今回紹介する句は今井聖氏の句集「九月の明るい阪」です。
永遠に下る九月の明るい坂
日本人にとって特別の八月が終わって、九月の普通の暮らしに戻る。
子供達は夏休みが終わって学校に戻る、その九月の明るい坂なのだ。
それだけに「永遠に下る」が意外な印象がある。
作者は団塊の世代に属し年齢的な下り坂のいくえを暗示する。
それでもこの句の印象はあくまで明るい。
上りきった後の下り坂は体も楽だ。
もう頑張って登る必要は無い。しかも「永遠に」。
この句の明るさは、どこか廃墟の明るさに似ている。
これは未来への警鐘なのか、あるいは「あとはよろしく」という爽やかな挨拶なのかと小川軽舟氏は評している。
金魚も「もう若い人に任せてもいいのでは」の挨拶を感じます。
しかし、昨今の世情、とくに政治における自由のはき違いをみるにつれ、どうなのだろうと危惧するのです。
それでも「明るい坂」と言い切るしか無いのが私達なのかなと。
そこで一句です。
桜坂昔も今も高校生 夕金魚
次の世代への挨拶ですけど、どうでしょう。
ちなみに桜坂は高校への通学路で遅刻坂と言われてました。