スズキ ゲンさんのブログ

立命館の再生を願って

NO59 NO58の補足として 鈴木元

2016-03-14 03:59:16 | 立命館の再生を願って
NO59 NO58への補足として
学校法人立命館の常任理事ならびに関係各位へ 
財政破綻の総括も責任も明らかにせず、説明のつかない学費値上げを行うことは許されないだろう
2016年3月14日 元総長理事長室室長・ジャーナリスト 鈴木元。
目次
はじめに
財政実態を覆い隠すために教学改革案づくりを利用。
財政報告ができないために公開全学協議会が開催できないという前代未聞の事態に
(1) 経常収支赤字の原因も責任も明らかにせずに学費値上げをおこなうのか
(2)「収入の範囲内で支出を行う」原則を無視した、要求積み上げ方式の負債を学費値上げに転嫁するやり方は許されない。
(3)学生と父母が置かれた実態を無視した学費値上げはあり得ない。
(4)ANU共同学部の財源確保のための学費値上げなど本末転倒である

(5)大学院生の学費の半額化の財源確保のために学部生の学費を上げるなどの方式は認められない
終わりに
説明のつかない学費値上げを行おうとするなら長田理事長、森島専務の解任提案しかない
学費に関する学生への説明は長田理事長、森島専務の仕事である。

はじめに
先に私は、2月17日付のNO58において立命館の財政、ANUとの共同学位学部、学費問題などについて記した。その後、学内での議論は、あれこれに広がりながらも焦点は財政実態と学費値上げ、そしてANUの財政展望に移っている。そこでNO58で記述したことを踏まえた上でいくつかの補足提起を行うことにする。
財政実態を覆い隠すために教学改革案づくりを利用。
2015年の秋に開催される予定であった公開全学協議会を前にして、2014年の秋、財務部が教学部などに対して「本学は教学優先の運営を行っていますから、まず教学改革案をまとめていただき、それを支える財政計画を提出させていただきます」と主張していた。他方、2011年から始まった中期計画において当初予測されていた基金が、財務部も入った調査検討委員会(委員長・服部健一副理事長)において、332億円も足りないとの予測が報告されていた。そこで私は、まずは財政の実態と予測を正確に出さなければ、いかなる教学改革案も「絵に描いた餅」になる。もしくは「これだけの改革をするためには、これだけの学費値上げをしなければならない」と教学改革案は深刻な財政実態を覆い隠し学費値上げの理由に利用される危険があることを指摘した。しかしその後の議論は教学改革論議と財政実態分析は切り離され、あれもこれもの教学改革案が取り込まれた後期計画案が提出された。それは総括無し、実行にあたっての具体的手立て無しの欠陥案でもあった。
財政報告ができないために公開全学協議会が開催できないという前代未聞の事態に
財務部から「財政分析は2015年3月に提出します」との発言であったが、5月、9月、そして「10月の全学協までに」と言いながら、全学協議会は12月に延期され、それでも報告できなかった。立命館では「教学と経営の統一」「全学構成員自治」の精神に基づいて4年に1度、学生代表も交えた公開全学協議会において、法人側が財政実態を示し学費の在り方を学生とも論議して学園を運営してきた。その立命館において、歴史上はじめて財政報告ができないために公開全学協議会が開催できないという前代未聞の事態となった。このような事態を招いた責任者として、本来ならば「経営に責任を負う」長田理事長、森島専務は即時辞任しなければならなかった。
既に2016年3月になっているが、2016年4月からの後期計画確定のために必要不可欠な2015年度の決算予測が提出されていない。2014年度の決算表を分析すれば、少なく見ても100億円―200億円の赤字が先送りされている危険がある(2号基金78億円の全額取り崩し、建設費の未払金58億円、2017年一括返済を約束している銀行からの新たな借入金130億円を入れたうえで、2億円の赤字としている)。2015年度は、さらに累積するのであるから一層大きな赤字が発生している危険がある。
(1)経常収支赤字の原因も責任も明らかにせず学費値上げをおこなうのか
今学内では教学改革費として「年間10億円×5年間=50億円」(当初は年間13億円)を既定事実として、それを捻出するために何処でどう削減するか、そのために部門別の削減計画、部をまたがっての組み換えなどが議論されている。私はその努力が必要でないとは言わない。しかし常任理事会においても教学・経営委員会においても「なぜそのような財政困難が生まれたのか、誰も責任を取らないで教職員、学生にしわ寄せする合理化案だけでいいのか」との追及が避けられたままで議論が進められている。既に記してきたように赤字構造になった主たる要因は①OIC開設の強行によって既存学部である政策科学部、経営学部の移転のために毎年経常経費が30億円増加したこと。②OIC開設による厳しい財政状況の批判をかわすために行った「水増し予算定員」は実行できなかった。合わせて教学危機の進行により10私大で最大の中退者が生まれた。その二つのことが重なって前期の5年間で学納金収入が予算より87億円も減収したことなどによるものである。最近では財務部関係者の口から「今後5年間の見通しとして経常経費で年間数十億円の赤字が生まれると予測される」と言い始めている。
現時点では誰が理事長に就任しても、赤字予測に基づいて教学改革案の縮小は避けられないと思われる。しかしまずは、こうした事態を引き起こした長田理事長や森島専務、川口前総長(現顧問)の責任を明確にした辞任を理事会として明確にすべきである。その上で、現在提起されている教学改革予算については収入の範囲内に収める努力をすべきある。そのような判断をしたとしても、教職員や学生に合理化を要求したり、ましてや長田理事長等の誤りの負債を学生に負わせる学費値上げは許されるものではないだろう。
(2)「収入の範囲内で支出を行う」原則を無視した、要求積み上げ方式の負債を学費値上げに転嫁することは許されない。
先に私は、財政の現状に基づき、教学改革を進めなければならないと記した。つまり学校法人の財政運営の原則として「収入の範囲内で支出を行う」でなければならない。ところが今回の後期計画では、収入予測と無関係に、教学部、研究部、国際部等に、それぞれの部が後期に行いたい改革課題を提出させ、それを合計した額を後期の政策予算枠とした。項目の中には学部・研究科が要望した者が入っていない一方、学部部・研究科から見れば「なぜこのような項目をわざわざ入れたのか」と指摘されるものまで含められている。そして何よりも問題にしなければならないのは、収入見通しと無関係に政策予算が作成されている点である。これでは「各部門を予算(お金)で釣って、これまでの不満を和らげようとしたのではないか」と疑われても仕方がないやり方である。現在、教学・経営委員会幹事会において、部門別にぎりぎりの削減案をまとめようとしている。それが当初の13億円が10億円にされた作業である。さらに最近では「教学改革政策予算案に対して学部から優先順位をつけてもらいた」などと学部も巻きこもうとしている
しかしこの間の財政運営の責任追及を抜きにした削減作業だけでは「今の時代に即した教学改革は実行せざるを得ない。その費用は14億5千万円になる(教学改革費10億円+大学院学費半額化4億5千万円)。理事会の責任で5億5千万円の削減をおこないました。足りない9億円は学費値上げで行わざるを得ません」という結論がまかり通る危険性がある(学生一人当たり2万5千円から3万円もの追加的学費を学生と父母に負担を負わせる論理になる)。
そのような無責任な学費値上げについて学部教授会を基礎に選ばれた13名の学部長を含めた立命館の理事会は行ってはならないだろう。今や立命館の学費は他大学と比べて決して安くない。立命館が同志社、関学、関大に比べて特段に水準の高い丁寧な教育を行っているなどの社会的評価は無い。立命館では今でも複数大学を受験し合格した学生の入学辞退者、ならびに中退者が異常に多い。その原因分析と克服の方向も出さずに値上げを行おうとすることが厳しく問われている。学生や父母が反発するだけではなく、他大学を含めた世間から「今時、このような教学改革を理由に学費値上げをするのですか、いよいよ立命館は自殺行為に入りましたね」と評価されるだろう。
(3)学生と父母が置かれた実態を無視した学費値上げはあり得ない。
学生からは①この5年間、毎年実質賃金が下がっている。このような状況で学費値上げをするのか。毎年大量の中退者が出ているが、その大きな原因の一つは親の生活困難の進行である。この上、値上げしてさらに中退者を増やすのか、許されない。②あなた方は教学改革のためにお金が必要であり、そのために値上げすると言っているが。立命館の現在の教学についての総括が示されてはいない。入学辞退者や中退者が他大学に比して大幅に多いのは、立命館の教学に魅力が欠けているからだ。そのことに対する反省、原因分析も克服方向もなく、羅列的な教学改革の提案をされても学生としては信用できない。③無責任な学園運営による財政悪化の穴埋のための学費値上げなど到底認められない、と言う批判を免れることはできない。
森島専務は役員室などで「今の学友会や自治会にそのような力はない」と自慢げに吹聴している。しかし最近の「SEALDS」に見られる青年・学生運動の高まりは、彼らが真理に芽生えた時には、大きな力を発揮することを示している。真理と正義を教える大学において学生を侮るような人間は大学人として失格である。
長田理事長などは明確に他大学に比して特段に高い役員報酬、慰労金を受け取っていることから大会社の役員気分でいる(取り巻きには「額が少ない」と不満を述べているが)。そのためANU共同学位学部の学費230万円提起に対して疑問が出されても「良い教育には金がかかるのだ」「アメリカでは良い教育を行っていれば300万円の学費など安いと受け止められている」などと発言している。この発言は、学費を捻出しなければならない父母の生活実態、卒業時に有利子付の多額の「奨学金」を抱えている学生の存在などに心を傾ける感覚を失っている長田理事長の傲岸不遜の実態が現われている。もう一度、彼が退職金をもらったうえで、わずか4年間で4000万円もの慰労金を受け取ったことなどについて追及しなおす必要があるだろう。
(4)ANU共同学部の財源確保のために学費値上げなど本末転倒である
NO58で触れた論点は省略する。ANU共同学位プログラムは1学年90名の独立した学部(年間学費230万円)を設置する方向で動いている。90名×4学年=360名である。その教学を支える施設がOICの既存施設の中で確保できるのか。「230万円の学費を取っておいて、このような施設なのか」と学生からの批判だけではなく、提携校のANUからも批判が出る可能性が高い。長田理事長や森島専務は総合心理学部のOIC設置に備えた校舎を作っていた(そのため当初210億円の建設予算が230億円に膨れ上がった)。当初には、ANU共同学部の設置計画は無かった。現在言われている230万円の学費による予算案の中にはANU共同学部の校舎建設費は入っていない。どうするのか。
2/3の留学生(240名)の奨学金予算も入っていない。平均して学費の半額程度の奨学金として115万円×240名=2億7600万円。1/4としても1億3800万円。その財源はどうするのか。留学生のための寮はどうするのか、元の茨木商工会議所跡に建設される国際寮はANU共同学部以外の学生のためのものである。240名もの留学生のための寮を自力で建設すると少なくとも数十億円単位の費用がかかる。それは230万円の学費収入では到底できない。茨木周辺には廃業・移転した会社などの寮がたくさんあるので、それらの所有者が事業としてANU共同学部の学生のための寮経営に乗り出すかもしれない。しかしその場合は通常の学生マンション並の寮費となる。それに対して補助金を出さなくも留学生は暮らせるのか。
ANU共同学部の持ち出し補填のための財源確保として立命館大学の既存学部の学費値上げなど到底認められないだろう。現在の立命館が一番議論しなければならない既存学部の教育力を高める議論が、こうしたばかばかしい議論の繰り返えしによって妨げられている。いい加減に終止符を打たなければならないだろう。川口前総長が安倍首相のオーストラリア行に同行し両国首相の立会いの下で「ANUとの共同学位の探求」に署名してきた。2014年7月24日の常任理事会において署名の範囲で合意したが、川口総長はそれを無視して東京オフィスにおいて勝手に「共同学位学部の創設」との記者会見を行い今日の混乱を作った。ここまで来れば、川口前総長に責任を取らせて止めるしかないだろう。
(5)大学院生の学費の半額化の財源確保のために学部生の学費を上げるなどの方式は認められない。
大学院の学費を半額にするという方針にたいして、一般論としては「値下げに反対する」という思いには至らなかったのだろう。しかしその財源(4億5千万円)をどうして確保するかと言う大切なことが議論されなかった。院生の学費を半額にするために学部学生の学費を値上げするなどという判断は許されないだろう。私立大学は学部生が基本である。もしも院生の学費を半額にするというなら従来のような大きな定員の大学院政策は改め、立命館が責任を持って「大学院卒」として社会に送り出せる者だけしか入学させない大学院にするなど政策の抜本的な変更が必要である。それも文系だけにせざるを得ないだろう。理系においては修士課程卒(学部卒の1/2を進学させる教学方針)が技術者として生きていくのに必要不可欠な学歴となっている今日、理系の修士課程は学生数の大きさからも学部と同一学費でない限り、立命館の財政を維持することはできないだろう。
終わりに
2月28日付で立命館大学の12学部長(政策科学部を除く)の連名で、長田理事長、吉田総長、市川副総長、松原副総長、渡辺副総長あてに「R2020後半期以降における政策予算と学費論議に関する要請」という文書が提出された。内容的には私が上記したようなことに対する疑問、批判、是正を求めるものであり学部教授会の意向を表明したものと推察される。
また3月7日8日に開催されたスプリングレビューにおいて提出された後期方針ならびに財務報告に対して賛否両論で平行線となった。こうした状況を踏まえ、討論のまとめを行った吉田総長から「このような状態では、学部生の学費値上げも、大学院生の学費半額も決められない、この件は年度をまたがって検討せざるを得ず、5月連休前に結論を出したい」とされた。

説明のつかない学費値上げを行おうとするなら長田理事長、森島専務の解任提案しかない。
誰が考えても無責任な財政方針、それによる学費値上げ提起など到底認められないだろう。長田理事長や森島専務が、それでも「学費を値上げする」というのなら、学部長理事は結束して両名の解任決議を出す必要があるだろう。当初は学外理事の数を頼んで理事会において否決しようとするだろう。しかし大学の目的・使命である教育・研究を行っているのは学部長を代表者とする学部教授会である。解任決議提案を否決しても彼らには教育・研究を執行することはできないし、学部長理事を解任することもできない。根競べで敗れるのは長田理事長であり森島専務にしなければならないだろう。
吉田総長ならびに学部長理事は教育者として、学生・父母に対して「このような説明がつかない学費値上げを押し付けることはできない」という強い意志で根気よく臨む必要があるだろう。疑問や意見は述べたが「承認あるいは黙認せざるを得なかった」などで済まされる問題ではない。
なお延期されている全学協議会は5月開催が予定されている。その時期までに長田理事長、森島専務の解任が行われていない場合に、長田理事長や森島専務が学外理事も出席した理事会において学費値上げを決定した場合、学校法人立命館の「経営責任者」を自任している長田理事長ならびにその補佐役であると吹聴している森島専務が、学生たちに学費値上げの説明を行う義務がある。
学費に関する学生への説明は、長田理事長、森島専務の仕事である。
川本八郎氏は専務の時も理事長の時も、学費値上げの説明は自分の責任で行っていた。長田理事長にそのような経営代表者としての責任感と、学生にたいする説得力があるかを全学は注視している。森島専務は『任命権が』ある部次長会議などでは品の無い悪態で偉そうなふりをしているが、教職員組合との業務協議会や、学友会との全学協議会などでは決して責任を取ろうとせず、総長や副総長に発言をゆだ、理事長補佐として本来負うべき自らの責任を転嫁してきた。彼が学費値上げ提起を学生などに対して、どのように説明をするかが問われるだろう。
鈴木元。現在、日本ペンクラブ会員、日本ジャーナリスト会議会員、かもがわ出版取締役、国際環境整備機構理事長。元職、立命館総長理事長室室長、大阪初芝学園副理事長、中国 (上海)同済大学アジア太平洋研究センター顧問教授、JICA中国人材育成アドバイザリー、私大連盟アドミニストレーター養成講座アドバイザリーなどを歴任。
著書に『立命館の再生を願って』『続・立命館の再生を願って』(いずれも風涛社)『大学の国際協力』(文理閣)など多数。