背寒日誌

2019年7月12日より再開。日々感じたこと、観たこと、読んだことなどについて気ままに書いていきます。

スティーヴ・マックイーン

2005年10月14日 21時40分48秒 | アメリカ映画
 スティーヴ・マックイーンが肺癌で死んでから、もう25年になろうとしている。60年代半ばから70年代末までアメリカ映画のスターといえば、断然マックイーンだった。人気投票でも男優部門第1位はマックイーンの指定席だった。特に日本での人気は、男女を問わず、圧倒的だったように思う。もちろん私もマックイーンの大ファンで、彼の映画が封切られると喜々として映画館に足を運んだ。スクリーンの彼は無条件でカッコ良かったのだ。まさに彼は時代のヒーローだった。
 マックイーンを一躍有名にした映画は「荒野の七人」だった。当時テレビでは彼が主役のガンマンを演じる「拳銃無宿」が放映されていた。その後、「大脱走」でマックイーンの人気は決定的になった。この映画で彼は捕虜収容所から何度も脱走を試みる兵卒を演じた。失敗しても決してめげない男だった。
 マックイーンはハリウッド的美男俳優ではないが、好男子だった。苦みばしったイイ男で、しかも茶目っ気があった。といっても女を誘惑するような色男タイプではない。彼にはお世辞とか饒舌とかは似合わない。男らしい行動によって、言うならば背中で、女を引き付けるタイプなのだ。それは彼が演じた役柄を見れば解る。「シンシナティ・キッド」ではポーカーの賭博師、「ブリット」ではマスタングを乗り回す刑事、「栄光のルマン」ではレーサー、「ジュニア・ボナー」では荒馬を御するロデオの男、「タワリング・インフェルノ」では被災者を救出する消防士だった。こうした主人公はみな男の憧れでもある。マックイーンの映画には女の入り込む余地はあまりない。映画の中に彼を愛する女は登場するが、あくまでも脇役に終わることが多かった。彼と共演して存在感を示した女優は、「華麗なる賭け」のフェイ・ダナウェイと「ゲッタウェイ」のアリー・マッグローくらいだった。
 マックイーンが癌で闘病生活を送っているとの報道がもたらされたのは、70年代の終わりだった。ファンはみんな暗い気持ちになった。痩せ衰えたマックイーンの写真を見て、みんな心を痛めた。そして、1980年に彼は50歳の若さで死んだ。映画ファンにとってこれほど惜しまれる死はなかった。


寅さんのマドンナ役、浅丘ルリ子

2005年10月14日 16時27分04秒 | 日本映画
 「男はつらいよ」シリーズは、第1作から10年くらいの間は欠かさず見ていた。渥美清は寅さんになる前から好きだった。「男はつらいよ」を見始めた頃も、テレビドラマ「泣いてたまるか」の主人公と寅さんをダブらせて見ていたような気がする。最初の何作かは、寅さんに傍若無人なところがあって、何を仕出かすかハラハラして見ていたものだった。が、次第に人生を悟ったようなところが出てきて、良い意味での馬鹿馬鹿しさが失われていったように思う。そして、20作を過ぎる頃になると、「男はつらいよ」から私は離れていった。
 だから、「男はつらいよ」シリーズで私が好きな作品を挙げろと言われれば、シリーズの前半に固まってしまう。副題が正確に思い浮かばないので、好きな作品をマドンナ役の女優で挙げみると以下のようになる。光本幸子、新珠三千代、若尾文子、太地喜和子、吉永小百合、長山藍子、樫山文枝、そして浅丘ルリ子がマドンナ役で出演した作品である。なかでもいちばん好きなのが、浅丘ルリ子のリリーさんが出てくる作品かもしれない。これは副題をはっきり覚えている。「忘れな草」と「相合い傘」である。
 浅丘ルリ子の出演した日活映画を私はほとんど見ていない。テレビで何本か見た程度なので、その頃の彼女を語る資格はない。浅丘ルリ子がいいなーと私が思い始めたのは、NHKのドラマ「竜馬がゆく」でおりょうさん役を演じたときである。映画では「私が棄てた女」を見ていたが、あまり印象に残っていない。
 やはり私にとって浅丘ルリ子は、ドサまわりの歌手リリーのイメージが鮮烈なのだ。リリーは寅さんと近い境遇にあり、いちばんお似合いのカップルだった。そして、寅さんを本当に愛していたマドンナはリリーだった。寅さんと結婚してもいいと思っていたただ一人のマドンナだった。失恋相手の他のマドンナとは違い、別格なのだ。寅さんとリリーが口げんかして罵り合う場面があるが、他のマドンナとならこうは行かない。互いの境遇を心底理解していればこそ、好きだからこそ、けんかにまで発展するわけだ。
 浅丘ルリ子のリリーは、ツッパって生きている。しかし、根は優しく、情が深く女っぽい。私はリリーの威勢の良い啖呵も好きだが、時折見せる寂しい表情とか、小娘のようにはしゃぐ姿とか、度を越すほど寅さんに甘えるあの振る舞いが大好きだった。確か木賃宿で、足が冷たいから暖めてと言って、リリーが寅さんの布団にもぐりこむシーンがあったと思うが、ここなどは特に印象に残っている。