母残して逝きし和紙にて初めてのちぎり絵するも母に及ばず
晩年の母はちぎり絵をするのが楽しみでした。そのため沢山の色と種類の和紙が残っています。それを使っていつかしてみようと思っていたちぎり絵をやってみることにしました。短歌を書いて失敗したため墨を塗った色紙や短冊が沢山あるので、それに自分なりのデザインで貼ってみたものの大失敗・・・母の様にうまくいきません。絵を描くのは好きなのですが、全く勝手が違っていました。明日は剥がしてやり直しです。
家に籠り鬱々ひと日過ごしたり未知のウイルス迫る気配に
小中高の学校に「これから春休みまで休校」との要請が国から出て、学校関係はてんやわんやの大騒ぎだろうと思っていたやさきに、今日は、地域の公民館も３月いっぱい休館との知らせが届きました。ついに私の身近にも迫って来た感じで気が滅入ってしまい、何も手に着かず今日の雨のように鬱々として一日を過ごしました。世界に広がりつつあるこの未知なるウイルスとの戦いはいったいどうなっていくのでしょう。
壊れし故接着したるマイコップにかねのなる木が育ちて光る
気に入りだった私のコップをうっかり落として、二つに割ってしまいました。どうしても捨てられず、接着剤で二つをくっつけて何かに使うことにしました。考えた末、小さなかねのなる木を一本植えました。見事に育ち、一年経った今では３本の枝を広げてつやつや光っています。この木の花言葉は名前の通り「一攫千金」とか「幸福を招く」なので、私にも富や幸せが舞い込んでくるかもしれないとほくそ笑んでいます。
自転車にて撫育の巨大大根を持ちくれし友は九十二歳
今日は冷たい風が吹きましたが、その中を自転車で大根を持って来てくれた友がいます。彼女とは以前短歌会で仲良くしていましたが、４年ほど前に大学教授だった夫を突然亡くされ、ショックから短歌会をやめられてしまいました。ところが最近突然出合い、また親しくしています。今は独りで野菜を作って暮らしているとのことですが、９２歳でも元気でこんな立派な野菜が作れるなんて・・・ただただ驚きでした。
亡き君にごめんと言ひつつ削除押すパソコン写真整理する夜
終活として身の回りを整理しておかなくてはならないものがいっぱいあるのですが、その中の一つ「パソコンの中の写真整理」を急に思い付いてしました。しょうもないものはさっさと削除ボタンをクリック出来るのですが、消しておくべき思い出の人物はそうはいきません。心の中で「ごめんなさい」と言いながら勇気を出して削除しました。寂しいけれどこれですっきりして心の中が軽くなりました。
ザグザグにて僅か残れるコロナ菌の除菌グッズと焼き芋を買ふ
コロナウイルスが広がる中で遅ればせながら、対策用のグッズを買いに専門店のザグザグに行きました。予想通りマスクの棚はがら空きでしたがそばに漫画の描かれた７枚入りのものがあったのでそれにしました。消毒スプレイ、消毒用のエタノールの棚は皆無でしたが、僅かに残っていた除菌用のウエットタオル、ティッシュ、うがい薬等をようやくゲットすることが出来ました。勿論大好きな焼き芋も合わせて買って帰りました。
ワンカップの酒の空き瓶お洒落なるペン立てになる和紙貼りたれば
古はがき丸めて友禅和紙貼ればこれもお洒落な鉛筆キャップ
キッチンの隅に転がっていたワンカップの酒の空き瓶を捨てようとしてふと思い付きました。母手作りのペン立てを修繕したばかりだったのでこれで小さなペン立てを・・・・と。母が残していた和紙を出してどれにしようかと迷ったあげく私なりの配色で、黒無地と花柄の友禅和紙を貼って仕上げました。ついでに鉛筆のキャップも古はがきを斜めに巻いて友禅和紙を貼って作りました。どちらもなかなかお洒落に出来上がりました。
茎伸ばし葉を繁らせて福寿草庭にこがねの花びらこぼす
人参と見紛ふだらう福寿草花散り果てて葉のみ繁れば
今年は暖冬で春も早くやってくるようですが、我が家の庭先では早々と春を終えようとしている花があります。福寿草です。１月に葉よりも早く小さな丸い蕾を膨らませていましたが、いつの間にか葉が繁って黄色い花びらを散らせていました。福寿草の花はよく知られていますが、葉はあまり知られてないのではないでしょうか。実は人参の葉と間違えるほど良く似ています。
久々に小雨の中を「金曜会」の施設を訪ひて共に唄ひぬ
戴きし手作りの箸とこんにゃくに真直な人らの心が光る
私の居住近くに「社会福祉法人金曜会 ワクワクワーク」と言う施設があります。ここでは岡山県の知的障害者の方たちの作業支援や生活支援などを行っていて、１８歳から６０歳くらいの方が３０名近くおられます。頼まれた時に行って一緒に唄ったり、手遊びなどをします。今日は久々に小雨の中を訪問して楽しいひと時を過ごしました。みやげにこの会の人たちの真っ直ぐな心が籠った手作りのこんにゃくと箸を戴いて帰りました。
遠き日に母の作りし小物入れあれこれ傷みて直す雨の日
擦り切れしペン立ての縁貼り替える指先に伝ふ亡母の温もり
先日の母の作ってくれた８角形の箱に引き続き、これまた母が牛乳パックで作ってくれたペン立て、メガネ立て、釦入れ、針山のケースもすべて縁が擦り切れているのに気づきました。今日は出かけることも無かったので一日かけてすべてを修繕しました。ペン立ては汚れのシミがひどい中の部分も貼り替えました。直しながら何度も繰り返し触れたであろう母の指の温もりが私の指に伝わって来るような気がしました。
