瀬戸市民言論広場

明るい未来社会をみんなで考えるために瀬戸市民言論広場を開設しました。

視点・観点・論点 第17回

2017年01月26日 | お知らせ
第17回は「政策目的」

東洋経済ON LINEの『地方は儲からない「イベント地獄」で疲弊する』という記事が話題になっているようです。

にぎわうだけのイベントは「精神安定剤」にすぎない。
人は来るけど商売は必ずしも伸びないのに精神安定剤のようににぎわいを求めて、さらなるイベントを仕掛けています。
予算をもらうことは、目的を達成する手段にすぎないはず。なのに、いつのまにかもらうこと自体が取り組みになっている組織が少なくありません。

このように記されています。



昨年9月に第5次瀬戸市総合計画 行政経営達成状況報告書(平成27年度実績)が公表されています。
それぞれの事業の目標指数と達成指数、達成率、歳出決算額(いくら使ったか)が記されています。

7部構成でその第1部が「市民の交流と活力」です。
a、まるっとミュージアムの推進による賑わいと活力の創出
   達成率72.7% 決算額2億4427万円
 指標はイベント来訪者数、観光客入込数、市民サポーター数など。

b、市民の豊かな生活を支える働く場の確保と就業環境の整備
   達成率64.3% 決算額5億5913万円
 指標はキャリア教育実施授業数、中心市街地商店街歩行者通行量など。

c、市民文化活動の推進とやきものの文化の伝承
   達成率69.2% 決算額4億3601万円
 指標は美術館入場者、文化センター利用者数など。

d、都市の活力の源となる市民活動と交流の推進
   達成率58.8% 決算額2億876万円
 指標は審議会などの委員に占める女性の割合、地域婦人団体で活動する人数、地域力向上に取り組む地域数など。

全体での達成率は65.1%、決算額は14億4820万587円

その他、ヒト(市民)が関わる事業の達成率が低かったことが読み取れます。

今後は達成率だけではなく、指数の立て方と目標値(根拠)を議論すべきでしょう。
来訪者や参加者という人数は確かに「にぎわい」を測る指数ではありますが、歳入確保の観点では意義ある数とはいえません。

政策目的、目標指数については当ブログ「視点、観点、論点 第3回 ロジックモデル」を再読ください。




当ブログが政策目的や指数のあり方を提示するのは、歳入確保財源確保の議論なくして行政サービスの持続が困難となっていくためです。

なかでも巨額の歳出を余儀なくする課題が「公共施設等の維持管理費」です。
我が国は高度成長期から整備した道路や水道等ライフラインと公共建築物の老朽化が始まっていて、これらの維持管理をどうするのかという課題と、少子高齢化社会の到来で将来の税収減の懸念。
このふたつの課題は同時進行していきます。

瀬戸市はこの地域の中心都市として周辺市町よりも都市整備は早く進んだ結果、老朽化対策も先んじて議論していかなくてはなりません。
例えば市内公共建築物の約7割は築30年が経過しています。
プラント施設であるクリーンセンター(し尿処理施設)は1987年の建設物、下水道施設の西部浄化センターは1970年、水野浄化センターは1972年の建築物です。

国のソフトで試算したところ瀬戸市が今後40年で必要な経費は、

道路の更新約380億円、年平均9.5億円
橋梁の更新約63.6億円、年平均約1.6億円
上水道の更新約756億円、年平均約18.9億円
下水道の更新約233億円、年平均約5.8億円

公共建築物とインフラ試算を合計すると、
今後40年で総額約3231億円、年平均80.8億円と試算されています。

急激に歳出が増加している扶助費の問題もあります。
扶助費とは社会保障制度の一貫として、地方公共団体が各種法令(生活保護、児童福祉、老人福祉等)に基づき支出される経費のことで、瀬戸市は平成18年度40億円から平成27年度80億円とわずか10年で倍増しています。

一方歳入のほうは、総額は約390億円、うち自主財源である市税は180億円前後。

公共施設の維持管理に対応するために市は基金を積んでいますが、必要額と比べてまだまだ低額です。

市の将来とは「子供たちの将来」でもあります。
見てきたように多額の歳出が必要な時代がやってきました。
これらの課題を子供たちに任せますか?
楽しければイイ、にぎわえばイイ、この目的と参加した人訪れた人を指数とするイベントを続けていきますか。
それが「愛ある子育て」といえますか?

なにも暗い話ではありません。
「どうすれば儲かる?」をポジティブに考えればいいのでは。
無い袖は振れません。
第6次基本計画の政策目的と指数、目標数はどうでしょうか。
相変わらずにぎわいの人が指数でしょうか。

まもなく「瀬戸市公共施設等総合管理計画」のパブコメ募集が始まります。
前回「再検」で書きましたが、パブコメ募集の前に「市民説明会・勉強会の開催」を行政当局に提案します。

今回も読了いただきありがとうございます。




コメント

視点・観点・論点 第16回

2017年01月20日 | お知らせ
第16回は「再検」

その1:市民と意見交換

複雑な現代社会のさまざまな課題に対応を迫られる行政サービスを実施するには、法知識や財源、専門的知見が必要となるのは已むを得ません。
一方私たち市民は、仕事に、家事に、子育てにとても忙しくて、一つひとつの政策事業の詳細な知識や情報を入手して考えてはいられません。身近で重要な課題には進んで調べようとしますが、それ以外の案件は問題意識の強い方でない限り深く考えようとはしないでしょう。
それで行政機関は「家父長主義」に傾きやすい体質となります。
*当ブログで家父長主義=パターナリズムについての議論はいたしません。
間接民主主義、国民投票、ポピュリズムなどは、場を改めて議論したいと思います。

行政は市民の健康福祉向上のリーディング機関(institution)でなければいけない。という意味においての「家父長主義的体質」です。
リーディング機関でなければいけない。のですが市民の声も聞かなくてはならない。
市民生活に直結している地方自治体は、市民の声を聞かなくてはならない案件ばかりです。
このため「○○フォーラム開催」や「パブリックコメント募集」という手法を使います。
今回は議論や意見交換の進め方を『再検』してみましょう。





行政が主催するフォーラムや意見交換会。

「ご意見、ご要望をどうぞ」という進め方によく出会います。
この進め方をすれば、ほぼ間違いなく「あれも、これも」の要望続出となります。
当り前です。
しかも市民からすれば聞いてくれているのは「行政当局」。
ときには「首長」なんてこともありました。
何たって「聞くこと第一」とおっしゃっているようですから。

一見物分りの良い「市民ファースト(筆者は感心しない流行りの物言いですが・・)」のように受け取れますが、とてもリスキーな進め方ではないかと考えています。
特に「ハコもの行政」は。

例えば「瀬戸市図書館整備基本構想」
この構想の基本方針に「誰もが行きやすい、行きたくなる図書館」として、高齢者、親子連れ、障がい者等、誰もが行きやすい立地であり、利用しやすい駐車場、自動車以外の交通手段を確保します。とあります。

その上で、
図書館整備に係る立地条件として、
1、公共交通機関で行けるとともに、駅から徒歩で通えること
2、中心市街地のにぎわいを創出すること
3、観光における寄り道地点となること(観光回遊コースにあること)
4、平坦地にあること(坂道が続かないこと)
5、森や緑に囲まれていること
このように書かれています。
しかも望ましい施設規模(延床面積)は5000㎡。(現在の延床面積は1400㎡です)

読者のみなさんいかがでしょうか、
いったい瀬戸市のどこにこれらの条件を満たす場所があるのでしょう。
筆者は浮かびません。

行政がこのように示すからにはきっと候補地があるのでしょう。
平成29年度末には基本計画を完成させ、その後実施計画とする予定のようです。
当局の思惑は存じませんが、もし候補地があるのなら周辺住民への説明等進捗状況を明らかにすべきです。

市民からあれもこれもと望む図書館の姿を聞いていく会の進め方でよいのですか?
「あれも、これも」を話し合うのではなく、できること、できないことを明確に提示して「あれか、これか」あるいは「優先順位」を考えてもらう進め方にしないと、
後々「できないとわかっていたなら、なぜ要望を聞いたのか?!」と成りかねません。
「あれも、これも」の意見を聞いていくのなら、「いくらまでの建設債なら認めていただけますか」と納税者に聞くべきでしょう。
特に市債を支払っていくことになる若い世代には。
「高くついても立派な図書館を作ろう」となれば「あれも、これも」を満たせばいいのです。
あくまでもそうなれば、の話ですが。

瀬戸市の大きな課題に「公共施設等総合管理計画」があります。
公共施設マネジメントのうちファシリティは「あれか、これか」「優先順位」を市民に議論してもらうことになります。
持続可能な行政を目指すのなら「あれも、これも、ご意見を」といった進め方は再検すべきです。

パブリックコメントを求める施策案や条例案は、そのほとんどが「内容はホームページで公開していますので。」
当局(議会も)が何時間も議論して作成した各種案件について、市民に「ホームページを読んで意見を下さい。」
そして「貴重なご意見ありがとうございました」

このやり方を「家父長主義的体質」と指摘しておきます。

市民に意見を尋ねるまえに、面倒でも説明会、勉強会を重ねて、市民が判断するに必要な最低限の知識情報を共有できる進め方を再検していただきたい。
筆者はこの進め方が「市民と協働のまちづくり」への第一歩と考えます。
この面倒さを避けて「市民と協働」などかないません。
HPをご覧下さい、パブコメご意見ありがとう。ではダメです。

市民も面倒は避けられません。
マイクハナサ~ズのおじさん、おばさんがいらっしゃいますが、意見を述べるならそれ相応の下調べが必要ですよ。思いつきのような自論をとうとうと喋り続けるのは止めましょう。
それと、ご質問受付と自論のしゃべりの違いも学習しましょう。

伊藤市政のいう「聞くこと第一」には小首を傾げますね。
まず政策方針(瀬戸丸の進路)を市民に示し、それに対して市民の意見を「聞くこと」が首長のすべき「聞くこと」です。
総花的で具体策が示されず「何でもいいから言ってくれ」は「聞くこと」ではありません。



その2:政策事業再検

予算をつける事務事業のうち、近い将来の財源確保に結びつく(そうしなければいけない)政策を見ましょう。

瀬戸市地場産業振興ビジョン 
 ~陶都瀬戸復活に向けて~

平成24年3月に作成されました。

ビジョンの目的は「陶磁器関連産業が抱える課題を克服することにより、時代のニーズに応じた新しい瀬戸焼を創り出し、未来に向けて変化することによりトレンドリーダーになることで陶都瀬戸の復活を実現し、地域経済の持続的な発展や市民にとって魅力と誇りを感じられるまちの形成を目指す。」と記されています。

計画期間は平成24年度から33年度までの10年間です。

歴史的背景や特徴、業種の分類、従業員や出荷額等のグラフ、人材育成、観光事業との連携、市場の動向など、
失礼ながら瀬戸市が作成したなかで、客観的、多角的分析と問題点の提示や解の方向性などを記してあり、
とても良く出来たものと評価しています。

例えば、やきもの関連のイベントは、
廉売市や体験、作品展など、催事内容が多岐にわたるイベントが多く、高付加価値作品の展示・販売がなされていても、せともの祭りに代表される廉売イメージが浸透しており、出品物全体が廉売品との先入観を与えている傾向がみられる。
と指摘しています。

さらにイベントのポジションは、全般的には一般観光客向けが多く、販売促進、展示鑑賞という視点と会わせて評価すると、やきものファンを対象とした買い物も可能な展示鑑賞イベントが少ない。市民参加によるコンクールイベントも存在するが、全国的な知名度などの点で作り手が自身のキャリアの登竜門と受け止めるには至っていない。
とも記されています。

瀬戸市の陶磁器関連産業の現状と問題点として
1、せともの=廉価品のイメージ
2、ユーザーニーズの把握に乏しい
3、企画デザインが不得意
4、自社製品に対する認識不足
5、人的資源の流出・減少
6、技術の消失
を挙げて
ブランド価値の維持・向上、マーケティング・販売戦略の構築、多面的コラボの推進、情報ツール・メディアの活用など、
重点戦略を打ち出しています。

第6次総合計画の中期事業計画(H29年度から)にはこのビジョンを28年度中に改訂し、付加価値の高い産業へと転換を図り、事業指標として付加価値の合計額を初期値13億7千万円からH31には15億2千万円としています。

第6次総にいう「活力ある地域経済と豊かな暮らしを実感できるまち」を実現する事業として、
地域産業振興=4901万1千円 
市内企業再投資促進補助金=7億5064万8千円
ツクリテ支援=3549万5千円
せともの祭協賛=3929万7千円
せとまちブランディング推進=2214万6千円
(事業費はいずれもH29~H31の3ヵ年分です)

近い将来の財源確保(都市経営)のために予算付けする政策事業は、特定の事業者や業界保護のためだけに税金を注ぐのではありません。
「行政サービス」の持続を可能にするためであって、事業者や業界の持続を可能にするためではないはずです。
業界保護の視点ならば「文化事業」の領域です。
これらの事業指標はその考え方、その根拠、そして何より事業効果を厳しく精査しなくてはいけません。
考え方や根拠について筆者の自論を述べるつもりはありません。
ただし行政、議会だけでなく市民はもちろんですが、第3者も交えた議論が不可欠なのではないでしょうか。
中心市街地商店街空き店舗対策事業費補助金として1112万3千円、その目標指数は毎年2件の空き店舗への出店と毎年1件の創業起業者となっています。
この指数で良しとしますか。

上記のビジョンは、間もなく改訂版が公開されることでしょう。
もし予算投入に対し、効果が弱い点があったなら逃げることなく正面から見直すという「再検」をして、改訂版を作成していただきたい。

伊藤市政は6次総に「住みたいまち、誇れるまち、新しいせと」を将来像として掲げました。

誇るのは瀬戸市民ですが、魅力があるか、価値があるかは「よそ者」が判断します。
今更ながらですが、財源確保の政策には民間の、それもできれば「よそ者」の視点が不可欠でしょう。

瀬戸市を「買ってくれる、売ってくれる人材探し」の事業は見当たりません。

地域再生には議論の進め方、事業指数のたて方の再検をお勧めします。

若者流失を抑制するのなら「誇り」という観念論だけでなく、高等教育のあり方や地元企業の人材要望など「よそ者」を交えた議論をすべきでしょう。

最後に余談ですが、モノは物としてだけではその価値はごく一部の人たち以外に伝わりませんよ。
モノに纏わるヒトや歴史が語られてこそ、モノ+かたり=物語となって大衆に発信されます。
発信元は瀬戸市ではだめですよ。
よそ者がその価値を認めて発信する時代です。
この観点からの疑問。「せとまちブランディング推進」の事業指数は「市民が瀬戸市の魅力をPRした件数」となっており、しかも毎年20件?!とはこれいかに。
PRの印刷物や動画の制作に行政が多額の予算を投じる時代ではありません。

今回も読了いただきありがとうございました。















コメント (1)

視点・観点・論点 第15回

2017年01月13日 | お知らせ
第15回は「予算はキャンバス」

日本の自治体は住民が直接選挙で首長を選ぶという「大統領制」にちかい制度を採用しています。
欧米では自治体で議員内閣制を採用しているところも少なくありません。
また英米の自治体は法律で明確に認められた事項以外は行えません。
日本の自治体は法律で禁止されている事項でなければ自由に行えます。
日本では国が禁止していなければ、条例を制定し政策を実施できるのです。

行政の情報公開は1982年山形県金山町が、続いて神奈川県が条例を制定。
オンブズマンも1990年川崎市が導入、環境アセスメントも地方から、行政評価も1995年三重県北川知事が。
いずれも国に先んじて行われました。

大統領制にちかい。と書きましたが安全保障や司法権等以外の「立法」「行政」は、ほぼ自治体首長がその権限を有しています。
米国大統領は予算案を議会に提出する権限をもっていません。
教書により要求するだけで、予算案を策定し決定するのは議会です。
事実2013年に予算が成立せず、博物館や政府機関が閉鎖に追い込まれました。
法案提出権も米国大統領にはありません。
行政府、立法府、司法府の三権が厳格に分権されています。

日本の自治体首長は行政権のみならず、条例制定という立法も首長がイニシアティブを取れますし、その範囲も英米のようにネガティブではありません。
人事も米国州政府では副知事や法務長官は選挙で選ばれますが、日本の自治体では議会の同意は必要ですが人事の権限は首長にあります。
特別職以外の幹部職員は首長権限です。

ですから、もし首長が部下の仕事ぶりを嘆いたり、ましてやその職責を部下のせいにするなどとは本末転倒、言語道断です。



『予算は政策を描いたキャンバスである』

むかしある自治体の首長がおっしゃっていました。

首長は何を話そうが、何を演説しようが、何を公約にしようが、自らの政策が「予算」に表れていないのであれば「何もしていない」のと同じなのです。

自治体行政に求められるのは、整合性、連続性、無謬性です。
ある日突然、訳もなく政策事業を始めたり終らせたりしてはいけません。

全国各自治体が「うちも乗り遅れまい」と競い合うように流行った地方創生。
瀬戸市も「まち・ひと・しごと創生総合戦略」が推進会議を経て策定されました。
平成27年に「地方創生先行型」として国から約6700万円が支出され、婚活支援や地場産品販路開拓、新規ビジネスモデル構築支援などの事業を実施し、平成28年8月2日瀬戸市地方創生先行型事業結果検証有識者懇談会で事業結果、実績が話し合われました。

平成28年3月18日内閣府より「地方創生加速化交付金の交付対象事業の決定」が発表されました。
都道府県分の交付対象事業は291件。市区町村分が1635件でした。
瀬戸市は「IoTを活用した地域企業の高度化促進事業』として、6700万円の交付金が交付されました。

この交付対象事業は、その事業の仕組みとして
(1)地域経済分析システム(RESAS)の活用などによる客観的なデーターやこれまでの類似実績評価に基づき事業設計がなされていること。
(2)事業の企画や実施に当たり、地域における関係者との連携体制が整備されていること。
(3)KPIが、原則として成果目標(アウトカム)で設定され、基本目標と整合的であり、その検証と事業の見直しのための仕組み(PDCA)が、外部有識者や議会等の関与等がある形で整備されていること。
(4)効果の検証と事業の見直しの結果について、公表するとともに、国に報告すること。
以上が定められています。

瀬戸市は、新たな地域連帯モデル構築・地域資源活用推進・デジタルシティ推進・新規ビジネスモデル構築支援・やきもの産地交流連携・新規ビジネス創業支援・新規ビジネス創業促進補助金・教育情報化推進。
地方創生加速化交付金を財源として、これらの事業を実施しました。
さてそのPDCAやいかに。

「瀬戸市まち・ひと・しごと創生総合戦略」には、
第6次総合計画との関係として、中期事業計画のなかの主にソフト施策を中心に<人口の視点>を、6次総はハードとソフトの複合型で<まちづくりの視点>で。と記されています。

「まち・ひと・しごと総合計画」はH27~H31までの5ヵ年。
第6次総合計画はH29~H39までの10ヵ年。
中期事業計画はH29~H31まで。
そして一ヵ月後に議会に提示される平成29年度当初予算案です。

これは有機的に関連付けされた内容となるのでしょうか。
伊藤市政の政策としてどのように「表現」されたキャンバスなのでしょうか。

現時点で筆者には市長の政策を読み解くことはできていません。
当然ながら完全な客観性に基づたものではなく筆者の主観がほとんどです。
読者のみなさんはどう判定されるでしょうか。




民間企業でもそうでしょうが、組織の問題点、改善すべき点を第3者(コンサル)に探ってもらうと「なにもありません」と回答されることはまずないでしょう。
あそこがこうだ、ここはああしたほうが。
いくつも指摘されることが多いと思います。
が、オオモトの一点、一箇所を改善すれば残りのことは自ずと解決されていく。なんてことがよくあります。

以前も当ブログに書きましたが、行政機関という組織体はほぼ全てがマンパワーで動いています。
ボルトが緩んでいるから絞めておけ。
油が切れ掛かっているぞ。
などということはありません。
しかもその仕事ぶりを数値評価するには複雑すぎます。
もうひとつ、
適当に手を抜いても、めいっぱいがんばっても、直接給与に反映されるわけでもありません。

それゆえ望まれるは「職員のモチベーション」だけなのです。
職員皆がみな、わが身安泰のためだけで地方公務員という職についたわけではありますまい。
「まちをよくしたい」「子供たちの将来を」「市民の笑顔と健康を」
こんな想いを胸に秘めて採用試験を受けた。と信じたい。
そうでなければ、市民が共に「まちづくり」なんてできません。

マンパワーで動く組織体は、表にでてきた施策や事務事業内容よりも、そこに至るまでの組織内プロセスが重要なのです。
事業の内容はどうであれ「納得できる合意形成を経た結果である」と職員たちが思えているかどうか。
これがモチベーションを保つオオモトでしょう。

民間企業に例えるなら、市民納税者は行政機関の「株主」です。
職員のモチベーション低下は株主にとって損害となります。

聞くことも大事、現場も大事。
しかし伊藤市政で最も大事なのは「職員のモチベーション」なのでは。
企画担当職員たちとしっかり議論し合意形成を経た「予算案」となっているのでしょうか。
3月定例会の議会に期待します。

本稿でご紹介したように、日本の地方自治体首長は大きな権限を与えられています。
だからといって合意形成のプロセスを軽んじてもよいのではありません。
組織では部下の責任はトップの責任です。
まして大きな権限を有する自治体首長においては。

今回も読了いただきありがとうございました。
行政は「予算の季節」です。
次号もよろしくお願いします。





コメント (3)

新年ごあいさつ

2017年01月02日 | お知らせ
みなさま、明けましておめでとうございます。

昨年は多くのかたにご愛読いただき、ありがとうございました。
特に11月から当ブログへのアクセス数が急増しました。
瀬戸市行政と議会に対するみなさまの関心の高さにお伝えしていく責任を痛感しております。

さて今年の注目していきたい行政テーマから。

平成29年度から「第6次瀬戸市総合計画」がスタートします。
すでに中期事業計画が発表されています。
12月定例会に上程された「第6次瀬戸市総合計画基本構想の策定」は、連合審査会での質疑や意見交換は決してもろ手を挙げての賛成ではありませんでした。
「基本構想だから」今後の具体的政策に期待する。という反対はしないが注文を付けた議員も多数いました。
本会議でも3名の議員が反対しての議決でした。

前号でもお伝えしました「公共施設等総合管理計画」。
それと一部地域で関心が高い「小中一貫校」。

議会では「議会基本条例の制定」。
1月15日からパブリックコメント募集の予定です。

ご存知ないかたも多いと思いますが、議会改革の検討項目に「議長の任期及び立候補制の導入」があります。
議長の任期は地方自治法では「議員の任期による」としていますが、瀬戸市は正副議長が「一身上の都合」として一年ごとに交代しています。

公開されていませんが、行政側は予算説明書、行政評価、事務事業評価等の仕様案を議会特別委員会に提示し、現在検討中です。
古い体質から脱皮できるのか。
それとも従来とおりの「当初予算勉強会」のままか。
試金石のひとつです。

注:3月定例会のまえ、2月15日から3日間各常任委員会・予算決算分科会別に「当初予算勉強会」が行われます。
  議員センセたちの行政によるお勉強会です。



まちづくり」というと、住みたいまち、住みやすいまち、といったコトバが登場します。
新年にあたり、このあたりを少し掘り下げてみましょう。

昨年12月22日、新潟県糸魚川市で発生した大火災は記憶に新しいところです。
144棟が焼失しながらも、人的被害は消防団員9人を含む12人のけが人で死者はゼロでした。
ワイドショーでは焼失を免れた奇跡の一軒を注目していましたが、なぜひとりも死者がでずに済んだのかが重要な視点でしょう。
火災発生が午前10時20分ころで、就寝中ではなかったこと。
延焼した場所の4隅にあった駐車場が幸いしたことなども要因だったのですが、現場で大きな力を発揮したのは「組単位」で構成されていた地域の自治といわれています。

日頃から「組」での話し合いや組対抗の運動会なども実施され、いわゆる「顔が見える、顔を知っている向こう3軒両隣」のお付き合いと人間関係が構築されていたので、高齢者、一人住まい、障がいのひとまで「逃げ遅れているひとはいないか」が把握でき、組長さんや消防団の誘導に従ってみんなが避難できたといわれています。
まさに「地域力」です。

「住みたいまち」をアンケート等で尋ねると、
便利で、綺麗で、おしゃれな店がたくさんあって・・
ピカピカの住宅や高層マンション地域が人気だという結果になります。
もちろん「静かな田舎がいい」とおっしゃるひともいますが・・。

「住みたいまち」はピカピカだからだけでしょうか。
「煩わしさを嫌っている」傾向はないでしょうか。

筆者はバリバリのアナログ時代に育ちました。
「文通」をしている学生もたくさんいました。
好きな人の声を聞きたい!
でも相手の家の固定電話にかけるしかありません。
ドキドキしながらダイヤル回して・・受話器にでたのはお父上!!
こんな時代です。

今はデジタル。
直接本人と連絡できます。
便利になりました。
ところがスマフォを使ってのやり取りはとてもせっかちになっているそうです。
フェイスブックやラインは「いいね」とか「既読」を数分しか待てない。という人たちもいるそうです。
文通なら返事がくるまで何日も待っていましたよね。

☆他者を排除して快適な空間を作り、仲間意識を共有していたい。
 
常に即時反射、即時判断、強い認証欲求です。

好きか嫌いか、イエスかノーか、仲間でいるにはいち早く「いいね」「既読」をしなければ!
「ツナガリ~っ」「キズナぁ~」で安心感を確認。

このような意識空間の共有者たちは、外部の声にすこぶる緊張します。
冷静な意見さえ、自分たちの心地よい空間の破壊ととらえることもあるようです。
「愛」「絆」「支え」「多様性」などを合言葉にしながら、インクルーシブ・デザインを拒否します。

20~40歳代が多く暮らすピカピカのまちは、住人たちが元気でいる日常の問題は防犯、清掃、できればお祭りなんかイベントも。
濃密な人間関係がなくても何とかなりそう。
やがて
月日が経って、親の老化、子どもの巣立ち、夫婦ふたり、移動弱者・・他人に触れられたくない、入り込めない日常問題。
そして糸魚川市の大火災のような、非日常時に見舞われたら・・。

地縁・血縁が濃い地域でさえ「支えあう力」を持つのは容易ではありません。
まして地縁・血縁が希薄な地域が「力」を持つには・・。
支えあうまでの仲になるには「わずらわしさ」が付きものです。
即時反射を求め、適度な距離感の心地よい「お仲間」で、老いた日常や災害時のような非日常を支えあえますか。

瀬戸市の言う「住みたいまち」とは、生活空間の議論も共有化も避けながらの「フレーズ」です。
もし多くの市民の要望を叶えたまちこそ「住みたいまち」とするのなら、どのまちより便利で、ピカピカで、行政サービスが届いている(あれもこれも)を実現できる財政確保と予算化の路を歩むほかないでしょう。

これからの時代は(6次総の10年は)
やらねばならないこと、やってはいけないこと。
やれること、やれないこと。
この進路ビジョンを市民に発信するのが長の役割です。

わたしたちは、あれかこれかの選択と優先順を話すこと。
これが「市民の意見」のほとんどです。
思いついたような「アイデア」や「私(うちの業界・商店街)を何とかしてくれ」は意見とはいいません。
あれもこれもはムリでしょうね。
懐かしむべきは「賑わいや繁栄」ではなくて、冠婚葬祭もご近所地域で助け合って行っていた風景でしょ。

宴の時代は夢を語ればよかった。
再生の時代はムリはムリと言い切る指導力。
できもしないことをできるかのように煽る政治を大衆迎合といいます。



当事者だけでは解決できないから「社会問題」「行政課題」なのです。
これらの問題、課題の「解」を見出そうとするのが、議論です。
議論は、より良い「解」を見つけ出そうとする共同作業です。

「行政課題」の「解」に絶対真理はありません。
だから意思決定の結果が正しいか否かよりも、意思を決定するまでの「合意形成過程」が納得できるものかどうかが大切です。
即時反射、即時判断で議論はできません。
もちろんスピード感をもって「解」を出そうとするのも大事ですが、合意形成をするには「思考する時間」が必要。
「熟す過程」も必要なことが多いのです。
民主制度(主義ではありません)で議論が重んじられるのはこのためです。

トップダウンでやるのなら、相当なエネルギーと機会、時間を使ってまず行政内部への説得と納得(上司職権ではない)。
そしてなにより市民への説得と納得。
これを可能にする政策論と政治話術。
これら無しには実現できません。

大衆社会で行政課題の「解」を見出す議論を行うのは簡単な作業ではありません。
それでも市民と行政、議会は良質な議論ができるようになって欲しい、いや、まちをよくするにはそうする他ない。
こう願って微力ながら始めたのが当ブログです。
「楽しくなければ」というひともいます。
楽しいに越したことはありませんが、何をもって「楽しい」とするのかはひとさまざま。
「楽しい」は「解」に導く手段であって、「楽しい」イコール「解」ではありません。

行政内部、庁舎内ならもっと簡単です。
700名職員の一人でも多くが「合意形成」に参画し、議論したという過程を経ての「解」とする体質改善をできるか否かです。

簡単なことです。
長が決断すればいいのです。
行政機関のフレームを造っていただきたい。
事業のワンピースアイデアではありません。

本年もご愛読ください。













コメント