Senboうそ本当

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『 City Hall 』監督フレデリック・ワイズマン を観ました

2021年12月28日 | 自称@映像作家(宮崎)

88歳のジイさんが監督したドキュメンタリー映画『ボストン市庁舎』 。274分もある長編(途中休憩あり 。ミニシアター系の映画館「宮崎キネマ館 」で1週間だけ上映中 12/24(金)~12/30(木)終了。チケット 2800円(キネマ3/定員20人)。全国劇場によっては「市役所割」を実施中(市役所で働く職員は割引き) 

いったい誰がこんなマニアックな作品を観に来るんですか? フレデリック・ワイズマン? まだ1本も観たことないし。ボストンって言われても、馴染みがない。まさか入場者ゼロってことはないでしょうけど、それだと上映館が気の毒なので出掛けました。このスケジュールでは唯一の日曜日。12時20分開演(1日1回のみ上演)。私を含め観客は10名(空席も10)、みんな最後までいましたよ。私は途中でウトウトしましたが。1回だけ休憩がありますが、4時間以上も集中力が続くわけがない。 しかも全部英語なので、スクリーン下の字幕を追いかけるだけで疲れます。

去年読んだ想田和弘(ドキュメンタリー映画の監督)が書いた2冊の本。私はそこではじめてフレデリック・ワイズマンを知りました。ワイズマンも想田和弘も「映画を撮る前の下調べをしない」というスタイル。つまり最初からこんなに長い仕上がりを想定して撮影してるわけじゃない(興行的にも都合が悪い)。面白いものがたくさん撮れてしまったので、これ以上は削れなかった...のだと思います。 

市庁舎と聞いても「窓口業務」とか「電話対応」ぐらいしか思い浮かびませんけど、よく考えたら街のいたるところに市民の暮らしがあり、問題が存在する。だからボストンの街全体が被写体なわけです。カメラは庁舎の外に飛び出して街の多様な姿を描き出します。「罰金処分(駐禁)の軽減申し立て」「退役軍人のグループセラピー」「ベトナム人経営者からの出店説明会(大麻SHOP)」「教育委員会での審議」「女性の地位向上を目指したセミナー会場」「医療現場の改善を訴える青空集会市長のスピーチ)」「交通管制センター(赤信号を遠隔操作するオペレーター) etc.

人種、性差別、拳銃、ドラッグ、格差、教育、住宅。この国の抱えている問題がどういうものなのかが、具体例として提示される。特に興味深かったのが「市の財政を支えているのが固定資産税(これをレクチャーする若い職員?のキレ味が見事)」「渋滞緩和のために遠隔操作で赤信号を操作」「大麻SHOP の説明会でのそれぞれの主張と迫力(簡単に白黒付けられない)」です。アメリカの国家斉唱のシーンも要注目。歌詞が字幕で出るのですが、勇ましいを通り越して好戦的な内容にドン引きするはず。 

 

マーティン・ウォルシュ市長のプロパガンダ映画という側面も感じさせます。ドキュメンタリー映画だから演出はないはずですが、編集段階で「そのシーンを使うか捨てるか」といった作為から逃れることはできません。外国の政治家のスピーチ力、さすがですね(スピーチ原稿ができるまでの舞台裏、そこまではさすがに撮らせてもらえない) 想田 和弘の著作《 THE BIG HOUSE  アメリカを撮る》2018年 岩波書店。全米最大のアメフトスタジアムを表と裏から観察したドキュメンタリー映画製作の一部始終が書かれてます。「スタジアム前を通過するトランプ大統領の選挙カー」このシーンを使うか捨てるか、関係者の間で意見が分かれすったもんだがあったそうです。たったそれだけのことですが作品のトーンが180度変わってしまう。 

※ボストン市庁舎の原題は『 City Hall 』です。ということは「東京ドームシティホール」という名称が意味するのは→東京ドーム内にある市役所の出張所ということ? 

関連情報:

フレデリック・ワイズマン『肉』+想田和弘監督トーク 

2016-02-12 タコカバウータン 

宮崎キネマ館は、 特定非営利活動(NPO)法人「宮崎文化本舗 」が運営する映画館として、 日本で最初に誕生した映画館です。 部屋は4タイプあります。キネマ1【100席】キネマ2【 38席】キネマ3【 20席】キネマ4【 16席(全席ソファ)たまに映画以外の催しもやってます。→〔11〕『22歳の別れ』〜70年代フォークソングの物語〜  令和4年1月29日(土)〜令和4年1月30日(日)まで  11 Performances in Miyazaki 


上の写真は、ジーベックス ハイ・ビームⅡR(35mm映写機)。2021年2月までこれを使って上映してました。イタリアで開発されたモデルをウシオ電機の子会社(日本ジーベックス)が国内製作したもの。

 

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