わが車の免許返納にほっとする娘の貌に心足らへり
七十三歳で脳梗塞になるなんてビックリポンや羊年逝く
「新聞にあなたの手記を今読んだ」友の電話にビックリポンや
大病の淵にて受けし数多なる人の温みに感謝する夜
３月に脳梗塞発症、入院、治療、リハビリ、退院、車の免許返納・・・と短期間にめまぐるしい出来事に振り回され、人生観も変わるほどの忘れられない一年となりました。そこで、「さようなら２０１５」の記事募集に投稿したところ、運よく朝刊に載せていただきました。そのため久々に旧友から電話があり、懐かしい声を聞くことも出来ました。いろいろと悩んだ日々もありましたが、全てに感謝しながら今年を終えようとしています。
孫子らと一足早いお正月呼ばれて行けば溢るる馳走
形よく鉢に盛られし数々のさしみにプロのセンスが光る
手作りの料理を囲み親族（うから）らとほつこり過ごす今年の年末
年玉を抱きて早々孫たちは正月終へて京都へ帰る
いろいろ都合があり、今年は娘家族が早い年末に来て、正月らしきものをして今日早々と帰っていきました。私の病後を気遣ってくれて、今年は私が娘の嫁入り先の家に招待され、親族集まって御馳走をいただきました。この家にはプロの料理人がいるので味も盛り付けもさすがでした。
盆栽の上を飾ればアスファルトの裂け目の苔も嬉しさうなり
あちこちのアスファルトの裂け目に緑の苔が、この時期に繁っていることに気付くと、じっとしていられなくなるのが私です。さっそく採取してきて、我が家の盆栽を飾りました。ところがなんと私の作ったへんてこな盆栽もこれですっかり盆栽らしくなりました。苔もなんだか嬉しそうに耀いいるようにでした。
寒風の中を歩みて見つけたりアスファルトに萌ゆる数多の苔を
今日は昨日より寒くなりましたが、リハビリをかねてスーパーまで徒歩で買い物に行きました。途中で思いがけないものを見つけました。アスファルトの裂け目に苔が茂っているのです。この時期にしかもきれいに萌えたっているのです。その気になって気を付けて見てみると、ほんの小さな隙間にもあちこちで見られました。車なら、絶対気づかないことです。それにしても暖冬だからなのでしょうか？それとも今までも冬の歩道に苔が萌えていたのでしょうか？
後楽園に梅咲きしとふ我が家には白雪芥子咲く今年の暖冬
今日も暖かい一日でした。後楽園の梅林に梅が咲いたとテレビが報じていました。１２月に梅が咲くなど、私の記憶にはないように思います。ところで、我が家の庭には４月に咲く白雪芥子が、一本だけ小さく咲いていて、びっくりしました。そばには花韮が早くも青々と葉を茂らせていました。スキー場は、雪が降らなくて営業出来ないみたいだし・・・・今年はどんな冬になるのでしょうか？
サンタより吾にもプレゼント届くなら何を頼まむ 頼むもの無し
今日はクリスマスイブです。どんなに多くの幼児たちがサンタさんからのプレゼントを待ちわびて眠りにつくことでしょう。そして明日の朝はどんなにわくわくしてサンタさんからのプレゼントを開くことでしょう。ところで、もし私にもプレゼントをくださるとしたら、何を頼もうかとしら？といろいろ考えてみたのですが、哀しいことに、もう何も無いことに気がつきました。
早朝のパソコン電話で孫と子に祝はれ七十四歳となる
「失ったものではなくて得たものに目を向けよう」の言葉身に沁む
恒例となっている朝のパソコン電話（スカイプ）を開けると、娘と孫が「おめでとう」と笑顔で祝ってくれました。実は今日、七十四歳の私の誕生日なのですが、このような子や孫のあることを幸せに思ったひと時でした。その後、読んでいた朝刊の中に幸せになるためには「失ったものではなくて得たものに目を向けよう」という渡辺和子さんの言葉を見つけ、その通りだと自分の幸せをつくづく感じた一日となりました。
「暖かい冬至ですね」と塀越しに戴く柚子の香り清しき
冬至にと坊ちゃんかぼちゃ切りたれば夏の太陽が飛び出して来る
窓ガラスを拭いていると、「温かい冬至ですね。よかったらどうぞ！」と言ってお隣りさんから香りいっぱいの柚子をいただきました。夕食にと先日買ったかぼちゃを切ってみると、夏の太陽のような色が飛び出してきました。ところで冬至はなぜ柚子とかぼちゃなのかというと、冬至から運を積むということで「ん」の付くものを食べる。つまりかぼちゃは南瓜（なんきん）だから「ん」をたくさん積むことになるというゴロ合わせのようです。柚子は運を積むために柚子風呂で身体を禊ぐということだそうです。
おとぎ話に出でてきさうな神社あり免許返納の帰りの道に
鳥居の奥に細き階段連なりてここまでおいでとわれを誘ふ
運転免許を返納した帰り道、急に思い立って途中でバスを降りて歩いて帰ることにしました。細い近道に入り３０分くらい歩いたところに、小さな古い神社がありました。写真では大きさが分かりにくいですが、大変小さな神社で、石の鳥居の奥には細い石の階段が延々と続いていました。あたりはこんもりと木が繁り、まるでおとぎ話に出てくるような世界でした。上まで上ってみたい気もしましたが、怖くなって止めました。
センターにて運転免許返納す師走の空は晴れて風無し
目線下げゆつくり歩む人生の今日が始まり冬空青し
人生に幾たび遭ふや取るよりも手放すことの勇気と覚悟
何事もスピード化する今の世に二本脚歩行の人生も佳し
ついに運転免許を返納してきました。入院中も通院中もずっと主治医の先生より運転免許の返納を勧められていましたが、運転には自信がありどうしても決心がつかず今日に至ってしまいました。久々に来た免許センターは変わりなく小高い山の上にどっしりとありました。返納を終えて見上げた空の青いこと・・・私もこの空のように澄んだ気持ちでこれからは二本脚歩行の人生を歩んでいこうと決心しました。
