スズキ ゲンさんのブログ

立命館の再生を願って

立命館の理事ならびに関係各位へNO58

2016-02-17 07:19:10 | 立命館の再生を願って
NO58 立命館理事ならびに関係各位へ
学部長理事をはじめとする理事の皆さんは、立命館大学が直面している教学そして財政危機を直視し、その打開のために責任をもって対処する必要があるだろう
  2016年2月17日 元 立命館総長理事長室室長、ジャーナリスト 鈴木元
目次
はじめに
(1) 財政危機を覆い隠そうとする長田豊臣理事長、森島朋三専務
(2) ANU問題は川口清史前総長に責任を取らせて新学部構想は解消するしかない。
(3) 容易ならざる教学危機の進行

はじめに
私は1月5日付で「NO57  吉田美喜夫新総長誕生から1年を迎えて」を立命館問題専門ブログ(インターネットで スズキ ゲンさんのブログ と検索すれば出てきます)に掲載した。以来5週間が経ったが、この間のアクセス件数は5000件を超えており、このブログが学内外を問わず立命館問題を知る上で最大の情報源として社会的に定着していることは明らかである。
この間、常任理事会を中心に「R2020計画の後半期計画(2016年―20120年)、以下 後半期計画」が議論されている。さらに安倍首相のオーストラリア訪問に同行した川口前総長によって突然持ち込まれた「ANUとの共同学位課程の探求」が、どこでも審議されることなく「新しい共同学位学部」構想として東京オフィスで記者会見されたことを契機に、既成事実として論議され学園は混乱させられてきた。
後期計画の案文は全学の関係者が集まって論議作成されたものであり、今後の課題として列挙されているものは一般的には当然ことが記載されている。しかし昨年に最初の草稿が出されたときから問題点として指摘したことであるが、総括が無い文書である。したがって後半に書かれている課題の達成方策の裏付けが書かれていない文章である。
財政文書も同じである、「当初計画通り、進行してきた」と書いているが、私学における主要財源である学納金収入が明確に減る一方、支出は大幅に増え、基本金への組み入れが年々減っており財政的に重大な困難にぶつかりつつあるにもかかわらず、問題の総括もなく「何ら問題が無い」かの書きぶりである。
(1) 財政破綻を覆い隠そうとする長田理事長、森島専務
2016年1月13日付で常任理事会文書(起案・財務部)「R2020計画後半期の財政運営基本方針の策定に向けて」が出された。ここでは2011年―2015年の前期期間様々なことがあったが概ね当初計画通り進行し、後期計画を進めるにあたって特段の財政問題は無いかの記述としている。
しかし(3)で書く、教学危機は、この5年間、定員を学部で538名、大学院修士課程で265名増やしたにもかかわらず、実員において学部で268名の減員、修士課程で669名の減員を起こしている。おそらく、このような事は関西4私大、全国10私大で初めての事であろう。
その結果、学納金の5年間の実績は当初計画2924億円に対して2839億円となり85億円も減収となった。一方は人件費で当初計画の1768億円が1842億円となり、当初計画より74億円も増大し、差し引き159億円となった。このまま行けばこの傾向は続くと推察される。なお何人かの教員が指摘されていることであるが、新学校法人会計基準で見ると立命館は収入の減少と支出の増加により、差し引き収支は年々悪化し、2011年124億円あった収支差額が2014年度では85億円に減少している。そして経常収支差額の比率は2011年度9.1%、2012年度7.2%、2013年度5.6%、2014年度は4.2%と年々低下している。他大学比較においても2014年度の3私大平均は6.7%、9私大平均4.7%をいずれも立命館は下回っており急速な財政力低下が明らかになっている。
大阪茨木キャンパス(以下、OIC)建設を巡って基金の大幅取り崩しだけではなく、毎年30億円近い支出増等(管理運営費だけで18.5億円の増+OICでの外国語、一般教養、教職などの独自開講費用を合わせると20億円、そして230億円に及ぶ校舎建設の積立金を考慮すると毎年30億円近い支出増)によって経常的支出にも極めて厳しい状況を与えている。
 2014年度決算報告において「2億円程度の赤字であり、立命館の財政規模からは何の問題もない額である」としている。しかし2014年度予算において基本金の組み入れを当初より39億円も少なくしていたにもかかわらず、決算の消費支出では42億円もの超過支出(赤字)となっている。
②さらに注意して見ると、当初計画に無かった銀行からの借り入れを130億円行い(2017年に一括返済を約束している)③2号基金から72億円全額を取り崩し④建設関係で58億円の未払金(建設中ではなくすでに完成し引き渡しが行われているもの)があり、後年度支払いを求められる。つまり先の42億円の赤字と合わせると100億円を優に超える大幅赤字を先送りしている可能性があり「これでは東芝と大差がない粉飾決算ではないか」との声が学内から上がっているが、さもありなんという状況である。
幹事会において幹事から「2015年度の決算見込みを出す必要がある。そうでなければ、後期計画の財政的裏付けの見込みは立てられない」との意見に対して「通年、秋になっています」と答弁し2015年度決算予測の提出を拒んでいる。これでは新規の学部の設置など到底検討できない。2014年度の決算報告と2015年度の事業の進行(現時点では2月と3月の予測を足せば出る)を見れば、多少の違いはあったとしてもほぼ大枠で2015年の決算予測はだせる。しかし長田理事長や森島専務は妨害し、事態の露呈を隠蔽している。
こんなことをしていれば、昨年の3月以来、何回も伸ばしてきたと同様に、3月に予定されている常任理事会スプリンレビューを経ても、学生・教職員に責任を持った財政総括も後半期計画を支える財政計画も提示出来ないであろう。現在の財政論議は時間稼ぎのためにやっている疑いもある。長田理事長、森島専務、高橋財務担当常務理事はその責任を取れるのか、今から明確にしておくべきであろう。
補足1)「財政自立」論と長岡キャンパス
財政文書の中で、盛んに部門の財政自立をうたっている。ところで立命館中高等学校の長岡移転にあたって、①校地の購入費は積立金25億円と深草キャンパスを龍谷大学に35億円で購入してもらうことによって購入する。②校舎建設費110億円(後に121億円になる)は全学的視点で法人(大学)が負担するとした。今まで立命館は附属学校の建設費に関しては法人貸付とし、長期返済で行ってきた。長岡の校舎建設費は財政自立の方針を破ったのである。彼らにとっては財政自立、全学的視点とは方便であってその都度、自分たちに都合の良いように使っている。
なお長岡の校舎建設について私は「鹿島建設に指名入札する可能性がある」指摘したが、その通りとなった。そして121億円の建設契約は理事会にも諮らず長田理事長の決済・サインで実施された。この問題はあいまいにはできない。深草校舎の売買を巡る問題については、この間、何回か書いているので省略する。
補足2)大分国際交流会館購入問題
この間、私は、このシリーズおいて、大分国際交流会館購入問題について触れて来た。それに対して学内では「事実認識が古い」等の話しがされている。また『大学時報』(2014年7月号)に掲載された今村正治氏の論文などからAPUハウスの教学的成果が強調されている。私はAPUハウスの教学的成果を否定したことなど無い。関係者の努力を高く評価している。そのことと財政的展望とは別の問題であり、今、空き部屋が相当ある下で、慌てて購入する必要は無い、また莫大な建て替えの積立金が必要であり財政的には無理があると指摘したのである。
 ところで現在の入居率はキャンパス内にあるハウスⅠ、Ⅱは80%(今村論文)、クレオハウスから購入したもの(現在は主として短期留学生、交換留学生、大学院生用)50%、大分国際交流会館80%である。「寮費で日常的運営はでき、財政的には問題が無い」とことさら強調されている。
 ところで大分国際交流会館は築15年ぐらい経っているから建て替えるとすれば、後15年―20年である。建築費用は30数億円以上はかかっていると推察される。すると今から20年のちに建て替えたとして年間1億5000万円の積立金は必要である。クレオハウスの建て替え費用を仮に最低年間5000万円と見込んでも、合わせて年間2億円はかかるのである。その資金はどうするのかと言うのが私の問題提起である。現在のAPUの財政規模では到底無理である。この指摘に対して、今回の財政報告ではどこにも記載されていない。私の推察では予算を組んでいない可能性がある。つまり「後は野となれ山となれ」なのである。「期間が過ぎれば放棄するという方針ではないか」と言われてもおかしくない無責任な状態である。そうでないというなら説明が求められる。
なお森島専務などは「ダメな場合は売ればよい」と言っていたが、現在のところ土地の所有者である別府市から土地の購入には成功していず、国際交流協会から古い建物だけを買わされたのである。土地も所有せずに将来の売却の可能性などほとんどない。この男は、いつでもその場任せの作り話を平気で語る。
(2)ANU問題は川口前総長に責任を取らせて新学部設置は解消するしかない。
この間、ANUとの提携とかかわってA案、新学部(グローバル教養学部)とし、国際関係学部とのツイン学部、入学定員75-90名程度とする案。そのために国際関係学部をOICに移転させる。B案、英語で授業する新学部(入学定員150名程度)とし、その中にANUとの共同学士課程を設ける。などが検討されているが議論すればするほど学部として継続的に存続する可能性が低いことが明らかになっている。
英語力TOEFLBT570点以上等の高い学力、学費230万円以上という水準で、基準以上の学力を求めれば小規模にせざるをえなく採算は厳しい。学部規模を大きくすれば学力の確保ができない。
ANUへの留学は1年に過ぎないのに学費の半額をANUに渡す制度、その上、優秀な留学生を確保しようとすれば立命館独自に奨学金(平均で学費の半額)を支給せざるを得ず。二つを足せば、留学生については、収入ゼロなる。提出されているA案、B案のいずれの財政見通しにおいても奨学金の予算は含まれていない。全学の奨学金を使うというのであろうか。さらに国際関係学部を移転させるとしているが、その新校舎の建設費用も入っていない。これらを計算すると立命館の財政負担は巨大な規模になり到底財政的にも実行できない。また様々に出されている教学案は国際関係学部や政策科学部そしてAPUとの競合関係が生まれ、学部規模を大きくすればするほど入学政策を含めて矛盾を生み出すと思われる。
要するに立命館として教学的議論を踏まえた上で登場した教学構想でなく、川口前総長たちがかってに約束してきて、その上に学部ありきの結論を持ち込んだために起こっている混乱である。もうこれ以上、いくら議論をしても矛盾が深まるだけである。最早「誰が猫に鈴を付けるか」の状況である。川口前総長が責任を取ってANUに出かけ、新学部構想を取りやめるとの申し入れを行うしかないだろう。そして混乱の責任を取って顧問を辞任することである。
なお、ANUとの関係で「財政的展望が無理である」との意見にたいして、企画部などから2016年以降の財政的展望として「政策予算として50億円を確保できる目途があり。少々の持ち出しは大丈夫である」との意見が密かにふりまかれている。「50億円の政策予算」と言うのが何を指しているのか不明である。「後期計画」の財政政策として、試算の一つのケースとして「全学的に一律5%カットを行えば、50億円程度を確保できるのではないか」との試算が行われたなことに基づくものではないかと思われる。しかし一律5%カットを行うなどと言うことは乱暴な議論である。たとえそれができたとしても全学に配分するものであり、ANUとの共同学部構想の「赤字」の穴埋めに恒常的に使えるものではない。
最近入った情報によると①ANUの財政も厳しく来年以降、15%程度の学費値上げは不可避ではないかと言われている。その場合現在予定されている230万円の学費で維持できるのか②ANUは立命館大学と提携するだけではなく、東大、早稲田などとの提携も進めており、それらの大学には奨学金付学生の派遣を検討しているそうである。
いずれにしてもANUと新学部提携を行う場合、対等平等、財政自立、持続性が保障されなくてはならないだろう。
(3)容易ならざる教学危機の進行
上記した立命館における財政危機の要因は茨木キャンパス強行など色々あるが、最大の原因は教学危機である。
①既に私は、昨年来このシリーズで何回も立命館大学で進行している教学危機について指摘してきた。今回の文書「立命館大学のR2020後半期計画における重点の考え方」においても、そのことについて触れざるを得なくなった。「ここ数年、合格者の手続き率向上は進まず、入学時の大学選択の状況でも改善の兆しを見ることができない。・・上位層の学生が、他大学と比べて優位な魅力を立命館大学に見いだせなくなっている。この状況は付属校推薦による入学者も、年々悪化している。付属校で教育の高度化を進めているが、より広い可能性を求めて積極的に他大学へ進学するようになり、付属校から立命館大学へ入学する生徒数は、この5年間(992名/2011年―943名/2015年)で5%も減り、立命館大学の入学者の20%を付属校からの進学者とする入学政策にもかかわらず、年々減少し、いまやわずか11.7%に落ち込んでいる。それに対して付属校からAPUへの進学者は年々増えており、立命館大学の魅力が低下しているといえる」と記述している。つまり附属からも、一般からも進学者の上位層には逃げられるようになっているのである。
また私がすでに引用してきたリクルートによる「大学進学ブランド力調査」において「2008年では知名度3位、志願度3位が、2014年では知名度4位、志願度7位と大幅に後退している」と引用せざる得なくなっている。
上位層で言えば、かつて特段の体制を取り、三大難関試験と言われる司法試験、公認会計士試験、国家公務員総合職試験において同志社を抜き全国10位以内に入っていたにもかかわらず、今では同志社に抜かれ、10位以内に入らない年が多くなっている。一部に「学部入学者の水準に差があるからだ」と言う人がおられるが、三大難関試験で同志社を抜いていた時でも学部入学者の偏差値では、まだ立命館の方が低かったが、三大難関試験で上回るにしたがって偏差値も徐々に上がっていたが、今や逆もどりどころか下がってきている。
かつて「丁寧な教育をしてくれる」と社会的評価があった立命館大学において、近年、留年率、中退率が異常にあがり、今や関西四大学で最も留年率、中退率が高い大学となり立命館大学の評価を下げている。要するに教育力が下がっているのである。こうして私立大学おける最大の収入源である学納金において、入学者の減少、休学者や中退者の増大と言う教学危機が財政危機を生み出しているのである。
本年度(2016年)の入試志願者の数において立命館大学が昨年度比において関西の他の3大学に比して伸びたことを持って、長田理事長や森島専務は役員室において「立命館の一人勝だ」などとはしゃいでいるそうである。お粗末としか言いようがない。一般的には志願者が昨年に比べて増加することはしないより良いが、増加にはさまざまな要因がある。水準が上がり人気が高まった場合もあるが、隔年現象や、レベルが下がり合格しやすくなった場合もあり、必ずしも喜べる事態でない場合もあり冷静に分析する必要がある。それよりも先に述べた立命館大学が定員を増やしながら実員では減少していること、付属校からも上位層が入学しなくなっていること、中退者がかつてなく増えていることについて真剣に対策を立てる必要がある。そのことの緊急性・重大性が分からない人間が理事長や専務を務めている限り、立命館の再生は難しい。
なぜこのような事が起こっているのか。長田理事長や森島専務など学園指導部に対する不信による不団結が学園とりわけ立命館大学内に広がり教職員は個々には志に基づいて現場で頑張っておられるが、学部や研究科単位で同一の目標に向かって結束して学生の向上のために労を惜しまず奮闘する気風が後退しているからである。同じことであるが社会的にも立命館の評判を落としている理由として以下の事が考えられる。
① 川本理事長や長田総長が教職員の一時金は一カ月カットを強行しておきながら、自らの慰労金支給基準は倍加するなど、およそ大学人として考えられない品性の無い行為で教職員ともめている大学。
② 足羽慶保の学歴詐称が明らかになりながらも、謝罪も、取り消しもせず居直っている大学。
③ 教育と研究の質の向上が求められている現代において相も変わらず「箱もの行政」で、400億円もかけて茨木キャンパスを造るなど時代遅れの経営者が牛耳っている大学。
④ 毎年、数千名単位で中退者や留年者が出、それらの学生や父母が「立命館に入って、失敗した」と言いながら、他大学や専門学校に入りなおしたりしている大学。
これらについて私たちは批判してきたが、長田理事長等は「一部の者が騒いでいるだけ」(2016年度年頭所感)と居直って来たが、世間はきちんと見ていて、立命館の評判を下げてきたのである。提起されている教学改革の方向は妥当であっても、長田理事長や森島専務、そして川口前総長や川本前理事長が顧問に就任したまま責任取らず居座っている限り、世間の社会的評価が向上することはないだろう。
 さいごに
学部長・理事の皆さんは、教授会だけでなく全学に責任を持つ立場から、全学の期待に沿って積極的に発言すべきだろう。
最近では問題のある提案が提出されても、ほとんどの場合は疑問的質問や、部分的修正意見の範囲にとどまり、明確に反対意見を述べたり、議決を求め反対票を投じることはされていない。これでは学園の正常化は図れない。
全学の学園正常化の期待を背負って誕生した吉田総長に結束し、学園の民主的発展にさらに努力を尽くしてもらいたい。

鈴木元。現在、日本ペンクラブ会員、日本ジャーナリスト会議会員、かもがわ出版取締役、国際環境整備機構理事長。
元職、立命館総長理事長室室長、大阪初芝学園副理事長、中国 (上海)同済大学アジア太平洋研究センター顧問教授、JICA中国人材育成アドバイザリー、私大連盟アドミニストレーター養成講座アドバイザリーなどを歴任。
著書に『立命館の再生を願って』『続・立命館の再生を願って』(いずれも風涛社)『大学の国際協力』など多数。