NO74 学校法人立命館の理事長選挙の結果について
2017年7月29日 元立命館総長理事長室室長・ジャーナリスト 鈴木元
7月21日に開催された学校法人立命館(以下、立命館)理事会において、森島朋三氏が久岡康成氏を押さえて理事長に選ばれた。この問題に関して、私は立命館問題専用ブログで何回か書いてきたので、最小限の論評を記しておきたい。
(注)最近2週間の週間アクセス件数は、7月9日から15日は2149件、7月16日から22日は3034件であつた。立命館専用ブログは、インターネットで スズキ ゲンさんのブログ と検索すれば出てきます。開くと過去の分もすべて見ることができます。
(1)学園の正常化を願う人々の取り組みに敬意を表するとともに、改めて明らかになった二つの事。
1) 学園の正常化を願う人々の取り組みに敬意を表する
今回の理事長選挙にあたって、吉田美喜夫総長以下、学園の正常化を願う人々が学外理事を始めとする関係者に対して、学園の危機的状況を打開するために「学園正常化・教学優先・団結の回復」を訴えて行動した。その結果、この間学園に混乱と不団結を持ち込んだ長田豊臣理事長の相談役(理事)就任を許さない成果を収めたことについて、敬意を表するとともに関係者の確信としていただきたい。
私は2012年に「立命館の再生を願って」(風涛社)を出版して以来、現在の日本の私立学校法人の最大の問題は理事会にあり、その改革が重要であることを具体的に提起してきた。しかし立命館をはじめ大半の学校法人では総長(学長)・学部長選挙には相当な力を入れて取り組んできたが、よほどの腐敗・汚職問題等が、社会的に明るみにならない限り、理事ならびに理事長選挙に力を入れた取り組みはほとんどなされてこなかった。
今回、戦後の1949年に、末川博総長が「学内優先・教学優先」を掲げて学部長理事制度を導入した時以来、初めて本格的に理事長選挙が取り組みまれ、今後の改革の取り組みの一歩が築かれた。これを契機に継続的に取り組まれることが期待されている。
2)立命館の理事会構成の異常さが、改めて明らかになる
立命館の理事(総数41名)の構成において、学内において選挙で選ばれている総長(理事)と学部長理事(14名)は合わせて15名。立命館が立命館大学と立命館アジア太平洋大学(APU)と二つの大学で構成されているとしても全体の過半数にも満たない異常な構成になっている。改めて「教学優先の原則」「学内優先の原則」に基づいて学園を運営するため、学内の選挙で選ばれた理事が、理事会総数の過半数となるように改革する粘り強い取り組みが必要であろう。
3)学外理事・「任命制理事」との合意形成の重要性
2007年に長田理事長・森島朋三専務理事と言う体制が出来て以来10年になる。大阪茨木キャンパス建設問題をはじめとする様々な問題で両名は学内では全く孤立した状況となって来た。今回の理事長選挙にあたっても彼らが考えた森島理事長構想を総長(理事)・学部長理事は支持しなかった。学園の正常化をめざす理事長の誕生ための焦点は、学外理事・「任命制」理事のどれだけ多数の人々が吉田総長とともに動くかどうかであった。そして正常化をめざす人々の取り組みも学外理事の人々との協力協同をいかに実現できるかにかかっていたことは明確であった。
(2)学園の将来を考え、反森島で久岡康成氏を総長候補として擁立に動いた川本前理事長
川本八郎前理事長は、2007年の長田理事長・森島専務体制確立の中心となって動いた。しかし両名が大阪茨木キャンパス建設で動き出して以降「既存学部の移転のために400億円もの資金を使い、その維持管理のために新たに毎年30億円もの経費をつぎこむなどは馬鹿げている」と批判していた。その情報を得た私は何回となく川本前理事長に面談を申し込み「彼等を推挙したのは貴方です。貴方の責任で『私も顧問を降りるから君たちも降りるべきだ』と学外理事の協力も得て彼らを辞任させるべきである」と説得したが、川本氏は長田・森島両氏の批判は口にするものの、辞任への行動は取らなかった。
しかし、今回の理事長選挙にあたって川本前理事長は「まともに寄付も集めず、金ばかりを使う森島専務のような人間が理事長になれば立命館はつぶれる」と自分が推挙した森島専務の理事長就任に公然と反対し、元副総長・法学部長・図書館長であった久岡康成氏を理事長候補として推挙して行動した。
吉田総長ならびに各学部長は学外理事とも統一できる人物として久岡氏を理事長候補とするとともに学外理事の人々にも働きかけた。学内外関係者の中には一部であったとはいえ「なぜ川本氏の行動を是認するのか」「久岡氏は長田・森島体制の下で行動してきた人物ではないか」と批判的な人もいた。今回の焦点は推薦者川本氏の評価でもなければ、久岡氏の過去の言動が適切であったかどうかではない。「森島専務を理事長にするのか、それを止めるのか」という大局観に基づく判断が必要であり「小異を捨てて大同につく」という見地での判断が求められていたのである。
ところで学園正常化を願う人々の中に、学外理事の人々を敵視するような考えはなかっただろうか。今回の選挙を通じて始めて学外理事の人と語ることになった人が多いと推察される。そして「意外にも話が通じた」と感じた方も居られる。要するに日常的に接触し世間話程度のことも話していなたったためである。今回の選挙にあたって森島専務が学外理事の大半を入れ替えなければならなかったのも自分の意向通りにならないと判断したからである。学外理事の方の大半は本学卒業生である。学部長理事の人を先頭に学部・部門別校友会活動を通じて、もっと日常的に対話・交流する努力を積み重ねることも今回の教訓として進める必要がある。
(3)理事長選挙にあたって、森島専務は、なりふり構わず学外理事の入れ替えを行った
川本氏や学部長理事などの学外理事への働きかけは一定の効果があるかに見えたが、森島専務は理事・理事長選挙を前にして、かつて川本氏が推薦した学外理事を一掃し入れ替えた。
すなわち7月7日14日の理事会において、校友会からの推薦者2名、附属校同窓会からの推薦者1名、学外評議員からの5名、総長・理事長推薦枠10名の内の学外者2名、その大半の人々は川本前理事長に推薦されて理事に就任していたが、森島専務ならびに長田理事長は、色々な理屈を付けて、それらの人々に退任を求め、9名(10名枠の中の2名の内1名を変更)を長田理事長(・森島専務)の推薦者と入れ替えた。そのため学園正常化を願う吉田総長(理事)や学部長理事の人々、そして川本前理事長の学外理事への説得も効果を発揮することができなかった。
2016年1月に吉田総長が誕生した時、私は「彼らは総長選挙で負け、理事長選挙でも敗れれば、取り返しがつかないことになると判断し、彼らの今後の最大の取り組は次期、理事長選挙である。そのためにあらゆることをやってくるだろう。学園正常化を願っている人々も2017年の理事長選挙に標準を合わせて奮闘する必要がある」と提起した。
その後、常任理事会では教職大学院、食科学部、AIUとの共同学位学部、100分授業などの課題が真剣に延々と議論されてきた。その間、長田理事長、森島専務等は、そうした議論を横目で見ながら、2017年の理事・理事長選挙を最大の課題として理事の入れ替えを含めて系統的に根回し準備し、理事長選挙の直前7月7月14日の理事会において9名の学外理事の入れ替えを行い勝利を決定的にした。
私は1年ぐらい前から、このブログにおいても「長田理事長や森島専務の政策を批判するだけではなく、賛否の議決を明確にする必要がある。そうでなければ学外理事の人々は学内で長田理事長や森島専務が批判にさらされているとの認識に至らない。反対の態度を明確にしたうえで、それを踏まえて長田・森島両名の解任決議を出す必要がある」「例え一回の提案で採択されなくとも、繰り替えして提出して根負けに追い込む必要がある」と提起してきた。彼等には大学の使命である教育・研究に関する執行権は事実上無いのであるから、繰り返しの解任動議には追い詰められていく。そして次期理事・理事長選挙までに、それを実現しておかないと学外理事の推薦権を活用して居直られる危険があると書いてきた。残念ながら私の予見通りになった。
今回の理事・理事長選挙において「話し合いでまとめ、対決選挙にしない」との努力が積みかねられてきた。その中で長田理事長の相談役(理事)構想も崩れたので、理事長問題もまとまるのではないかとの予想もあった。しかし森島という人物は、そのような常識的な考えで行動する人間ではなく、自分が理事長になるために、理事長選挙(21日)直前の7月7日14日の理事会において周到に準備してきた学外理事の入れ替えを行ったのである。今回の理事長選挙の総括に関しては、この1ヵ月ばかりの事ではなく立命館の寄付行為の見直しを含めて少し長く深い視野で総括をする必要が有るだろ。
なお7月7日の理事会において長田理事長は「お前らは・・全共闘か、・・もう一度、左翼大学にするのか・・」などの下品な言い方で正常化を願う人々を攻撃した。こうした反共分裂攻撃にひるまないことも大切である。
(4)前代未聞の特異な理事長の誕生
森島朋三理事長が誕生した。立命館の100年歩越える歴史の中でまったく特異な理事長
の誕生である。NO73で記したことであるが、①2007年に専務理事に就任して以来、長田前理事長と共に学園に混乱と不団結、財政困難をもたらしてきただけで、立命館をどのようにするのかという理念・方針を学園構成員にも社会的にも語れない人物が学園の経営責任者として登場した。②教育・研究を使命・目的とする大学において、全学構成員の選挙によって選ばれた教学の最高責任者である総長ならびに学部教授会を基礎に職員、学生も参加した選挙で選ばれた学部長に支持されない理事長が誕生したのである。
長田前理事長でも誕生時には、内心は分からないが全学部長の支持の下に発足した。その後の彼の言動を見て多くの学部長理事が不支持に変わったのである。発足時から選挙で選ばれた総長・学部長から支持されない人物が理事長になる等は立命館の100年を越える歴史上前代未聞であるだけではなく、おそらく全国の学校法人でも例のないケースであると推察される。
大学の目的である教育研究を推進・執行するのは総長(理事)、ならびに学部長理事である。これらの人々の支持が得られない理事長など「百害あって一利なし」と言える。例え学外理事から推挙されても辞退すべきであるが、彼は逆で「理事長になりたい」という権力欲だけで学外理事を入れ替え巻き込み、理事会の多数派を形成し理事長に成りあがったのである。
森島理事長は、そう遠くない時期に教育研究機関である立命館の発展を願う圧倒的多数の構成員との間で矛盾が噴き出すだろう
(6)久岡康成副理事長・上田寛専務の言動に注視し、是々非々主義で対応を
今回、久岡康成氏が副理事長、上田寛氏が専務と言う体制が決まった。これも異常である。職員系列の森島理事長の下にそれを支えるのが森島理事長よりはるかに年長で、いずれも学部長、副総長、図書館長の経歴を持つベテラン教員である。長田理事長は森島専務が教員とりわけ学部長からまったく信頼を得ていないことから上田氏を副理事長に据えて森島理事長(鎧)の上の「衣」のような役割を果たさせようと構想した。森島理事長は森島チルドレンの職員系列の専務理事に置いても機能しないと分かっていた。しかし教学部、国際部を担当してきて森島専務に批判的であった大島秀穂理事を専務に登用する度量は無かった。そこで理事会において理事長選挙同様に上田対大島の対決選挙として上田氏を専務に選出した。その上に大島氏を無任所理事とした。この男が如何に肝っ玉が小さく姑息であるかを改めて示した。そして自分の補佐役として副理事長に久岡氏を推挙した。
今後、久岡副理事長、上田専務の両名は森島理事長の単なる「防波堤」役になるのか、教学に精通した教員出身の副理事長ならびに専務として、森島理事長の横暴を制御する役割を果たすのか、全学は日々注視して見守ることになるだろう。ただ注意すべきことは思い込みで両名に対してのレッテル貼りをすることから対応するのではなく、その具体的な姿勢・言説・行動に対して是々非々で臨み森島理事長を孤立させていく必要があるだろう。
(7)最後に
今回の理事長選挙の結果を知って、多くの教職員が「なぜ森島理事長なのか」と不信の
驚きを持つと同時に、一部には「どうぞお好きなように」と学園の運営・将来に関してニヒルに考える人もいるだろう。それこそ森島理事長らの思う壺である。また正常化を願う人々の中には「3年後のリターンマッチだ」と思っている人々もいる。しかし3年もすれば森島理事長の職員系列への支配力は固まる危険がある。また森島理事長は財政権限を活用し、APU、附属校、各学部、機構、部課に対して統制力を強めたり、利益誘導に巻き込む危険がある。一つ一つの局面で批判し学園の正常化を願う人々に依拠して「任命制理事」ならびに学外理事の中での支持を広げていく必要がある。
なお、以前にも記したが森島専務(当時)が「経理規程」において理事長の決済規程を「1億円以上 」としたことについて責任を追及するとともに、撤回・改訂させる必要があるだろう。
森島理事長就任にあたっては、まず川本前理事長が公言していたように「総長と議論し、意見が合わない場合は、最終的には総長に従う」ことを公約、所信表明で明確にさせることが、全学合意を進めるうえで重要である。あわせて2007年に専務理事に就任して以来、大阪茨木キャンパス取得など学園に混乱・不団結と損失をもたらしてきた彼の罪を改めて追及し、学外理事との合意も実現し早期の退任に追い込んでいかなければならないだろう。
以上
鈴木元。立命館総長理事長室室長、大阪初芝学園副理事長、中国(上海)同済大学アジア太平洋研究センター顧問教授、JICA中国人材アドバイザリー、私立大学連盟アドミニストレ―タ研修アドバイザリーなどを歴任。
現在、日本ペンクラブ会員、日本ジャーナリスト会議会員、かもがわ出版取締役、国際環境整備機構理事長、京都高齢者大学校幹事会副代表。
『像とともに 未来を守れ』(かもがわ出版)『立命館の再生を願って 正・続』(風涛社)『もう一つの大学紛争』(かもがわ出版)『大学の国際協力』(文理閣)など著書多数。
2017年7月29日 元立命館総長理事長室室長・ジャーナリスト 鈴木元
7月21日に開催された学校法人立命館(以下、立命館)理事会において、森島朋三氏が久岡康成氏を押さえて理事長に選ばれた。この問題に関して、私は立命館問題専用ブログで何回か書いてきたので、最小限の論評を記しておきたい。
(注)最近2週間の週間アクセス件数は、7月9日から15日は2149件、7月16日から22日は3034件であつた。立命館専用ブログは、インターネットで スズキ ゲンさんのブログ と検索すれば出てきます。開くと過去の分もすべて見ることができます。
(1)学園の正常化を願う人々の取り組みに敬意を表するとともに、改めて明らかになった二つの事。
1) 学園の正常化を願う人々の取り組みに敬意を表する
今回の理事長選挙にあたって、吉田美喜夫総長以下、学園の正常化を願う人々が学外理事を始めとする関係者に対して、学園の危機的状況を打開するために「学園正常化・教学優先・団結の回復」を訴えて行動した。その結果、この間学園に混乱と不団結を持ち込んだ長田豊臣理事長の相談役(理事)就任を許さない成果を収めたことについて、敬意を表するとともに関係者の確信としていただきたい。
私は2012年に「立命館の再生を願って」(風涛社)を出版して以来、現在の日本の私立学校法人の最大の問題は理事会にあり、その改革が重要であることを具体的に提起してきた。しかし立命館をはじめ大半の学校法人では総長(学長)・学部長選挙には相当な力を入れて取り組んできたが、よほどの腐敗・汚職問題等が、社会的に明るみにならない限り、理事ならびに理事長選挙に力を入れた取り組みはほとんどなされてこなかった。
今回、戦後の1949年に、末川博総長が「学内優先・教学優先」を掲げて学部長理事制度を導入した時以来、初めて本格的に理事長選挙が取り組みまれ、今後の改革の取り組みの一歩が築かれた。これを契機に継続的に取り組まれることが期待されている。
2)立命館の理事会構成の異常さが、改めて明らかになる
立命館の理事(総数41名)の構成において、学内において選挙で選ばれている総長(理事)と学部長理事(14名)は合わせて15名。立命館が立命館大学と立命館アジア太平洋大学(APU)と二つの大学で構成されているとしても全体の過半数にも満たない異常な構成になっている。改めて「教学優先の原則」「学内優先の原則」に基づいて学園を運営するため、学内の選挙で選ばれた理事が、理事会総数の過半数となるように改革する粘り強い取り組みが必要であろう。
3)学外理事・「任命制理事」との合意形成の重要性
2007年に長田理事長・森島朋三専務理事と言う体制が出来て以来10年になる。大阪茨木キャンパス建設問題をはじめとする様々な問題で両名は学内では全く孤立した状況となって来た。今回の理事長選挙にあたっても彼らが考えた森島理事長構想を総長(理事)・学部長理事は支持しなかった。学園の正常化をめざす理事長の誕生ための焦点は、学外理事・「任命制」理事のどれだけ多数の人々が吉田総長とともに動くかどうかであった。そして正常化をめざす人々の取り組みも学外理事の人々との協力協同をいかに実現できるかにかかっていたことは明確であった。
(2)学園の将来を考え、反森島で久岡康成氏を総長候補として擁立に動いた川本前理事長
川本八郎前理事長は、2007年の長田理事長・森島専務体制確立の中心となって動いた。しかし両名が大阪茨木キャンパス建設で動き出して以降「既存学部の移転のために400億円もの資金を使い、その維持管理のために新たに毎年30億円もの経費をつぎこむなどは馬鹿げている」と批判していた。その情報を得た私は何回となく川本前理事長に面談を申し込み「彼等を推挙したのは貴方です。貴方の責任で『私も顧問を降りるから君たちも降りるべきだ』と学外理事の協力も得て彼らを辞任させるべきである」と説得したが、川本氏は長田・森島両氏の批判は口にするものの、辞任への行動は取らなかった。
しかし、今回の理事長選挙にあたって川本前理事長は「まともに寄付も集めず、金ばかりを使う森島専務のような人間が理事長になれば立命館はつぶれる」と自分が推挙した森島専務の理事長就任に公然と反対し、元副総長・法学部長・図書館長であった久岡康成氏を理事長候補として推挙して行動した。
吉田総長ならびに各学部長は学外理事とも統一できる人物として久岡氏を理事長候補とするとともに学外理事の人々にも働きかけた。学内外関係者の中には一部であったとはいえ「なぜ川本氏の行動を是認するのか」「久岡氏は長田・森島体制の下で行動してきた人物ではないか」と批判的な人もいた。今回の焦点は推薦者川本氏の評価でもなければ、久岡氏の過去の言動が適切であったかどうかではない。「森島専務を理事長にするのか、それを止めるのか」という大局観に基づく判断が必要であり「小異を捨てて大同につく」という見地での判断が求められていたのである。
ところで学園正常化を願う人々の中に、学外理事の人々を敵視するような考えはなかっただろうか。今回の選挙を通じて始めて学外理事の人と語ることになった人が多いと推察される。そして「意外にも話が通じた」と感じた方も居られる。要するに日常的に接触し世間話程度のことも話していなたったためである。今回の選挙にあたって森島専務が学外理事の大半を入れ替えなければならなかったのも自分の意向通りにならないと判断したからである。学外理事の方の大半は本学卒業生である。学部長理事の人を先頭に学部・部門別校友会活動を通じて、もっと日常的に対話・交流する努力を積み重ねることも今回の教訓として進める必要がある。
(3)理事長選挙にあたって、森島専務は、なりふり構わず学外理事の入れ替えを行った
川本氏や学部長理事などの学外理事への働きかけは一定の効果があるかに見えたが、森島専務は理事・理事長選挙を前にして、かつて川本氏が推薦した学外理事を一掃し入れ替えた。
すなわち7月7日14日の理事会において、校友会からの推薦者2名、附属校同窓会からの推薦者1名、学外評議員からの5名、総長・理事長推薦枠10名の内の学外者2名、その大半の人々は川本前理事長に推薦されて理事に就任していたが、森島専務ならびに長田理事長は、色々な理屈を付けて、それらの人々に退任を求め、9名(10名枠の中の2名の内1名を変更)を長田理事長(・森島専務)の推薦者と入れ替えた。そのため学園正常化を願う吉田総長(理事)や学部長理事の人々、そして川本前理事長の学外理事への説得も効果を発揮することができなかった。
2016年1月に吉田総長が誕生した時、私は「彼らは総長選挙で負け、理事長選挙でも敗れれば、取り返しがつかないことになると判断し、彼らの今後の最大の取り組は次期、理事長選挙である。そのためにあらゆることをやってくるだろう。学園正常化を願っている人々も2017年の理事長選挙に標準を合わせて奮闘する必要がある」と提起した。
その後、常任理事会では教職大学院、食科学部、AIUとの共同学位学部、100分授業などの課題が真剣に延々と議論されてきた。その間、長田理事長、森島専務等は、そうした議論を横目で見ながら、2017年の理事・理事長選挙を最大の課題として理事の入れ替えを含めて系統的に根回し準備し、理事長選挙の直前7月7月14日の理事会において9名の学外理事の入れ替えを行い勝利を決定的にした。
私は1年ぐらい前から、このブログにおいても「長田理事長や森島専務の政策を批判するだけではなく、賛否の議決を明確にする必要がある。そうでなければ学外理事の人々は学内で長田理事長や森島専務が批判にさらされているとの認識に至らない。反対の態度を明確にしたうえで、それを踏まえて長田・森島両名の解任決議を出す必要がある」「例え一回の提案で採択されなくとも、繰り替えして提出して根負けに追い込む必要がある」と提起してきた。彼等には大学の使命である教育・研究に関する執行権は事実上無いのであるから、繰り返しの解任動議には追い詰められていく。そして次期理事・理事長選挙までに、それを実現しておかないと学外理事の推薦権を活用して居直られる危険があると書いてきた。残念ながら私の予見通りになった。
今回の理事・理事長選挙において「話し合いでまとめ、対決選挙にしない」との努力が積みかねられてきた。その中で長田理事長の相談役(理事)構想も崩れたので、理事長問題もまとまるのではないかとの予想もあった。しかし森島という人物は、そのような常識的な考えで行動する人間ではなく、自分が理事長になるために、理事長選挙(21日)直前の7月7日14日の理事会において周到に準備してきた学外理事の入れ替えを行ったのである。今回の理事長選挙の総括に関しては、この1ヵ月ばかりの事ではなく立命館の寄付行為の見直しを含めて少し長く深い視野で総括をする必要が有るだろ。
なお7月7日の理事会において長田理事長は「お前らは・・全共闘か、・・もう一度、左翼大学にするのか・・」などの下品な言い方で正常化を願う人々を攻撃した。こうした反共分裂攻撃にひるまないことも大切である。
(4)前代未聞の特異な理事長の誕生
森島朋三理事長が誕生した。立命館の100年歩越える歴史の中でまったく特異な理事長
の誕生である。NO73で記したことであるが、①2007年に専務理事に就任して以来、長田前理事長と共に学園に混乱と不団結、財政困難をもたらしてきただけで、立命館をどのようにするのかという理念・方針を学園構成員にも社会的にも語れない人物が学園の経営責任者として登場した。②教育・研究を使命・目的とする大学において、全学構成員の選挙によって選ばれた教学の最高責任者である総長ならびに学部教授会を基礎に職員、学生も参加した選挙で選ばれた学部長に支持されない理事長が誕生したのである。
長田前理事長でも誕生時には、内心は分からないが全学部長の支持の下に発足した。その後の彼の言動を見て多くの学部長理事が不支持に変わったのである。発足時から選挙で選ばれた総長・学部長から支持されない人物が理事長になる等は立命館の100年を越える歴史上前代未聞であるだけではなく、おそらく全国の学校法人でも例のないケースであると推察される。
大学の目的である教育研究を推進・執行するのは総長(理事)、ならびに学部長理事である。これらの人々の支持が得られない理事長など「百害あって一利なし」と言える。例え学外理事から推挙されても辞退すべきであるが、彼は逆で「理事長になりたい」という権力欲だけで学外理事を入れ替え巻き込み、理事会の多数派を形成し理事長に成りあがったのである。
森島理事長は、そう遠くない時期に教育研究機関である立命館の発展を願う圧倒的多数の構成員との間で矛盾が噴き出すだろう
(6)久岡康成副理事長・上田寛専務の言動に注視し、是々非々主義で対応を
今回、久岡康成氏が副理事長、上田寛氏が専務と言う体制が決まった。これも異常である。職員系列の森島理事長の下にそれを支えるのが森島理事長よりはるかに年長で、いずれも学部長、副総長、図書館長の経歴を持つベテラン教員である。長田理事長は森島専務が教員とりわけ学部長からまったく信頼を得ていないことから上田氏を副理事長に据えて森島理事長(鎧)の上の「衣」のような役割を果たさせようと構想した。森島理事長は森島チルドレンの職員系列の専務理事に置いても機能しないと分かっていた。しかし教学部、国際部を担当してきて森島専務に批判的であった大島秀穂理事を専務に登用する度量は無かった。そこで理事会において理事長選挙同様に上田対大島の対決選挙として上田氏を専務に選出した。その上に大島氏を無任所理事とした。この男が如何に肝っ玉が小さく姑息であるかを改めて示した。そして自分の補佐役として副理事長に久岡氏を推挙した。
今後、久岡副理事長、上田専務の両名は森島理事長の単なる「防波堤」役になるのか、教学に精通した教員出身の副理事長ならびに専務として、森島理事長の横暴を制御する役割を果たすのか、全学は日々注視して見守ることになるだろう。ただ注意すべきことは思い込みで両名に対してのレッテル貼りをすることから対応するのではなく、その具体的な姿勢・言説・行動に対して是々非々で臨み森島理事長を孤立させていく必要があるだろう。
(7)最後に
今回の理事長選挙の結果を知って、多くの教職員が「なぜ森島理事長なのか」と不信の
驚きを持つと同時に、一部には「どうぞお好きなように」と学園の運営・将来に関してニヒルに考える人もいるだろう。それこそ森島理事長らの思う壺である。また正常化を願う人々の中には「3年後のリターンマッチだ」と思っている人々もいる。しかし3年もすれば森島理事長の職員系列への支配力は固まる危険がある。また森島理事長は財政権限を活用し、APU、附属校、各学部、機構、部課に対して統制力を強めたり、利益誘導に巻き込む危険がある。一つ一つの局面で批判し学園の正常化を願う人々に依拠して「任命制理事」ならびに学外理事の中での支持を広げていく必要がある。
なお、以前にも記したが森島専務(当時)が「経理規程」において理事長の決済規程を「1億円以上 」としたことについて責任を追及するとともに、撤回・改訂させる必要があるだろう。
森島理事長就任にあたっては、まず川本前理事長が公言していたように「総長と議論し、意見が合わない場合は、最終的には総長に従う」ことを公約、所信表明で明確にさせることが、全学合意を進めるうえで重要である。あわせて2007年に専務理事に就任して以来、大阪茨木キャンパス取得など学園に混乱・不団結と損失をもたらしてきた彼の罪を改めて追及し、学外理事との合意も実現し早期の退任に追い込んでいかなければならないだろう。
以上
鈴木元。立命館総長理事長室室長、大阪初芝学園副理事長、中国(上海)同済大学アジア太平洋研究センター顧問教授、JICA中国人材アドバイザリー、私立大学連盟アドミニストレ―タ研修アドバイザリーなどを歴任。
現在、日本ペンクラブ会員、日本ジャーナリスト会議会員、かもがわ出版取締役、国際環境整備機構理事長、京都高齢者大学校幹事会副代表。
『像とともに 未来を守れ』(かもがわ出版)『立命館の再生を願って 正・続』(風涛社)『もう一つの大学紛争』(かもがわ出版)『大学の国際協力』(文理閣)など著書多数。