スズキ ゲンさんのブログ

立命館の再生を願って

NO37 立命館の常任理事ならびに関係各位へ

2014-08-07 10:20:44 | 立命館の再生を願って
NO37 常任理事並びに関係各位へ
立命館を、戦争する国家づくりを進める安倍政権のお先棒を担ぐ大学に成り下がりさせ、大学の存立基盤を否定するのか
    
2014年8月6日 ジャーナリスト・元立命館総長理事長室室長 鈴木元
目次
はじめに
(1) 立命館が主催の記者会見で発表し、マスコミが持ち上げたのである
(2) 安倍政権と財界のオーストラリア戦略とオーストラリア政府の国家戦略に呼応
(3) 安倍政権の対外政策への追随は、第二次世界大戦前の立命館の誤りを再現する危険がある
(4) なし崩し的に既定事実のようにANUとの提携による新学部設置、東明館問題を進めることを許してはならないだろう。
1)ANUとの「共同学位学部新設」に関わって
2)東明館中高等学校の問題について
さいごに 学園正常化を目指して、10月の総長選挙を教職員・学生・院生は団結して臨む必要があるだろう

はじめに
7月下旬、突然、オーストラリア国立大学(ANU)との提携による新しい学部の設置、ならびに佐賀県の東明館中・高等学校の問題が浮上した。しかも7月30日―31日にかけて開催されるサマーレビューや、その後に行われる31日の常任理事会においても議題にされるとの情報を得た。
そこで私は、急遽、手元にある材料で主要な論点について記述し7月30日の朝に「常任理事並びに関係各位へNO36」として「立命館学園を安倍政権の対外政策の道具や政治家の食い物にさせてはならない」を発信した。
 7月28日の教職員組合と理事会の業務協議会の席上、組合側から理事会に対して「日本経済新聞」に掲載された川口総長の発言を巡ってやり取りがあった。
 その中で組合は「今まで学内で議論されもせず、決定もされてもいないこと」を川口総長が記者会見において「立命館の方針」として語っている事に対する質問と抗議の意思が表明された。
川口総長は「私は、そのような事は語っていない。『日本経済新聞』が書きすぎている」との主旨の発言を行った。それに対して組合代表は「それであれば、新聞社に抗議し撤回求める必要がある」と総長に求めた。川口総長は「今までそのような事をしていない」「記者はリスクを負って書いている」と「日本経済新聞」に責任を転嫁させて突っぱねた。
そこでNO36を補足する形で、この二つの問題に関してのいくつかの補足点を述べることにする。
 (1)立命館が主催の記者会見で発表し、マスコミが持ち上げたのである
今回の「日本経済新聞」の記事は、「日本経済新聞」側によるすっぱ抜きでも、学内の匿名の人物による情報提供に基づくものでもない。立命館が自ら記者会見の案内を記者クラブに送り、立命館東京オフィスで行ったものあり、12社が参加した。当初に取り上げたのは「日本経済新聞」だけであった。
続いて7月31日付けの「読売新聞」が「人材育成 海外大学との連携」「立命大 日豪共同の学部設置」「東海大 米国内への編入制度」と報じた。そこではANUとの関係について「日本経済新聞」より詳しく、「日本の大学設置基準のほか、豪州の基準を満たすことで、両大学の卒業資格を得られるようにする」「1学年の定員は日本人学生が100名、外国人学生100名を想定している」との報道を行った。これらは立命館側の川口総長等が語らない限り報道出来ない内容である。しかしそれは立命館を批判したり、追及したりするものではなく、むしろ評価し持ち上げた記事であった。
(2)安倍政権と財界のオーストラリア戦略とオーストラリア政府の国家戦略に呼応
NO36でも記したように、安倍首相のオーストラリア訪問に際して多数の財界人が同行した。それは安倍首相自身が語り、マスコミも報道しているように、日本の財界として鉄、銅、石炭などオーストラリアの鉱物資源を安定的に確保すること、そのために日本の企業による鉱山開発などの新たな投資をスムーズに行えるようにすることが緊急の課題となっているからである。
一方、オーストラリア側は、「英語教育」を売りに大学における留学生確保を国家的戦略的産業分野として打ち出しており、同国の学生数の内、留学生が25%を占めるなど先進国の中でも留学生比率が極めて高くなっている。今回の安倍首相の訪豪にあたって同行した大学人は川口総長のみであった。
その川口総長は、安倍首相の立会いの下、オーストラリア国立大学(ANU)と共同学位を出せる学部を設置するとの方向の協定書に署名してきたのである。日本の財界の立場からの報道を行う「日本経済新聞」が真っ先に、好意的に報道したのは当然である。川口総長のANUとの協定書調印は安倍政権の外交政策のお先棒を担ぐ役割を果たしたのである。
今後、文部科学省などは、国際研究・教育プログラム審査などで立命館に多少の便宜を払いながら「立命館も一歩踏み切った」と、他大学に働きかける例として立命館を持ち出すであろう。それに勢いをつける為に「『日本経済新聞』だけでは」と7月31日付けの「読売新聞」でも報じたと視るべきであろう。
(3)安倍政権の対外政策への追随は、第二次世界大戦前の立命館の誤りを再現する危険がある
ところで安倍首相の「地球儀を俯瞰した外交」でオーストラリアを含め五大陸を巡る外交訪問にたいして、マスコミ等では「対中国包囲網のための努力」等と報じたりしているが馬鹿げている。日本と中国は隣国であり、その国情や国家戦略において相違があり、互いに批判し合ったとしても、どのように戦略的互恵関係を確立するかで、双方ともに外交的努力をしなければならない。
そもそも今やアメリカに次ぐGDPを持つにいたった中国を包囲するなど出来るはずもない。アメリカでさえ最早、かつてのソビエト包囲網のようなことを中国に対して行うことは出来ず、どう米中間に戦略的互恵関係を確立していくか、その中で中国がアメリカの国益に反することや、戦後の国際秩序を否定することに対して、どのように対処するかと模索しているのである。
ましてや隣国であり、2000年来交流してきて、今や輸出・輸入の第一位となっている中国に対して、日本が、包囲網など確立出来ない。もしも安倍首相がそのような道を取ろうとするなら、それこそ日本の国益に反する行為である。川口総長や、長田理事長、森島専務は安倍首相等などの政権関係者から、ちやほやされることを「自分たちの能力」だと自慢げにはしゃいでいる。
しかし時の政権に無批判に追随し、そのお先棒を担ぐことは立命館の存立基盤自身を掘り崩していく危険があることを厳しく直視しなければならない。
京都大学では政府・文部科学省の介入にも関わらず、全学構成員の創意を集めて、新総長を選出した。これは革新的伝統を誇る京都市民だけではなく、全国の大学人を励ます取組となった。これに対して川口総長の行動は反動勢力側から「よくやった」と褒められても、国民からは「最近の立命館はどうなっているだ、危ないなあ」と観られている。
7月1日、安倍内閣は「集団的自衛権」は「合憲である」との政府見解を閣議決定した。これに対して第二次世界大戦の痛苦の体験から教学理念を「平和と民主主義」と定めている立命館として厳しい批判的見解が求められた。
立命館平和ミュージアムの名誉館長である安斎育郎氏と現館長であるモンテ・カセム氏が批判の共同声明を出すにあたって、総長である川口氏に対して3名連名の共同声明にすべく申し入れたが彼は拒否した。立命館の恥だけではなく立命館の在り方を根底から破壊して行く第一歩にならない様に、立命館を構成する良識ある人々は立ち向かう必要がある。
戦前の立命館において、京都大学での「滝川事件」(注)で京大を退任せざるを得なった教員の大半(18名)を立命館大学が受け入れ「学問の自由」を求める全国の人々に大きな共感を得た。
(注)「瀧川事件」―京都帝国大学法学部教授であった瀧川幸辰氏が「刑法読本」や講演内容を根拠に、時の鳩山一郎文部大臣の指揮で休職処分に付されたのを契機に「学問の自由を守れ」の運動が起こった。しかし抗議した法学部教員の大多数が退官を余儀なくされた事件。戦前の日本がファシズム化していく象徴的事件。
しかし1931年、中国東北地方において日本軍が満州事変を起こし、続いて1932年、日本は植民地国家として「満州国」を立ち上げた。その当時、立命館は「満州国」からの資金提供で、現在の衣笠校地を購入し、立命館日満高等学校を立ち上げ(現在の理工学部の前進)、急速に日本のアジア侵略に迎合・追随する道にはまり込んだ。
その挙句の果てが在校生5000名の内、6-7割が学徒出陣し、少なく見積もっても1000名超える学生が戦死したのである。そして大学部(全員が20歳以上で徴兵の対象年齢)は閉鎖され、専門部(17歳から20歳)だけとされようとした時に敗戦を迎えた。
今、立命館は「戦争をする国家づくり」を進める安倍政権のお先棒を担ぐ大学に成り下がり、戦前と同様の誤りと危険な道に嵌りこむ事態に直面している。
もちろん戦前と戦後では世界の状況は根本的に異なっており、同じ形態のことが起こるわけでもない。しかし安倍政権の「集団的自衛権論」を批判せず、安倍政権の外交政策のお先棒を担ぐようなことをしておれば、再び、立命館は大学の存在の基盤自身失って行く危険がある。無関心が許される事態ではない。国民に依拠した立命館関係者の奮起を求めたい。
(4)なし崩し的に既定事実のようにANUとの提携による新学部設置、東明館問題を進めることを許してはならないだろう。
ところで今、学園運営として黙過できないことは、ANUとの提携による新学部設置も東明館問題も、まともに全学議論もせず、既定事実のようにことを進めようとしていることである。
常任理事会において質問や意見が出れば「まだ決めたわけではない、これから皆さんの意見を聞き対応を決めて行きたい」等と答弁している。しかしそもそもこのような新学部構想も北九州で新たな附属校や提携校を設けること自体が、学内の何処の機関でも議論も検討されてこなかった問題である。
2013年6月10日、7学部長が立命館の常任理事会運営で改善すべき課題について連名で声明をだした。そこでは①報告なのか議題なのか曖昧模糊として進められているために、何が決まったのかさえ明確になっていないこと、②情報の開示が遅く適切な議論に参加が出来ないこと③見通しが大きく狂った時は誠実な態度で原因および責任の所在を明らかにそして臨むべき④理事長の専任決裁に関する規定は見直すべき等である。まさに今回の二つの課題が、これらに該当する。
1)ANUとの「共同学位学部新設」に関わって
NO36でも提起したが、オーストラリアを代表するANUとの教学提携、共同学位プログラム一般に反対する人はいないだろう。しかしアメリカン大学との共同学位プログラムでも大変な苦労してきた。その教訓、成果と問題点などを検討しながら、新しいプログラムを検討しなければならない。にもかかわらずまともな議論も検討も無く「先に提携ありき」でことを進めれば必ず混乱が起こる。ましてや共同学位プログラム一般に賛成することと、新しい学部を創設することは全く別の事である。
一体何を研究し教育する学部で学部名称はどうなるの、既存の国際関係学部やAPUとの関係はどうするの等の教学的問題。1学年200名でどうして採算の合う学部とすることが出来るのか、外国人100名の学費・奨学金はどうするのか、設置経費の財源は、などの財政的展望。2017年にOICで開設すると言うが、そのような学部を構想したキャンパス整備にはなっていないが、いまからどうするのか。留学生100名は2015年に開設する国際寮を活用すると言うが、2015年、2016年に入学する留学生が既に入居しているが、その問題はどうするか・・。要するに矛盾だらけのOIC設置計画の上にさらに何の構想も想定もしていなかった共同学位学部の設置を川口総長は安倍首相立会いの下で、かつてに国際約束してきたのである。混乱を広げないためには一旦白紙に戻す必要がある。
にもかかわらず7月31日の常任理事会おいて「「ANUとの共同学士課程構想具体化委員会の設置について」の提案が出された。さすがに時期尚早ということになり、”具体化”の前の「教職員に設置の趣旨と意見集約を求めるためのワーキングを設置する」ということにしたそうだ。しかし「総長の国際約束でもあるし」とワーキングで川口総長の「約束」の方向での案が提案され、なし崩し的に実行する危険がある。
2)東明館中高等学校の問題について
「立命館の退職者(慈道元APU副学長、小畠元立命館守山高校校長、前田元総務部次長)が自発的に就任した問題である」と言っているかと思えば、川崎一貫教育担当常務、是永APU学長(理事)、笠原理工学部長(理事)、里見生命科学部長(理事)が東明館学園の理事に就任(8/9名)している。これでは誰が見ても事実上、立命館の方針として東明館学園との提携を進めていることは明瞭である。
これらの理事は常任理事会において議論された上で派遣が決定されたものではない。長田理事長が個別に呼び、理事就任を説得して了解を取った上で、理事会において「報告」されたのである。それぞれの人は報告された理事会に出席して、はじめて自分以外に誰が理事に就任したのか、9名の理事の内8名まで立命館関係者が就任したことを知った。要するに長田理事長により限定された情報提供によって説得されたのである。
学校教育校の改悪で行われた教授会の審議権否定だけではなく教授会によって選出されている学部長理事制度の否定でもある。
ところで長田理事長などは「東明館との関係は、今後、議論し検討していただく」などと、その場限りの事を平気で言っている。しかし東明館学園のホームページを見れば、慈道理事長の談話として「この度、東明館学園は、立命館大学ならびに立命館アジア太平洋大学の協力を得て、未来を創造するたくましい人材を育成する共同の目的を推進することになりました」と記載している。同じくホームページには7月17日付の「学校からの連絡」として9月20日に「立命館&東明館デー開催」と告知している。
長田理事長や川口総長、森島専務等にとっては、いまや教授会での審議はおろか常任理事会での審議・議決なども無視し理事長や総長決裁で「なんでも進められる」との思いで事を進め始めているのである。
さいごに 学園正常化を目指して、10月の総長選挙を教職員・学生・院生は団結して臨む必要があるだろう
にもかかわらず学部長理事が川口総長などの「まだ決まっていないことなので」との答弁などを「根拠」にして、ANUなどを学部教授会に対してまともに報告し審議を求めた学部は少なく(東明館問題に至っては、ほとんど報告されていない学部教授会もある)、事実上、長田理事長、川口総長、森島専務等の専断的学園運営を黙認するような状態になっていることは学園運営の自殺行為になる。6学部長によって常任理事会運営の改善を求めた精神をよみがえらせる必要がある。
学園構成員の総意に基づいて学園の運営を行うのではなく、10年に渡って次から次へと、学園に不団結と混乱を持ち込み、教職員のやる気をなくさせてきた現執行部を止めさせなければこうした事態の改善を図ることはできないだろう。そうした意味でも10月に行われる総長選挙は極めて重要である。この10年間の学園運営を総括し、長田理事長、川口総長、森島専務、そして川本名誉顧問の責任を追及して、学園執行部の刷新をはかる機会にしなければならないだろう。
                               
2005年の一方的な一時金一カ月カット以来、混乱に混乱を重ね、茨木キャパ問題でゼネコンの食い物にされた立命館。そして今回、安倍政権の外交政策の露払いを引き受け、政府の意向に従う大学に転落しようとしている立命館。
最近の10年間に立命館に奉職された教職員の皆さんは、最初の経緯から今日に至る問題を系統的に記して解明した拙著『立命館の再生を願って』(風涛社)『続 立命館の再生を願って』(風涛社)を是非購読して参考にしてください。




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