背寒日誌

2019年7月12日より再開。日々感じたこと、観たこと、読んだことなどについて気ままに書いていきます。

初恋のオードリー・ヘップバーン

2005年10月01日 05時54分20秒 | アメリカ映画
 オードリー・ヘップバーンは、私の初恋の人である。初めて出会ったときのことは今でも鮮明に覚えている。場所は東横線の白楽という駅のそばにあった映画館。その名を「白鳥座」といった。今から40年前、横浜に住んでいた私が中学1年の頃だ。そのとき、私は母親と一緒だった。なぜ母親と一緒だったかというと、当時は子供が一人で映画館へ行くのは不良の始まりだと思われていて、母親が保護者として付いてきたのだ。私は中学1年なのに、子供扱いだった。もっとも映画へ一人で行くのが禁じられていたのは中1までで、中2になると一人で映画館へ行き始めた。が、小遣いをはたいて映画を見に行くには限界があった。「白鳥座」はロードショーの映画館ではなく、ちょっと古い洋画を二本立てで入場料120円で上映していた。この頃はよく白鳥座へ通った。そして、ほとんど母親と一緒だった覚えがある。そのほうが小遣いを減らさなくても済むという利点もあったからだ。
 オードリー・ヘップバーンには一目惚れだった。スクリーンにオードリーが現れるやいなや、目が皿になった。そこは緑も目映い牧場だった。風のように颯爽と現れた彼女は、クリーム色のドレスをまとい、大きな帽子をかぶっていた(ような気がする)。一目見て胸が高鳴り、海の向こうにはこんな美しい女性がいるんだ!と、まるで新発見をしたように思った。
 オードリーに私が初めて出会ったこの映画は、トルストイ原作の「戦争と平和」だった。3時間近い大作である。私はストーリーなどどうでもよく、ただただスクリーンのオードリーを目で追っていた。この映画はカラー映画で、その頃テレビは白黒の時代だった。外国の女優を生身に近い姿で見る機会は映画館でカラー映画を見る以外になかった。肌の色、目の色、髪の色、唇の色、服装だって色彩がなければ、女性の美しさは引き立たない。声も大切だ。もちろん、当時私は英語を習い始めたばかりで、何を言っているかまったく解らなかったが、オードリーの声の可愛らしさとあの品の良い話し方くらいは感じ取っていたと思う。
 オードリー・ヘップバーンは、私にとって初恋の西洋人女性になった。「戦争と平和」を見てから、私の追っかけが始まった。どこかでオードリーの映画をやっていると、矢も楯もたまらず、その映画館に足を運んだ。白鳥座だけでなく、渋谷の全線座や東急名画座にも遠征した。「尼僧物語」「ローマの休日」「サブリナ」「昼下がりの情事」「緑の館」「ティファニーで朝食を」「シャレード」など古い映画を遡って見る一方、封切りの新作「マイフェアレディ」「暗くなるまで待て」「おしゃれ泥棒」「いつも二人で」なども順番で見に行った。その間、またその後も、他の西洋人女優に目移りし、つい浮気をしてしまったことも正直言って多々あった。が、誓ってもいいが、オードリーに対する私の初恋の思いは、死ぬまで変わらない。