しようとして提出された文書であると推察される。
そのことは、この文書の冒頭において「財政全体としてほぼ計画通り進行している。単年度資金収支(資金収入と資金支出)の差はマイナス1億円」と何の問題もないかの記述としていることにも表れている。文書全体は27ページに及ぶもので「2014年度決算報告について」がわずか3ページであるのに比較すると、いかにも「問題がない」かのような説明に手間をかけた文書であることがわかる。しかし、その説明の端々に、はしなくも現在の立命館が直面している重大な実態が現われている。以下、誰が見ても明らかな問題を提起する。
(1) この間、立命館大学において学則定員を682名増やしたが、実員で929名減員。
1)私立大学のもっとも基本的な収入は学納金(学費)である。ところが立命館大学において2011年と2014年を比較した場合、学費収入は年間平均17億円の減収となっている。
基本金が当初計画と比して332億円も減額することが2013年度に明らかになった。社会的に言えば、この事に対する経営責任だけで長田理事長、森島専務の解任は十分な根拠がある。この原因には様々な理由があるが、その最大の理由として私は以下の解明を行ってきた。
茨木キャンパス計画に対して2010年当時、5学部長(法学部、産業社会学部、国際関係学部、経済学部、理工学部)が「財政的に危険だ」との危惧に基づき反対意見を表明された。それにたいして長田理事長、森島常務(当時、現専務)は「財政的に問題は無い」との説明を行うために、入学する学生数を水増した予算計画を提出していた。しかしそれは文部科学省の定員管理を逸脱するために、実際に入学させるにあたっては適正範囲にせざるを得なかったからだ、と指摘した。
2)それに対してこの間、予算に見合う定員とするために学則が改訂され定員増がなされてきた。その結果、学部定員で538名もの定員増とした。しかし実員では2010年と比較して2014年度は260名もの減員となった。大学院修士課程に至っては定員を265名も増やしたにもかかわらず、実員は370名も減員となった。これが学費収入の大幅減収の最大の理由である。このまま推移すると、今期計画の最終年度である2020年までの5年間に17億円×5年間=85億円の減収となる。
同時に、これは教学危機の表れでもある。つまりわずか3年間で立命館大学の学部、大学院の在籍者数が929名(博士課程などを含む)も減ったのである。18歳人口減の今日、増やした定員を無理やり埋めようとすれば入学者の学力水準を大幅に下げなければできない。事態はおよそグローバル大学を標榜したり、「研究大学院を目標にしている」などと語るなど、おこがましい実態となっている。
3)なお、この文書ではAPUの入学・在籍学生数については、あまりの深刻さから、記述はないが「財政からみるR2020前半期の傾向と課題」14ページにおいて「学生募集の厳しさから、学納金が減少(76億円から72億円)」と記載されている。4億円の減少である。大雑把に一人当たりの年間学費を100万円としても400名もの減少である。これは、まさにAPUが存立の危機に直面しているといってもよい実態である。立命館大学においてもAPUにおいても、これだけの学生・院生が減少した理由を緊急に真剣に分析して英知を結集して打開しなければならないのだろう。
4)今年は4年に一度の全学協議会(学生、院生、教職員の代表と理事会が大学の在り方を議論する会議)が開催される年である。学生や院生から教学実態に関する率直な意見・要求を聞き出し抜本的改革を行わなければならないだろう。「当初予算として比較して年額1億円程度の誤差である」などののんきなことを言っている事態ではない。
(2) 余裕がなくなる財政実態
1)貸借対照表(p7)を見ると、負債は303億円から444億円へと141億円増額。基本金は3635億円から3427億円へ207億円減額。そして原価償却累計額は1060億円から1019億円へと41億円減少している。
2)帰属収支差額は、2014年度は44億円で、2010年の81億円に比べて、ほぼ半減している。しかし「その意味は66億円(減価償却額)+44億円=112億円は、キャンパス整備と引当金資産Ⅱへの積立金の一部となる」と説明している(P13)。しかしその直ぐ後に「2020年後半期の教学改善費用の創出には至ったつていない」と記述。続いて(注)として「当初財政計画は、重要課題による収支改善、学納金減、消費税増税等の経費増を織り込んでいないため、「計画との対比では『計画通り進捗している』」と記述している。支離滅裂である。およそ経営に責任を負う財政分析とはなっていない。
3)ところで「大丈夫である」との説明をするために、P23からP27にかけて他大学との比較表を示して「立命館は健全である」との印象を与えようとしている。しかしP25の(参考:他大学の収支動向《2010年度―2013年度決算》)における表において、関東6大学、関西4大学の計10大学を、支出増加と収入減少の両方が重なる収支悪化大学として立命館マイナス34億円、法政マイナス34億円、中央マイナス6億円の3大学を上げている。表示したくないこの表をわざわざ表示したのは、春闘における有額回答拒否、職場の合理化推進、学生要求否定のためだと推察される。こうした点で、この文書は首尾一貫していず、財政が健全化に向かっているのか、重大な事態に陥りつつあるのか不明の文書で、何を言いたい文書なのか意図的にわかりにくくしている文書である。
4)注意深く見ると「R2020後期」の記述の中に、長田理事長や森島専務が、思い付き的に主張してきた、農と食に関する学部、ANUと連携した新しい学部と言う言葉が見当たらない。これらを書き込めば「財源はどうするのか」「財政展望はどうなるのか」との質問が出ることは明白であり、答えられないこともあって「まだ決まっていないから、記載していない」としたのであろう。しかし長田理事長や森島専務は、これらの構想を止めれば、あれほど推進し混乱を作って来た責任が問われることは明白であり「取りやめ」との見解も記載していない。時期を見て蒸し返そうとしているのであろう。それはさらなる財政矛盾を深めたり、既存教学充実の財源を減少させることになるだろう。
(3) 見逃すことができないいくつかの項目
1)OICの建設予算が210億円から20億円増えて230億円に(P8)。しかしp9において当「初予算にはなかった市街地エリア整備事業」で30億円入ったことを記載し問題がないかの記述をしている。このことについて私はすでに書いてきたが、森島常務は当初「135億円の補助をいただける」と述べていたが、計画が開始された2011年時点では「60億円の補助金」と言っていた。それが30億円になったのである。当初より30億円の減収であるにもかかわらず10億円の余分のお金ができたと表記している。
2)①長岡京施設建設費110億円が11億円増えて121億円となっている。根拠としては「土壌汚染が見つかり、その除去にかかった費用である」としている。もともこの場所には工場があり予てから時代状況を考えれば「汚染物質があるだろう」ということは、業界関係者では共有化されていたことであった。いずれにしても土地代金60億円の土地の汚染除去費用が11億円と言うのは金額が大きすぎる。②しかし中心的問題は今次計画においても「財政自立」がうたわれながらも、この121億円は法人が負担(事実上、大学が負担)したが、その根拠が示されていない。③しかもこの契約は理事会にも諮られず長田理事長の単独決済で行われている。④土地代金60億円は、当初の森島常務(当時)の報告では「立命館中高の積立金25億円と深草を龍谷大学に35億円で売却して捻出する」と説明していた。しかし私は「龍谷大学ではそのような話は出ていない。いつもの森島常務の作り話である」と指摘した。その後、「龍谷大学へ35億円で売却」の話はうやむやにされていたが「京都市立工業高校の合併に伴い、京都市に売却される」とされた。ところが売却収入35億円が、いつのまにか今回の文書の当初計画での売却収入は30億円とし、2014年度資産売却収入では21億円としマイナス9億円としている。いずれにしても森島常務が提案した当初の売却予算35億円と比して14億円の減収である。したがって大学の持ち出しは110億円+11億円+14億円=135億円となった。森島専務の責任が糾されなくてはならないだろう。
3)そしてNO53で指摘したように、当初計画になかったのが①銀行から2014年度に130億円を借り入れ②基本金2号、72億円を全額取り崩し③建設資金の未払いが58億円残している。これらが2014年度の収支に多少の余裕があるかのように見える理由である。しかし、この3つとも今後の立命館の財政展望をきわめて余裕のないものにするであろう。
4)この「財政から見るR2020前半期の傾向と課題」ならびに「R2020計画後半期および以降を視野に入れた学園・大学運営の基盤強化に向けて」の文書を読んでみて、驚くべきことは2013年度に当時の服部副理事長を責任者とする財務報告で明らかにされた基本金332億円の減額についての記述が一切ないことである。年間あたりの帰属収入(総収入)が1000億円も満たない立命館において、積立金の見込みが当初計画よりも332億円もの減額となることが、この2010年から2014年の財務報告ならびに2020年に向けての財務展望報告の中に、まったく触れられていないことである。これほど無責任な「財務報告と展望」は無い。
当初の予算が意図的な学生数の水増しによるものであったことが明らかになった今、そのような事態を招いた長田理事長ならびに森島専務の責任は免れない。それをあいまいにしたまま「厳しい状況」「節約・合理化」を説き執行しようとすれば職場の士気は崩れていくだけである。
5)私は先のNO53において、「2014年度決算において、基本金(積立金)への組み入れを39億円も少なくしたにもかかわらず、消費支出(年間支出)では42億円の超過支出(赤字)を出している」と記載した。今回、もう一度、2014年度の決算書を見直した。その貸借対照表(P31)において建設仮勘定として30億円が記載されている。これは通常、基本金に組み入れるのが適切だと考えられるが、入れられていない。2014年度の収支をよく見せるために、基本金への組み入れを先送りしているのではないかとの疑念が持たれる。説明が求められるだろう
6)ところで2014年度決算報告書だけでは、未払金58億円が何を指しているのかわからないように立命館の財務実態を正確かつ具体的にわからない。それは学校法人の財務状況を全面的かつ具体的に知らせるものである財務三表が一般に公表されていないためである。平成17年に私学法が改定されたとき、その47条において、国民の税金から支出されている私学助成がどのように適切に使われているかを知らせるために、当該学校関係者だけではなく、納税者である国民にも、財務三表の公開を含めて財政の公開が法的に義務付けられた。立命館は教職員を含めて国民の誰もが見れるように、速やかに財務三表の公開を行わなければならない、
(4)重視すべきいくつかの問題
1)学部長理事の責任は重大。
以上みてきたように「2014年度決算報告」ならび、その付属文書ともいうべき「財政に見るR2020前半期の傾向と課題」ならびに「R2020計画後半期および以降を視野に入れた学園・大学運営の基盤強化に向けて」は今日の立命館の実情を知る上で極めて重要な文書である。これらの文書が提出された常任理事会ならびに理事会において学部長理事からの批判・質問は特定の人以外からは出されなかった。そして選出された学部教授会に報告し、その意見を求め常任理事会などに反映するという取り組みがほとんどされていない。これでは「何のための学部長理事制度(教学と経営の統一を制度的に保証する)なのか」との批判がなされも不思議ではない。学部長理事は、その責任を自覚して理事会(常任)に対しても教授会においても、その責任を果たさなければならない。
2)今年の全学協議会の最大の課題は学園の財政実態と展望を全学の共通認識とし、その上で教学改善を第一義とした改革の論議・合意を実現することである。
以前にも記したことであるが、長田理事長や森島専務そして財務担当者などは「教学優先、教学改革こそ財政政策を原則としてきた立命館においては、全学協議会では、まず教学改革の議論をしていただきたい」と主張している。
しかし現在の立命館においては財政実態を共通認識しない教学論議などは抽象的合意に終始し、予算を伴う具体的な教学改革へ進めることは困難である。財政実態の深刻さが明らかになればなるほど、何故このような事になったのか、誰が責任を取らなければならないかは明白となる、彼らはその責任回避のために、全学協議会において、まず財政実態分析作業から入ることを妨げようとしている。
3)教職員組合との業務協議会において、理事会は「厳しい状況」を理由に有額回答を拒否した。「厳しい状況」とは何を指しているのか具体的に説明しなければならない。「財政難が理由」と言うなら、その実態、責任、今後の展望を明らかにしなければならない。「財政難が理由ではない」と言うなら、その社会的道義が糾されなければならないだろう。いずれにしても理事会はこれから「R2020」後半期に入っていくにあたって教職員に、その労に報いることを含めて、再度検討して有額回答を行わなければならないだろう。そのためにも教職員組合は、理事会に対して財務実情を明らかにさせる必要があるだろう。
鈴木元。元学校法人立命館総長理事長室室長、日本ペンクラブ会員、日本ジャーナリスト会議会員、かもがわ出版取締役、国際環境整備機構理事長。
著書に『立命館の再生を願って』『続・立命館の再生を願って』(いずれも風涛社)『大学の国際協力』(文理閣)『像ととともに未来を守れ』(かもがわ出版)など多数。現在、立命館問題専用のブログ( スズキ ゲンさんのブログ )を立ち上げ、随時、報告提案している。