今年開かれた定例会の本会議と常任委員会の全てを傍聴して報告させていただきました。
本稿は瀬戸市議会の有様について私見を述べます。
地方自治法は常任委員会、議会運営委員会、特別委員会の3つを定めています。
ここでは常任委員会について考えてみましょう。
首長または議員から上程された議案は複雑かつ専門的な内容が多いので、行政分野や部局別に「総務生活」「厚生文教」「都市活力」の3委員会(瀬戸市の場合)でそれぞれ詳しく審査します。
これを委員会付託といいます。
委員会では担当部課長など職員幹部が議案の詳細を説明したあと、委員(議員)は理事者に質疑できます。
修正案の提出もできます。
委員間で討議もできます。
地方自治法第109条4は「常任委員会は、その部門に属する当該普通地方公共団体事務に関する調査を行い、議案、陳情等を審査する」としています。
傍聴していて時々疑問に感じるのは、一部委員が議案の審査から逸脱して自らの政治的政策主張を「質疑」として発言することです。
例えば公共施設の管理運営に関する業務委託の指定が付託議案の審査なのに、業務委託契約そのものを破棄して自治体直営とするべきだと主張します。
これは「質疑」でしょうか。
議会の議決により自治体の意思決定が確定する予算提案、行政内部組織の設置、契約締結等は首長のみが議案提出権者です。
どうしても契約を破棄させ自治体直営にすべきと論じるなら、第109条6に基づいて参考人を委員会招致すればよいと考えます。
民主主義の議会は言論の自由が確保され、積極的に議論すべきは論を待ちませんが、委員会は自治法のいうとおり「議案、陳情等を審査」する会議であって、自身の主義主張を述べるところではないと考えます。
次は市議会に提出される請願、陳情についてです。
請願は日本国憲法第16条にある国民の権利です。
瀬戸市議会会議規則の第10章に記載されています。
請願書には請願者の住所氏名の記載と紹介議員の署名(記名)が必要です。
一方陳情は議員の紹介は不要です。
平成27年度瀬戸市議会に提出された請願、陳情は次のとおりです。
6月定例会
平成27年請願第1号:安全保障法制関連法案の国会審議の中止を求める意見書に対する請願
平成27年陳情第1号:憲法をいかして働く者の権利を守り、住民生活の向上、核兵器のない平和な世界を求める陳情(その1)
平成27年陳情第2号:同上(その2)
平成27年陳情第3号:同上(その3)
平成27年陳情第4号:憲法をいかして働く者の権利を守り、住民生活の向上を求める陳情
平成27年陳情第5号:住民生活の向上を求める陳情(その1)
平成27年陳情第6号:同上(その2)
9月定例会
平成27年陳情第7号:ヘイトスピーチに対する法整備を求める意見書の提出を求める陳情
平成27年陳情第8号:「年金積立金の適正運用の確保についての意見書」の採択を求める陳情
12月定例会
平成27年請願第2号:憲法違反の安保法制強行採決に抗議し廃止の意見書を求める請願
平成27年陳情第9号:介護・福祉・医療など社会保障の施策拡充についての陳情
平成27年陳情第10号:高齢者福祉施策充実および税の徴収のあり方等についての陳情
平成27年陳情第11号:国・愛知県等に意見書を提出することについての陳情
平成27年陳情第12号:消費税に関する意見書提出を求める陳情
平成27年陳情第13号:安全・安心の医療・介護の実現と夜勤改善・大幅増員を求める陳情
平成27年陳情第14号:「介護従事者の勤務環境改善及び処遇改善の実現」を求める陳情
平成27年陳情第15号:愛知県看護職員15万人体制などの実現を求める陳情
平成27年陳情第16号:「憲法25条に基づく権利保障としての社会福祉事業を守り拡充すること」に関する国への意見書採択についての陳情
採択可となったのは1本だけでした。
提出した陳情者の多くは瀬戸市民ではありません。
請願、陳情は議長が請願文書表を作成し議員に配布します。
議長は受理したときは、会議に諮り、所管の常任委員会等に付託します。(付託必要がないと認めるときを除く)
「議長は」とあるのはあくまでも瀬戸市市議会会議規則上です。
陳情の受付けに関して条件を付帯している自治体は少なくありません。
受付不可とする付帯条件として
1、陳情者の住所、氏名、押印の各要件が整っていないもの
2、明らかに市の事務に属さないもの
3、すでに願意が達成されているもの、もしくは実現の見通しが明らかなもの
4、明らかに実現性がないもの
5、その他議会が関与することが適当でないと認められるもの
などを定めています。
近隣の尾張旭市も受付注意事項として、
「国の事務や他の地方公共団体の事務に関わることなど、明らかに尾張旭市の権限外の事項を願意とするもの」
は取り扱わない場合があると定めていますが、
瀬戸市には氏名、住所、押印など以外の受付注意事項や付帯条件がありません。
受理したあとは議会事務局による文書表等多くの書類作成や事務手続きが必要となります。
付託された委員会では議案審査のため出頭していた部課長たちが、陳情採択に付き合わなければなりません。
委員会終了まで本来の仕事場に戻れません。(委員会室にカンヅメ)
請願権は憲法に保障された国民の権利です。
地方議会も地方自治法第99、124、125条に意見提出権が定められています。
憲法附属法である請願法第3条には「請願書は請願の事項を所管する官公署にこれを提出しなければならない」とあります。
瀬戸市議会も請願はともかくとして、陳情受付の付帯条件を議論してはいいかがでしょうか。
高給幹部職員の非生産効率という観点からも、です。
当ブログは本稿で冬休みに入りますが、みなさんからのコメントは常時お待ちしています。
どうぞよいお年をお迎えくださいませ。
明年もよろしくお願い申し上げます。
本稿は瀬戸市議会の有様について私見を述べます。
地方自治法は常任委員会、議会運営委員会、特別委員会の3つを定めています。
ここでは常任委員会について考えてみましょう。
首長または議員から上程された議案は複雑かつ専門的な内容が多いので、行政分野や部局別に「総務生活」「厚生文教」「都市活力」の3委員会(瀬戸市の場合)でそれぞれ詳しく審査します。
これを委員会付託といいます。
委員会では担当部課長など職員幹部が議案の詳細を説明したあと、委員(議員)は理事者に質疑できます。
修正案の提出もできます。
委員間で討議もできます。
地方自治法第109条4は「常任委員会は、その部門に属する当該普通地方公共団体事務に関する調査を行い、議案、陳情等を審査する」としています。
傍聴していて時々疑問に感じるのは、一部委員が議案の審査から逸脱して自らの政治的政策主張を「質疑」として発言することです。
例えば公共施設の管理運営に関する業務委託の指定が付託議案の審査なのに、業務委託契約そのものを破棄して自治体直営とするべきだと主張します。
これは「質疑」でしょうか。
議会の議決により自治体の意思決定が確定する予算提案、行政内部組織の設置、契約締結等は首長のみが議案提出権者です。
どうしても契約を破棄させ自治体直営にすべきと論じるなら、第109条6に基づいて参考人を委員会招致すればよいと考えます。
民主主義の議会は言論の自由が確保され、積極的に議論すべきは論を待ちませんが、委員会は自治法のいうとおり「議案、陳情等を審査」する会議であって、自身の主義主張を述べるところではないと考えます。
次は市議会に提出される請願、陳情についてです。
請願は日本国憲法第16条にある国民の権利です。
瀬戸市議会会議規則の第10章に記載されています。
請願書には請願者の住所氏名の記載と紹介議員の署名(記名)が必要です。
一方陳情は議員の紹介は不要です。
平成27年度瀬戸市議会に提出された請願、陳情は次のとおりです。
6月定例会
平成27年請願第1号:安全保障法制関連法案の国会審議の中止を求める意見書に対する請願
平成27年陳情第1号:憲法をいかして働く者の権利を守り、住民生活の向上、核兵器のない平和な世界を求める陳情(その1)
平成27年陳情第2号:同上(その2)
平成27年陳情第3号:同上(その3)
平成27年陳情第4号:憲法をいかして働く者の権利を守り、住民生活の向上を求める陳情
平成27年陳情第5号:住民生活の向上を求める陳情(その1)
平成27年陳情第6号:同上(その2)
9月定例会
平成27年陳情第7号:ヘイトスピーチに対する法整備を求める意見書の提出を求める陳情
平成27年陳情第8号:「年金積立金の適正運用の確保についての意見書」の採択を求める陳情
12月定例会
平成27年請願第2号:憲法違反の安保法制強行採決に抗議し廃止の意見書を求める請願
平成27年陳情第9号:介護・福祉・医療など社会保障の施策拡充についての陳情
平成27年陳情第10号:高齢者福祉施策充実および税の徴収のあり方等についての陳情
平成27年陳情第11号:国・愛知県等に意見書を提出することについての陳情
平成27年陳情第12号:消費税に関する意見書提出を求める陳情
平成27年陳情第13号:安全・安心の医療・介護の実現と夜勤改善・大幅増員を求める陳情
平成27年陳情第14号:「介護従事者の勤務環境改善及び処遇改善の実現」を求める陳情
平成27年陳情第15号:愛知県看護職員15万人体制などの実現を求める陳情
平成27年陳情第16号:「憲法25条に基づく権利保障としての社会福祉事業を守り拡充すること」に関する国への意見書採択についての陳情
採択可となったのは1本だけでした。
提出した陳情者の多くは瀬戸市民ではありません。
請願、陳情は議長が請願文書表を作成し議員に配布します。
議長は受理したときは、会議に諮り、所管の常任委員会等に付託します。(付託必要がないと認めるときを除く)
「議長は」とあるのはあくまでも瀬戸市市議会会議規則上です。
陳情の受付けに関して条件を付帯している自治体は少なくありません。
受付不可とする付帯条件として
1、陳情者の住所、氏名、押印の各要件が整っていないもの
2、明らかに市の事務に属さないもの
3、すでに願意が達成されているもの、もしくは実現の見通しが明らかなもの
4、明らかに実現性がないもの
5、その他議会が関与することが適当でないと認められるもの
などを定めています。
近隣の尾張旭市も受付注意事項として、
「国の事務や他の地方公共団体の事務に関わることなど、明らかに尾張旭市の権限外の事項を願意とするもの」
は取り扱わない場合があると定めていますが、
瀬戸市には氏名、住所、押印など以外の受付注意事項や付帯条件がありません。
受理したあとは議会事務局による文書表等多くの書類作成や事務手続きが必要となります。
付託された委員会では議案審査のため出頭していた部課長たちが、陳情採択に付き合わなければなりません。
委員会終了まで本来の仕事場に戻れません。(委員会室にカンヅメ)
請願権は憲法に保障された国民の権利です。
地方議会も地方自治法第99、124、125条に意見提出権が定められています。
憲法附属法である請願法第3条には「請願書は請願の事項を所管する官公署にこれを提出しなければならない」とあります。
瀬戸市議会も請願はともかくとして、陳情受付の付帯条件を議論してはいいかがでしょうか。
高給幹部職員の非生産効率という観点からも、です。
当ブログは本稿で冬休みに入りますが、みなさんからのコメントは常時お待ちしています。
どうぞよいお年をお迎えくださいませ。
明年もよろしくお願い申し上げます。