常任理事ならびに関係各位へNO36
立命館学園を安倍政権の対外政策の道具や政治家の食い物にさせてはならない。
2014年7月30日 元総長理事長室室長 鈴木元
はじめに
最近、立命館のいかなる機関において議論も検討もされて来なかった構想が突然、記者会見で発表されたり、なし崩し的に既定事実のように常任理事会に報告されたりしている。
一つはオーストラリア国立大学(ANC)との間で共同学位を出す学部をOICで設置する
との構想。もう一つは佐賀県において中・高等学校を擁する東明館の理事9名中8名を立命館関係者が占めるという措置。
抽象的一般論として外国の大学と共同学位を出す学部を設置することや、新たな提携校や附属校を設置することはありうることである。
しかし「R2020」で何の構想も無かった茨木キャンパスを突然強行し、学園3分割による不都合や財政的困難をもたらし、現在立命館は、将来の見通しが極めて不明確な状態に置かれている。そうした時、この間の責任を不問にして学部長も参加して「R2020 後半期計画」を作成されたところである。そこではオーストラリア国立大学のことも東明館の事も一言も触れられていなかった。茨木キャンパスと同じ過ちを起こすのか。
今回のオーストラリア国立大学との共同は、どこでどのような状況のもとで発表されたのか。安倍首相がオースとラリアを訪問しアボット首相との共同声明を発表した。この首相のオーストラリア行に財界人と共に、ただ一人大学の学長として参加したのが川口総長である。そして共同声明の中で「立命館大学とANCとの最近の協力の進展を温かく歓迎したい」と記載された(インターネットで検索できる)。首相間の共同声明の中で特定の大学の事を記載したのである。異常である。
立命館学園を安倍首相の対外活動の道具に
この声明と呼応して立命館大学の川口学長とオースラリア国立大学の学長が「共同学士課程設置検討についての連携・共同についての覚書」に署名した。この署名の立会人としてアボット首相は他用の為に参加できなかったが、安倍首相が参加した(これもインターネツトで検索すれば写真入りで掲載されている)。
これは無茶苦茶である。立命館の何処でも決まりもしていないことを首相間共同声明に記載され、そして首相を立会人とした公開の記者会見の場で覚書の署名を行ったのである。
茨木問題に際して、反対意見が相次いだ時、長田理事長は「実行できなければ、わしの首を差し出す(辞任)するぐらいの事では済まされない」と言った時の比ではないことは明らかである。
川口総長は立命館の機関運営のルールをどのように考え、今回の言動にどのように責任を持つのか明らかにする義務がある。
「発表された」構想を見ると、歴史を中心にアジアについて研究教育する学部で、定員200名程度、オーストラリア国立大学からも教員を招き教育に参加してもらう。2017年にOICで開設する。オーストラリアからの留学生は2015年に開設する留学生会館を活用する。立命館大学の学生は在学中に1年間は相手側大学に留学することを義務付ける。このような構想は予てから長田理事長が思いつきのように言っていた「アジアゲットウェー学部」「新しい国際関係学部」という話に符合する。相当前から密かに持ち込まれ企てられていのであろう。
茨木キャンパスの施設計画はどうするのか。国際関係学部やAPUとの関係はどうするのか。財政問題はどうするのか・・何も答えが出されていない。
国際関係学部を設置した時、ワシントンのアメリカン大学と共同学位システムを作った。アジア太平洋の時代の今日、アメリカとだけではなくオースラリア国立大学とも共同学位システムを探究することはありうることである。しかしアメリカン大学との共同学位システムでも相互の教員体制、留学する学生の資質と教育システムで苦労してきたし、事実上、立命館から相手側の大学へ行く学生が圧倒的でアメリカン大学から立命館に来る学生は極めて少なく、片方向になり立命館の持ち出しが圧倒的になっている。
手続き問題を別にして政策論に限定して述べるなら、世界大学ランキングおいて第25位のAMCとの学位共同プログラムはありうる話である。それは国際関係学部やAPUにとっても検討に値するだろう。しかしそのために新しい学部を創設すると言うなら、それは全く別の話である。
今回は単なる教育システムではなく、そのために新たに学部を作るというのである(川口総長の記者会見によると、日本で初めてだそうである)。教育システムであれば不成功な場合、両者の協議で取りやめる場合もある。しかし学部は少なくとも数十年単位の教育制度である。教育目標も、カリキュラムも教員体制もなんの検討も議論もなされていないのに川口総長は実行を前提とした覚書に署名してきたのである。どうするのか。
200名規模の学部では採算が合わないことは明確である。295名で発足した国際関係学部は全学で一番高い学費で出発した。今回はさらにそれよりも高い学費で出発するのか。創設は2017年とされている。川口総長の任期は2014年の12月末である。実行の責任も取らず国際約束をしてきたのである。
それにしても、この話はおかしい。昨年安倍首相がインドを訪問した時も川口総長は同行し、安倍首相のインド日本IT工科大構想に賛意を表明したが、その実行に関わることまでは表明しなかった。ところが昨年の秋の国会における安倍首相の所信表明演説において個別大学である立命館アジア太平洋大学を持ち上げる記述が行われた。読んだ人は奇異に感じたはずである。そして今回のオーストラリア国立大学の話である。明らかに川口総長は安倍首相の対外活動の道具とされた。安倍首相の指示で動く文部科学省は、今後、国際プログラムの審査などで立命館に対して多少の便宜を払うかもしれない。しかし学内合意に基づいて立命館が主体的に取り組む場合でも、文部科学省などの補助金を獲得するには様々な注意が必要であるが、社会的需要の調査、国際関係学部やAPUとの関係目あり方、教学的必要性、カリキュラムの具体的検討、最低50億円はかかる設置経費の目途、などなにも調査も検討もしていないものを押し付けられて学園はさらに混乱するだけである。
足羽問題の弱点が利用された可能性が高い
ところで足羽問題は文部科学省との関係はどうなっているのであろうか。支払いについて、私は文部科学省に具体的に提起し「非営利法人である私立学校は寄付などを理由に便宜を支払ってはならない」との精神に立って適切な指導をする旨を郵便でお願いした。文部科学省は立命館に対して何回か指導し止めさせた。ところが公正証書を根拠に足羽側が立命館を相手に支払いを要求する裁判を起こし6000万円に及ぶ和解金で解決した。これに対して文部科学省は学校法人立命館に対して川本前理事長などに損害賠償を求めるように指導しなかった。このころから異変が生じた。ある大手マスコミが文部科学省に対して「支払を止めるように指導しながら、なぜ和解金の支払いを許容しているのか」と取材した。それに対して文部科学省の回答は「担当者が変わっているが、調査した結果、そのように指導した事は無い」と回答している。でたらめである。
2011年3月8日付の長田理事長名の足羽衣史に対する支払い停止文書の中に「文部科学省から学校法人の公益性を踏まえれば考えられないことであるとの強い指導を受け」と記述している。その後、文部科学省側で何らかの判断措置が取られたと推察される。
その後、事態はさらに明確になる。すなわち足羽慶保の学歴詐問題である。足羽慶保は「立命館を卒業どころか一時在籍もしたことが無かった」。ところが立命館との合併に際して理事に就任したが、その際、川本前理事長が関与して、立命館大学卒業の学歴詐称の経歴書を立命館の理事会から文部科学省に提出していた。当然、その書類は無効であり、取り下げなければならない。このことについても私は文部科学省に資料を送り、適切な指導を要請した。しかし文部科学省は動かなかった。「目こぼしした」可能性がある。
このころから川口総長等によるが安倍首相などの政府関係者との接触が盛んになる。
誰が繋ぎ役であるか、福田元首相と長田理事長のパイプが一番のパイプであると推察される。小泉首相が靖国神社を訪問し日中関係が「政令景熱」となった時「氷を溶かす旅」として温家宝首相が来日することになった。この時、私は長田理事長、川口総長の同意え、常任理事会にはかり温家宝首相の立命館への来訪を周政策科学部教授の協力の下に実現させた。
この時、日本の首相が福田首相であつた。温家宝首相は中学時代に中国人としては珍しく野球の経験者であつた。それで同首相の希望で立命館の野球部との交流を行った。その時立命館大学野球部のユニホーム一式を贈呈した。温家宝首相はそのユニホームを着て野球部との交流を行い、その場で野球部の中国への招待を表明した。
その後温家宝首相は東京で同じく野球が好きな福田首相ととある体育館でキャチボールして交流を深めた。その時、温家宝首相は立命館大学野球部のユニホームを着ていた。その後福田首相の方から立命館に対して野球部のユニホームが所望された。そこで野球部の了解の下、長田理事長を経由して福田首相に贈呈された。これがきっかけとなり長田理事長と福田首相のパイプが出来、その後度々、直接電話で話し合われるようになった。そして2013年の8月16日の五山の送り火にさいして、朱雀キャンパスの屋上で行われている鑑賞会に福田元首相夫婦が招待され参加するまでになっている。安倍首相夫人のAPUへの訪問も行われた。この福田元首相、安倍首相、そしてこのラインに元首相で現副総理の麻生財務大臣がいる。
今回、突然、東館問題が浮上した。東明館は麻生太朗グループの学校である。定員割れを起こしているだけではなく、昨年には無免許講師問題が明るみになり補助金カットを受けた。さらに使い込み疑惑など、さまざまなうわさが絶えない学校である。しかし何の討議も無く9名の理事内の内、8名が立命館関係者で占めるということが進行している。残った1名の理事は弁護士だそうである。
常任理事会では東明館のメリットが説かれるかと思えば、立命館の退職者である元APU副学長であつた慈道氏が理事長、元立命館守山高校校長の小畠氏が校長(理事)、元総務部次長であった前田氏が事務長に就任していることが報告されている。そして川崎常務、笹原理工学部長、里見生命科学部長、是永APU学長、本郷総長特別補佐(入試広報担当)、清家立命館理事・校友会福岡県連会長が理事に、それに出口財務部次長が非常勤監事に、それぞれが「個人的に就任している」とされている。しかし現地の「毎日新聞」では既に「立命館、佐賀・東明館に進出」と報道されている。こんな乱暴なやり方が許容されてはならない。
私が在職中、入学政策として入学生の20%を附属校から入学させるという政策が取られていた(実際は12%程度)。しかし附属校を新たに作ることは都道府県の私学審議会の了承を得ることが必要であり、ほとんど不可能で20年以上新設校は認められていなかった。例え認められても校地・校舎を合わせて100-150億円はかかる。今後教育の質の向上が課題となっている立命館としては、一つの附属校を増設するために100-150億円もの資金を費やすことは適切ではなかつた。結局既存の学校の合併しかなかった。市立守山女子高等学校、岐阜市立商業校の合併であつた。前者は成功し、後者は市議会で1票さで認められなかった。
同じころ私はAPUのこともあり九州北部でも対象となる学校が無いかと調査していた。またAPUに関して、アジア太平洋地域からの希望として社会学部、経営学部とともに理系の学部の設置が望まれていた。しかし学校法人立命館としてもAPUとしても理系の学部を作る財政的展望は無かった。そこで北九州市などに公設民営で設置してもらい立命館が運営する方法はないか、また公立高校の合併はないかと関係者から聞き取り調査をしていた。
しかし何れも、議会での了解を得られる展望が開けなかったので提案するまでには至らなかった。そうした状況を知った福岡・佐賀の私立高校関係者の何校の代表から面談の申し入れがあった。しかし限られた時間の中での私の調査の範囲でも、定員割れしていること、校舎が古く事実上建直しのために何十億円もかかること、そして何よりも教職員の間に根深い不団結があることが分かったので、いずれも丁寧に断り常任理事会に提案するまでには至らなかった。
最初に述べたように一般論として、新しい提携校や附属校を設ける検討することはありうる。しかし今はそのことを検討する前に解決しなければならない事が山積みしている。現在の立命館は一時金カット以来の不団結を責任問題も明確にして解決しなければならない。そして茨木問題で積立金を使い果たす危険に追い込まれ、毎年30億円超える支出増に迫られているにもかかわらず「学内要求」に応えるとして、「食に関する学部」設置に関する構想も浮上しているが、実行に移されれば赤字学部になる危険がある。そのような時に何の議論もなく「アジアゲットウエイ―学部」「九州北部佐賀県に新たな附属校」など、よほど教学的・財政的に精密な検討なしに軽軽に実施に移すべきものではない。
長田理事長、川口総長、森島専務の前半は、川本前理事長が振りまいた混乱と学園構成員の間に挟まれ右往左往しながら結局、後継者指名した川本擁護で動き、問題を解決できず矛盾深めた。
続いて「名誉回復」とばかりに飛びついた茨木キャンパス問題では、サッポロビール、とりわけ竹中工務店などのゼネコンに振り回され、その食い物になり、今後とも学園キャンパス3分割による不便に遭遇するとともに、毎年30億円超える財政支出増に苦しむことになった。
そして今回は、安倍政権の対外政策、文教政策に直結し、そのモデルとして動かされ利用されるとともに、麻生グループの不良債権を引き取らされる危険が生まれている。こうしたことを許せば別府の国際学生交流センターの引き取り、さらに文部科学省や外務省の天下り教員の引き受けなど、次々と押し付けられる危険が生じることは明確である。川口総長は総長退任後、どこへ行くのだろうか。
立命館人は自分や自分の学部の、個々の利害に目がくらみ、大局を見失い、長田理事長や川口総長、森島専務の誘惑にのって、学園が時の政府に迎合する学園へ堕落していくことを無批判に黙認したり、ましてやその推進に手を貸したりしてはならないだろう。
川本時代の評価などを含めて学園政策のここの問題に対する意見の相違を横に置き「政府の思惑や政治家の利害で動かされる大学にしてはならない」の一点で団結して臨み、10月の総長選挙に向かって共同して闘うようにしなければならないだろう。
もう少し調査してから書こうと思っていたが、本日7月30日からサマーレビューが開始される。そこでAUCや東明館のことが報告議論されるとのことなので現時点で判明している範囲で書いた。いずれにしても今、立命館は重大な岐路に立っている。学園関係者の奮起をお願いしたい。
以上。
立命館学園を安倍政権の対外政策の道具や政治家の食い物にさせてはならない。
2014年7月30日 元総長理事長室室長 鈴木元
はじめに
最近、立命館のいかなる機関において議論も検討もされて来なかった構想が突然、記者会見で発表されたり、なし崩し的に既定事実のように常任理事会に報告されたりしている。
一つはオーストラリア国立大学(ANC)との間で共同学位を出す学部をOICで設置する
との構想。もう一つは佐賀県において中・高等学校を擁する東明館の理事9名中8名を立命館関係者が占めるという措置。
抽象的一般論として外国の大学と共同学位を出す学部を設置することや、新たな提携校や附属校を設置することはありうることである。
しかし「R2020」で何の構想も無かった茨木キャンパスを突然強行し、学園3分割による不都合や財政的困難をもたらし、現在立命館は、将来の見通しが極めて不明確な状態に置かれている。そうした時、この間の責任を不問にして学部長も参加して「R2020 後半期計画」を作成されたところである。そこではオーストラリア国立大学のことも東明館の事も一言も触れられていなかった。茨木キャンパスと同じ過ちを起こすのか。
今回のオーストラリア国立大学との共同は、どこでどのような状況のもとで発表されたのか。安倍首相がオースとラリアを訪問しアボット首相との共同声明を発表した。この首相のオーストラリア行に財界人と共に、ただ一人大学の学長として参加したのが川口総長である。そして共同声明の中で「立命館大学とANCとの最近の協力の進展を温かく歓迎したい」と記載された(インターネットで検索できる)。首相間の共同声明の中で特定の大学の事を記載したのである。異常である。
立命館学園を安倍首相の対外活動の道具に
この声明と呼応して立命館大学の川口学長とオースラリア国立大学の学長が「共同学士課程設置検討についての連携・共同についての覚書」に署名した。この署名の立会人としてアボット首相は他用の為に参加できなかったが、安倍首相が参加した(これもインターネツトで検索すれば写真入りで掲載されている)。
これは無茶苦茶である。立命館の何処でも決まりもしていないことを首相間共同声明に記載され、そして首相を立会人とした公開の記者会見の場で覚書の署名を行ったのである。
茨木問題に際して、反対意見が相次いだ時、長田理事長は「実行できなければ、わしの首を差し出す(辞任)するぐらいの事では済まされない」と言った時の比ではないことは明らかである。
川口総長は立命館の機関運営のルールをどのように考え、今回の言動にどのように責任を持つのか明らかにする義務がある。
「発表された」構想を見ると、歴史を中心にアジアについて研究教育する学部で、定員200名程度、オーストラリア国立大学からも教員を招き教育に参加してもらう。2017年にOICで開設する。オーストラリアからの留学生は2015年に開設する留学生会館を活用する。立命館大学の学生は在学中に1年間は相手側大学に留学することを義務付ける。このような構想は予てから長田理事長が思いつきのように言っていた「アジアゲットウェー学部」「新しい国際関係学部」という話に符合する。相当前から密かに持ち込まれ企てられていのであろう。
茨木キャンパスの施設計画はどうするのか。国際関係学部やAPUとの関係はどうするのか。財政問題はどうするのか・・何も答えが出されていない。
国際関係学部を設置した時、ワシントンのアメリカン大学と共同学位システムを作った。アジア太平洋の時代の今日、アメリカとだけではなくオースラリア国立大学とも共同学位システムを探究することはありうることである。しかしアメリカン大学との共同学位システムでも相互の教員体制、留学する学生の資質と教育システムで苦労してきたし、事実上、立命館から相手側の大学へ行く学生が圧倒的でアメリカン大学から立命館に来る学生は極めて少なく、片方向になり立命館の持ち出しが圧倒的になっている。
手続き問題を別にして政策論に限定して述べるなら、世界大学ランキングおいて第25位のAMCとの学位共同プログラムはありうる話である。それは国際関係学部やAPUにとっても検討に値するだろう。しかしそのために新しい学部を創設すると言うなら、それは全く別の話である。
今回は単なる教育システムではなく、そのために新たに学部を作るというのである(川口総長の記者会見によると、日本で初めてだそうである)。教育システムであれば不成功な場合、両者の協議で取りやめる場合もある。しかし学部は少なくとも数十年単位の教育制度である。教育目標も、カリキュラムも教員体制もなんの検討も議論もなされていないのに川口総長は実行を前提とした覚書に署名してきたのである。どうするのか。
200名規模の学部では採算が合わないことは明確である。295名で発足した国際関係学部は全学で一番高い学費で出発した。今回はさらにそれよりも高い学費で出発するのか。創設は2017年とされている。川口総長の任期は2014年の12月末である。実行の責任も取らず国際約束をしてきたのである。
それにしても、この話はおかしい。昨年安倍首相がインドを訪問した時も川口総長は同行し、安倍首相のインド日本IT工科大構想に賛意を表明したが、その実行に関わることまでは表明しなかった。ところが昨年の秋の国会における安倍首相の所信表明演説において個別大学である立命館アジア太平洋大学を持ち上げる記述が行われた。読んだ人は奇異に感じたはずである。そして今回のオーストラリア国立大学の話である。明らかに川口総長は安倍首相の対外活動の道具とされた。安倍首相の指示で動く文部科学省は、今後、国際プログラムの審査などで立命館に対して多少の便宜を払うかもしれない。しかし学内合意に基づいて立命館が主体的に取り組む場合でも、文部科学省などの補助金を獲得するには様々な注意が必要であるが、社会的需要の調査、国際関係学部やAPUとの関係目あり方、教学的必要性、カリキュラムの具体的検討、最低50億円はかかる設置経費の目途、などなにも調査も検討もしていないものを押し付けられて学園はさらに混乱するだけである。
足羽問題の弱点が利用された可能性が高い
ところで足羽問題は文部科学省との関係はどうなっているのであろうか。支払いについて、私は文部科学省に具体的に提起し「非営利法人である私立学校は寄付などを理由に便宜を支払ってはならない」との精神に立って適切な指導をする旨を郵便でお願いした。文部科学省は立命館に対して何回か指導し止めさせた。ところが公正証書を根拠に足羽側が立命館を相手に支払いを要求する裁判を起こし6000万円に及ぶ和解金で解決した。これに対して文部科学省は学校法人立命館に対して川本前理事長などに損害賠償を求めるように指導しなかった。このころから異変が生じた。ある大手マスコミが文部科学省に対して「支払を止めるように指導しながら、なぜ和解金の支払いを許容しているのか」と取材した。それに対して文部科学省の回答は「担当者が変わっているが、調査した結果、そのように指導した事は無い」と回答している。でたらめである。
2011年3月8日付の長田理事長名の足羽衣史に対する支払い停止文書の中に「文部科学省から学校法人の公益性を踏まえれば考えられないことであるとの強い指導を受け」と記述している。その後、文部科学省側で何らかの判断措置が取られたと推察される。
その後、事態はさらに明確になる。すなわち足羽慶保の学歴詐問題である。足羽慶保は「立命館を卒業どころか一時在籍もしたことが無かった」。ところが立命館との合併に際して理事に就任したが、その際、川本前理事長が関与して、立命館大学卒業の学歴詐称の経歴書を立命館の理事会から文部科学省に提出していた。当然、その書類は無効であり、取り下げなければならない。このことについても私は文部科学省に資料を送り、適切な指導を要請した。しかし文部科学省は動かなかった。「目こぼしした」可能性がある。
このころから川口総長等によるが安倍首相などの政府関係者との接触が盛んになる。
誰が繋ぎ役であるか、福田元首相と長田理事長のパイプが一番のパイプであると推察される。小泉首相が靖国神社を訪問し日中関係が「政令景熱」となった時「氷を溶かす旅」として温家宝首相が来日することになった。この時、私は長田理事長、川口総長の同意え、常任理事会にはかり温家宝首相の立命館への来訪を周政策科学部教授の協力の下に実現させた。
この時、日本の首相が福田首相であつた。温家宝首相は中学時代に中国人としては珍しく野球の経験者であつた。それで同首相の希望で立命館の野球部との交流を行った。その時立命館大学野球部のユニホーム一式を贈呈した。温家宝首相はそのユニホームを着て野球部との交流を行い、その場で野球部の中国への招待を表明した。
その後温家宝首相は東京で同じく野球が好きな福田首相ととある体育館でキャチボールして交流を深めた。その時、温家宝首相は立命館大学野球部のユニホームを着ていた。その後福田首相の方から立命館に対して野球部のユニホームが所望された。そこで野球部の了解の下、長田理事長を経由して福田首相に贈呈された。これがきっかけとなり長田理事長と福田首相のパイプが出来、その後度々、直接電話で話し合われるようになった。そして2013年の8月16日の五山の送り火にさいして、朱雀キャンパスの屋上で行われている鑑賞会に福田元首相夫婦が招待され参加するまでになっている。安倍首相夫人のAPUへの訪問も行われた。この福田元首相、安倍首相、そしてこのラインに元首相で現副総理の麻生財務大臣がいる。
今回、突然、東館問題が浮上した。東明館は麻生太朗グループの学校である。定員割れを起こしているだけではなく、昨年には無免許講師問題が明るみになり補助金カットを受けた。さらに使い込み疑惑など、さまざまなうわさが絶えない学校である。しかし何の討議も無く9名の理事内の内、8名が立命館関係者で占めるということが進行している。残った1名の理事は弁護士だそうである。
常任理事会では東明館のメリットが説かれるかと思えば、立命館の退職者である元APU副学長であつた慈道氏が理事長、元立命館守山高校校長の小畠氏が校長(理事)、元総務部次長であった前田氏が事務長に就任していることが報告されている。そして川崎常務、笹原理工学部長、里見生命科学部長、是永APU学長、本郷総長特別補佐(入試広報担当)、清家立命館理事・校友会福岡県連会長が理事に、それに出口財務部次長が非常勤監事に、それぞれが「個人的に就任している」とされている。しかし現地の「毎日新聞」では既に「立命館、佐賀・東明館に進出」と報道されている。こんな乱暴なやり方が許容されてはならない。
私が在職中、入学政策として入学生の20%を附属校から入学させるという政策が取られていた(実際は12%程度)。しかし附属校を新たに作ることは都道府県の私学審議会の了承を得ることが必要であり、ほとんど不可能で20年以上新設校は認められていなかった。例え認められても校地・校舎を合わせて100-150億円はかかる。今後教育の質の向上が課題となっている立命館としては、一つの附属校を増設するために100-150億円もの資金を費やすことは適切ではなかつた。結局既存の学校の合併しかなかった。市立守山女子高等学校、岐阜市立商業校の合併であつた。前者は成功し、後者は市議会で1票さで認められなかった。
同じころ私はAPUのこともあり九州北部でも対象となる学校が無いかと調査していた。またAPUに関して、アジア太平洋地域からの希望として社会学部、経営学部とともに理系の学部の設置が望まれていた。しかし学校法人立命館としてもAPUとしても理系の学部を作る財政的展望は無かった。そこで北九州市などに公設民営で設置してもらい立命館が運営する方法はないか、また公立高校の合併はないかと関係者から聞き取り調査をしていた。
しかし何れも、議会での了解を得られる展望が開けなかったので提案するまでには至らなかった。そうした状況を知った福岡・佐賀の私立高校関係者の何校の代表から面談の申し入れがあった。しかし限られた時間の中での私の調査の範囲でも、定員割れしていること、校舎が古く事実上建直しのために何十億円もかかること、そして何よりも教職員の間に根深い不団結があることが分かったので、いずれも丁寧に断り常任理事会に提案するまでには至らなかった。
最初に述べたように一般論として、新しい提携校や附属校を設ける検討することはありうる。しかし今はそのことを検討する前に解決しなければならない事が山積みしている。現在の立命館は一時金カット以来の不団結を責任問題も明確にして解決しなければならない。そして茨木問題で積立金を使い果たす危険に追い込まれ、毎年30億円超える支出増に迫られているにもかかわらず「学内要求」に応えるとして、「食に関する学部」設置に関する構想も浮上しているが、実行に移されれば赤字学部になる危険がある。そのような時に何の議論もなく「アジアゲットウエイ―学部」「九州北部佐賀県に新たな附属校」など、よほど教学的・財政的に精密な検討なしに軽軽に実施に移すべきものではない。
長田理事長、川口総長、森島専務の前半は、川本前理事長が振りまいた混乱と学園構成員の間に挟まれ右往左往しながら結局、後継者指名した川本擁護で動き、問題を解決できず矛盾深めた。
続いて「名誉回復」とばかりに飛びついた茨木キャンパス問題では、サッポロビール、とりわけ竹中工務店などのゼネコンに振り回され、その食い物になり、今後とも学園キャンパス3分割による不便に遭遇するとともに、毎年30億円超える財政支出増に苦しむことになった。
そして今回は、安倍政権の対外政策、文教政策に直結し、そのモデルとして動かされ利用されるとともに、麻生グループの不良債権を引き取らされる危険が生まれている。こうしたことを許せば別府の国際学生交流センターの引き取り、さらに文部科学省や外務省の天下り教員の引き受けなど、次々と押し付けられる危険が生じることは明確である。川口総長は総長退任後、どこへ行くのだろうか。
立命館人は自分や自分の学部の、個々の利害に目がくらみ、大局を見失い、長田理事長や川口総長、森島専務の誘惑にのって、学園が時の政府に迎合する学園へ堕落していくことを無批判に黙認したり、ましてやその推進に手を貸したりしてはならないだろう。
川本時代の評価などを含めて学園政策のここの問題に対する意見の相違を横に置き「政府の思惑や政治家の利害で動かされる大学にしてはならない」の一点で団結して臨み、10月の総長選挙に向かって共同して闘うようにしなければならないだろう。
もう少し調査してから書こうと思っていたが、本日7月30日からサマーレビューが開始される。そこでAUCや東明館のことが報告議論されるとのことなので現時点で判明している範囲で書いた。いずれにしても今、立命館は重大な岐路に立っている。学園関係者の奮起をお願いしたい。
以上。