goo blog サービス終了のお知らせ 

背寒日誌

2024年10月末より再開。日々感じたこと、観たこと、聴いたもの、読んだことなどについて気ままに書いていきます。

『間宮兄弟』『阿修羅のごとく』

2013年08月27日 00時44分42秒 | 日本映画
 一昨年の暮に亡くなった森田芳光の監督作品を2本観た。森田芳光の映画は、『家族ゲーム』以降5本ほど見ているが、1990年代から亡くなるまでの映画をまったく見ていなかったので、遅ればせながら、最近DVDを借りて見始めた。この間は『武士の家計簿』(2010年)を面白く観た。



 さて、一本目の『間宮兄弟』(2006年)は、東京のアパートに同居している仲の良い兄弟の話で、この二人の主人公の設定がユニークで面白く、なかなかユーモラスな映画だった。兄弟愛、家族愛の話にラブコメディを加味した作品とでも言おうか。ひと頃「カウチ・ポテト族」という言葉がはやったが、間宮兄弟はいわゆるカウチ・ポテト族で、二人とも美男子ではなく、しかもオクテで恋人がいない。兄はノッポで痩せ型、弟はチビで肥満型。兄はビール工場の研究員、弟は小学校の用務員で、二人とも結婚適齢期の社会人なのだ。そこで、まず兄貴の方に恋人を見つけようと、弟が一役買って、身近なところから二人の女性を選んで、自宅のアパートへ夕食に招待する。一人は、弟が勤めている小学校のオールドミスの女教師で、もう一人は、通いつけのビデオショップの可愛い女店員。実は二人の女性にはそれぞれ男の恋人がいるのだが、夕食メニューの自家製カレーに釣られて、二人ともなぜか招待に応じるところから話が始まる。そのあと、いろいろあって、女教師の方は候補から消え、女店員とその妹が間宮兄弟とペアになりそうな雰囲気で映画は終る。
 『間宮兄弟』の出演者で私が知っているのは、常盤貴子(女教師)、高嶋政宏(間宮兄の同僚)、中島みゆき(間宮兄弟の母)、加藤治子(間宮兄弟の祖母)、戸田菜穂くらいの人たちだった。間宮兄弟を演じたのは、兄が佐々木蔵之介、弟が塚地武雅(ドランクドラゴンというお笑いコンビの一人)、ビデオショップの女店員が沢尻エリカ、その妹が北川景子とのこと。
 原作は江國香織。私はこの女流作家の作品をまったく読んでいない。父親は江國滋だそうだが、彼の落語解説書はずいぶん読んでいるのだが……。



 二本目の『阿修羅のごとく』(2003年)は、向田邦子の原作で、以前NHKで連続テレビドラマがあったそうで、私は何話か見た記憶がある。親父役が佐分利信で、四姉妹の一人がいしだあゆみだったのを覚えている。それはともかく、二十数年ぶりに森田芳光監督が映画化した。いかにも森田作品らしく、シリアスなストーリーがテンポの速いコメディタッチで描かれていた。映画の出来は上々で、135分という長さを感じなかった。
 この映画、女優陣の競演が見どころだった。長女大竹しのぶ、次女黒木瞳、三女深津絵里、四女深田恭子、それに母親役が八千草薫。ほかに桃井かおり、紺野美沙子、木村佳乃といったところ。主役は黒木瞳のように思えたが、若い頃の美しさがなくなって、やや能天気な平凡な主婦役を演じていた。八千草薫が夫の浮気を知っていて知らん振りの落ち着いた母親役で、味わい深い自然な演技をしていた。彼女は老いても十分通用する女優だと思う。私の個人的好みでは、三女の深津絵里が一番良く、地味で冴えない娘から、結婚を境に容貌も心も美しく変わっていく感じをうまく演じていた。男優では、父親役の仲代達矢は相変わらずで、次女の夫の小林薫も役にはまっていた。三女の深津絵里の恋人役が中村獅童で、興信所の調査員だったが、三枚目役をユニークに演じていたと思う。彼はまともな二枚目役より、ちょっとイカれた三枚目役の方が個性が出るように感じるが、この映画ではまだ無理して役を作っている印象があり、もう一皮むければ良くなるように思えた。ただし、この映画はもう十年前の作品で、中村獅童もその後、山あり谷ありで、迷走したようだ。大竹しのぶの愛人役の坂東三津五郎はミスキャストで、恐妻家の浮気男の役はいただけない。
 また、音楽(担当大島ミチル)が良く、場面転換の時に入る音楽が大変効果を発揮していた。

 『間宮兄弟』と『阿修羅のごとく』は、どちらも森田芳光の喜劇的センスと場面転換のあざやかさが目立ち、観ていて楽しい作品であった。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

サービス終了に伴い、10月1日にコメント投稿機能を終了させていただく予定です。