瀬戸市民言論広場

明るい未来社会をみんなで考えるために瀬戸市民言論広場を開設しました。

協働とは。

2018年02月11日 | お知らせ
瀬戸市は平成30年度当初予算案を発表しました。
2月10日付け中日新聞朝刊に載りました。
歳入、歳出や主な事業の予算案も書かれています。

本稿は新聞とは違った視点から論を起こします。

一般会計のほか各特別会計(国民健康保険・下水道・春雨墓苑・介護保険・後期高齢者医療)と企業会計の予算案は、2月20日から開かれる3月定例会における議会の審議に委ねましょう。

本市議会は予算決算委員会が各常任委員会(総務生活・厚生文教・都市活力)の所管に応じ、各分科会として予算審議を行います。
YouTubeでも見られますのでご注目ください。
どの委員(議員)がどのような発言をしたのか、来年に予定されている選挙の参考にしましょう。
地縁、血縁、知人という理由だけで投票行動を決めているようでは、いつまでたってもまちは良くならないでしょう。

歳出経費は予算書に書かれる区分(新聞紙面の円グラフ、目的別分類といいます)とは別に「性質別分類」があります。
予算書はその目的により款・項・目・節の4段階の科目が設定され、分類されています。
款と項の予算に対して議会が議決権を持っています。
市長は予算を「編成し執行する」権限は持っていますが、予算を「決める」のはあくまでも議会です。
お間違えのないよう。

予算書の節の区分を基準として、市の経費を性質(物件費、人件費、維持補修費など)によって分類したのが性質別分類です。

なかでも、義務的経費は支出が義務付けられ任意に節減できない経費をいい、極めて硬直性が高い経費です。
義務的経費は人件費、扶助費、公債費の3つで、扶助費は高齢者医療費が占めています。
本市の場合、義務的経費は一般会計歳出の43%、扶助費だけで20.4%を占めています。
高齢化が進んでいるのである意味避けられない経費です。
平成30年度予算案でも扶助費は対前年比1.3%増、金額にして9092万6千円増の72億6510万3千円となっています。

「年寄りが増えているのだからしかたないだろ・・」
そうです。
だからと言って市民は何も考えず、何もせず、お任せでよいわけではありません。
言論広場ブログ「まちづくり」に書かれていましたが、日頃から健康増進を心がけるのも市民ができることのひとつです。

ここから本題です。

行政も議会も市民活動も、「協働」という言葉を多用するようになりました。

言論広場がこの言葉に強くこだわるのは、地方自治を論じる上で「協働」の定義が重要な概念を要していると考えているからです。
本稿の定義こそ正しいとまでは申しません。概念や定義はある程度ひとそれぞれ差異があるものです。
そこで「協働」という言葉が誕生した背景や、なぜ「協働」が必要となったのかを提示しながら、筆者は本市最重要課題ととらえています「市民意識」について論及を試みます。


協働という概念を初めて日本に紹介したのは行政学者である荒木昭次郎氏です。
この概念は米国から発祥しました。
1977年(昭和52年)米国の行政学者ビンセント・オストロム(Vincent Ostrom)はCo-productionという言葉を造語しました。
Co-productionを「協働」と和訳したのです。

Coは対等、協力という意、productionは生産や提供という意。
「協働」とはこれらの字義をもった言葉です。
なぜ共同、協同とは違う熟語に訳したのでしょうか。

荒木氏によれば、オストロムは「地域住民と自治体職員とがCo-productionして自治体の役割を果たしていく」という意をこの一語で表そうとしたそうです。
その上で「地域住民の福祉向上のために有用であると住民の意思に基づいて判断した公共的性質を持つ財やサービスを、自治体(行政)は住民と力を合わせ、助け合って生産し、供給してゆく活動体系である」と述べています。

生活者市民と生産者市民、そして自治体行政が地域社会の発展のためにそれぞれがそれぞれの立場で役割を果たしつつ、相互の間の協力作用を行っていくという協働の精神と、協力し合う「場」となる媒介構造を設けなければならない。と論じているのです。

ではどうして「協働」が必要といわれるようになったのでしょう。

大きな背景は1990年代から始まった地方分権改革の流れです。
国の行政改革、分権改革を機に補助金や交付金の削減、そのための市町村合併の推進、機関委任事務の廃止、少子高齢化など、財源不足のなか多様化していく住民ニーズ(サービス)。
これら自治体を取り巻く環境のなかで、一定の裁量権を持った自治体行政が新たな公共(サービス)のあり方を模索した結果、試行されてきたのが「協働」です。

それまでは中央政府の下請け的機関であり、公共(サービス)は行政が全ての責任を持って行うものとされてきた日本の自治(統治)が、地域住民を含め多様な主体が行政と絡み合いながらローカル・ガバナンスを構築しようとする試みでもあります。

その上でこの試みを推進するのに必要不可欠なことがあります。

それは「自立した住民」です。
自立した住民が地域の自治を促し、政策施策への参画を拡充することにより、課題を「協働」で解決し、めざす「まちづくり」へと進めます。

市民の参画を図にしたのがシェリー・アーンスタイン(Sherry R.Aronstein)『市民参加の梯子』(1969年)です。



下位の「あやつり」や「不満をそらす操作」なら協働などできるはずもなく論外です。

瀬戸の現状は梯子のどこだと思いますか。

瀬戸市は今から10年前、地域力向上プランを策定し将来への展望を描きました。
それによると、第1ステップ「理解」の段階として、このプランは何を目指しているのかについてなどを、自治会を中心とした地域で説明会を実施。理解を得る活動をする。(平成19年~25年)

第2ステップ「協働」の段階として、第5次総合計画が終了するまでに市内全連区において地域力推進組織を立ち上げるよう支援する。また自治会、公民館、地域力組織の各役割を明確化する。(平成27年までに)

第3ステップ「進化」の段階として、地域力推進組織と行政の間で役割を明確にした上で、協働事業を実施する。また、連携を強化するために協議会を設置する。(平成26年~平成28年)

第4ステップ「自治確立」の段階として、行政から地域に交付される補助金等を一括して地域力推進組織に交付し、地域内で配分を決める。また、ニーズを把握するために定期的に調査を行う等、自主的な広聴体制を築く。(平成28年~平成29年以降)

このプランに対する実績評価は読者各位にお任せいたしますが、地域一括交付金制度の導入の目途さえままならないと考えております。

本稿冒頭でご案内したように、自由に使える本市の予算はどんどん少なくなっています。
公立陶生病院の経営問題、老朽化が進む公共施設、社会資本の維持管理など、莫大な経費が予想されています。

「協働」という言葉をどのように定義付け、その概念をどう捉えるのかは読者各位が判断することですが、「協働」とは行政と市民がある施策事業を『する』こととしていませんか。

ある施策事業を「縮小する」あるいは『やめる』ことも含まれているはずです。

「協働」は行政と住民との対等な関係で、と謳いつつもその実態はNPO等市民団体や地域組織が行政の下請け機関と化してはいないか、
何を目的のイベントやセミナーなのか、その施策事業は住民の意思に基づき福祉向上に役立つのか、その効果測定は計られているのか。

課題を共有し『この事業はやめよう』、これは自分たちで『やろう』、税に頼るのは『よそう』。こんな議論が出てこそ「協働」です。

行政を議会は追認し、議員を市民は追認しているかのようになってはいませんか。

『やめよう』という議論もあって、はじめて「協働」といえるのではないでしょうか。

筆者には今はまだ、行政と市民が「共同」して『やろう』とだけしか見えません。

さて市長のお考えはいかに。
直轄でなさるそうですから。

今回も読了いただきありがとうございます。



















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