地方公共団体における内部統制制度は、平成28年3月の第31次地方制度審査会の「人口減少社会に的確に対応する地方行政体制及びガバナンスのあり方に関する答申」を踏まえ、平成29年の地方自治法の一部改正により行政サービスを安定的、持続的、効率的かつ効果的に提供していくため、その要請に対応した地方行政体制を確立することが求められたことによります。
内部統制制度の導入により、地方公共団体は、組織として、予めリスク(組織目的の達成を阻害する要因)があることを前提として、法令等を遵守しつつ、適正に業務を執行することが、より一層求められます。組織的な取組みが徹底されることにより、長にとっては、マネジメントが強化され、政策的な課題に対して重点的に資源を投入することが可能となります。
また職員にとっても、業務の効率化や業務目的のより効果的な達成等により、安心して働きやすい職場環境が実現され、ひいては信頼に足る行政サービスを住民が享受することにつながります。
内部統制が有効に機能するためには、長の意識が最も重要です。
長は、内部統制の整備及び運用に関する最終責任者であり、内部統制の基本的要素の一つである統制環境の根幹を成す組織文化に大きく影響を与えるからです。
長は、自らが職員の意思決定や行動様式を大きく左右する存在であることをあらためて自覚し、内部統制の取組を先導していくことが求められます。
最終的な責任は長にありますが、内部統制は業務に組み込まれ、組織内の全ての者により遂行されるプロセスであることから、全職員が主体的に取り組むことが求められます。また、内部統制は継続的に見直しを行いながら構築していくものであることから、改正法への形式的かつ一時的な対応を図るのではなく、長期的な視点に立って取り組むべきです。
内部統制に取り組むに当たり、地方公共団体におけるリスクや課題と向き合ってきた監査委員の知見を生かすことが効果的であり、監査委員は内部統制を前提として、より本質的な監査業務に人的及び時間的資源を重点的に振り向けていくことが期待されます。
また、議会は、長から独立した立場で、内部統制の整備状況及び運用状況について監視を行うため、統制環境に一定の影響を与えることになります。したがって、議会に対しても適切な報告を行うことが求められています・
上記は、平成31年3月付 総務省から出された【地方公共団体における内部統制制度の導入・実施ガイドライン】の序文から抜粋したものです。
このガイドラインは、内部統制制度の導入が義務付けられる都道府県及び指定都市を想定していますが、基本的な枠組みとしては、全ての地方公共団体に共通しているものです。
*指定都市とは政令で指定する人口50万人以上の都市で、全国で20都市があり愛知県内は名古屋市だけです。
指定都市以外の市でも、日野市・藤沢市・三田市・清瀬市・下野市・豊川市・呉市・長浜市・小牧市などはそれぞれの市のHPで「内部統制制度」について公開しています。
指定都市以外の市町村において、地方自治法第150条第2項に基づくものとして内部統制に関する方針を策定した場合には、「内部統制評価報告書」の作成が求められることになり、すでに評価報告書を公開している市もあります。
内部統制とは、
①業務の効率的かつ効果的な遂行
②財務報告等の信頼性の確保
③業務に関わる法令等の遵守
④資産の保全
これら4つの目的が達成されないリスクを一定の水準以下に抑えることを確保するために、業務に組み込まれ、組織内の全ての者によって遂行されるプロセスをいいます。
これらは、下記の6つの基本的要素から構成されます。
①統制環境
②リスクの評価と対応
③統制活動
④情報と伝達
⑤モニタリング
⑥ICTへの対応
内部統制の4つの目的
①業務の効率的かつ効果的な遂行
地方公共団体においては、その事務を処理するに当たっては最小の経費で最大の効果を挙げるとともに、常にその組織及び運営の合理化に努め、担当職員の個人的な経験や能力に過渡に依存することなく、組織として一定の水準を保ちつつ滞りなく業務を遂行できるようにすることで、業務の目的達成を図る。
*地方自治法第2条第14項 「地方公共団体は、その事務を処理するに当たっては、住民の福祉の増進に努めるとともに、最小の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない。」
②財務報告等の信頼性の確保
財務報告だけでは地方公共団体の政策実績を十分に把握することは難しいため、非財務報告についても積極的に実施することが求められている。
③業務に関わる法令等の遵守
④資産の保全
資産には、有形の資産のほか、知的財産、住民に関する情報など無形の資産も含まれる。
内部統制の6つの基本的要素
①統制環境
統制環境とは、組織文化を決定し、組織内の全ての者の統制に対する意識に影響を与えるとともに、他の基本的要素の基礎をなし、それぞれに影響を及ぼす基盤をいう。
統制環境は、組織が保有する価値基準及び組織の基本的な人事、職務の制度等を総称する概念であり、組織独自の意識や行動を規定し、組織内の者の内部統制に対する考え方に影響を与える最も重要な基本的要素。
組織文化とは、一般に、組織内の意識や行動及び組織に固有の強みや特徴をいい、組織の最高責任者の意向や姿勢が反映される。
地方自治体においては、長の意識が統制環境に対し最も大きな影響を有する。
長は、自らが誠実かつ倫理的に職務を果たしつつ、職員の行動及び意思決定の指針となる具体的な行動基準等を定め、職員が遵守できるよう適切な対応を行う必要がある。
また、地方公共団体の運営方針や運営戦略に照らして、目的を達成するために適切な組織構造並びに職員の権限及び責任、人的資源に対する方針等を定めることも重要である。
②リスクの評価と対応
内部統制の目的に応じて、リスクを適切に識別する。次に識別したリスクについて、全庁的なリスクか特定の業務に係る個別リスクか。
また、過去に経験したリスクか、未経験のリスクかなどの分類を行う。
識別・分類したリスクについて、生じる可能性及び影響の大きさを分析し、量的な重要性を見積り、質的な重要性を検討する。
地方公共団体におけるリスクとして、例えばICTシステムの故障・不具合、会計処理の誤謬・不正行為の発生などが考えられる。
③統制活動
統制活動とは、長の命令及び指示が適切に実行されることを確保するために定める方針及び手続をいう。
統制活動には、権限及び職責の付与、職務の分掌等の広範な方針及び手続が含まれる。これらは業務のプロセスに組み込まれるべきものであり、組織内の全ての者において遂行されることにより機能するものである。
発生しうるリスクを減らすため、職務を複数の者の間で適切に分担又は分離させることが重要で、例えば契約の承認、契約の記録、資産の管理に関する職責をそれぞれ別の者に担当させるなど、担当者間で適切に相互牽制を働かせることが考えられる。
④情報と伝達
情報と伝達とは、必要な情報が識別、把握及び処理され、組織内外及び関係者相互に正しく伝えられることを確保することをいう。
一般に、情報の識別、把握、処理及び伝達は、人的及び機械化された情報システムを通して行われる。
組織は、必要な情報を特定し(識別)、情報システムに取り入れ(把握)、目的に応じて加工する(処理)ことを通じて、伝達を行う前提として、情報の信頼性を確保する。
情報の伝達は、例えば、長の方針は組織内の全ての者に適時かつ適切に伝達される必要がある。
⑤モニタリング
モニタリングとは、内部統制が有効に機能していることを継続的に評価するプロセスをいう。
モニタリングには、通常の業務に組み込まれた一連の手続きを実施し、内部統制の有効性を継続的に検討・評価する日常的なものと、日常的モニタリングでは発見できないような組織運営上の問題の有無を、別の視点から評価するために定期的又は随時行われる独自的評価とが考えられる。
⑥ICTへの対応
ICTへの対応とは、組織目的を達成するために予め適切な方針及び手続を定め、それを踏まえて、業務の実施において組織の内外のICTに対し適切に対応することをいう。
ICT環境とは、組織が活動する上で必然的に関わる内外のICTの利用状況のことであり、社会におけるICTの浸透度、組織が行う事務処理等におけるICTの利用状況、及び組織が選択的に依拠している一連の情報通信システムの状況等をいう。
ICTには、情報処理の有効性、効率性等を高める効果があり、これを内部統制に利用することにより、より有効かつ効率的な内部統制の構築を可能とすることができる。
ICTに係る全般統制とは、業務処理統制が有効に機能する環境を保障するための統制活動を意味しており、通常、複数の業務処理統制に関係する方針と手続きをいう。
業務を管理するシステムを支援するICT基盤(ハードウェア、ソフトウェア、ネットワーク等)を単位として構築することになる。
内部統制に関係を有する者の役割について
(1) 長
長は、地方公共団体の事務について包括的な管理執行権限を有しており、内部統制の整備及び運用に関しても最終的な責任者です。
長は、その補助機関である職員(副市長、会計管理者、その他職員)に対する指揮監督(補助執行の方針、基準及び手続等についての命令や、遵守義務の違反、職務の達成上不適当なことはないかの監視及び是正)を通じて、内部統制の整備及び運用を自らの事務として処理することとなります。長は、統制環境に係る諸要因及びその他の内部統制の基本的な影響を与える組織文化に大きな影響力を有しており、地方公共団体における内部統制が有効に機能するかを大きく左右します。
(2) 職員
内部統制は職員の日常の業務執行の中で行われるもので、各部局における職員の役割と責任は重要です。
内部統制の整備の一環として策定された規則・規程・マニュアル等を遵守し、適正な業務執行に努めることが必要です。
正規の職員のほか、非常勤職員や外部委託先等も同様の役割を担うこととなります。特に、委託業務に係る内部統制についての責任は委託者にあり、委託者が適切に外部委託先を管理する必要があります。
(3) 監査委員
監査委員は、財務監査のほか、必要があるときと認めるときは、地方公共団体の事務の執行について監査(行政監査)をすることができます。
監査委員の有する機能は地方公共団体の統制環境の一部を構成していますが、長とは異なる執行機関として、独立した権限を行使する立場にあり、長による統制活動を担う立場にはありません。
(4) 議会
議会は、長から独立した立場で、これを監視する役割を担っており、内部統制に関しても、議決事件(地方自治法第96条)に係る質疑や調査権(地方自治法第100条)の行使を通じて、地方公共団体の内部統制の枠外から、統制環境に影響を与えるとともに、内部統制の整備状況及び運用状況について監視を行い、必要に応じて改善を促すことが考えられます。
瀬戸市について
内部統制で重要な役割を有しているのが監査委員です。
監査基準として、監査委員が行うこととされている監査、検査、審査その他の行為は、事務の管理及び執行等について、法令に適合し、正確で、経済的、効率的かつ効果的な実施を確保し、住民の福祉の増進に資することを目的としています。
本基準における監査等は、①財務監査 ②行政監査 ③財政援助団体等監査 ④決算審査 ⑤例月出納検査 ⑥基金運用審査 ⑦健全化判断比率審査 ⑧資金不足比率審査 が該当します。
本市の監査委員の定数は3人ですが、うち1名は市議会議員が委員を務めています。
上記のとおり本来、議会は長から独立した役割を担っており、調査権を有していますので、議員が監査委員に就任するのではなく有識者等が監査委員となり、さらには監査委員とは別に、行政監査、決算審査に外部評価を行う第3者機関等を設けるべきと考えます。
平成29年の地方自治法改正により、監査委員は監査の専門性を高めるため有識者に委ね、議会は議会としての監視機能に特化し、議員の中からの監査委員選任は各自治体が判断できるようになりました。
すでに、いくつかの自治体では議会選出による議員の監査委員は取りやめています。
議会の機能については「瀬戸市議会基本条例」を参照してください。
平成27年12月25日公布 瀬戸市事務分掌の一部改正
このときの改正により、それまでの行政経営部を経営戦略部と行政管理部に分割しました。
行政経営部の主な事務分掌は、第3条 行政経営部は、行政の経営管理により各部の施策推進の支援を行うことをその使命とし、おおむね次の事務を分掌する。とし、
第3条(2) 行政事務の管理に関すること。同(3) 都市経営の総合調整に関すること。同(5) 財産管理の総括に関すること。同(6) 情報化に関すること。
↓ 改正後
経営戦略部の主な事務分掌は、第3条 経営戦略部は、戦略的な都市経営の推進をその使命とし、おおむね次の事務を分掌する。とし、
第3条(2) 市政情報に関すること。同(3) 都市経営の総合的な企画及び調整に関すること。
行政管理部の主な事務分掌は、第4条 行政管理部は、都市経営の基盤となる行政事務の品質向上をその使命とし、おおむね次の事務を分掌する。
第4条(1) 行政事務の管理に関すること。同(2) 法務及び文書に関すること。同(3) 財政に関すること。同(4) 財産管理の総括に関すること。
事務事業を推進する部署と、事務管理をする部署に分割したのですが、その後、業務の効率的かつ効果的な遂行、またそのプロセスの透明化、明確化は進捗したのでしょうか。
都市経営マネジメントのための政策事務事業は、その事業効果の明確化(ロジックモデルにより事業アウトカムを明確にし市民に公開する)は改善されてきたのでしょうか。
事業実施結果の具体的な将来像、社会的変化など、事業のアウトカムが明確にされないまま、事業の「行政手続き論」に傾斜しているのではないでしょうか。
ロジックは高度な山登りに例えれば理解しやすいでしょう。
どの山岳のどの頂を目指し、必要な人員や物資と量、必要な時間、途中進捗を計測するための目標値(いつまでに5合目に到達するのか)など綿密な登山登頂計画に基づき実行されます。
もしアウトカム、インプット、アウトプット、KPIをデタラメなままで出発すれば、おそらく全員遭難となるのは間違いありません。
『偏らない市政』の実現は、事務事業のアウトカムをロジックモデルで明確化し、市民と議会は大いに論じ、市長自らが事業目的の重要性を訴えていくほかありません。
アウトカムを見える化しなければ、事業の是非を判断できるはずもありません。
「事業手続き論」はあくまでも法の順守以外なにもありません。つまり法に従って事業手続きを行うのは当然のことであり、その事業の必要性を論じるための判断材料とは成り得ません。
管理部門では、公文書の取り扱い、人材の適材適所の配置などに課題はないのでしょうか。
なしとするなら、なぜ若い職員が毎年途中退職していくのでしょうか。
いわゆる「寿退社」や民間企業への転職だけなのでしょうか。
ご紹介したとおり【地方公共団体における内部統制制度の導入・実施ガイドライン】に記されているように、内部統制が有効に機能するためには、市長の意識が最も重要であり、統制環境の根幹を成す組織文化に大きな影響を与えます。
組織文化とは民間会社の企業風土(社風)に相当します。どれほど大きな企業でもときに不祥事が発生するのは、その企業風土に由来します。
来年度にも組織改編を予定されているなら、市長副市長の指示によりこの期に本市も地方自治法第150条第2項に基づく内部統制制度に関する方針を策定し、内部統制評価報告書も作成されていくことを進言します。
予算を伴う各事業をタテ糸とするなら、ヨコ糸をつむぐことでしか行政サービスは面になりません。
豊富な財源があればたくさんの事業を予算化し、タテ糸だけでもそこそこ面と成り得たでしょう。
しかし本市の財政事情はそれを許す状況ではありません。
ではヨコ糸をつむぐようにするには・・。
政策「推進」課と情報「政策」課でなすべきことは、どうすれば少しでもヨコ糸をつむぎ、限られたタテ糸を補強できるかを提示、あるいは各事業の全庁共通認識(共有化)を図ることではありませんか。
庁議の企画会議は、バラバラのタテ糸報告ではなく、どうすれば政策を推進し、必要な情報を獲得してヨコ糸とすべく協議する会議体ではありませんか。
行政サービスの無償化や助成金などは住民の耳目を集めますが、住民の理解や関心が薄い問題ほど、持続可能な行政経営には必要不可欠な重要課題であると申し上げ、本稿の筆を置きます。
今回も読了いただきありがとうございます。
内部統制制度の導入により、地方公共団体は、組織として、予めリスク(組織目的の達成を阻害する要因)があることを前提として、法令等を遵守しつつ、適正に業務を執行することが、より一層求められます。組織的な取組みが徹底されることにより、長にとっては、マネジメントが強化され、政策的な課題に対して重点的に資源を投入することが可能となります。
また職員にとっても、業務の効率化や業務目的のより効果的な達成等により、安心して働きやすい職場環境が実現され、ひいては信頼に足る行政サービスを住民が享受することにつながります。
内部統制が有効に機能するためには、長の意識が最も重要です。
長は、内部統制の整備及び運用に関する最終責任者であり、内部統制の基本的要素の一つである統制環境の根幹を成す組織文化に大きく影響を与えるからです。
長は、自らが職員の意思決定や行動様式を大きく左右する存在であることをあらためて自覚し、内部統制の取組を先導していくことが求められます。
最終的な責任は長にありますが、内部統制は業務に組み込まれ、組織内の全ての者により遂行されるプロセスであることから、全職員が主体的に取り組むことが求められます。また、内部統制は継続的に見直しを行いながら構築していくものであることから、改正法への形式的かつ一時的な対応を図るのではなく、長期的な視点に立って取り組むべきです。
内部統制に取り組むに当たり、地方公共団体におけるリスクや課題と向き合ってきた監査委員の知見を生かすことが効果的であり、監査委員は内部統制を前提として、より本質的な監査業務に人的及び時間的資源を重点的に振り向けていくことが期待されます。
また、議会は、長から独立した立場で、内部統制の整備状況及び運用状況について監視を行うため、統制環境に一定の影響を与えることになります。したがって、議会に対しても適切な報告を行うことが求められています・
上記は、平成31年3月付 総務省から出された【地方公共団体における内部統制制度の導入・実施ガイドライン】の序文から抜粋したものです。
このガイドラインは、内部統制制度の導入が義務付けられる都道府県及び指定都市を想定していますが、基本的な枠組みとしては、全ての地方公共団体に共通しているものです。
*指定都市とは政令で指定する人口50万人以上の都市で、全国で20都市があり愛知県内は名古屋市だけです。
指定都市以外の市でも、日野市・藤沢市・三田市・清瀬市・下野市・豊川市・呉市・長浜市・小牧市などはそれぞれの市のHPで「内部統制制度」について公開しています。
指定都市以外の市町村において、地方自治法第150条第2項に基づくものとして内部統制に関する方針を策定した場合には、「内部統制評価報告書」の作成が求められることになり、すでに評価報告書を公開している市もあります。
内部統制とは、
①業務の効率的かつ効果的な遂行
②財務報告等の信頼性の確保
③業務に関わる法令等の遵守
④資産の保全
これら4つの目的が達成されないリスクを一定の水準以下に抑えることを確保するために、業務に組み込まれ、組織内の全ての者によって遂行されるプロセスをいいます。
これらは、下記の6つの基本的要素から構成されます。
①統制環境
②リスクの評価と対応
③統制活動
④情報と伝達
⑤モニタリング
⑥ICTへの対応
内部統制の4つの目的
①業務の効率的かつ効果的な遂行
地方公共団体においては、その事務を処理するに当たっては最小の経費で最大の効果を挙げるとともに、常にその組織及び運営の合理化に努め、担当職員の個人的な経験や能力に過渡に依存することなく、組織として一定の水準を保ちつつ滞りなく業務を遂行できるようにすることで、業務の目的達成を図る。
*地方自治法第2条第14項 「地方公共団体は、その事務を処理するに当たっては、住民の福祉の増進に努めるとともに、最小の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない。」
②財務報告等の信頼性の確保
財務報告だけでは地方公共団体の政策実績を十分に把握することは難しいため、非財務報告についても積極的に実施することが求められている。
③業務に関わる法令等の遵守
④資産の保全
資産には、有形の資産のほか、知的財産、住民に関する情報など無形の資産も含まれる。
内部統制の6つの基本的要素
①統制環境
統制環境とは、組織文化を決定し、組織内の全ての者の統制に対する意識に影響を与えるとともに、他の基本的要素の基礎をなし、それぞれに影響を及ぼす基盤をいう。
統制環境は、組織が保有する価値基準及び組織の基本的な人事、職務の制度等を総称する概念であり、組織独自の意識や行動を規定し、組織内の者の内部統制に対する考え方に影響を与える最も重要な基本的要素。
組織文化とは、一般に、組織内の意識や行動及び組織に固有の強みや特徴をいい、組織の最高責任者の意向や姿勢が反映される。
地方自治体においては、長の意識が統制環境に対し最も大きな影響を有する。
長は、自らが誠実かつ倫理的に職務を果たしつつ、職員の行動及び意思決定の指針となる具体的な行動基準等を定め、職員が遵守できるよう適切な対応を行う必要がある。
また、地方公共団体の運営方針や運営戦略に照らして、目的を達成するために適切な組織構造並びに職員の権限及び責任、人的資源に対する方針等を定めることも重要である。
②リスクの評価と対応
内部統制の目的に応じて、リスクを適切に識別する。次に識別したリスクについて、全庁的なリスクか特定の業務に係る個別リスクか。
また、過去に経験したリスクか、未経験のリスクかなどの分類を行う。
識別・分類したリスクについて、生じる可能性及び影響の大きさを分析し、量的な重要性を見積り、質的な重要性を検討する。
地方公共団体におけるリスクとして、例えばICTシステムの故障・不具合、会計処理の誤謬・不正行為の発生などが考えられる。
③統制活動
統制活動とは、長の命令及び指示が適切に実行されることを確保するために定める方針及び手続をいう。
統制活動には、権限及び職責の付与、職務の分掌等の広範な方針及び手続が含まれる。これらは業務のプロセスに組み込まれるべきものであり、組織内の全ての者において遂行されることにより機能するものである。
発生しうるリスクを減らすため、職務を複数の者の間で適切に分担又は分離させることが重要で、例えば契約の承認、契約の記録、資産の管理に関する職責をそれぞれ別の者に担当させるなど、担当者間で適切に相互牽制を働かせることが考えられる。
④情報と伝達
情報と伝達とは、必要な情報が識別、把握及び処理され、組織内外及び関係者相互に正しく伝えられることを確保することをいう。
一般に、情報の識別、把握、処理及び伝達は、人的及び機械化された情報システムを通して行われる。
組織は、必要な情報を特定し(識別)、情報システムに取り入れ(把握)、目的に応じて加工する(処理)ことを通じて、伝達を行う前提として、情報の信頼性を確保する。
情報の伝達は、例えば、長の方針は組織内の全ての者に適時かつ適切に伝達される必要がある。
⑤モニタリング
モニタリングとは、内部統制が有効に機能していることを継続的に評価するプロセスをいう。
モニタリングには、通常の業務に組み込まれた一連の手続きを実施し、内部統制の有効性を継続的に検討・評価する日常的なものと、日常的モニタリングでは発見できないような組織運営上の問題の有無を、別の視点から評価するために定期的又は随時行われる独自的評価とが考えられる。
⑥ICTへの対応
ICTへの対応とは、組織目的を達成するために予め適切な方針及び手続を定め、それを踏まえて、業務の実施において組織の内外のICTに対し適切に対応することをいう。
ICT環境とは、組織が活動する上で必然的に関わる内外のICTの利用状況のことであり、社会におけるICTの浸透度、組織が行う事務処理等におけるICTの利用状況、及び組織が選択的に依拠している一連の情報通信システムの状況等をいう。
ICTには、情報処理の有効性、効率性等を高める効果があり、これを内部統制に利用することにより、より有効かつ効率的な内部統制の構築を可能とすることができる。
ICTに係る全般統制とは、業務処理統制が有効に機能する環境を保障するための統制活動を意味しており、通常、複数の業務処理統制に関係する方針と手続きをいう。
業務を管理するシステムを支援するICT基盤(ハードウェア、ソフトウェア、ネットワーク等)を単位として構築することになる。
内部統制に関係を有する者の役割について
(1) 長
長は、地方公共団体の事務について包括的な管理執行権限を有しており、内部統制の整備及び運用に関しても最終的な責任者です。
長は、その補助機関である職員(副市長、会計管理者、その他職員)に対する指揮監督(補助執行の方針、基準及び手続等についての命令や、遵守義務の違反、職務の達成上不適当なことはないかの監視及び是正)を通じて、内部統制の整備及び運用を自らの事務として処理することとなります。長は、統制環境に係る諸要因及びその他の内部統制の基本的な影響を与える組織文化に大きな影響力を有しており、地方公共団体における内部統制が有効に機能するかを大きく左右します。
(2) 職員
内部統制は職員の日常の業務執行の中で行われるもので、各部局における職員の役割と責任は重要です。
内部統制の整備の一環として策定された規則・規程・マニュアル等を遵守し、適正な業務執行に努めることが必要です。
正規の職員のほか、非常勤職員や外部委託先等も同様の役割を担うこととなります。特に、委託業務に係る内部統制についての責任は委託者にあり、委託者が適切に外部委託先を管理する必要があります。
(3) 監査委員
監査委員は、財務監査のほか、必要があるときと認めるときは、地方公共団体の事務の執行について監査(行政監査)をすることができます。
監査委員の有する機能は地方公共団体の統制環境の一部を構成していますが、長とは異なる執行機関として、独立した権限を行使する立場にあり、長による統制活動を担う立場にはありません。
(4) 議会
議会は、長から独立した立場で、これを監視する役割を担っており、内部統制に関しても、議決事件(地方自治法第96条)に係る質疑や調査権(地方自治法第100条)の行使を通じて、地方公共団体の内部統制の枠外から、統制環境に影響を与えるとともに、内部統制の整備状況及び運用状況について監視を行い、必要に応じて改善を促すことが考えられます。
瀬戸市について
内部統制で重要な役割を有しているのが監査委員です。
監査基準として、監査委員が行うこととされている監査、検査、審査その他の行為は、事務の管理及び執行等について、法令に適合し、正確で、経済的、効率的かつ効果的な実施を確保し、住民の福祉の増進に資することを目的としています。
本基準における監査等は、①財務監査 ②行政監査 ③財政援助団体等監査 ④決算審査 ⑤例月出納検査 ⑥基金運用審査 ⑦健全化判断比率審査 ⑧資金不足比率審査 が該当します。
本市の監査委員の定数は3人ですが、うち1名は市議会議員が委員を務めています。
上記のとおり本来、議会は長から独立した役割を担っており、調査権を有していますので、議員が監査委員に就任するのではなく有識者等が監査委員となり、さらには監査委員とは別に、行政監査、決算審査に外部評価を行う第3者機関等を設けるべきと考えます。
平成29年の地方自治法改正により、監査委員は監査の専門性を高めるため有識者に委ね、議会は議会としての監視機能に特化し、議員の中からの監査委員選任は各自治体が判断できるようになりました。
すでに、いくつかの自治体では議会選出による議員の監査委員は取りやめています。
議会の機能については「瀬戸市議会基本条例」を参照してください。
平成27年12月25日公布 瀬戸市事務分掌の一部改正
このときの改正により、それまでの行政経営部を経営戦略部と行政管理部に分割しました。
行政経営部の主な事務分掌は、第3条 行政経営部は、行政の経営管理により各部の施策推進の支援を行うことをその使命とし、おおむね次の事務を分掌する。とし、
第3条(2) 行政事務の管理に関すること。同(3) 都市経営の総合調整に関すること。同(5) 財産管理の総括に関すること。同(6) 情報化に関すること。
↓ 改正後
経営戦略部の主な事務分掌は、第3条 経営戦略部は、戦略的な都市経営の推進をその使命とし、おおむね次の事務を分掌する。とし、
第3条(2) 市政情報に関すること。同(3) 都市経営の総合的な企画及び調整に関すること。
行政管理部の主な事務分掌は、第4条 行政管理部は、都市経営の基盤となる行政事務の品質向上をその使命とし、おおむね次の事務を分掌する。
第4条(1) 行政事務の管理に関すること。同(2) 法務及び文書に関すること。同(3) 財政に関すること。同(4) 財産管理の総括に関すること。
事務事業を推進する部署と、事務管理をする部署に分割したのですが、その後、業務の効率的かつ効果的な遂行、またそのプロセスの透明化、明確化は進捗したのでしょうか。
都市経営マネジメントのための政策事務事業は、その事業効果の明確化(ロジックモデルにより事業アウトカムを明確にし市民に公開する)は改善されてきたのでしょうか。
事業実施結果の具体的な将来像、社会的変化など、事業のアウトカムが明確にされないまま、事業の「行政手続き論」に傾斜しているのではないでしょうか。
ロジックは高度な山登りに例えれば理解しやすいでしょう。
どの山岳のどの頂を目指し、必要な人員や物資と量、必要な時間、途中進捗を計測するための目標値(いつまでに5合目に到達するのか)など綿密な登山登頂計画に基づき実行されます。
もしアウトカム、インプット、アウトプット、KPIをデタラメなままで出発すれば、おそらく全員遭難となるのは間違いありません。
『偏らない市政』の実現は、事務事業のアウトカムをロジックモデルで明確化し、市民と議会は大いに論じ、市長自らが事業目的の重要性を訴えていくほかありません。
アウトカムを見える化しなければ、事業の是非を判断できるはずもありません。
「事業手続き論」はあくまでも法の順守以外なにもありません。つまり法に従って事業手続きを行うのは当然のことであり、その事業の必要性を論じるための判断材料とは成り得ません。
管理部門では、公文書の取り扱い、人材の適材適所の配置などに課題はないのでしょうか。
なしとするなら、なぜ若い職員が毎年途中退職していくのでしょうか。
いわゆる「寿退社」や民間企業への転職だけなのでしょうか。
ご紹介したとおり【地方公共団体における内部統制制度の導入・実施ガイドライン】に記されているように、内部統制が有効に機能するためには、市長の意識が最も重要であり、統制環境の根幹を成す組織文化に大きな影響を与えます。
組織文化とは民間会社の企業風土(社風)に相当します。どれほど大きな企業でもときに不祥事が発生するのは、その企業風土に由来します。
来年度にも組織改編を予定されているなら、市長副市長の指示によりこの期に本市も地方自治法第150条第2項に基づく内部統制制度に関する方針を策定し、内部統制評価報告書も作成されていくことを進言します。
予算を伴う各事業をタテ糸とするなら、ヨコ糸をつむぐことでしか行政サービスは面になりません。
豊富な財源があればたくさんの事業を予算化し、タテ糸だけでもそこそこ面と成り得たでしょう。
しかし本市の財政事情はそれを許す状況ではありません。
ではヨコ糸をつむぐようにするには・・。
政策「推進」課と情報「政策」課でなすべきことは、どうすれば少しでもヨコ糸をつむぎ、限られたタテ糸を補強できるかを提示、あるいは各事業の全庁共通認識(共有化)を図ることではありませんか。
庁議の企画会議は、バラバラのタテ糸報告ではなく、どうすれば政策を推進し、必要な情報を獲得してヨコ糸とすべく協議する会議体ではありませんか。
行政サービスの無償化や助成金などは住民の耳目を集めますが、住民の理解や関心が薄い問題ほど、持続可能な行政経営には必要不可欠な重要課題であると申し上げ、本稿の筆を置きます。
今回も読了いただきありがとうございます。